エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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いよいよ、本筋に入っていきます。




Vol.1 対策委員会編 第一章 最初の大仕事
1-1 砂漠の中の一輪の花


一面に広がる砂漠。

こんな崩壊寸前の場所で、学園の崩壊を止めようとしている者たちがいると手紙で知った時、何故か思う事があった。

 

私が行って救えるかはわからない。だが、いつものように判じそして私にしかできない事があるかもしれない。

それが新たに出会う者たちの『未来』への助けとなるならば初めての赴任任務としては最適じゃないか。

 

故に、『アビドス廃校対策委員会』。お前たちの『青春』を見させてもらうぞ。

 

 

                          エメトセルクの手記2

 

 

00Ⅰ

 

失敗だった。

砂漠化していると聞いてはいたが、これは化ではなく文字通りの砂漠じゃないか……

見渡す限りの砂、砂、砂! 更には忌々しくも照り付ける太陽。

それだけではない。この砂漠には『何か』があるから余計に厭になる。

 

そう、私エメトセルクは絶賛遭難しているのだ。

 

準備を怠ったつもりはない。調べられることは事前に調べて、更にはユウカから水分補給を忘れないように言われたから水筒をわざわざ買って持ってきたと言うのに早々に中身は尽きてしまった。

別に『飛んで』くれば良かったのだが、せっかくの機会じゃないか。

仕事先の状況を自分の目で歩いて確かめようと考えてわざわざ徒歩を選んだと言うのに!! 

 

何なら服も悪い。

ネクタイと連邦生徒会のコートを除けばほとんど黒色の私の服は、日光を異常なほど吸収し私の体温を上げていく。

 

「……もう限界だ。歩くと決めてそこまで時間は経ってないがとっとと目的地周辺まで移動したい、うんそうしよう」

 

そういって私は影に包まれていき、消える前にこの砂漠とそこにいるかもしれない『誰か』に別れを告げた。

 

「……ではまた、後ほど」

 

00Ⅱ

 

何とか目的地周辺の市街地に到着した私だったがここまでの暑さでもうクタクタだったため、どうせ車など通らないだろうと思い道のど真ん中でぐったりと倒れていた。

 

どうもここらへんはまだ砂に飲まれていないらしいが、それも時間の問題だろうな。自然の摂理が乱れてしまった場合は人の考え以上の速度で綻びは加速していく。

よりにもよって、最初の任務地がこんな『見捨てられた土地』……いや、『緩やかに滅びに向かっている土地』とはなんという皮肉か。

 

同じく『緩やかに滅びに向かっている世界』にはあいつが呼び出され救われたが、ここは違う。

 

『英雄』なんていなかったのか……

 

はっきりと言うが、『同情』なんてしちゃいない。こんな事になった責任が今ある生徒に無い事くらいは分かっているがそれでもその土地にいる者の『運命』なんだ。

その『運命』に抗いより良い未来を掴むかどうかは私が決めることじゃない、その場にいる者が決めるべきだ。

 

だから……と言っては何だが私は今後のキヴォトスでの行動にある程度の方針を定めた。

基本的にキヴォトスに生きる彼女たち『生徒』が主役であるべきで、私はあくまで導いたり、手助けをするだけ。それを踏まえて彼女たちの手で結末を綴られなければならない。

 

その最初の地として意気込んで来たのだが、この体たらくという訳だ。

これについては全面的に私が悪いがそれでも、言わせてほしい。

暑すぎる……

あと少しで目的地、この程度の距離なら歩けるはずだがその一歩を踏み出したくない。

アラミゴやアム・アレーンを特に何も感じない顔で走り回っていたあいつはやはりおかしい……

私は身軽な格好で、あいつは鎧を着こんでいたはずなんだがな。

 

「……ん? ……あの……」

 

何かのブレーキがかかる音と共に声を掛けられる。

しまった、つい暑さにやられてボーっと考え事をしていた……

顔を見上げれば、銀髪に左右で少しだけ違う青い瞳の少女が立っていた、この暑さにも関わらずマフラーを巻いて自転車に乗りながら……

 

「……大丈夫?」

「……大丈夫に見えるのか?」

「あ、生きてた。道のど真ん中に倒れてるから、死んでるのかと」

「非常に疲れただけだ……主に暑さでな」

「……ホームレス?」

「何とも答え辛い例えを出すのは辞めろ……」

 

ホームレス。

浮浪者と言う意味でなら違う、そう見えたかもしれないが本当に違う! 

立派に職をもって給料を貰っている身分だ。

だが、家がない者という意味なら当てはまってしまう。

だから答えられなかった。

 

「路上生活者?」

断じて違う!!

