エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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第一章完結!


1-12 古代人とゲーム

00Ⅰ

 

「あ、アリス、しばらくメイド服は見たくありません!」

 

モモイの悪ふざけに怯えながら、アリスは心底見たくないと吼えた。

ネルはそこまでメイド服していたか、と思うのだがな。どちらかと言えばジャケットの方が印象に残っている。

ああいうファッションはたしかアーテリスにもあったな。

 

『スカジャン』だったか?

私はああいうのは着ないが、嫌いではない。

少なくとも服だからな。

 

「身体の方は全部直ったみたいなんだけど、心の方がもうちょっとかかりそうだね」

「あの、建物を壊しちゃった件について、生徒会のところに行ってきたんだけど……。幸いなことに、部活動中の『事故』として処理してもらえたよ」

「C&Cが手を回したんだろう。アリスの一撃もそうだが、それ以外も部分は殆ど向こう側がしたことだしな」

「はい。それと……ネル先輩から伝言。『また会おう』……って」

「ひぃっ!?」

 

そう言って今度はアリスがそれなりの速さでロッカーの中に立てこもってしまった。そこはユズの特等席だろうに……。

と言うよりそんなにトラウマなのだろうか。

普通に仲良くできる範囲だと思うのだがな、別に執念深いわけでもあるまいに。

 

「ああっ、アリスちゃん!ロッカーの中に入っちゃダメ!ユズちゃんを見て変なこと覚えちゃったよ!ふぅ……まあそれならそれでよかった。ところで……」

「うん……」

 

確かに修繕費についても大事な話ではあるがそんな事よりも大切なことがある。

なぜ我々があれほどの修羅場を潜り抜けゲームを作ったのか。

 

「ミレニアムプライス、始まったね」

「もし受賞したらクラッカーでも鳴らそっか。でも、もしそうじゃなかったら……」

「……すぐに荷造りしないとね。私たちはさておき、ユズちゃんとアリスちゃんは……」

 

お前たちはやれるだけの事はやったと私は思っている。

だが、そんな言葉を掛けたところで受賞を逃した時の慰めにはならない。

今回に関しては裏で根回しなどは一切していない、真剣な挑戦。

よって、落ちた時のリカバリー策はない。

だがそれでも、ここまで一緒にやって来たのだ。終われば後は知らないなんて私の柄じゃない。

 

「もし万が一そうなった時は、シャーレに来い。それくらいの面倒は私が見てやる」

「先生……」

「だが、まずは見ようじゃないか。お前たち……いや、私たちの作品、その成果を」

 

00Ⅱ

 

『これより、ミレニアムプライスを始めます!司会および進行を担当するのは私、コトリです!』

 

何と言うか見知った顔が司会をしていると言うのはよく分からない気分に駆られるな。

不正などはないのだが、そう何というか言い表せない気分だ。

 

『今回は、これまでのミレニアムプライスの中でも最多の応募数となりました。おそらくは生徒会の方針変更により、部活動維持のために『成果』が必要になった影響かと思われます!』

「……コトリちゃんたちの方も、無事だったみたいだね」

「エンジニア部は元々、ミレニアムの中でもかなり功績が認められてる部活なこともあったし……でも、本当によかった」

「うん。ところで、史上最多の応募って……」

「まあ、そういうことだ。ライバルは多い……が、それを恐れる必要はない」

 

贔屓目に見ずとも、『TSC2』の出来は良い。

悲惨なバグも無ければ、物語が謎でもない。

それでいて一作目が好きな人も納得できる『遺産』を引き継いでいる。

なら、並み居る作品の中でも埋もれる事は決してない。

 

『昨年の優勝作品であるノアさんの『思い出の詩集』は、本来の意図とは少し違ったようですが……その形而上的な言葉の羅列が、ミレニアム最高の不眠症に対する治療法として評価されました』

「どういうことだ……?」

 

そんなに眠くなる詩集なのか、ノアの作品は。

いや、思い出とついている以上は彼女からしたら真摯に向き合った作品であるだろうからそんなことで興味を持つのは大変失礼なのだが……。

とは言え気になると言うのが正直な感想だ。

 

『今回も、『歯磨き粉と見せかけてモッツァレラチーズが出る持ち歩きチーズ入れ』、『ミサイルが内蔵された護身用の傘』、『ネクタイ型モバイルバッテリー』、『光学迷彩下着セット』、『ちょうど缶一個なら入る筆箱型個人用冷蔵庫』、そして!今キヴォトスのインターネット上でセンセーションを巻き起こしている、スマホでマルチプレイが楽しめるレトロ風ゲーム、『テイルズ・サガ・クロニクル2』などなど!今回出品された三桁の応募作品のうち、栄光の座を手にするのは、たったの7作品!」

