エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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1-7 鍵を手に入れろ

 

 

00Ⅰ

 

「……つまりは、その『鍵』とやらがなければならないわけだな?」

 

廃墟探索から戻ったモモイたちがヴェリタスにG.Bibleのパスワードの解析を依頼して1日経ったころ、オフィスで事務作業をしていた私にモモイから報告があるから一緒に聞こうとのメッセージが届いた。

そして、分かったことはG.Bibleは完全なオリジナルであるが、パスワードの解析までは至っていないこと。

別の方法として、セキュリティファイルを取り除いて丸ごとコピーするという方法ならば可能であり、それをするためには『鍵』が必要だと言うこと。

 

だが、更に問題があり『鍵』は元々、ヴェリタスが保有していたが生徒会に押収されてしまったらしい。

そこに至る経緯も書かれていたのだが……。

私のスマホのメッセージを見たいという目を背けたくなるような内容だった。

 

見られて困るものと言えば、やはり生徒たちとの個人の会話だ。

そんなもの見せられるわけがないし、するべきでもない。

 

『絶対にするなよ!他の生徒にも迷惑が掛かるんだからな!』

 

と、大きな声を出したりもしたが……。

まあ、それは大きな問題ながらも一旦はわきに置いておこう。

 

……それにしても、何処でも『鍵』が必要になるな。あいつも今頃は私の残した『宿題』でそれを求めている頃だろうか。はたまた、もう見たのだろうか。

 

もし求めている頃なら、奇遇だな。

私も別の『鍵』を探すことになった。

 

「そう言うことなんだけど……その『鍵』は生徒会の『差押品保管所』に保管されていてそこを守っているのが……メイド部、なんだよね」

「……メイド?」

 

たかがメイドをどうして恐れる必要があるのか。

メイドという存在へのイメージと言えば『可愛らしい』などが殆どだろう。

もし私も『経験』がなければそう答えただろうな。

 

あいつの服装にメイド服やバトラー服があって助かった。

そんな服を着ていても強い奴がいる、強さとは服装に宿るものではないのだ。

 

「……え?メイド部って、もしかして……」

「ああ、C&Cのことだよね?ミレニアムの武力集団、メイド服で優雅に相手を『清掃』しちゃうことで有名なあの……」

「そうそう!まあ些細な問題なんだけどさ~」

「メイドの武装集団と戦う事は些細な問題なのか……?」

 

キヴォトスでのありふれた光景として、言葉で語るよりも前に銃をぶっ放すということが当たり前である。

それについてもはや何かを言うこともしないつもりではいたのだが……残念ながらそうそう上手く心を整理することは出来なかったらしい。

ただまあ、今回の様に明らかに説得が不可能……と言うよりもこちら側が校則を破る以上は致し方あるまい。

 

「諦めよう!!!ゲーム開発部、回れ右!前進っ!!」

 

そう考えていたのだがモモイは違うらしい。

と言うよりは自分たちゲーム開発部の戦闘力ではメイド部とやらに勝てないと早々に考えをまとめたらしい。

実際、武力では勝てないだろうな。

 

「待って待って待って!諦めちゃダメだよモモ!G.Bibleが欲しいんでしょ!?」

「そりゃ欲しいよ!でもだからって、メイド部と戦うなんて冗談じゃない!そんなの、走ってる列車に乗り込めとか、燃え盛る火山に飛び込めって言われた方がまだマシ!」

 

それくらいならアゼムやあいつは平然とやりそうだ、と一瞬脳裏に浮かんで顔をしかめる。

当たり前だ。

普通の奴はそんなこと進んでしたがらない。私だってやむおえない事情でなければそんなことごめん被る。

 

「で、でもこのままじゃあたし部長に怒られ……じゃなくて!ゲーム開発部も終わりだよ!このままじゃ廃部になっちゃうんでしょ!?」

 

一瞬本音が飛び出ていた気がするがその指摘に間違いはない。

現状のゲーム開発部ではG.Bibleなしに最高のゲームが作れるかと言われれば、少し疑問が残る。

だが、G.Bibleを手に入れるためにメイド部を倒せるかと言われたら無理だと判じるのは間違いではない。

最も、単純な武力でならばだが。

 

「廃部は嫌だけど……でもこれは、話の次元が違う。C&Cの『ご奉仕』によって壊滅させられた過激団体や武装サークルは数え切れない……知ってるでしょ?」

「……最後には痕跡すら残さず、綺麗に掃除される。有名な話だね」

「なんというか……どの学校も似たようなものだな」

 