 

なるほどこの生徒は思ったことを素直に口にするタイプなんだろう。例えが答え辛いと言ったら嫌な方の意味を使われたのだ。

 

「いいか! 私は仕事でここまで来たんだ!! 決して、この土地の住人でもなければ路上生活者でもない!」

 

流石にそこは譲れなかったんだ。暑さで悲鳴を上げる体で起き上がりながら大きな声を出せば更にふらつく……

 

「じゃあ土地勘がないんだ。見た感じ、連邦生徒会から来た大人の人みたいだけど……お疲れ様。学校に用があって来たの? この近くだと、うちの学校しかないけど……もしかして……」

 

その言葉は砂漠の中のオアシスかの様に私を癒してくれるものだった。

いくら近くまで『飛んで』来たと言ってもこの市街地だ、迷子になる可能性がないわけではない。

既に一度遭難した苦しみを味わった身とすれば、今日の冒険はここまででいいだろう。

 

「『アビドス』に行くの?」

「そう、その『アビドス高等学校』だ」

「……そっか。久しぶりのお客様だ。それじゃあ、私が案内してあげる。すぐそこだから」

「すまんが頼む……今日はもう遭難したくないんだ……」

 

まだ名前も聞いていない少女を信じてついていくのはどうかと思うかもしれないが、不思議とこの少女は嘘つきではないという確信があった。あそこまで素直に言葉を出す奴が嘘なんてつけるものかと。

だから私は自転車から降りて歩いてくれている彼女についていく。

 

それにしてもキヴォトス初日といい、今日といい……

私の仕事始めは何故か綺麗に始まる事はないらしい。

 

なんて、無情なんだ。

 

 

00Ⅲ

 

アビドス高等学校は周り街並みと同様に砂に塗れかつての栄光など失われていた。

学校としての風格も、人の気配も、そして緑もまたほとんどないのだ。

そんな『見捨てられた場所』に入ってみればやはり外同様に中もまた寂しいものであった。

 

もちろんその思いを所属している生徒に言ったりはしない。どのような場所であれ、彼女たちが守りたいものではあるだろうから。

 

とある教室の扉を少女が開け、先に入っていく。

 

「ただいま」

「おかえり、シロコせんぱ……い? うわっ!? 何っ!? その後ろでドアより背が高くて見切れてる人誰!?」

「わあ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」

「拉致!? シロコ先輩がついに犯罪に手を……!!」

 

顔が見切れているのは事実だが、人をまるで怪異か何かの様に……

それに拉致された被害者扱いか……ん? 待てよ、この案内した少女ーシロコはそんな事をするタイプの性格だったのか? 

 

「連邦生徒会から来た大人の人。行き倒れてた」

「私は行き倒れてたわけじゃない! 休んでたんだ!!」

 

路上生活者、見切れている不審者、拉致被害者、そして行き倒れた人。

どんどんと私の扱いが酷くなっているじゃないか! 

初日の方がまだ『大人』だとか『先生』として扱われていたぞ? 

 

「じゃあ拉致したんじゃなくて、お客さん?」

「そうみたい……」

「わぁ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね」

「そ、それもそうですね……でも来客の予定ってありましたっけ……」

 

ああ、そうか。

手紙で依頼を送りそれを私が受理して向かうまでにそれなりの日付が経っており、連絡先も書かれていなかったからメールではなく手紙で返そうにもまず間違いなく私の方が先に到着するはずだから無駄だと思って返事を送っていなかったんだった。

 

「連邦捜査部『シャーレ』の顧問エメトセルクと申し上げる。お前たちには『先生』の方がわかりやすいか?」

 

いつものように無駄に丁寧なお辞儀をすれば返ってきたのは驚きだ。

まさか本当に拉致被害者だと思ってたんじゃないだろうな……

 

「……え、ええっ!? まさか!?」

「連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」

「わあ☆ 支援要請が受理されたのですね! 良かったですね、アヤネちゃん!」

「はい! これで……弾薬や補給品の援助を受けられます。あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ? ホシノ先輩は?」

「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる!」

 

誤解も解けたところで自己紹介の流れになるのかと思ったが、そんな歓迎の場に相応しくない荒々しい音が響く。

このキヴォトスではよく聞く音、銃声だ。

 

「じゅ、銃声!?」

「ひゃーっはははは!」

「攻撃、攻撃だ!! 奴らはすでに弾薬の補給を絶たれている! 襲撃せよ!! 学校を占領するのだ!!」

 

ちらりと校門の方を見れば、初日に見たのとはまた別の……と言うより今日見た方が奇天烈な格好をしているが不良集団が見えた。

これが手紙にあった『暴力組織』か。どちらかと言えば、背が高くなったドワーフ集団擬きと思うが……

 

「武装集団が学校に接近しています! カタカタヘルメット団のようです!」

「あいつら……!! 性懲りもなく!」

 

カタカタ……ヘルメット団……? 