 

何とも言えない作品群の後で『テイルズ・サガ・クロニクル2』を出されても困るのだが……。

しかし7作品か。

その言葉を聞いたゲーム開発部の全員に緊張が走っている。

 

狭き門ではあるが、1枠でないだけまだマシだ。

むしろ、可能性は高い。

一体何のために使うのか分からない作品に比べたら、ではあるがな。

 

『それでは7位から、受賞作品を発表します!7位はエンジニア部、ウタハさんの『光学迷彩下着セット』です!これは身に着けてもその下の素肌が見えてしまうため、着ているのかそうでないのか分からないというエキセントリックな作品ですが……露出症の患者さんが合法的に趣味生活を営めるにようになるという点で、大変高い評価を……その評価をした審査員が一体誰なのか、気になってしまいますね!とにかく7位!』

 

一番用途が分からない作品をまさかウタハが作っていたとは……。

それになんだ、露出症の合法的な趣味生活って……そんな下着を付けて歩いている奴がもしいるとしたら身震いする。

恐怖のミラプリというモノだ。

 

「ふぅー。まっ、私たちのゲームは7位にはふさわしくないよね」

「それについては同意だな。1位か2位だろう、私が手伝ったのだから」

「先生の自信は何処からくるんですか……」

『そして6位!この製品は……』

 

そう言ってはみたものの、5位、4位、3位と名前が呼ばれず、2位も違うとなるとさすがの私も緊張感を持ち始めた。

それは既に緊張していたゲーム開発部の空気感故か、それとも私自身が彼女達の部活は残るべきだと思っているから故か。

 

「お願いします、私たちの名前を!」

「くっ、2位でもない……!っていうことは……!」

『最後に!今回のミレニアムプライスで、最高の栄誉を受賞した作品です!』

「ドキドキ……」

「いよいよか……」

『その1位は……!』

 

全員の心は一つだった。

ここが決着の場であり、我々の未来が決まる。

もし無理ならなんて事は考えていなかったが、可能性としてはあるのだから何とかするつもりだ。

 

「うぅ……っ!」

『CMの後で!』

「ふざけるな!!」

「アリス!」

「充電完了、いつでも撃てます!」

「構わん。何なら私が乗りこんでやる」

 

私がモモイと並んで叫ぶ側になるとは思ってもいなかったが、いくら何でもこれは酷いだろう。

もう纏めて出せばいいだろう。こっちに来てからCMの後でというのがテレビ番組でも多いが許せない。

邪魔で仕方がない、むしろCMに対して嫌悪感を持つだろうに……

 

「気持ちは分かる!気持ちは分かるけど、授賞式会場もこの画面も撃っちゃダメ……!先生も乗り込んだらダメです!」

「うぅ、もう焦らさないでほしい……」

「まったく……こういうタイミングのCMなど悪印象だろうに」

 

もし私があいつとの戦いで、名乗る前にCMの後で!なんてしようものなら炎上案件だろう。

それくらいに間が悪くなるのだ。

演劇鑑賞でそんなことされたら、おそらく私は席を立って抗議するだろう。

まあ、皇帝が鑑賞する演劇でそんな無粋なことはしないだろうが。

 

『さあ!それでは発表します!待望の1位は……新素材開発部ーー』

 

期待外れの結果が読み上げられた途端にモモイがディスプレイを銃撃した。

 

「きゃぁっ!本当にディスプレイを撃ってどうするの!?」

「おい!同率1位の可能性もあるだろう!それに、どんな結果であれ最後まで見るのが道理だろうに……」

「どうせ全部持って行かれちゃうんだし、もう関係ない!」

「それでも、最後まで諦めずに見るべきだ」

「うぇぇぇん!今度こそ終わりだぁぁぁぁぁ!!」

 

今のモモイにはどんな言葉も届かなかった。

もしかしたら、何らかの特別賞が与えられる可能性があるかもしれないと言うのに……。

そして何より、自分たちの行いには胸を張って欲しかったというわがままもある。

だが、悲しい気持ちも分かるがな。

 

こうなっては私が別の方面で働きかけるしかないか。

なんにせよ、お前たちは私にその『価値』を示したからな、それに応えるのもは私の仕事だ。

 

