2-1 調停
00Ⅰ
「いらっしゃい! おお、先生! お客人が待ってるぜ!」
「ああ。注文は……」
「構わねえさ。話が終わったら聞きに行くよ」
店に入るや否や、柴大将が笑顔で私を迎える。
どうも、既に話は済んでいるようだ。
奥の席に4人が座って待っている。
「待たせたか?」
「あ、え、エメトセルク先生!」
「どもどもー。待ってたよ、エメちゃん」
本名ではないと知っていても、エメトセルクと呼んでくれるか。
「さて。私を呼んだという事は……」
「その前に、いいかしら?」
先に聞きたいことがあるのだろう。
『仕事』の内容か、それとも『私』についてか。
どちらにせよ、必要ならば話すまで。
「なんだ?」
「先生に聞きたい事は山ほどあるわ」
「それくらい分かってるさ、で何から聞きたいんだ」
「『仕事』の内容よ」
そっちか。
てっきり『私』の方を聞いてから、人物を見極めてそして『仕事』の話かと考えていたんだが……
どうもそういうわけではないらしい。
「……『今』の仕事から手を引くこと。報酬はお前たちが今後『今』の依頼主から受けられなくなる分の仕事をこちらが補填し、あまり表立って出来ない案件を投げる。あとは賃金だな。少ないだろうが、必ず支払う」
「あら?随分と簡単な仕事ねって言うと思う?それはあくまで『先生』としての仕事でしょう、エメトセルクさん?』
こちらの読みに気が付いたのか。
私の斃し方を懸命に考えてそれで諦めて話をしに来たのだろうが……やはり、お前は賢いよ。
言葉の裏まで読めてるじゃないか。
「ああ。ここからは『エメトセルク』と、昨日の『エメトセルク』からの依頼だ。『アビドス』を助けてやって欲しい……」
私個人としての依頼であり、『アシエン・エメトセルク』としての依頼でもある。
今のままでは、私が暗躍するだけでは『アビドス』は救えない。
私が救えるのは、出来て実情のみで『心』までは救えない。
ホシノを『止める』ことは出来ても、『選択』させるために心を変えさせるには力不足だ。
「報酬は?」
「『私』自身のこと、お前たちへの個人的な支援。そして、私から直接お金を渡す」
「先生、お金持ってるの?」
「まあ、多少はな……だが、これは『私』からの依頼だ。『先生』じゃあない事はお前たちが最初に言った通りだ。だから、頼む」
報酬に関してはどうにかするさ。
今は持てる力全てを使って『計劃』を進めなければならないんだ。
『アシエン』を世に広めた以上は、あまり猶予はない。
駒ではなく、必要な人材として、そして何より同世代の仲間として。
便利屋68の力が必要だ。
故に、私は頭を下げる。
昔ならしなかっただろう行為を、しかし『未来』の為にする。
「エメちゃん……」
おかしな話だろうな。
大の大人が無理やり言う事を聞かせるのではなく、頭を下げるしかないのだから。
だがそれでも、今の私にするべきことはこれだったのだ。
そんな光景を便利屋は静かに見つめる。
好きに判じるがいいさ、あれほどまでに強大に見せた男のこの姿を。
情けないと思えばそれでもいい、駄目なら駄目で別の手を……より苛烈な手で以ってカイザーと対峙するだけだ。
それを対策委員会のみんなは望まないだろうが、決めるのは私だ。
「顔を上げて頂戴」
「……」
「大人でも、生徒でもそんな顔をする人、初めて見たわ。その顔が、エメトセルクさんの顔なのね」
碌な顔じゃあないだろうな。
だが、これが私だ。
問題に対処するためなら、あらゆる手段を講じそして己を殺してやり遂げようとする。
演技などではない。
自然とこうなってしまうんだ。
「……いいわ!この便利屋68が『先生』とエメトセルクさんの依頼を受けてあげるわよ!」
「……本気か?言っておいてなんだが、お前たちからしたら素性も分からぬ存在だぞ私は」
「そうね。でも、例え先生が嫌がっても言うわ。あの顔は間違いなくハードボイルドなアウトローだった。何かを背負う為に頭まで下げる人、そして私たちに向き合う人。そんな人の依頼を断るなんて、それこそ、ポリシーに反するわ!」
己のポリシー、信念か。