なんだその心底人を馬鹿にしたような名前は。

ヘルメット団という存在については調べていたし、いくつかの派閥がある事も知っているから理解はできる、ヘルメット団カタカタ派という事だろう。

だが、何を思ってカタカタなんだ。

もっとあるだろ。

ファイアヘルメット団とか、ブリザガヘルメット団とか……

 

そう私が思っていると、猫耳の少女ー先ほど私を見切れている不審者扱いしたーがピンク色の髪をした一回り小さい少女を伴って戻ってきた。

 

「ホシノ先輩を連れてきたよ! 先輩! 寝ぼけてないで、起きて!」

「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー」

「ホシノ先輩! ヘルメット団が再び襲撃を! こちらの方は『シャーレ』の先生です」

「ありゃ~そりゃ大変だね……あ、先生? よろしくー、むにゃ」

 

紹介を受けて眠気の混じる目で私を見るホシノと呼ばれる少女──

……お前はどうして『そんな目』をしているんだ。

それは私が良く知っている目だ、お前みたいな歳でするべき目じゃない。

 

『……滅びに抗うときがきた。星の理を、我らの意思で敷き直すのだ……』

『あらゆるもの失い、ときに命まで懸けなければならなかった。それでも役目を背負い続けることの、最後まで足掻くことの、何が悪いッ!』

『こんな結末が 星を愛し そのために生きた我らの終着点か……いや、終わりになどするものか』

 

ラハブレアの爺さん、エリディブス、そして私。

私たちオリジナルのアシエンたちがしていた目……百年の時で削れ、千年の時で綻び、万年の時で薄れていった擦り切れた心を持つ者がする目だ。

 

もちろん、目の前の少女が我々の様に過去の記憶すら欠落し自らすらも曖昧になってしまったわけではない。

だが、こいつも擦り切れかけている様に私には見える。

誰かが、何かが繋ぎとめてやらないと壊れてしまいそうで。

 

私のするべき事が見つかったかもしれないな……

 

「……エメトセルクだ。眠りの邪魔をしてすまなかった」

「……うへぇ」

 

自分の目の真意を悟られたと思ったのだろう、私の返答にバツの悪そうな鳴き声でホシノは返してきた。

別にいい、深くまで『視た』私が悪いからな。

 

「先輩、しっかりして! 出動だよ! 装備持って! 学校を守らないと!」

「ふぁあー……むにゃ。おちおち昼寝もできないじゃないかー、ヘルメット団めー」

「すぐに出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品は十分」

「はーい、みんなで出撃です☆」

 

私がどう思おうとも今すべきは招待していない困った来訪者への対処だ。

実際、アヤネと呼ばれた少女以外は各々の武器を準備し、迎撃へと向かっていく。

アサルトライフル、ガトリングそして盾とショットガンか。

 

「私がオペレーターを担当します。先生はこちらでサポートをお願いします!」

「防衛戦か、随分と久しぶりだ」

 

5人になったが結局は盾役・攻撃役三人・支援役一人になるだけだ。

むしろ攻撃が増えた分、量に対しても一定の処理が間に合うだろう。

特にガトリングという手数と制圧力優れた武器がある以上はその心配はいらない。

 

それによく言うだろう? 

攻めるより守る方が戦いやすいと。

 

「アロナ、私の方でも『視て』いるが、お前の方でも状況を把握して、可能なら妨害しろ」

『任せてくださいエメトセルク先生! 私の力、お見せしますよ~』

 

さて、既に役者は舞台の上に揃っている。

ではそう、始めようか。

この『物語』のプロローグを。

 

「では、戦闘開始だ」

 

──お手並み拝見と行くぞ、アビドス諸君。

 




長さ的にはどうしても長くなるもの以外は出来るだけこれくらいにして進めていきたいです。
その方が、進みも早くなりそうだからね。


エメトセルクとホシノの絡み早く書きたい…

今後の展開について(絆エピソードや番外編は書きます。アビドス編後の流れについて聞きたいです)花のパヴァーヌ(花)、エデン条約(エ)、カルバノグの兎(兎)

  • 原作通り(パ1→エ→パ2→兎→パ2)
  • 変則(エ→パ1,2→兎)
  • その他(コメントでお願いします)
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