トリニティの実情は詳しく知らないが、ゲヘナも同様に風紀委員会が何とか秩序を保とうとはしている。

とは言え、ゲヘナの場合は『まともな』部活動が少なく『校則違反』の方が多いような気がせんでもない。

 

「そりゃ部活は守りたいし、先生との約束も守りたいけど……ミドリにアリス、ユズの方が圧倒的に大事!危険すぎる!」

 

モモイの想いは真っ当なものだ。

決して目の前の壁から逃げたいわけでもない。

事実、こいつら4人では荷が重く戦ったばかりに居場所を失うどころか大怪我を負ってしまったなどとなっては目も当てられない。

 

ここは私が助け船を出すか。

そもそも、モモイがここまで悩むことになる理由を作った一人でもあるわけだ。

 

「何も正攻法でC&Cと戦う必要はないだろう。目的は『鍵』を手に入れる事、違うか?」

「それはそうだけど……そうするにはC&Cと戦わないといけないじゃん!」

「相手は武力に優れているが、全てがお前たちより上というわけじゃない」

「どういう意味ですか?」

「お前たちの好きなゲームに例えてやる。戦士や侍、格闘士を相手に魔法使いが接近戦を挑むか?挑まない筈だ。もちろん魔法使いが近接戦闘を得意とする召喚獣でも持ち合わせているのならば別だが、その場合戦士たちは他の手を取るだろう」

 

もちろんこの場で本当の魔法使いは私しかいない、そして私は近距離戦に持ち込まれても距離を離せるし防御も出来るがここはそれを度外視だ。

通常の場合、魔法使いは近接戦にならないように対策するか姿を隠して攻撃してくるだろう。

まさか杖を持って殴りかかるような真似をする魔法使いはいない。

 

もしくは、自分の仲間に近接戦が得意なメンバーを用意して敵視を引かないようにする。

そうすれば自分の詠唱に集中でき、危険な攻撃だけは避ければいいからだ。

 

そしてこの例は、モモイたちにもすんなりと受け入れられたらしい。

 

「戦うとしても真正面からじゃなくってこと?」

「そうだ、搦め手なり各個撃破なりやりようはいくらでもある」

「先生の言う通りです。私の盗ちょ……情報によると、現在のメイド部は完全な状態ではありません」

 

盗聴などと言うこれまた聞きたくないワードが平然と飛び込んできたがこの際無視だ。

その『情報』曰く、メイド部の部長、コールサイン・ダブルオー……ネルと言われる生徒が別件で不在。

よって現状のメイド部はこちら側を倒すことは存外難しいのではないか、と。

 

「それで、お前たちはどうする?」

 

信憑性の高い情報かもしれないが、それでも不在が続くというわけではない。

仕損じれば次は必ずネルが戻ってくる筈でありそうなればゲーム開発部とヴェリタスでは厳しいだろう。

『鍵』だけならば私だけでも奪ってくることは容易だが……はてさてどうしたものか。

 

「やってみよう、お姉ちゃん」

 

長い沈黙を破り最初に言葉を発したのは、意外な事にミドリだった。

 

「えぇっ!?でもネル先輩がいないからって、相手はあのメイド部だよ!?」

「分かってる、でも……このままゲーム開発部を無くすわけにはいかない」

 

その言葉の続きを一度目を閉じ、覚悟を灯して続ける。

 

「ボロボロだし、狭いし、たまに雨漏りもするような部室だけど……。もう今は、私たちがただゲームをするだけの場所じゃない。……みんなで一緒にいるための、大切な場所だから。だから、少しでも可能性があるなら……私はやってみたい」

 

大切な場所を守るために、一緒にいるために。

『今』を守るために戦いたいというミドリの決意は立派だ。

そんな言葉を吐ける者は少ない。

不平不満だけを宣う者ばかりがいたアーテリス、キヴォトスでさえ『大人』はそういう連中が多い。

 

「守りたいの。アリスちゃんのために、ユズちゃんのために……私たち、全員のために!」

 

それを子供でありながら、迷い恐れながらも出したのだ。

なんて……眩しいのか。

 

「ミドリ……」

「私たちならできます」

 

ミドリの勇敢な一歩に、アリスも続いた。

 

「伝説の勇者は……世界の滅亡を食い止めるために、魔王を倒します。アリスは計45個のRPGをやって……勇者たちが魔王を倒すために必要な、一番強力な力を知りました」

「お前の答えを聞かせろ、アリス」

 

一番強力な力。

アリスがゲームの中で導き出した結論とは何なのか。

たかがゲームではない。

こいつにとってのゲームは、ただの遊戯ではない。人としての人格を、意志を、想いを形成させた存在。

であるならばきっと、私にとっても良い答えを言うだろうと。

 

