エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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これで中編には入れるかな。


1-5 資格

00Ⅰ

 

圧勝とはまさに今回の様な戦いを指すのだろう。

モモイ、ミドリの戦いっぷりについてもさることながら、やはり光の剣の威力とそれを運用できるアリスの力は目を見張るものがあった。

 

「やはり、用途はそっちか」

 

絶大な破壊力を持つはずの光の剣を軽々と持ち上げ的確に照準を向ける腕力、攻撃を受けても傷一つ付かない肌……。

人として生きるためにおおよそ必要のない機能、つまりは最初から戦闘向けの機械。

だが、それを作ったのは誰なのか。

 

現状で浮かび上がってくる候補は、カイザーコーポレーションとゲマトリアだが……。

カイザーコーポレーションがこれを作る技術があるのならば、そもそもカイザーPMCのオートマタがあれほど弱いはずがない。

次のゲマトリアの場合も同様。

探究が目的とした奴らが、これを作る理由を考えてもどれも私を納得させるものにはならない。

となれば、まだ見ぬ存在が作り出したと言う事だろう。

 

ならばその存在は恐らく現在のキヴォトスにおいての脅威となり得る。

もし、その存在がオメガレベルのものすら作り出せるとしたら?

私にとっても、面倒な存在だ。

 

「先生は彼女をどう見る?」

 

表情を変えずにアリスたちを見ている私にウタハが声をかけてくる。

彼女もまたアリスについて考えていたのだろう。

 

「どうって?」

「最低でも1トン以上と推定される握力、発射時にもブレない安定した体幹バランス、強度や出力はもちろん、肌全体に傷すら見当たらない綺麗な肉体……いや、機体」

 

流石は技術者と言ったところか。

具体的な数字を挙げた握力以外にも、体幹バランスや強度、出力まで見ていた。

こういう時の専門家の意見ほど、ありがたいものはない。

 

「最初から戦闘目的に作られた存在……とお前は結論を出したんだろう」

「ああ、先生もかい?」

「同じ考えだ。日常を送るために作られたにしては過剰な力なのは見てわかる。生憎、誰が作ったのかまでは分からないが」

 

今のところ敵意はなく、こちらを害する存在と言うわけでもない。

しかし、いつ本性を出すか分からない危険な存在だ、なんて言われてしまったらそれについては私も否定はできない。

そしてもし、アリスを破壊しようとする者が現れたとしてもそいつが生徒であり相応の理由がある場合、私にはそれをどうすることもできないだろう。

 

接すれば悪い奴ではないと分かるなんて言っても聞く耳など持たれないだろう。

 

「先生はどうする?」

 

最悪の場合も含めての問いという事はすぐにわかった。

ウタハとてそうなると言いたいわけではないだろう、だがそれについての私の考えを知りたいと思う事に何の問題もない。

むしろ、ミレニアム生である限りは当然の権利だろうな。

 

「……お前やモモイたち、更にはミレニアム生やキヴォトスに危害を加えない限りはあいつもまた一人の『生徒』として扱うつもりだ」

「もし彼女が自分の意思で危害を加えたら?」

「その時は私がこの手で対処するだけの事だ」

 

例えその時にモモイたちが反対したとしても、私がやらなければならない。

誰かにとっての友達で、誰かにとっての敵。

もし『生徒』がアリスを破壊しようとするならばそんな事はさせるべきではない。

モノを、機械を、兵器を壊しただけだと言ったとしても、親しかった者にそんな言い分は通じない。

よって、恨みの対象となるはずだ。

 

そんな重い咎を背負うべき『生徒』など居やしない。

憎まれ役は私の方が適任だからな。

 

「それをすれば先生はモモイたちに恨まれることになるよ?」

「それを含めて、『先生』だ。好かれるだけが、私の仕事じゃない」

 

『先生』とは先に生きた者であり、彼女らの道標となるべき者。

責任を共に背負い、時にぶつかりながらも常に共に在る存在。

 

彼女たちの長い人生の中で、私と言う存在はほんの一時、共に『旅』をするだけの存在かもしれない。

しかしそれでも、小さな星の輝きを護れるのならばそれでいいさ。

 

