俺は杖を折ってピクトマンサーで行く!
00Ⅰ
「なるほど、それは確かに的確な判断だ。先生の言う通り、その方法なら私たちじゃないと難しいだろうね。うん、分かった。協力しよう」
エンジニア部に協力を依頼しに行った我々を待っていたのは、快い返事だった。
「言い出してなんだが、かなりの無理難題……何ならお前たちも被害を被る可能性があるのにいいのか?」
「そうだね、そうかもしれない」
関わる事を推奨するかと言われたらしない。
人は自分たちに害が及ぶような事態になれば逃げたい、関わりたくないと思うのが当然だ。
だが、ウタハはそうは言わなかった。
「それなのにどうして、メイド部と戦うなんていう危険な計画に乗ってくれるんですか?」
「それは……」
「……うん、その方が面白そうだから、かな」
「そうです!それに私たちも、もっと先生と仲良くなりたいですから!」
「私と?」
仲良くなりたい。
そんなことを言われるとは思ってもみなかった。
アリスと仲良くなりたいという理由ならわからないでもないんだが……。
こういった所はキヴォトスに来てからよく味わうことになった感覚だな。
別に厭じゃない。
心地よさも感じはする。
しかし、それに対して私が何かしてやれているか、自己開示出来ているかどうかと聞かれたら返事には困る。
何とも難しいものだな、『先生』というジョブは。
「そうだね、先生の言っていた『魔導船』も気になる。それと……いや、今は良いさ。よろしく」
一瞬、アリスを見て何かを言いたげな表情を浮かべたウタハだったがすぐにそれをかき消した。
何を言いたいかという事くらいはある程度は察する事が出来る。そして、それを今言う必要がないことも。
何はともあれ、必要なものは全て揃った。
であれば、役者たちを舞台に上げるだけだが……。
一人ぐらい乱入する演者が居ても文句は出ないだろう。
「では、お前たちは先に戻ってろ。私は私でプランBを用意しておく」
「プランB?そんなものないんじゃ……」
「あいにくと、あれこれ画策するのが得意なんでな。まあ、任せておけ。もしユウカにプランAが悟られても大丈夫なようにしておいてやる」
安心しろ。
自分で計画失敗の要因を招かない限り、私の計劃が崩れる事はないさ。
00Ⅱ
「うぅっ!アリスが連れていかれちゃった!」
プランAの通りにアリスがオペレーションルームに自爆覚悟の突撃をかまし、ミレニアム全体が騒ぎになり始めた。
恐らくユウカの事だ。アリスの武器を見てエンジニア部の関与も疑うはず。
となれば、ユウカはゲーム開発部、ヴェリタス、エンジニア部に注意を払う必要があり必然的に第三勢力にまで気を払う事は出来なくなるだろうが……。
まあ、この調子でいけばプランAでも上手く行くか。
「とりあえず……一つ目の仕掛けは、上手く行った感じかな。そうだよね、先生?」
「次を仕掛けるぞ。エンジニア部の準備は終わったのか?」
「ちょうど連絡が来てたよ、『こちらエンジニア部、トロイの木馬を侵入させることに成功した』……ってね」
「ならアリスが監禁されたことにも意味はあったな」
アリスの破壊力を一時的に使用できないというのは確かに痛手ではあるが、そもそもの目的は戦うためではない。
目的の物を手に入れるためならば、この程度は必要経費と割り切れる。
もちろん、必ずアリスは取り返させてもらうがな。
「じゃあ、次のステップに移ろうか」
次のステップの決行は夜間。
昼間に一度騒ぎを起こしたため、その場で矢継ぎ早に動くのではなくあえて夜までまった。
別にそれ自体は何の問題もない。
それに夜間の方が、私の方も色々と動き回れるからな。
「……さて、始めよっか。はあ、緊張する……こんな気持ち、古代史研究会の建物を襲撃した時以来」
「……一度経験済みじゃないか」
モモイが暴走するタイプかと思いきやこういった大勝負の場面ではどちらかと言えばミドリが吹っ切れて動いてしまうタイプなのだろうか。
逆にモモイの方が冷静に色々と考えていたような気がしないでもない。
まあそこは色々あるのだろうが……。
「ヒビキとウタハ先輩は?」
「もう『お客さん』を出迎える準備は出来てるって」
「良いね、さすが!」
「やってるのは決して良いことじゃないけどね……」
「……マキとコトリの方はどうだ?」
まあ、銀行強盗に比べたらマシだろうと我ながら妥協と言うか諦めのラインがこっちに来てから低くなったな。
アシエンとして暗躍していたお前が言うのかと言われたら何とも言えないのが実情だが……。
「こっちも準備OK、待機中だよ~」
「お任せください!私の理論上、この作戦が成功する確率は2%です!」
「えぇっ、ほぼ間違いなく失敗じゃん!何で自信満々なの!?」
「えへへ、場を和ませる冗談ですよ!逆です、98%成功するでしょう!」
なら残り2%は私が上手く調整してやれば問題はないな。