「一緒にいる、仲間です」

 

ああ。

想いだとか、諦めない心ではない。

それ以前に、何故想いを貫き諦めないのかの理由。

あいつが罪喰いになりかけ、壊れそうになりながらも立ち上がり私に向かってきた理由。

 

英雄は一人でなるものではない。誰かが進めない時はあいつが代わりに進み、あいつが苦しむときはその仲間があいつを支えた。

 

あの光景が幻視され、それを振り払えば今度はアリスがあいつが言いそうな事を言ったことに嬉しさ半分、言葉にならない想い半分。

別に負の感情じゃない。

ただどこにでもあいつみたいな奴がいる者だと、そう思っただけだ。

 

「先生?」

 

ただ無言でアリスを見つめていたからか、怪訝に思った彼女から声をかけてきた。

自分の答えはおかしかったのか、と言いたげに。

 

「いや、何でもない」

「何でもない割にはすっごい顔だけど……」

「懐かしい記憶が蘇っただけだ」

「それは『光の戦士』との記憶ですか?」

 

廃墟であんな話するんじゃなかったな。

勇者が好きであろうアリスにとって、あいつは正に『勇者』そのものなんだろう。

 

「……まあ、あいつでもお前と同じような事を言うだろうな、と思っただけだ」

 

この場合の『あいつ』は光の戦士だけではない。

アゼムでもそう言うだろう。

 

本当にキヴォトスに来たのが私でよかったよ。

アゼムであれ、光の戦士であれ。

あいつらが来て、影響を受ける生徒が居たらと思うと眠れないぞ。

 

アリスは私の返答に満足したのか、嘘偽りのない笑顔で私を見る。

やめろ、そんな笑顔を向けるべき相手ではないぞ私は。

 

「うん、よし」

 

ミドリ、アリスの言葉があったからか最後まで悩んでいたモモイもまた一歩を踏み出した。

 

「やろう!生徒会に潜入して、『鏡』を取り戻す!」

 

逃げるためではない。

仲間のために最後まで悩んで、そしてその仲間に背中を押される。

良い光景だ。

 

「ハレ!何か良い計画とかない!?」

「任せて。ただ、その計画を実行するためには……」

「準備が必要だな」

 

入念な備えが確実な勝利に繋がる。

もちろんそんなものすら通じない例外は存在するが、今回の場合は大丈夫だろう。

 

嬉しい事に今回は『ハッキング』の本職が味方におり、やる気に満ちた人材もいる。

だが、如何せん数は不安な部分があるな。

となれば必要なものは……

 

「あとはやっぱり、『仲間』かな」

「仲間?」

 

そう。

どんな英雄にも相応しい装備が必要だ。

当然今回も敵が強大な以上はそれにふさわしい装備が。

 

「でも、私たちとはそんなに親しい仲ってわけじゃないから……先生にお願いしないとね」

「そんな事だろうと思ったが……いいだろう」

「うん。恐らく彼女たちの力なしに、この作戦は成立しない」

 

エンジニア部。

なんだかんだ協力を取り付けることは出来そうだが、見返りに何か渡すのがいい気はする。

あいにくとあいつらが興味を持ちそうな技術の……情報しかないが、それをヒントに何か良い発明が出来るならそれはそれでいいだろうか。

 

それにしても。

初めはゲーム開発部との関係はどうなる事かと思っていたが……。

個人的には面白い部分が多いと思い始めていることに驚いている。

 

だからそう、『鍵』を手に入れるための裏の『計劃』も用意しておくとするか。




リハビリもかねて今回は短めです。
次回以降は本編でも怒涛の展開なので頑張ります。

黄金のレガシーと今作について。
ある程度変更が必要になりそうな部分があり次第、変更したいのですがそうするとレガシーネタバレにもなってしまうのであまり大きく修正などは当面しない予定です。ただ、エメトセルクの発言などはレガシーも踏まえつつ大きくネタバレにならないようにします。

アビドス編3章について。
とんでもないことになっていて、さてどうしたものかと。
まま、先の話何でゆっくりと着地点決めます。

遅れた理由について。
レガシーです。ギャザクラも極も終わらせました。あとは零式待ちでfate巡りをば。

番外編について。
暁月の次の拡張が出たので、暁月キャラで一人を既に作ってます。

では、次回もお楽しみに!

番外編について(基本的に1話完結予定です。私の休憩用と言う部分もあります)

  • 古代人関係の先生
  • その他ヒカセン関係の先生
  • エメちゃんを書け!
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