「さすが、カイザーコーポレーションに喧嘩を売って勝った男だね」

 

あの中継の映像自体を時間帯に見た生徒は少ないが、切り抜かれた映像や『1分まとめ』などの動画で見たと言う生徒は多い。

そのせいか私のことを熱血な先生だと勘違いしたり、一人でアビドスを救った英雄などと勘違いされることもある。

 

実態としてはほんの少しアクセントを加えただけにすぎない。

あの結末を勝ち得たのは対策委員会の想いがあったからだ。

 

「もし万が一、そんな事態になっても私は先生を信じよう。先生なら間違った結末になんてさせないと思えてしまうからね」

 

キヴォトスにおいて、私の過去についてはよく話題になるとか。

私の過去を知っている者たちは、口が固いから広まっていないのもあるが。

 

それくらい私と言う存在は不透明なのだ。

なのに私を信じてみようと言ってくれる生徒は多い。

私はそれを無警戒すぎると思いもすれど、やはりその信用には応えたいと思う。

 

もう一度、アリスを眺め『今』の微笑ましい光景を見る。

モモイたちといる限りそんな悲しい結末にはならないだろうと謎の期待を持ってしまう。

ウタハとて、そんな未来を望んでいるわけではない。

ただほんの少し、疑問に思っただけの事。

 

なら、私に任せておけ。

 

「せいぜい大船に乗った気でいるといい」

 

00Ⅱ

 

「さてっ、もう廃部の危機は免れたんだし、安心してゲーム三昧できるね!……って、ほんとは言いたいんだけど……」

 

アリスの武器を手に入れ部室へと戻り、座り込んだモモイが私を見ながら言う。

 

「先生はそれしたら、怒るよね?」

「怒ると言うよりは呆れて物も言えないだろうな」

 

事実として、廃部の危機は現在の時点で過ぎ去った。

だが、それはあくまで部員を満たせたからでありゲーム開発部の価値については依然として疑問符が残ったままなのである。

 

「でも、アリスとも遊びたいし……」

「別にゲームをするなって言ってるわけじゃない。本来の目的を忘れずにやれ、そして自分の言ったことに責任を持て、と言いたいんだ私は」

「やっぱり、厳しいよ~!」

「それこそどの部活だってその本懐を遂げようとしているだろ。ゲーム『開発』部な以上は仕方ないだろうに」

 

もしこれが只のゲーム部だったり、ゲーム遊戯部とかなら開発までしなくともゲームで結果を残すだけで文句は言われないだろう。

しかし、何かの理由があって開発部としたのだからゲームを作るしかないのだ。

 

「じゃあ、レイドだけ!!」

「残念だが、もうじきユウカが『資格検査』に来る。するべきはその対策会議ではないのか?」

「あれ、ユウカなら午後に来るって……」

「本来なら教えるつもりは無かったが……少し早めに来るそうだ」

 

ユウカから来たモモトークでは、やはり気になるので午後より早めに行きますとのことだった。

それについてモモイたちに伝えるなとは言われていないのでこうして言っても良いわけだが……。

教えなければレイドとやらに行っていたのだろう。

 

そうしたらどうなるかくらい目に見えている。

モモイの良い所は迷うよりも行動できる部分だが、行動と行動の間にこうした寄り道が多いのも事実。

そんなところまであいつに似ていなくても良いと思う。

 

「お姉ちゃん、呑気にレイドバトルしてる場合じゃないよ」

「先生も、ミドリも心配しすぎだって。アリスの準備についてはもう完璧なんだし」

「初耳だが?」

「アリス、自己紹介を!」

 

本当に完璧ならエンジニア部相手にあの会話になるはずはないと思うのだが。

だがもしかしたら、対ユウカ用のプログラムか何かを用意したのかもしれない。

まずは聞いてみようじゃないか。

 

「私の名前はアリス・ザ・ブルーアイ、ドワーフ族の槍騎士。使用武器はガンランス――」

「ど・こ・が、完璧なんだ?」

「あ、アリス!ゲーム内アバターのプロフィールじゃなくて、アリス自身の!」

「あ、理解しました」

「本当に大丈夫なのか……?」

 