もしアルの中でのハードボイルドなアウトローと言うのが『信念を捨てない者』を指すのであれば、もう嫌がったりも否定もしない。
危険を冒してまで私の依頼を引き受けたのだ、これが私なりのポリシーだ。
「ならば、私は……我が力全てを以ってお前たちとの約束を果たそう」
「取引成立ね!」
そういってアルは私に手を差し伸べる。
私は迷わずその手を取る。
「あ、あとうちは成功報酬だから!」
「……ああ、なるほどな」
これで合点がいった。
どうして便利屋68がその悪名に対してあれほどお金に困っていたのかを。
事前に依頼料を受け取っていないから、失敗したらただ手持ちの金を使って終わり。
故に、今回の様な場合は傭兵にすべての金を使ったというわけだろう。
……仕方ないとはいえ、酷な事をしたな。
「どうやら、話はいい方向に纏まったみてえだな。なら、そろそろ食うかい?」
本当にちょうどいいタイミングで柴大将が現れ、私たちから注文を受けようとする。
こういうところがプロたる所以と言うか、アビドスの全員から好かれる部分なのだろうな。
粋な真似をさらりと出来る。
「ああ。私はあまり腹が減ってないから柴関ラーメンでいい」
「先生はいつもあんまり食わないなあ。案外、小食かい?」
「どうだろうな……そこまで食に拘りを持って来なかったからかもな。レンズ豆と栗のワイン煮で満足できるくらいだ」
「寒い所出身か。なら、これからはどんどん色んなもん食べに来てくれよ!」
「それもそうだな……」
エンペラースープ、寒冷地での軍事訓練の際に兵士たちと共に食べたことで仰々しい名前を付けられたガレマール帝国の伝統料理だが中に入っている物はお世辞にも皇帝が食した物とは思えないだろう。
むしろ、貧しい人々の食事とすら思われてしまいかねない。
だが、寒空で彼らと共に食べたスープは美味しかったのだ。
しかし、キヴォトスに来てまで食に拘りはない、というのを続ける必要もないか。
向こうにはなかった食べ物も多いのだから、いつかあいつに自慢する時のためにも食べてみよう。
それこそ、キヴォトス一の美食家を目指してみてもいい。
「アビドスさんとこのお友だちはどうする? 替え玉もサービスしてやるよ」
「……!?」
大将の心意気にどうしてか硬直したアルは結局、自分で注文せずに他のメンバーと同じ柴関ラーメンとなった。
まさか、私が柴関ラーメンだけ頼んだから遠慮したのか?
選択を間違えたか。
「はいよ、お待ちどうさん。熱いから気を付けて食べてくれな」
「来たあ! いただきまーす!」
だが、それについての不満などはなくラーメンが来るまでは特に仕事の会話があるわけでも『私』についての話が出るわけでもなく各々がやりたい事をしていた。
ただ一人考え込んでいたアルを除いて。
「こんなに美味しいのにお客さんがいないなんて」
「場所が悪いんじゃない? 廃校寸前の学校の近くだし」
「まあ、美味しいからいいけど。それじゃ、いただ……」
「……じゃない」
これからまさに全員で目の前のラーメンを食べて、気分良く終われるだろうと思っていたら突然アルが声を上げる。
「ん?」
「友だちなんかじゃないわよぉーーーー!!」
「わわっ!?」
まるで火山が噴火したかの如く、叫びつつ机を叩き立ち上がる。
何なんだ一体……
「わかった! 何が引っかかってたのかわかったわ! 問題はこの店、この店よっ!」
「どゆこと!?」
「おい、私のラーメンが!!」
危うくこぼれたスープが私の服に付くところだった。
幾ら無礼講だと思っていても、机を立ち上がるのは違うだろう。
「私たちは仕事しにこの辺りに来てるの! ハードボイルドに! アウトローっぽく! 確かに、依頼主が変わっても仕事よ!! なのに何なのよ、この店は! お腹いっぱい食べられるし! あったかくて親切で! 話しかけてくれて、和気あいあいで、ほんわかしたこの雰囲気! ここにいると、みんな仲良しになっちゃう気がするのよ!!」
「それに何か問題ある?エメちゃんの依頼はそういう意味もあるんじゃ……」
「店を指定したのはお前だろう……それは何処まで行ってもお前が悪いとしか言えないぞ、私は」
