エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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ホシノを書こうと思ったんですが、アビドス編が殆どホシノ絆エピソードじゃないかと友人に言われたので、ヒナを書きました。


推奨BGM:暁月のフィナーレより『知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~』
https://www.youtube.com/watch?v=QyVh5GFQpuA


ヒナ絆ストーリー:上手な時間の過ごし方

00Ⅰ

 

『先生。空き時間のやり過ごし方を教えてほしい』

 

アビドス新生に向けて本格的に動き出し少したったある日のこと、私はヒナから呼び出しを受けた。

普段は風紀委員会からの依頼であればアコから酷く事務的なモモトークやメールで届く。

そして、それに対して私も酷く事務的な内容で返すから実際に会った時に文句を言われる。

 

やれ、私はしっかり文を考えたのにあんな事務的な返信をすぐに返してくるなんてと。それに小言で返せば更にアコがヒートアップしチナツやイオリが宥めて仕事の話に入ると言う流れがある種のルーティーン化していた。

 

しかし、今日は珍しくヒナ直々にモモトークからの呼び出し。もちろん文面は事務的な書き方だったがそれを入力するのですらかなり迷っている姿が目に浮かんだ。

 

「まったく……モモトークくらい軽いノリで入力すればいいだろうに」

 

例を出すならアビドス対策委員会の部活グループなどがいい例だ。ふと思ったことをメモ代わりに使ったり、気ままに写真を投稿したり、スタンプ?なるもので返信を済ませていたりと中々に緩い。

個人でメッセージを送るときでもそうだ。元々が敬語のノノミやアヤネですらスタンプを使って返信してくることもある。

 

逆に言えばモモトークでも事務的なのはアコとヒナくらい。

いや、アコは初期に比べると最近は砕けてきた。事務的と言っても、返信を返さなければ怒った文を送って来たりたまに愚痴が書き込まれたりとそれなりに自由な使い方をしている方だ。

 

確かに歳上、それも教師に対してと考える気持ちもわからなくもないが別にそんな事で年功序列についてくどくど説教したりはしない。

私はむしろ、自由にのびのびとやればいいと考えている方だ。

まあ、まず間違いなくアゼムのせいなんだが……

 

にしても、時間のやり過ごし方か。

曰く突然予定がキャンセルになって3時間空いたから仕事をしようとしたがアコたちに止められて休憩するように言われてしまった、と。

寝て過ごそうかと思ったが、ふと私なら空き時間のやり過ごし方を知っているかもと相談したそうだ。

 

『なら、ショッピングモールにでも行くか』

 

00Ⅱ

 

「……えっと。こ、こんにちは……?」

「こうして仕事抜きに会うのは新鮮だな」

「たしかに」

 

実際ヒナと会うのは基本的に仕事関係が多く個人の頼み事も仕事ばかり。

一に仕事、二に仕事、三に仕事……。

そんな中で3時間も仕事以外で共に何かをするのは新鮮だった。

 

「でも、どうしてショッピング?」

「まあ、付いてこい。そしたら、わかるさ」

 

ヒナを伴って入ったショッピングモールはゲヘナ郊外かつ小規模のため、人は少なく快適な空間となっていた。

人によっては人混みが疲れることもあり、特にこの後仕事が控えているヒナにそういった場所に連れ出すのはどうかと思い、あえてこんな場所を選んではみたが……

正解だったようだ。

 

「……それで、なにするの?」

「まずは、そこのアクセサリーショップでも見てみるか」

 

そう言って入ったアクセサリーショップは恐らく女の子が好きそうなキャラクター物が多く揃えられている。

私にはよくわからないものではある。

アクセサリーは着けても、派手ではないものだったからな。

 

「変な動物のデザインがたくさん……」

「何か気に入った動物はあるか?」

「……いや、特に気に入ったものとかは……。そもそも私、こういうのはそんなに好きじゃない」

 

なるほど。

流行りと言っても、万人が好きなわけじゃない。可愛い系のものが好きではない子もいるだろう。

私だって、可愛いと言われたものを本当にそうか、とよく思ったものだ。

 

「可愛いって言ってる生徒がいるのは知ってるけど、私にはよくわからない。この子たちの名前も知らないし……」

「私も知らん」

「……じゃあ、どうして……」

 

モモフレンズならわかったんだがな。

いやむしろ、無くてよかった。

ヒフミへの恩返しで散々ペロロ人形を探し回ったんだ。もうしばらくは見たくない。

 