既に先行きが不安である。

何だ、ドワーフ族の槍騎士って。

第一世界ならいるかもしれないが、それでもアリスよりもう少し小柄だろう。

ああ、ダメだ。

ラリホーだったか、あれが頭に浮かんでくる。

 

「私の名前はアリス、ミレニアムサイエンススクールの1年生。最近転校してきたばかりで受講申請のタイミングを逃してしまったため、まだ授業の登録ができていない状態なのですが、来月から正式に授業に参加する予定です。授業にはまだ参加できなくても、部活動への参加は可能とのことでしたので、ゲーム開発部に入部しました」

「あ、結構それっぽい」

「ゲーム開発部で担っている役割は、タンク兼光属性のアタッカー……」

「おい、タンクとアタッカーが両立できるわけないだろ」

「先生そこ!?っていうか、別にできるでしょ」

「非効率だ!」

「それは古い考えだよ!」

 

古いのか?

考えてみろ、タンクしながら火力を出すなんて面倒なだけじゃないか。

攻撃役に任せておく方がいい。器用貧乏になるだけだ。

その方が安定感もあると思う。

 

「アリス!役割はプログラマー!」

「ぷ、プログラマーです!生まれた時から、母国語よりも先にJabaを使っていまして……」

「ううっ、本当に大丈夫かな……!?」

「そう言いながら、私の方を見るな……」

 

苦労人ミドリ。

だが、その苦労を私も味わえと言うのはやめろ。

お前の姉の筋書なんだから、訂正くらいしてくれ……。

 

それに何だ、母国語より先にJabaって。

いや、言葉よりも先に魔法を理解したと置き換えれば納得は出来るか……?

どちらにせよ、天才か只の変人かだ。

 

「はぁ……。いいか、何事ももう少し自然にやれ。アリスくらいの見た目と年齢の子供が自己紹介を懇切丁寧にすると思うか?一言一言が説明的すぎるんだ。そうするよりも、言い間違えたとしても堂々としている奴の方がこういう誤魔化しは通じやすい」

「詳しいですね、先生」

「もしかして、先生も誤魔化す側だったり?」

「違う!旧友がそうだっただけだ!」

 

アゼムは大体堂々としていた。

私が指摘すると少しブレはじめ、更に指摘すると崩れるがそれでも最後にはやりたいようにしていた。

ユウカを私の様なタイプだと仮定すれば、きっとアゼムの様に堂々としている方が押し通れるはずだ。

 

「先生の友達ってどんな人?」

「アリスも気になります!」

「私も」

 

先生にも友達がいるんだ~、と言いたいような顔で私を見るモモイ。

まあ確かに、こいつらから見たら気になると言うのはわかる。

 

「一人は馬鹿な無茶をよくする奴、もう一人はそれに巻き込まれる私やそいつを見て楽しそうにしている奴」

「先生それで笑って済ませるように見えないんだけど……」

「許すも何も、本気で腹を立てているわけではなかったからな。むしろ、今思えば楽しんでいたさ」

「じゃあ、私がゲームするのも――」

「駄・目・だ!」

「うえぇぇぇん!」

 

甘いなモモイ。

ウソ泣きをすれば私が折れると思ったか。

そんなもの、アゼムで履修済みだ。

お前は確かに強引な部分があるし、あいつに似ている部分もある。

だが、私を折れさせる技術は持っていないな。

 

逆に言えば特に言われていないのに習得していたシロコが異常なだけだが。

 

00Ⅲ

 

「……あり得ないわ。ゲーム開発部に新入部員が入ったなんて、あり得ない……!」

「残念だけど、事実だよ!」

 

無事、少し早めに襲来したユウカに対して向かい合うゲーム開発部の部員たち。

あり得ないと思う気持ちもわかる。

あの話をした次の日に、素性の知れないポッと湧いて出たような生徒が所属している……。

そう言われて、はいそうですかと引き下がれる奴なんていない。

 

そんなわけでユウカの矛先がアリスへと向く。

 