この2%にあいつが含まれるなどがない限り大丈夫だ。
「コトリちゃんとマキちゃんの準備も終わったなら……」
「第二段階、だね」
「それでは……先生!」
「私がやるのか?」
口上くらいなら幾らでも垂れてやるつもりだったが、いざお願いしますと言われるとアビドスの時とはまた違う感覚があるな。
だがまあ、良いだろう。
決断し行動したお前たちの為に幾らでも言ってやるさ。
「では、お前たちがより良い作品を作るための『鍵』……そっくりそのままいただいていこうじゃないか」
00Ⅲ
差押品保管所。
ミレニアムタワー最上階西側に位置し約400台の監視カメラに50体近い警備ロボット、更には押収した戦闘用ロボット数十体が守る……いうなれば素性も知られず隠密で切り抜けるのはほぼ不可能な砦。
そこまでならば武力で以って一掃できればと淡い期待を持てるかもしれないが、その最上階へ行くにはエレベーターを使用せざるをえずその権限は生徒会の限られた役員しか通さない指紋認証システムが付いており、部屋ごとにセクションで分けられていると。
もし爆発などの攻撃的な行動を取るとシャッターが下りて隔離されてしまう。更にはこのシャッターもまた強固なセキュリティらしい。
そして、エレベーターに無理やり侵入しようとすると最上階のすべてのセクションのシャッターが下りるそうだ。
もしここに気付かれずに侵入できる者がいるとすればそれこそ私くらいなものだが……。
だが、当然今回の主役は私ではない。
ヴェリタスやエンジニア部にも当然この強固な壁を突破する方法がある。
曰く、外部電力を遮断すると。
そうすれば一時的に隙が発生し、超小型EMBであらゆるシステムを無効化できるそうだ。
だが、そうしたとしても6秒ほどしか時間がない。
しかし、ハレはそれで十分だと言い放った。
あいにくとハッキング周りはアロナに任せっきりの私だ。
高度なテクノロジーに理解がないわけではないが、それでもシステムそのものを止めるにはと聞かれたら悲しいかな、あいつやアゼムが取りそうな強制的にシャットダウンするという手しか私もできない。
よってここは、ヴェリタスの面々に全てを託す他ない。
だがそれでも、どうしても時間がない場合の方策だけは二つほど用意した。
一つは強制的にすべての機器を壊す方法。
雷属性が濃い魔法であれば、機械に対して効果的だろうと私の中で一つの推察を立てている。
そうすれば当然ミレニアム全体に甚大な被害を発生させかねない為、できればしたくはない。
もう一つは私の魔法でシャッターなどを強制的に破壊していく方法。
どれほど強固なシャッターでもあくまでそれはキヴォトス基準での力に対して……つまり、物理的な攻撃に対してのはず。
魔法による攻撃は想定していない筈で、シャッターなどであれば焼き切ってしまえばどうにでもなるだろうと。
どちらにせよ、被害総額はとんでもないことになるだろう。
そんなことを考えて夜の廊下を柄にもなく走っていた。
何を馬鹿正直にと思われるだろうがこれも全て計画通り。
恐らくメイドは既にモモイとミドリに会っているだろう。
勿論それは偽物……と言うよりはカメラをハッキングし録音映像を流すことでまるでそこに居るかのように見せかけたのだと。
便利なものだ。
アビドスでは私の幻影創造が猛威を振るったが、隙を生むだけならばこっちの方が断然楽だ。
だが、相手はユウカやC&C。元理事ほど間抜けではない。
「そろそろ、録画映像だってことがバレた頃かな」
「今さらだけど、平和な状態の映像でも流しておいて、こっそり『鏡』を取りに行った方が良かったんじゃないの?」
「それでは混乱させることは出来ないぞ。むしろ、こっちの方が相手が対策を取るまでの時間を稼げる」
「流石、先生!こうしてC&Cの先輩たちを分裂させて閉じ込めておいた方が、最終的にミッション成功確率は高くなるよね!」
想定外を連続させて起こしておけば、対処に時間がかかる。
その頃には我々は『鍵』を手に入れておさらば……と上手く行けばそうなるはずだ。
「あ、エレベーター来た!それじゃ、『本当に』入るとしよっか!」
「ちょっと待って……先生、周囲も暗いですし、私たちの手をしっかり握っていてくださいね」
「……あのなあ。私がお前たちを見失うほど耄碌しているように見えるのか?……まあ、良いだろう」
むしろ、私の手を握って緊張を落ち着かせたいと言うか安心感が欲しいのはお前だろうとミドリにいってやろうかとも思ったが、それは無粋なことだ。
差し出された手を、あの日の様に宙を搔かないように握りしめてやる。
安心しろ、私は何処へも行きはしない。
「ありがとうございます。行きましょう!」
手を握るのなんて、久しぶりだな。
00Ⅳ
エレベーターで悠々と最上階へと向かっている最中でも計画は進行し、生徒会の役員も全員隔離出来た。