「そ、それは……そうだけど!!」
噴火を懸命に宥めようとするムツキと私の言葉に、痛いところを突かれたのだろう。
徐々にその勢いは収まりつつ見えた。
だが、どうもまだらしい。
「私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと非情さなの! こんなほっこり感じゃない!!」
「いや、それは考え過ぎなんじゃ……」
考えすぎというか、理想を持ちすぎだと思う。
確かにそういうモノに憧れを持ったとしても、実際のハードボイルドでアウトローな人物がほっこり感が嫌いかと言われると違うだろう。
やれやれ、成功報酬と言っていたが過去話でもしてやるか。
「あのなあ……そういう存在でも――」
「それって……こんなお店はぶっ壊してしまおうってことですよね、アル様?」
「……へ?」
「良かった、ついにアル様のお力になれます」
私の話を遮ってハルカが物騒な事を言いだして、懐から怪しいものを取り出す。
待て、それはどう見ても……
「起爆装置?なんでそれを……」
「ハルカ、ちょ、ちょっと待っ……」
言葉での静止は間に合わないだろう。
故に私は少し痛いだろうが、危険な手を使う。
「痛ッ……!」
魔法によって装置に障壁を発生させ、ハルカの手を弾く。
これにより、自由落下した装置をカヨコがすんでのところでキャッチすることで惨劇は回避できた。
「なぜここに爆弾を仕掛けたのかまでは聞かない。だが、今は手を取り合う仲だ。一時の気の迷いで押すんじゃない!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
「いや、すまん。痛くしたな……」
傷にはなっていないがそれでも一瞬走る痛みは中々のものだ。
念のため、ハルカの手を癒してやる。
「……先生の魔法は、本当に凄いんですね。私なんかの為に、ごめんなさい……」
「いや。どんな理由があれ傷付けかけたんだ。全て私が悪い」
「いえ!私が――」
「ハルカ。この件は、私が、悪い。いいな?」
「……はい」
多少無理やりだが、これで更に卑屈になっても厭だ。
私なんか、と言うがそもそも設置までしたからこその起爆装置。
敵の弱点を正確に分析するいい目を持ってるじゃないか。
今回は危なかったが、共に戦う時はきっと頼もしい限りだ。
話を続けよう。
「話を戻すが、冷酷さと無慈悲さと非情さが必要だとお前は言ったな、アル」
「え? ええ。だってハードボイルドなアウトローには必要でしょう」
「ハードボイルドなアウトローが、本当にほっこりする事を必要としないとでも思うか?」
「そ、それって……」
「私の同胞だった『ある男』の話だ。男は自分の職務に忠実だったし、誇りを持っていた。他の誰よりもな。そんな彼をみんなが尊敬していたよ。だが、ある時我々に未曽有の
「……災害?」
「正しく、世界の終わりと言える災害だ。その災害で男は息子を失った。長らく想いを伝えられずにいたが、少し前に漸く想いを伝えられたそんな大切な息子を」
「……」
全員が沈黙する。
既に重い話、だがこれにはまだ続きがある。
「男はある組織の議長として、災害からの復興を目指した。仲間が、愛した者たちが暮らせていた失われたモノを取り戻すために。そして、その過程でより苛烈に職務に忠実な人間になっていった。もはや己すら忘れて、それでもなお『取り戻すため』という使命だけは覚えていて、敵からは冷酷、無慈悲、非情と思われても戦い……そして散った」
すべてを知ったあいつでも、ラハブレアに対して好意的な感想を述べてくれるかと言われたら難しいだろう。おそらく、ラハブレア本人も『アシエン・ラハブレア』としての振る舞いの一部を信じがたい所業だと思うかもしれない。
私は顔を上げ、アルを見つめる。
「お前はこの男がどうして戦ったと思う?」
「……ほっこりした思い出のため?」
「私はそうだと思っている。あの爺さん本人は違うと言うだろうが、それでも根底にあるのはほっこりした思い出なんだろうとな。どうだ、これでもほっこりって言うのがいらないと思うか?」