「あなたが噂のアリスちゃんね。ゲーム開発部に入った、4人目のメンバー。ふーん、ミレニアムの生徒ならほぼ全員把握していると思ってたけど……」

 

全員を殆ど把握していると言うのは素直に凄い事である。

別に覚えていなくてもセミナーの仕事に支障はないと思うのだが、これはユウカの地頭の良さ故かそれともセミナー所属なら全員がそうなのか。

 

「私がこんなに可愛い子のことを知らなかったなんて、ちょっと信じられないわね」

 

ユウカは面食いなのだろうか。

もし言おうものなら間違いなく怒られてしまう考えがふと頭を過る。

なぜそう思ったのかと言われたら、言葉選びからだ。

 

普通、特徴のある子とか言えばいいのだ。

髪が長いとか、そんな青い目見たことないとか。

最初に顔の話に入る辺りがそうなんじゃないかと私に思わせたのだ。

 

まあ、それ自体はさして重要なことではないが。

 

「よ、妖怪が出現しました……!」

「い、今この子、私のことを『妖怪』って言ったわよね!?」

「か、勘違いだよ!『妖精』って言ったのを聞き間違えたんでしょ、もう、アリスは嘘がつけないんだからー」

 

妖精にしろ、妖怪にしろ、人外じゃないか。

それに『せい」と『かい』は早々聞き間違えないと思うのだが。

 

「くっ……悪役には慣れているとは言え、まさか初めて会う子に妖怪扱いされるだなんて」

「私は顔を見た瞬間逃げられたことがあるぞ……」

「……それはその時の先生の顔が怖かったからでは?」

 

ワカモ。

後日話を聞いて見れば、『化物』だとか見るに堪えない顔だったからという理由ではなく恥ずかしくなって……と言うよりはある種の一目惚れに近い状態での逃亡であったことが分かった。

今では定期的にモモトークをし、誰もいない時には当番を担当してくれる仲だ。

不良生徒代表の様な扱いを受ける奴ではあるが、根が邪悪なわけでは決してなくむしろ善い人ではある。

暴走しがちなだけで。

 

それでも、顔を見て逃亡された当時は落ち込んだものだが。

 

「そんなことよりも、良い度胸してるじゃない!」

「お、落ち着いて!生徒会が個人的な感情を挟んじゃダメでしょ!?」

 

そんなこと、で片付けられたのは中々に悲しい部分ではあるがな。

別に怒った顔をしていたわけではないし、むしろ普段と変わらなかった気がするが……。

 

「とにかく、部の規定人数は満たしたよ!これでゲーム開発部は存続ってことでOKだよね?」

「存続……。確かにそうね……この子が本当に、自分の意志でここに来た部員だったら、の話だけど」

 

余計な探りを入れられないようにとモモイが打った手は逆にユウカが予定していた次の行動……『詮索』へと促してしまった。

モモイよ、いちいち反応しすぎだ。

さっきも言ったが、堂々としておけばいいのに。

 

「本来は部員の加入を申告すれば、それだけで良かったのだけれど……。最近は部活の運営規則も少し変わって、もう少し厳しく確認する必要が出てきたの。だから、アリスちゃんに簡単な取り調べ……あら、思ってもない言葉が……」

「本音が漏れてるぞ」

「コホン。じゃあ、いくつか簡単な質問をするわね。そんなに時間はかからないわ」

 

元々、アリスは感情表現も上手だと思っていたがユウカに詰められたアリスの緊張具合はこちらの目にも明らかだった。

本当に大丈夫なのか?

幾らなんでもここでしくじっては私も手助けのしようがないわけだが……。

 

「せ、選択肢によっては、バッドエンドになることもありますか?」

「バッドエンド……まあ、そういうこともあるかもね。それじゃあ……アリスちゃん。質問を始めるわ」

 

さて、アリス。

お前はどう切り抜ける?

