エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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意外と共通点がありそうな二人…?


ユウカ絆ストーリー:記念すべき当番第一号

00Ⅰ

 

キヴォトスに来て早数日が経とうとしていた。

残念ながら、私エメトセルクは初日の夜以降は散策の時間をとる事が出来ずした事と言えば事務作業と食事に入浴、後はキヴォトスの演劇…映画と呼ばれるものをサブスクリプションとやらの機能で鑑賞していたくらいだ。

映画というのは画期的ではある。

わざわざ劇場に足を運んでみる必要がなく、好きなタイミングで見る事が出来るのだから。

しかし、やはり私は出来るなら演劇を見たいものだ。

だが、今はそんな時間はなく溜まりに溜まっていた書類を片っ端から片付けてどうしてこんなに溜まっていたのかと文句を言いつつ映画を見るしかできないのだ。

 

「あぁ厭だ厭だ……この私の仕事が、書類との睨めっことは」

 

別に他の仕事だってある。

届いた苦情への対応で他所に赴けばいいのだが、そのために書類の山を放置していけば帰ってきたらもう一山追加される可能性だってあるんだぞ? 

そうすればリンから小言が飛んでくるに決まっている。

 

だから、今日までは我慢して書類と向き合い続けてきた。

『極書類討滅戦」と言った所かもしれない。

そのかいあってか、あれほど私を悩ませた書類はもう存在しない。

長かった、本当に長かったのだ。

 

『当番』を任命するべきだったが、彼女たちのせいで増えたわけではない仕事を頼むのは気が引けた。

それに始めた私の意地もあったのだ……随分と馬鹿な片意地だったわけだが。

 

そんな私は今、モモトークと呼ばれるチャット? とやらを使って『当番第一号予定者』と連絡を取っている。

 

『こんにちは、先生。ユウカです。この後、シャーレに伺います』

『ああ。焦らずに来い(*'▽')』

『なんです、その顔文字……』

 

間違えたか? 

若者の流行だと出てきたのだが……どうも違ったらしい。

あの記事を書いた奴を見つけたら、しっかり話をしないとな? 

私の様な善良で、無害で、心優しいお兄さんを騙したのだから。

 

早瀬ユウカ。

私と共に初日の激闘を超えた生徒であり、誰よりも先に入部届と提出してきた生徒でもある。

他の知らない生徒なら面白半分という可能性もないわけではないが、ユウカの人となりをある程度見たからこそ彼女はそういうタイプ出ない事くらいはわかる。

だからこそ、私は彼女を初めての当番にしようと決めたのだ。

その性格と誰よりも先に提出したという意気込みを買って。

 

もちろん、心変わりの可能性もあるし今は忙しいから明日からくるのは無理だと言われるかもしれない。

だからユウカを呼び出し面接とはいかないにせよ少し話をしようと思ったのだ。

その為に具体的な仕事内容や仕事に向き合う上での条件なども纏めておいた。

後は優秀な彼女が首を縦にふってくれさえすれば、晴れてエメトセルク先生の当番第一号になるという訳だ。

 

もう一つ下心がある。

それはキヴォトスの常識について、教えてもらうためだ。

今回の顔文字でわかった事だが、調べて出てくる情報も全てが正しいわけではない。インターネット初心者の私が見事に引っかかったようにな。

その点、機械操作に詳しいユウカがいれば私が嘘の常識に騙されることもなく完璧な対応が出来るようになる。

 

問題は報酬だが……

それはある程度、望む物を与えてやればいいだろう。

金は有限だが、それ以外の物ならある程度はどうにかできるからな。

 

クラフトチェンバーとやらの使い方も少しは分かってきたし、常に創造魔法で補う必要もないわけだ。

ユウカの欲しい物がクラフトチェンバーで作れるならそれを与えればいいし、無理なら創造魔法でどうにかしよう。

 

よし。

私のキヴォトス人生は何とか安定させられそうだ。

 

そう思い、アーモロートの街並みが模られたグラスの水を飲む。

 

00Ⅱ

 

「失礼します、先生」

「来たか。……まぁ、とりあえず座れ」

「はい」

 

ユウカからは少しだけ緊張した雰囲気を感じる。

特に圧迫感を出したわけでも、怒って対応したわけではない。

私に対しての何かではなく、呼び出された事への緊張だとありがたいな。

 