星を善くすることを信じ、だからこそ分断された世界において『悪』となった。
私たちアシエンのオリジナルはみなそうだ。
私もまた友との時間を思い、だからこそ『終末』など認められなかった。
「どんなハードボイルドなアウトローにもそういう場は必要なのね……」
「そういうことだ」
「ありがとう、先生。私はまだまだハードボイルドなアウトローを知らなかったわ」
脚色は加えられているが、それでも『アシエン・ラハブレア』という人物の人生のあらましについては嘘ではない。
私は彼を尊敬している。だからこそ、こうして話したのだ。
「それってエメちゃんの同胞って言ってたけどさ、私が聞いた厳しそうなお爺ちゃんの声の人?」
「ああ。お前が聞いたのは今話した男の声だ」
「じゃあ、その人も『アが付く組織』なの?」
「む、ムツキ!先生の話は報酬のはずよ!」
「いや、これは良いだろう。少なくとも、私ではないからな」
私は目を閉じ、彼を思い出す。
ああ、そうだ。いつだって炎と同じ目をしていたな。
「お前が聞いた男の声は、『ラハブレア』……使命の為に常に燃え盛り続けていた男だよ」
この場ではアシエンとはつけないでおいたが、その意図もムツキは汲み取ったようだ。
そして静かに、目を閉じて言った。
「先生は、その人の事を尊敬してたんだね」
「ああ。最後には立ち会えなかったし、見れてもいない。伝え聞いただけだが、それでも確かに彼は……爺さんは立派に生きていたよ」
そしてその後、私自身も消滅することになる。
結局のところ、爺さんも私もあいつがまだアゼムであった時から振り回され続けたと言う事だ。
恨んじゃいないさ。
ただ、そういう巡り合わせと言うのは確実にあるのだな、と思っただけだ。
「さて、しんみりとさせてしまったが私の話はここまでだ。ラーメンが伸びる前に食べるぞ!」
「ええ!」
長く重い話はここまでにしておこうじゃないか。
私の経験が、我が同胞の想いが少しでも彼女たちの成長につながる機会になるなら、それでいい。
今日こうして、また美味しい食べ物を食べる。それがまた貴重な日常を形成していく。
そして、こいつらが振り返った時に『ああ、そんなこともなったな』と思ってくれたら、一度は消えた泡としては満足だ。
そうして、私たちはラーメンを完食しもちろん生徒に出させるわけにもいかないから私が払う。
別に他に使わないからいいんだが、毎回これをして生徒が心配したり変に気負いしたら申し訳ないな。
入った時に渡せばいいんだが……電子決済だとこういう部分が不便だ。
「そういえば、社長。これ」
「……へ?」
「あ……」
私が支払い方法について悩んでいる間に、先に外に出た便利屋が何やら会話をしていたがまあ大丈夫だろうと。
そんな気で大将と会話していたら。
「先生、大将!!逃げて!!」
「なに?」
何から逃げるのか、全てを聞き取る前に大規模な爆発が起こり私はとっさに大将を掴んで結界を発動させた。
00Ⅱ
はっきりと言おう。
店は見るも無残な瓦礫の山と化していた。
そして、善良な大人である我々二人は瓦礫の中に取り残されてしまったのだ。
十中八九、仕掛けた爆弾が何らかのミスで起爆してしまったのだろう。
あの話の流れで、自分の意思で装置を起爆するとは思えない。それほどまでに邪悪な奴らではないと確信は持っている。
だがそれでも、これは擁護し辛いものだ。
「……無事か」
「お、おう……先生が守ってくれたからな……先生も怪我は?」
「見ての通り無事だ」
まず間違いなく、この知らせを聞いた対策委員会が急行し面倒なことになるのは目に見えている。
下手をすればここは戦場だ。
となれば、私が最初にすべきは民間人の避難。
「……大将。避難できる場所はあるのか?」
「ああ。シェルターがあるけど……先生はどうする?」
「誠に遺憾ながらこんな事態になった以上は、仕事が出来たんでな」
「……わかった。さっきのお嬢ちゃんたちをあんまり責めないでやってくれな」
「いや、そもそも……はあ。当事者が言うならな」
自分の店が壊されたと言うのに、特段便利屋に怒るわけでもなく責めるな、とは。