これによって事実上、このタワーを好き放題移動できるのは私たちだけ。
勿論、残っていたロボットと生徒会の面々は多少なり存在はしたが混乱に乗じて先手を取って動いたモモイとミドリが無力化していた。
なぜこのようなことが出来たのか。
それは急遽導入された最新型のセキュリティに起因する。
エンジニア部がこちら側だと気が付いたからこそ、彼女たちが作ったセキュリティ以外を導入しようと急いだことがあだとなったのだ。
ある程度強力で、なおかつエンジニア部製以外の物。
そんなものが都合よく見つかった所で、では本来それを誰が作ったのかまで調べる時間的猶予は与えていない。
実際のところ、今回導入されたのもまたエンジニア部が製作したセキュリティなのだ。
そうなれば当然、ハッキングなど容易い事。
幾ら相手が力で勝ろうとも、その力を行使できないようにしてしまえばいい。
メイド部の一人を隔離出来た以上、あとは2人。
それぞれへの対処も用意済みだが……。
「最後のシャッターを解除!ふふっ、今やこの生徒会専用フロアは私の思うがまま~♪さて、もう少しで『鏡』がある差押品保管所に……」
敵地にも関わらず随分な余裕を見せるモモイに私が苦笑いするのもつかの間。
微かだが何かが近付いてくる……。
「ちっ!」
「うわあああっ!」
とっさにモモイの襟を掴んで私の方に引っ張ったのが功を奏した。
にしても、なんて威力の銃弾だ。
アルの爆発する弾丸は切り札だが、今のはどう見ても通常攻撃で撃って来たぞ。
「い、今、なんか凄まじい威力の弾丸が!?壁に穴が空いてるんだけど!?」
「私が引っ張らなければお陀仏かもな」
「もうちょっと優しく助けてくれても良かったじゃん!!お得意の魔法とかで!!!」
「……私を便利屋か何かと勘違いしていないか?」
魔法で防げるかと言われれば、軽い障壁なら怪しい。
少しだけ強度を上げれば問題ないくらいの威力ではあるが、それでもここでモモイを不思議な障壁が守るなんていう光景を見せるのもどうかと考えたのだ。
C&Cと事を構えることになった場合、私の魔法の事はもう少しだけ秘めておきたい。
「この辺りはもう、狙撃ポイントに入ってるってことだね。C&Cの狙撃手、カリン先輩の」
「ミドリ、お前も頭を低くしろ!」
警告を言い終わるか否かの時点で二発目が着弾し再び壁に穴を空ける。
姉妹揃って小柄だからいいが、背の高い私が居ると狙撃手としては狙いやすいだろう。
私を狙うほどの事はしないが、その分目印としては使いやすい。
となれば3発目は当てに来るだろう。
目を頼りに狙ってくる以上はその目を攪乱させてしまえば無力化は出来るが……。
煙系の魔法は避けるべきだ。熱源で探知されては元も子もない。
ガラスを障壁で覆ってしまえば解決はするか。
しかしそれでは、カリンに移動経路を予測されて移動されてしまう。
そう悩んでいた私だが、3発目が放たれることは無かった。
「……狙撃が止んだ」
「ウタハ先輩とヒビキちゃんだ!カリン先輩の相手をしてくれてる間に、急ごう!」
予定通りではあったが3発目が撃たれることは覚悟していた。
しかし、それをウタハたちが防ぐどころか完璧にカリンの注意を引いてくれたらしい。
命拾いとまではいかないが、それなりに大きな貸しを作ってしまったな。
今度、開発に協力してやるとしようか。
だが、問題は続く。
大きな爆発音が下の階から鳴り響いてきた。
「えええっ!な、なに、地震?」
「爆発、みたいだけど……まさか!?」
「シャッターを強引に破壊したのか……急ぐぞ。合流されては面倒だ」
想定より早いな。
アカネが脱出したとすれば、カリンも暫くすればウタハを制圧するだろう。
となれば、もう一人が万が一保管所の前で待っていた場合……厳しいな。
……仕方ない。
プランBを進めるか。
「先生?」
「先生、急がないと!!」
突然立ち止まった私に二人が声をかける。
当然だ。急げと言った本人が立ち止まるのだから。
「時間がない。そのまま行け!」
「えっ!?先生は!?」
「プランB、それを進める」
「こういう時のプランBって無いでしょ!!」
「安心しろ。私にはきちんとある。だからそう……モモイ、ミドリ。お前たちのアドリブ力に期待しているぞ」
そう言って強引に二人を送り出す。
不平不満なら後で幾らでも聞いてやる。
だが、『鍵』を手に入れるためなら仕方のないこと。
それに丁度いいだろう。
妙に準備のいい相手側への違和感。それを暴くにはもう一つの脅威を出すしかない。
そう思い私は暗がりへと姿を消した。
短めですが。
続きは早めに投稿します。
流石に初日から零式を走るつもりはないので……
番外編について(基本的に1話完結予定です。私の休憩用と言う部分もあります)
-
古代人関係の先生
-
その他ヒカセン関係の先生
-
エメちゃんを書け!