座ったユウカに先ほど私が使っていたのと同じ模様のグラスに水を入れて差し出す。

結局悩んだ末グラスにアーモロートの街並みを再現させる事にした。あまり大きな物を置いても違和感を感じさせるしほんの少しそこにある思い出と言うのがやはり一番いいだろうからな。

『未来』へ進むためにも。

 

「ありがとうございます!」

 

元気よく返事をしたユウカはそれなりの量の水を飲んだ。

やはり緊張しているのか。本当に圧迫面接をしたいわけではないのだがな……

 

「このグラスの街並み、凄く綺麗ですね。これどこですか?」

 

緊張をほぐすためか、はたまた世辞の類なのかもしれないがそれでも私はその言葉が嬉しかった。私が最も好きな街、そして大切な場所。

それを綺麗だと言ってもらえたのだ、誰だって嬉しいだろう? 

 

「それは、私の故郷だ」

「先生の故郷……どんな場所なんです?」

「……」

「あ、すいません! どうしても気になって……」

「違う、怒ってるんじゃない。お前が街並みを美しいと言った事が嬉しかっただけだ」

 

あとは単純に答えに詰まったのもある。

……どんな場所か。

大切な思い出の地であり、我が執念の始まりの地でもあり、そして終わりの地でもある。

複雑なんだ。

だがそう、綺麗だと言ってくれたのだから話すべきだ。

 

「……アーモロート」

「アーモロート?」

「アーモロートの街並みは壮麗で美しく、高い塔のさらに上、遥かな空から日差しと風が注いでいた……」

「……先生にとっての思い出の場所なんですね。知れて嬉しいです!」

 

やはり、アーモロートについて話すとどうしても殺しきれない望郷の念が出てしまうな。例え託した後でもそれは変わらない、いや変えられない。

そんな、私の雰囲気を察してかユウカは深くは追求せずそれでも私にとって如何に大切な場所なのかは理解し、嬉しいと言った。

 

全く、子供に気を使わせている様ではダメだな。

 

「…お前を選んで良かったのかもしれないな」

「え?」

「ユウカ、お前を最初の当番に選んで良かったと言ったんだ」

 

わざわざグラスの模様までに気を使うだろうか。もし気が付いても聞いたりはしない奴が多いだろうに質問し、私の答え方で複雑な思いがある事を察しつつも、きちんと褒める事が出来る……相手の気持ちを慮れる本当に良くできた奴だ。

私の目はまだ腐ってはいない、最適な人を選んだと自信を持って言えそうだ。

 

「じゃあ、私はシャーレの当番になれるんですか!? モモトークの返信は来ても、入部届の返答が来なくてダメだったのかって思ってました…」

「…着任前から溜められていた事務作業でそれどころじゃ無かったんだ。昨日の夕方初めて入部届に目を通し、リンから最初に出したのはお前だと聞いた。だから、お前を呼び出したと言うわけだ」

「本っ当に、心配だったんですよ!」

「悪かった。だが、お前を正式に任命にする前にする事がある」

 

ユウカの心配については最もだ。こればかりは私の意地が招いた結果だから謝るしかない。

だがだからと言ってすぐに任命は出来ない。

待たせたからこそ、確認しなければならないのだ。

 

「するべき事、ですか?」

「ああ。まず、当番の仕事については?」

「先生の補佐と聞いてます」

「具体的な内容については?」

「…正直、深くまでは」

「なら何故応募したんだ…」

 

募集要項に詳細を載せないなど詐欺同然じゃないか。『先生の補佐』だけでは生徒の数だけ解釈があるだろう。

お喋りの相手になる事、掃除をする事なども広義の意味では補佐になってしまいかねない。

私は深くため息をついた。

 

やはり連邦生徒会の仕事は何処かに必ず漏れがある。しかも、それを漏らしたらダメだろうと言うものが抜けがちだ。

サンクトゥムタワー然り、今回の件然り。

結果、私の仕事が増えるじゃないか……

 

「それは、外から来た先生を支える生徒が一人くらい居ないと大変かなっと思ったからです!」

「なんて立派な動機だ……常識の通用しない世界では無かったと言う事が一番大きな収穫だ……話を本筋に戻すが、こう言う事があるからしっかりと内容を伝えておくべきだと考えたんだ」