お人よしなのか、それとも生徒の苦労を知ってるから仕方ないと思えるのか……
どちらにせよ、私が当事者なら無理だ。
更に付け加えるなら、心が強い。
愛着のある店を壊されて、絶望しないのだから。
もしかしたら、彼もまた多くの事を経験しその境地に至ったのかもしれないな。
素早くシェルターに向かう柴大将を見て、私はそう思ったのだ。
さて、この騒動を引き起こした奴らだが……
「ゴホッ、ゴホッ……うわあ、建物がなくなっちゃったよ?」
「ケホッ……社長……」
「ゴホン、ゴホン……う、うああ……せ、先生と大将は!?」
無事か。
まあ、自分の仕掛けた爆弾で自らの命を散らすなどプロとしてあってはならない事だ。
それに一応、私たちの心配をしたことは褒めてやる。
「……アルちゃん……流石にあの話聞いてこれはちょっと……」
「ち、違うわよ!!装置落としたら、勝手に……そんな事より、二人を探さないと……」
「そういうことだったのね!!」
私がどうにか瓦礫を穏便にどかせられないかと苦労していた時に、セリカの声が響き渡る。
これは、思ったよりもまずい状況だな。
「あんたたち……!!よくもこんなひどいことを!!」
「……」
『大将の無事を確認できました!幸い大きな怪我はなく、ご自分で近くのシェルターに向かわれたようです!』
「……ってことは、大暴れしてもいいってことね?」
はあ、厭だ厭だ。
どうしてこうなるんだ。
装置を落として、起爆スイッチが入るなどそんなこと……
あいつが時折真似した、どこぞの事件屋が起こすくらいだろう。
確かに、噂で聞いた事件屋と似ているなと思いもしたが。
「あんたたち、許さない。ぜーったいに許さないから……!!」
「!?」
「アルちゃん、まずいよー。エメちゃんからの依頼を受けた以上攻撃できないって」
仕方ないか。
すまんな、大将。
お前の思い出を吹き飛ばした共犯者になるさ。
パチンッ!
両者に響き渡る音と共に、邪魔な瓦礫を吹き飛ばす。
「な、なに!?また、爆発?」
「まさか、便利屋の仲間?」
「誰が、便利屋68の、仲間だ」
確かに仕事を依頼はしたが、仲間ではない。
むしろ私が爆破するなら、もっと派手にそして確実に消すさ。
「せ、先生!?」
「エメちゃん!無事だったんだ!」
「無事なものか!!見てみろ、辺り一面瓦礫の山じゃないか!!」
そう言いながら私は対策委員会と便利屋68の間に立つ。
これでお互い攻撃し合う事はないはずだ。
まあ、便利屋側は攻撃するつもりは無かったようだが。
「なんで、先生かそいつらといるのよ!!」
「先生の用事というのは……」
「ああ。お前たちの為に『敵』を減らしに来ただけだ」
「じゃあ、何で爆発したわけ!」
「よく見ろ、あいつらが反撃しようとしてるように見えるか?」
私は少し大げさに便利屋68の面々を指す。
全員それなりに申し訳なさそうな表情をしている。
事故でこうなったとは流石に言えないようだが、こればかりは伝えておかないとな。
「爆弾は確かにこいつらが仕掛けた。私と話すうえで対峙する事になった時の『保険』としてな。だが、起爆はしてない。装置の受け渡し時に起きた事故だ」
「じ、事故ですって!?」
「残念だが、事実だ。そもそも、本気で起爆しようとするのを私が止めないと思うのか?」
流石にそこは信じてもらえたようだ。
セリカもそれは理解してくれた、無論他の面々も。
もちろん、起きたことを無かった事にはできないが……
『時魔法』や『創造魔法』でも使えば元通りに出来るだろうが、そこまでしては便利屋も事故とは言え反省しないだろう。
それに『時魔法』はあまり得意な類ではない。
『では、先生はどういう話をしたのですか?』
「今の仕事から手を引けと、そう伝えて合意した。二言はないだろう、アル?」
「え、ええ!!自分で言った事には、責任を持つわよ!!」
「って事は、便利屋は敵じゃないってこと?」
「そういうことだ」
今この場で、『今日からは仲間だ』とは流石の私も言えない。
とりあえずは便利屋が計画してワザと起こしたのではない事だけ伝われば上々だろう。
「どうして先生はそれを事前に言わなかったの?」