 

00Ⅳ

 

「……アリスちゃん。もしゲーム開発部に脅されて仕方なくこの場にいるのなら、左目で瞬きして」

「私が目の前で恐喝があった時に放置すると思うのか?」

 

私が居るのにそんな事態を放置するわけないだろ。

あれが自由意志のある状態だったかと聞かれると確かに疑問が残る部分ではあったが、それでも脅したわけではない。

 

「そうだよ!先生の顔が怖いからって脅したりしないよ!!」

「おい。どういうことだ、モモイ?」

 

ユウカが言っているのはお前たちが脅したのか、であって私が脅したのかを聞いているわけじゃない。

それになんだ、顔が怖いって。お前が困らせるからだろうに……。

 

「それにほら見て、このまぶしい学生証を!ミレニアムの生徒だっていうまごうことなき証明!」

「ふーん……確かに、生徒名簿にアリスちゃんが登録されていることも確認したけれど……。私は、そんな簡単に騙される女じゃないわ」

 

改竄と気付かれたか。

確かにこの時期に入ってくる新しい生徒をセミナーが把握していないわけがない。

流石に甘かったか……。

 

「さて、それじゃあ取り調べを再開しましょうか」

「もう隠すつもりもないじゃん……」

「アリスちゃん、あなたがゲーム開発部に来たきっかけは何?」

「気が付いた時はすでにここに、ではなく……」

 

頭に手を当てるしかなかった。

付け焼刃すぎたか。

 

モモイもまた、アリスの言葉を訂正させるために必死に睨みつけている。

 

「モモイ、何でそんなにアリスちゃんを睨んでるわけ?やめてあげなさい」

「えっと、『魔王城ドラキュラ』がやりたくって……それで、ゲーム開発部の存在を知って……」

「ふーん……そうなの」

 

軌道修正は出来たな。

これ自体はありふれているが、これまでゲームに触れてこなかった者なら別におかしな選択でもない。

詳しい人がいるならその門を叩いてみるというのもまた正しい。

 

「でもここはレトロゲーム部じゃない、あくまでもゲーム開発部。つまり、あなたもゲーム作りに参加するということよね?何を担当するの?」

「タンク兼光属性のアタッカー……」

「えっ?」

 

そこはあれだけ練習したし、違う答えを用意した筈だろう……。

段々と高性能な存在、という考えに疑問が湧いてきた。

案外、ポンコツなんじゃないかこいつ。

 

「じゃなくて、えっと、ぷ、ぷ、ぷ、……プログラマラスです!」

 

新しい造語が飛び出てきてしまった。

緊張のし過ぎか、機能の限界か。

どうしろって言うんだ……。

 

「……はい?プログラマー、じゃなくて?」

「あ、はい。そうです、その通りです。間違いなく私は完璧なプログラマーです」

「プログラマーね……すごく難しい役割だと聞くけれど」

「はい、そ、そうです。ぷ、プログラマーは大変です。たまに過労で、意識を失ったりもします」

「な、なんですって!?」

 

過労で倒れる可能性についてはあるかもしれない。

実際、キヴォトスに来てから私もパソコン作業と言うのが増えたがやはり目が疲れるものだ。

眼精疲労に効くメガネや目薬なども購入してなお、頭の疲れというのは中々取れない。

誤魔化し方としては悪くはないとは思うぞ。

 

「それでも大丈夫です!」

「いや、大丈夫じゃないでしょ……ちゃんと休みなさいよ」

「宿屋で寝て起きるか、聖堂にお金を払えば、仲間たちと一緒に復活できます!」

「そっ、そんなわけないでしょ!?」

 

調子付くとすぐこうなる。

余計な事は喋らずに!とあれほど念を押したのだが……もしかすると、どれが余計な事なのか分からないのかもしれない。

 

「そんなわけないのですか……?常識のはずですが……もしかして、『英雄神話』や『聖槍伝説』をご存知ないのですか?」

 

モモイがどれだけ睨んでもアリスの勇躍は止まらない。

プログラマーとしての必要な知識を語るでもなく、自分の好きなゲームの話とかしている。

 

いやでも、もしかしたらこれは行けるかもしれない。

何よりも、ゲーム愛は伝わるはずだ。

 

「本当に『神ゲー』ですよ!」

「……終わった、すべてが」

 