「なるほど……確かに、仕事がイメージと違う! ってなったらお互い大変ですからね」

「そう言う事だ。さて、仕事の内容だが基本的に事務作業の補助になる。それ以外だと、私が仕事で外に行く場合は可能な書類の対応もしくは自分の学校なら現地行動の補助にしようと考えている。この点について不可能な部分や異議はあるか?」

「大丈夫です!」

「よし、なら仕事内容は基本的にこれを主軸考えてくれ。お前の方から質問は?」

「部活動……私の場合はセミナーですがそちらが忙しい場合はどうすればいいですか?」

「当番が増えてくれば柔軟に対応できる様になるが、現状だとそう言う場合は部活動を優先しろ。お前たちの青春は今、それを無駄にするな」

 

当時はくだらない事だと思ってた事でも時が過ぎればそれがかけがえのない思い出になる事は多い。そしてそれらの思い出が己の行動の指針になる事も。

かく言う私がそうだったからな……

 

「でもそれだと、先生が大変に……」

「来てからの数日間、一人で書類の山を片付けたんだ何が来ても私は対処できる。いいか、ユウカ。これは経験者からの忠告だ、『今』を大切にしろ」

「……わかりました。仕事について質問はもう無いです」

 

すんなりといって何よりだ。今回の話の内容が募集要項の改善へと繋がっていく。無駄のない質問で素晴らしい着目点だった。

強いて言えば、私の事を心配しすぎている事くらいか? 

だが、それは悪い事ではない。

 

「次は報酬についてだが……何がいい?」

「何でもいいんですか?」

「常識の範囲内ならな。お前についてその点は心配してないが…」

「なら、先生の事をもっと知りたいです!」

 

私を知りたい…か。

 

『互いを知らないまま殴り合い続けることほど、野蛮で不毛なこともあるまい』

『その果てに、案外……わかりあって手を取り合う道も、あるかもしれないぞ?』

『お前が聞く耳さえ持つことができたなら、私はいつでも、真実の淵から語りかける』

 

私はユウカや他の生徒たちの事を知って、この世界を判じようと考えているのに、ユウカたちは私を知る事は出来ないと言うのは確かに不公平だ。彼女たちにだって私が自分の『先生』として相応しいのかを判じる権利があるはずだ。

 

「お前が聞く耳を持っているなら、話せる事は話す。全てを教えてやる事は出来ないが、それでも嘘偽りなく答えるぞ」

「でしたら先生。先生はキヴォトスに来るまでは何をされてたんですか?」

 

いきなり確信を突く質問をしてきたな……

どれを答えたらいいんだ? 

 

『十四人委員会』、『アシエン・エメトセルク』、『皇帝』……

どれもこれも怪しい、何なら『皇帝』など信じられるはずもない。

もし私がユウカなら、大ほら吹きの頭がおかしい奴だと思うだろう。

 

そうだ! 

あるぞ、こういう時にピッタリの解決方法がな。

 

「政府のとある機関…その一員だった。だから、詳しい仕事の内容までは話すことができないんだ、すまないな」

 

どこかの誰かさんみたいに

『クポクポクポー』だとか『冒険者です』だとか、『(元)イシュガルド竜騎士団所属』とはぐらかすわけにもいけない。なんなら、最後に至っては無職だからな? 

 

そしてこれは事実でもあるんだ。

『十四人委員会』、『アシエン・エメトセルク』、『皇帝』それらすべてを包括して無理やり表す言葉としては問題ない。

 

「え……そんな方がキヴォトスに来ても大丈夫なんですか!? 今頃、皆さん困ってるんじゃ……」

「いや。少し()()()だがそれでも立派な『後輩』たちに託してきた後だ」

「先生、凄いじゃないですか! 政府の仕事をしながら、きちんと後輩を育成するなんて! 私の後輩、コユキって言うんですけどあの子もいつか立派になってくれるのかしら……」

「…きっと、私よりちゃんと育てられるさ」

 

後輩の育成については絶対にお前の方が頑張っているはずだぞ、ユウカ。

私は育成なんてしちゃいない。ただ見て、そして裁定し、後を託しただけなんだから。

にしても、過去の質問と言うのは本当に、こちらの心に刺さるものだな……

だが、きっとユウカ以外からも聞かれることになるだろうから、これからはもっとうまく答えるようにしないとな。

 