「まあ、流行は押さえておくか……くらいの気分だ」

「ふーん……じゃあ別のところに……」

 

次に入ったのはゲームセンター。

そして、悲しい事にデカデカとペロロがあり、私は心底うんざりした。

どうして、こうお前はいつもいつも見たくないと思ったら出て来るんだ。

 

「ゲームセンターは来たりするのか?」

「ううん、あんまり来たこともない。興味も無かったし。先生は?」

「来たのは初めてで、何ならやろうと思った事も今までになかった」

「それはなんで?」

「特に理由はない。やり方も知らんし、一から一人で始めるものでもないだろうからな」

 

ゴールドソーサーにあるのとはまた違う。

そもそもこういったゲームを見たのはキヴォトスが初めてだ。

未知の分野で触れてみようと思わなくもないが、調べてみたが初心者向けにはかなり難しいという結論に勝手に至った。

もし、ヒナが知っているなら教えて貰おうと思ったがそれは叶わないな。

 

「何かやるか?」

「いい。別のところに行こう」

 

続いてはアパレルショップ、平たく言えば服屋だ。

残念ながら私向けではないのは見てわかる。

 

「これ、ストリートファッション系って言うんだっけ……。週末とかに、こういう派手な服を着る生徒たちが多いのは知ってる……」

「何か気に入ったものとか、欲しいものはあるか?」

「……別に。いらないものをわざわざ買う必要もないし。制服があるんだから、私服なんてそんなに必要ない」

 

耳の痛い話だ。

私も基本的にスーツばかりで、寝るときの服以外は殆どスーツ。

上から連邦生徒会のコートを羽織るか、必要に駆られればアシエンの黒法衣を身に纏うくらい。

古代人の時はあのローブ、皇帝の時も皇帝の服があった。

むしろ今の方が悩むくらいだ。

主にネクタイの色で。

 

あいつの様にミラプリだとかでおしゃれの為に何百、何千万と使ったりはしない。

むしろ、あいつがおかしいだろう。ジョブに合わせて服を用意し、普段着も定期的に変える。

そのくせ、特定のジョブの服は変えない。暗黒騎士なんてアダマンディフェンダー装備のミラプリを使い続けている。

まるでそれは、あいつの誇りのようだったが。

 

「買わなくてもいいから、好みの系統などはないのか?」

「えっと……うーん……」

 

悩んではいるが、駄目そうだな。

服にはそこに住む者たちの風俗が見られるというがキヴォトスではあまり大きな差が生じない。

強いて言うなら制服くらいで、それ以外は基本的にみな好みの恰好をして違う地域の人とも被ることだってある。

 

「……ごめん」

「気にすることはない。むしろ、そうやって真剣に悩んでくれて嬉しいよ」

 

興味がない中でも何かを探そうとしたお前の努力は、嬉しいものだ。

アクセサリー、ゲームセンター、アパレルの3つはヒナに響かなかっただろうが、それをぶっきらぼうに返すわけでもなくそれなりに考えて返答しているのは見てよくわかる。

それだけ、真面目なんだ。

だから、時間のやり過ごし方などで悩む。

 

さてそろそろ、教えてもいいだろう。

 

「休憩するか」

「……ええ」

 

そうして、近くのファミレスに入りとお互いにブラックコーヒーを頼む。

にしても、ブラックか。

……本当に大人びてるな。

 

コーヒーが届いても一向に口を付けず、何やら落ち着かない様子のヒナが気になり私の方から切り込む。

 

「どうした?」

「い、いや……その、先生が期待していたのは、こういうのじゃなかったんじゃないかなって……」

「ほう」

「私が……なんか、ダメにしちゃってるというか……」

 

いやむしろこういうものだろうと思っていたし、それが分かっていてこうして休憩でファミレスに入ったのだが……

ヒナはそう思わなかったらしい。

 

「ごめん、つまらない人間で……自覚はしているんだけど」

「つまらない人間、もしそうならお前に付いてくる人がいるか?」

「……え?」

「そういうお前が好きだからこそ、アコたちはお前を慕って付いてくるんだと思うぞ」

 

本当につまらない奴には誰もついてこないだろう。

だってそんな奴といても苦痛なだけだ。共に苦難を分かち合いたいなんて思わないだろうし、アコがあそこまでヒナのために仕事をすることもないだろう。

そういった不器用な部分も含めてのヒナだ。

 

「ヒナ」

「何?」

「どうだった。このウィンドショッピングは」

 