モモイの落胆した顔ときたら。

そんなに落ち込むことはないだろう、むしろこれだけ雄弁にゲームについて語れるなら少なくとも技術はさておきゲーム好きであることはアピールできた。

私だって、今度やってみようかなくらいは思えるほどだ。

 

「……ありがとう、分かったわ。短い時間だったけれど、アリスちゃん。あなたのことについては概ね理解できた」

「それで、どうだ?期待の新人は」

「ちょっと怪しい’ところはあるけれど……。ゲームが好きだってこと。それに、新しい世界を冒険したり、仲間と一緒に何かをやり遂げるストーリーが好きなんだってことは、十分に伝わってきた……。そんなあなたがゲーム開発部の部員だというのは、何も不思議なことじゃないわ」

「え……?」

「それに、エメトセルク先生がこうして彼女を部員として認めているということは悪い子ではないはず」

 

随分と私への信頼が厚いな。

たしかにユウカとの付き合いは長く、私の難儀な性格も理解している。

そんな私が排除せず、部員として生徒として扱っているならばと。

良い生徒だな。

 

「っていうことは!?」

「規定人数を満たしているので、ゲーム開発部をあらためて正式な部活として認定……部としての存続を承認します」

「やったぁ!」

「良かったぁっ!」

「そ、そしたら部費も貰えるし、このまま部室を使っててもいいんだよね!?」

「ええ、もちろんよ」

 

そんな都合のいい結末が用意されているはずは……

ない。

 

「『今学期』までは……ね」

「……え?」

「な、な、なんで!?」

「どうして!規定人数も満たしたのに!?」

 

約束が違うと言いたいんだろう。

確かに『人数』か『成果』のどちらかを満たせば問題はないと言っていたはずだが……。

 

「あら、知らなかったのかしら。今は部活としての規定人数を満たすだけじゃなく、同時に部としての成果を証明しないといけないの。もちろん、最近急に変わった要件だから、猶予期間はあるけれど……。その期間は今月末まで。今月中に結果を出さなければ、あなたたちの部はたとえ4人いても、400人いても、廃部になるのよ」

「そんな話、先日はしていなかったぞ?」

「この間、全体の部長会議で説明した内容なんです先生。ユズはその場にいませんでしたが」

「……ああ、そういうことか」

 

結果、ゲーム開発部はそれを知る事のないまま今日まできた。

とは言え、先日それを言っても良かったとは思うが。

モモイがあの啖呵を切った以上は、という事だったのだろう。

 

「つまり、あなたたちの責任よ」

「くっ……卑怯者め!」

「『鬼』とかならまだ分かるけど、規則通りに事を運ぶことの何が『卑怯』なのよ……。正直なところアリスちゃんの正体も怪しいし、本当なら今日すぐに退去を要請しようとも思っていたのだけれど……正体はさておき、ゲームが好きっていう純粋な気持ちは本物だと思った。猶予を与えたのは、その気持ちに相応しい成果がきちんと出せることを期待しているからよ」

 

優しい判定だと思う。

これまでの行いを見るだけではなく、アリスの気持ちをしっかりと汲んだうえでの判定だ。

卑怯ではないはずだ。

 

「……いいよ。ちゃんとミレニアムプライスで、結果を出すから」

「あら?もっと不満を言うと思ったのだけど……」

「先生に言われたから、見せて見ろって」

「普段私が言っても聞かないのに……先生なんて言ったんですか?」

「まあ、要約すると期待に応えろ的な内容だな」

 

モモイの名誉のため、部員補充で満足したとは言わないでおく。

あれは私とモモイだけの話だ。ユウカが知る必要のない事ではある。

 

「あの時の先生の目は、いつも私に怒るときと違ってたし……」

「どういう目だったのよ……」

「先生に怒られるのは良いけど、失望されるのは嫌だなって思ったから」

 

失望した相手への私の態度は確かに目に見えて違うだろうな。

一度失望した相手がそれでも尚と挑みかかり、私を超えた例などあいつしかいない。

それ以外はみな、私が判じた通りの結果でしかなかった。

 