私の回答がしっかりとしていたのが、満足したのか。

少し崩れかけていた姿勢を正してユウカが謝罪した。

 

「すっごく失礼なんですけど、初めは胡散臭い先生だなって思ってました……すいません」

「……それは顔か?」

「顔じゃなくて! 雰囲気というか、黒のスーツに黄色のネクタイっていう何とも言えない恰好のせいかもしれません。後は、動作とか喋り方とかがすっごく芝居っぽかったし……」

「……」

 

顔じゃない事に一安心しつつも、動作と喋り方は仕方ないんだ。

少し大げさで芝居がかってないと理解しない……いや、大げさにしてもあいつは気にしなかったが……

兎に角、悪友二人のせいなんだ! 

 

「でも口では『厭だ』とか言いながらもしっかりと指揮してくれましたし、弾丸の経費対応もしてくれました。それに、今の質問も真摯に向き合ってくれたから……もちろん、よく分からない顔文字を使ったりもしてましたけど、それはきっと私たちの事を調べてしてくれた事だって分かってます。だから、素直じゃないけど悪い人じゃない、面倒見がよくて責任感がある人なんだって思いました!」

 

少し照れくさそうに最後の方は駆け足ながらもユウカは私に対する評価を述べてくれた。

この『感情』は……そうか、私があの日以降に投げ捨てたもの……

『情』か。

子供を抱いたとき、決してないと思っていたのに漏れ出た時のように。

だが、これからはそれを殺す必要はないのか。

 

『キミは素直じゃないなー、エメトセルク』

『エメトセルクは固すぎるよ、たまには感情を出したらきっと楽しいよ』

 

昔、ヒュトロダエウスとアゼムにそんな事を何度も言われたな。

あの時はお前たちが言うのかと思ったものだが、すべてを終えた今なら少しくらいは素直になってもいいのかもしれない。それが、性格上難しい事だとしても言葉だけの感謝やうわべだけの感情ではなく、本心からの形として。

 

それを改めてたった16年程度しか生きていない少女によって再認識させられるとはな……

『不滅なる者』が『限られた時を生きる者』に……『先生』が『生徒』に教えられる。

もしかしたら、それこそが私がここで得るべきものなのかもしれないな。

 

「感謝……いや、ありがとうユウカ」

「え!? どちらかと言えば私が先生に感謝しないといけない側なんじゃ…」

「遠い昔に、悪友に言われた言葉を思い出させてくれた。私に足りないもの、そして今の私なら出来る事を」

 

どこか釈然としていないユウカだが、私の悪友について話すのはもう少し後になるだろうな。

なんせ、まだ私たちの関係は始まったばかり。

人の一生は短いようで長い、きっとどこかで話す時が来るだろう。

 

「なら、私は合格ですか?」

「ああ。お前は晴れて、エメトセルク先生『最初の当番』に任命だ」

「やった!! ……ゴホン、改めてこれからよろしくお願いします、エメトセルク先生!」

 

年相応の喜び方をした後に、また恥ずかしそうに咳払いをして普段のテンションに戻したユウカを見て、私は思ったのだ。

 

なんて、イイ笑顔なのかと。

 

「そういえば先生」

「なんだ?」

「あの時、フィンガースナップでどうやって戦車を倒したんですか?」

 

ああ、忘れていたな。

その質問に答えるとかなんとか。

だが、今日は既に多くの質問に答えた……だから。

 

「それはまた、今度な」

 

右手の人差し指を自らの口元にあててそう言った。




エメトセルクなりに、彼女たちを理解しようとしてたまに空回りするのもいいかなって。

事務作業については溜めてそうなイメージがわかないのでしっかり一人で片付けさせました。


エメトセルクらしさが失われないように頑張ります!

今後の展開について(絆エピソードや番外編は書きます。アビドス編後の流れについて聞きたいです)花のパヴァーヌ(花)、エデン条約(エ)、カルバノグの兎(兎)

  • 原作通り(パ1→エ→パ2→兎→パ2)
  • 変則(エ→パ1,2→兎)
  • その他(コメントでお願いします)
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