「……こうなると思ってなかったからな」
誰が思うだろうか。
装置の受け渡しミスで地面に落としてそれが起爆スイッチを押す結果になると。
こればっかりは私の『責任』にしたくない……まあ、装置を回収しなかった私の『責任』ではあるのだが。
『……事情は分かりました。けど、流石にこのままと言うのも……』
「こいつらには別の方法で償いはさせる。だからどうか今は、こらえてくれないか」
「……大将は先生が守ってくれたの?」
「……そうだ」
「なんて言ってた?」
「あいつらをあまり責めるなと。それは私に対してだろうが……」
するとセリカは深く息を吸い、そして目を閉じた。
葛藤があるのだろうな。当然だ、私が何と言おうと報復する権利はあるだろう。
だが、それをしても結局は争いの連鎖になるだけだというのは理解しているのだろう。
「……なら、大将にはきちんと謝ってよね」
「ああ。必ずそうさせる」
「じゃあ……私は先生を信じるよ」
そういってセリカは真っ直ぐ私を見る。
便利屋ではなく、先生を信じる
「セリカがそう言うなら、私も」
「そうですね!一番つらいのはセリカちゃんですから」
『セリカちゃんがこの場を先生に任せると言うなら、私もそれに従います。随分と確立の低い事故だと思いますけど……』
対策委員会の全員が、セリカの意思を尊重し私を信じると言うのだ。
本当におまえたちは……何も言わず勝手に行動した私を咎めるでもなく。
いい生徒だが、そこまで純粋な目で私を見ないで欲しいと思う。
結局私は私の手で問題を解決すると言うのを諦めていないのだから。
「……対策委員会の想いを無駄にするなよ」
「ええ。助かったわ、先生」
「エメちゃん、ありがとね」
「……きちんと大将には謝るよ」
「わ、私のせいで……」
何とか満点で無いにせよこの場を調停することは出来たか。
公平ではない、自分自身の『計劃』の為という裏が多分に含まれた調停ではあったが。
本来の調停とは公平に判じるものだ、エリディブスがそうだったようにな。
だが、私にはそれが出来るかと言われたらもうこの舞台にあがっている以上は無理だった。
しかし、これでいいのだろう。
騙しているような気がしてならないが、それでもセリカが抑えてくれたから丸く収まったのだ。
私に出来る事はセリカへ感謝することと、『計劃』を成就させることだけだ。
「今日の所は帰れ。こっちもこの後大変だからな」
「……わかったわ。『この後』については――」
「追って連絡する」
私の言葉を聞いて便利屋68全員が帰路につく。正直、これ以上いても出来る事はない。
対策委員会にも落ち着く時間が必要だし、『償い』を受け入れられる準備も必要だ。
それに今日は面倒ごとは――
「…?」
微かに風切音が聞こえる。
そしてそれは徐々に大きくなっていき――
攻撃か。
「全員、伏せろ!」
その言葉に全員反応し、とっさの判断ではあったが何とか防壁を展開し降り注ぐソレ――擲弾を防ぐ。
突き刺さる矢の如く防壁を突き破らんとするがそう簡単に破らせるわけにもいかん。
それにしても、私の願いは虚しく消えたわけだ。
「ああ、厭だ厭だ。どうしてこうも面倒事ばかりなんだ……」
爆破するにしても、どうするか悩みました。
けど、エメトセルク先生がいる限り自発的に爆破させるわけにもいかないし……
風紀委員会にさせたらそれはそれで一人が悪者になるし……
結果、ヒルディブランド的な方法になってしまいました。
今後の展開について(絆エピソードや番外編は書きます。アビドス編後の流れについて聞きたいです)花のパヴァーヌ(花)、エデン条約(エ)、カルバノグの兎(兎)
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原作通り(パ1→エ→パ2→兎→パ2)
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変則(エ→パ1,2→兎)
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その他(コメントでお願いします)