「怒らせるのもダメでしょ!?」

「先生が怒っても、そこにはなんていうか優しさみたいなのあるけど。あの時の目はそんなものなかったし……もう興味が失せました、心底無価値です、みたいな目だったもん!」

「そんなに怒ったんですか?」

「……想像にお任せする」

「だから、作るよ」

 

あいつに向けた目ほどのものをモモイにした記憶はない。

だが、モモイは私の中でもアレは異質だったと彼女の中で結論を出し、前を向いて進むと決めたのだ。

なら、結果は良かったのだろう。

 

「……そこまで言うのなら、楽しみにしてるわ。じゃあね」

 

その答えに満足したのか、それとも私がそこまで言ったのなら言う事もないと思ったのか。

ユウカは期待だけを示して、部室を去っていった。

 

「……ごめん。わたしが、部長会議に参加できなかったせいで……」

 

ユウカが去りロッカーの中から再び姿を現したユズが謝罪するが彼女に怒りを示す者などここにはいない。

 

「ユズのせいじゃないよ。どっちにしても、先生と約束した以上は作るから!」

「大丈夫なのか?言っておいてなんだが、そう簡単でないことくらいは私も分かっているが」

「でも、先生は見たいんでしょ?ゲームの力を」

「そうは言ったがな」

 

確かに見たいとは言った。

だが、廃部の危機を抱えてまでというものではない。

あの時点では、危機は去りそのうえで作れだった。

しかし今は、作ってダメなら廃部だ。

 

「結局はG.Bibleが必要じゃん!やだけど、またあの廃墟に行かなきゃ」

「G.Bibleを探し、また廃墟に行くなら……わたしも一緒に行く」

「え、え!?嘘!?」

「ユズちゃん、もう半年間近く校舎の外に出てないのに。授業もインターネット受講だけだし……」

「……元々は、わたしのせい……だから。それに、この部室は……もうわたしだけのものじゃない」

 

誰からの覚悟は、別の誰かの支えとなる。

そうして、立ち上がって元の人を支えていくもの。

アーテリスで見たもの、そしてアビドスで見たもの。

それをここでも、私は見る事が出来る。

 

ユズにとっては大きな決断だ。

だが、それだけ彼女もこの場所、仲間への想いがあると言う事だ。

 

「……一緒に、守りたいの」

「ユズちゃん……」

「パンパカパーン、ユズがパーティに参加しました」

「うん、よし!行こう!」

 

全員の準備は終わり、既に出発待機状態。

だが、行く前にモモイが私を見る。

 

「先生も来るよね?」

「愚問だな。お前たちがこうして覚悟を示したのに、私だけがふんぞり返って見物するわけないだろ」

 

アリス的に言えば、

『パンパカパーン、最古の魔道士がパーティに参加しました』

と言うところだろうか。

 

「さあ、G.Bibleを手に入れるぞ」




どうにか中編くらいまで来た気がします。

アリスについて。
多分、ヒカセンとかと会うと目を輝かせるタイプですね。
2章でエメトセルクがどう立ち回るのかについての伏線も入れられたと思います。
2章はまだまだ先ですけどね。

エメトセルクについて。
エメトセルクって生徒から見たら友達いるのかなって思われそうなだって。
過去の話とかはある程度、付き合いがあったり質問しないと知れないので多くに意味で謎の存在だと思います。
キヴォトスの大勢の生徒の中では、動画で見た人!くらいの認識です。
その中での行動のせいで、更に色々勘違いされているという。
アビドス編での行動が今後の章でも影響を出すようにはしてます。

モモイについて。
多分、モモイならエメトセルクの『怒り』と『失望』について分かるかなって思います。
現状、一番怒られた子ではあるかもしれませんがそれはアゼムに対しての怒りと同じタイプでエメトセルクの本来の性格を引き出せる子です。
だからきっと、失望させることはしないはずです。

あと一回くらいはレガシー前に進めたい。

番外編について(基本的に1話完結予定です。私の休憩用と言う部分もあります)

  • 古代人関係の先生
  • その他ヒカセン関係の先生
  • エメちゃんを書け!
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