そもそも私は何かを買うつもりで来たわけでも、ヒナが買うかもしれないと思ったわけでもない。

ただ、ぶらぶらと何かあるかを喋りながらヒナという少女を更に知りたかっただけだ。

言うなら、私のしたい事にヒナを巻き込んだ形になるわけだが……

そこにこそ、答えがあると思う。

 

「多分、先生は私のためにこういう場所を選んだんじゃないかって……けど、私は……」

「退屈だったか?」

「退屈ってわけじゃない……ただ……他の子と来た方が先生は楽しいんじゃないか……とは」

「私はお前を知りたかった。仕事を通した空崎ヒナではなく、一人の人としてのお前をな」

「……私を?」

 

随分と意外そうな顔をされたが、事実だ。

仕事だけの関係ではないはずだ。先生と生徒であり、お互いに人だ。

お互いを知らずに接することは、よい付き合いではない。

 

「面倒くさいと言いながらも、仕事には真摯に向き合い決して投げ出さない。そして、連れてこられた場所が好みの場所ではなくても不平不満を言うわけでもなく、むしろ自分が悪いのだと考えられる。どこまでも真面目で、気遣いが出来る。今日の小さな旅でお前は『善き人』だと改めて思えた。それだけで私は満足だ」

「……『善き人』?」

「ああ。人としていい奴ってことだ」

 

実際、ホシノを助け出すときもいくつかの条件を付けられたもののヒナは初めから私に対して協力的だった。

面倒だと断っても良かったのにも関わらず、自分たちも迷惑をかけたからと。

 

「ふふっ、何を言うのかと思ったら。『善き人』なのは先生でしょう。アビドスのために一人で計画を立ててカイザーの理事の企みを潰しただけじゃない。小鳥遊ホシノの為に膝をついて頭を下げた。それに今でもアビドス復興に尽力してる」

「それが、私だからなあ」

「私はまだ……背も小さくて、文句ばっかりで、可愛げもない子供」

 

文句ばっかりか。

私だって散々文句を言ったんだが、それを知らないヒナは高く評価するのだろうか。

いや、アコの前で文句を言っているのを聞いているはずなのだが……

つまりは、結果なのだろう。

文句を言いつつも、やり遂げるという姿勢を評価していると。

なら、お前も同じだ。

 

「私も同じだぞ?背が高くて、文句ばっかりで、可愛げもない大人。そこに、目つきが悪いも加わる」

「目つきが悪いのは私も」

「なら、同じじゃないか。それなら、お互い『善き人』だってことにしておこう」

 

生徒に『善き人』と言われて、否定することはなくなった。

むしろ、そう言ってもらえてうれしいとすら感じるようになったな。

 

「先生はどうして、私にそうやって優しく接するの?もちろん、先生として平等に生徒へ接しているとは思うけどアコやイオリへの態度と私への態度が違うから……」

「どこかの誰かと似ているからなあ」

「どこかの誰か?」

「厭だ、面倒だ、断る……そんな事を言いながらなんだかんだ悪友二人に付き合ってた奴だ」

 

私のことだ。

仕事を投げだせない、と言う部分も似ている。

 

そんな事を言うのは私だと、ヒナも薄々は察したんだろう。

続きを促す。

 

「その『誰か』は、どうしてその二人に付き合ったの?」

「二人と過ごす時間が何よりもかけがえのないものだったから……まあ、それは後で気付いたことなんだがな。当時は漠然と嫌いじゃない時間と思っていた」

「じゃあ、その人の時間のやり過ごし方はそれだったの?」

 

本題だ。

時間のやり過ごし方について。

 

「ヒナ、お前は時間の過ごし方とやり過ごし方の違いがわかるか?」

「……え」

「時間の過ごし方は、その時間で何を経験するか。やり過ごし方は、どうやってその時間を飛ばすかだと私は思っている」

「どうやって時間を飛ばすか……」

「そして、最も快適な時間のやり過ごし方は寝ることだ。なんせ、寝て目を覚ませば不思議と時間は過ぎていくからな」

 

ソル時代を除けばアシエンとしての空いた時間は寝ることに費やしていた。

それは撒いた種が芽吹くまで時間をやり過ごすためでもあり、己の心を護るためでもあった。

寝て目が覚めれば、寝る前まで生きていた人が死に新しい世代になっていたことなどよくあることだった。

 

「だが、そうやってやり過ごした時間は戻ってこない。今日の3時間だって、もしお前が寝ていればウィンドショッピングすることも、コーヒーを飲みながら語ることも無かった。私に言い換えても同じだ。寝ていたら、お前の事を昨日よりも知れていない。何かを見て、話して、聞いて、感じて、考える。たかが3時間、しかしこうした小さな時間が積み重なって、お前を作っていく」

 

極論、ずっと寝てても人生は過ぎていき死ぬ。

ならば、少しでもその人生を彩っていこうとするべきだ。

 

「例え今はお前が自分をつまらない人間と思っていても、明日は、来年は、10年後は、また違った答えを出すかもしれない。そして、お前が自分自身に悩んでもお前を好きでいてくれる人がいるなら、お前は間違っちゃいない」

「……」

「生きることは、死にゆくこと。せいぜい惜しんで進むといい。それでどうしても悩んで、周りからの評価も信じられなくなったのなら、私がお前を支えてやる」

 

内に秘めたる想いを伝えられずに苦労する者もいるだろう。

周りの人を大切に思っていても、上手に言えない。だから、自分は嫌われているだとか見捨てられるかもしれないだとか。

そういう時は私がいる。

先生として、一人の人として、先に生きた者として、助言して支えて自らで勝ち得たその結末を判じる。

 

「……不思議ね。先生が言うとなんでも正しく聞こえる」

「まあ、それだけ見てきたということだ。私自身があまり言葉で伝えるのが得意ではなかったしな」

「話すの得意そうなのに」

「自分の気持ちに関しては下手だった。お前みたいに素直に認めることもしなかった。だがそんな私を友達と言ってくれた奴がいたんだから、大丈夫だ」

 

ちらりと、壁にかかっている時計を見る。

そろそろ話を纏めなければヒナを送っていく時間がなくなるか。

 

「それでもあえて言うなら……たまには素直にお前を信じてくれている奴に感謝してみたり、自分の仕事を託してみろ。あいつらはお前の重荷を共に背負ってやりたいって思ってるはずだ」

「アコたちが?」

「そうでなきゃ、お前の為に毎度毎度モモトークの文面を考えないだろう」

 

私の手を借りてでも、ヒナの負担を減らしたい。

だから、しっかりとした内容の文章を作る。結果それが事務的な文面になって私に届く。

それを私がまた事務的に返して、会った時に文句を言い合う。そんな光景が続いていけば、それが風紀委員会の日常になって少しでもお前が想っていることを言いやすい空気になるはずだ。

 

「ありがとう、先生」

「何も感謝される事をしてないぞ。ただ、私の長い独り言にお前が付き合っただけだ」

 

そんな私の物言いに、ヒナは笑った。

 

「ふふっ、素直じゃない」

「……こうならないようにな」

「今日は先生の事を知れて、じっくり話せた。それに……真剣に話す先生の顔が好きだから……良い時間の過ごし方が出来た」

「なら、そろそろ行くか」

 

そう言って私と殆ど同じタイミングで立ち上がる。

 

「先生も帰る?」

 

言いたい事は言えた。

本来なら帰るべきだが……

まだ、やることが残ってる。

 

「その前に、可愛げのある生徒を送っていかないとな」




ヒナのエピソードの中でメモロピやお日様の香りではなく、ショッピングにしたのはその方がエメトセルクっぽいかなと。

推奨BGMについて。
元々このBGMが好きだからなのもありますが、ファミレスで話すシーンと思うとマッチしてるかなと。

ヒナに優しい理由について。
エメトセルクの性格と、ヒナの性格は似ているなと思う部分があります。
また、そもそも根は優しい人なんで殆どの生徒に優しいと思います。
それでも、ヒナには先人としてのアドバイスが多くなるかなと。

絆エピソードの選び方。
基本的にその生徒とエメトセルクを考えた場合にしてます。オリジナル絆エピソードになる子もいれば原作の絆エピソードそのままだったり、若干改変したりと。
ただ特定のエピソードが印象に残っている生徒はどうするか難しいですね。例えばアコだとあのメモロピが最初に思い浮かぶと思いますが、それをエメトセルクがしないよなあと。じゃあ完全オリジナルにするかと言われるとアコと言えばアレですからね。

次の更新について。
とりあえず、パヴァーヌ1章の1話かなと。アビドス編に出た生徒全員をもちろん書きますが、全員揃ってからだと本編の更新がかなり先になっちゃうので。
潜水艦の様なながーい気持ちでお待ちください。

番外編について(基本的に1話完結予定です。私の休憩用と言う部分もあります)

  • 古代人関係の先生
  • その他ヒカセン関係の先生
  • エメちゃんを書け!
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