00Ⅲ

 

「うぅ……。結局こうなっちゃうなんて……」

「落ち着いて、お姉ちゃん。でも……」

「……分かってるよ!全部が否定されたわけじゃない。へこたれる必要なんて無いって……。ネット上の評価も悪くなかったし、クソゲーランキング1位のあの時から、ちゃんと成長した。これからも、きっと成長していける。次こそはもっと良い結果を出して、今より立派な大きい部室だってもらえるはず!……でも」

「うん、だってここを追い出されたら、ユズちゃんとアリスちゃんは……」

「心配しないでミドリ。わたし、寮に戻る」

「えっ?」

「もうわたしのことを、クソゲー開発者って呼ぶ人はいないと思う。ううん、もし仮にいたとしても、大丈夫。今のわたしには……この3人と、先生がいるから。ありがとうございました、先生」

 

私が感謝されるとは思ってもいなかった。

何をしたというのか。

嫌味ったらしく文句を言ったくらいで、何も特別な事はしていないのに。

 

「……私は何もしていない。お前たちの成長は、お前たちで勝ち得たものだ」

「先生がこの部室に来てくれた時から……わたしたちは、大きく変わることができました」

「……そうか」

 

感謝されるなんて、私の柄じゃないんだ。

まだ私のせいにされる方がよかった。

私が手を貸したというのなら、もっと良い結末を用意してやりたかったさ。

だから、私はお前たちに何も出来てないんだ。

 

「ただ、アリスちゃんは……」

「そこは任せろ。シャーレならば問題なく受け入れられる。しっかりと面倒は見るさ」

「アリスちゃん……ごめんね」

「いえ。先生のことは、信じられますから。ですが……もう……もうみんなとは……一緒に、いられないんですね」

「うっ、ごめんね……ごめんね、アリスちゃん!私、毎日シャーレに行くから!本当に、絶対に毎日行く!どこに行っても!一緒にゲームを作ろう!」

「……」

 

一緒にゲームを作ろう、か。

そう言えるならお前たちはまだ、強くなれる。

それなら私もまだお前たちに何度でも力を貸そう。

 

「うううう!やっ!やっぱりいや!先生!やっぱアリスを連れていっちゃダメ!わ、私の部屋に連れていく!ベッドも一緒に使おう!ごはんも2人で分けて食べるから!」

「わ、私の分もあげるっ!」

「2人とも、先生を困らせないであげて……それに、もしそのことがバレたら、モモイもミドリも……」

 

それがどれだけ難しい事なのかくらい2人とも分かっているだろう、それでも離れたくない気持ちは私にも理解できる。

だから困らせられているなんて思わないし、可能なのであればアリスを引き離したいわけでもない。

4人揃ってのゲーム開発部だろう。

 

だが、本当に特別賞も何もなかったのか?

ディスプレイが破壊された今、何も分からず終いだが。

それでもあそこまでの作品が何も無しなど到底考えられないのだが。

それはやはり贔屓目に見過ぎだったのだろうか。

 

目の前で別れを惜しむ少女たちを見ながら、私の中で割り切れない疑問が再び湧いてきていた矢先、部室のドアが開き今空気感に相応しくないほどの笑顔なユウカが入ってきた。

 

「モモイ!ミドリ!アリスちゃん!ユズ!」

「ひいっ!もうユウカが!」

「ちょっと待って!そんなにすぐなんて……!」

「悪魔め!生徒会に人の心はないわけ?」

 

ユウカに限ってそんなわけない。

人が悲しんでいるであろう場所に喜んで出向いていくなど、それこそ嫌味な性格でユウカはそんな奴じゃない。

むしろ、なんだかんだ言いながら一緒に悲しんでくれたり励ましてくれる生徒だ。

 

そんな彼女が笑顔と言うことは……。

 

「おめでとうっ!」

「……え?」

「え、何この反応?結果見てなかったの?」

「1位までは見たんだが……何処かの誰かがディスプレイを壊してな」

「まだ放送中なんですけど……」

 

そう言いながらユウカが私たち全員に見えるようにスマホを出す。

ああ、そういえば私でもこっちで見れたのか……。

 

『今回は特別賞を設けます。その受賞作品は……ゲーム開発部の『テイルズ・サガ・クロニクル2です』

「えぇ、嘘っ!?」

「何が起きてるの……?」

『レトロ風という時代を超えたコンセプト、常識に縛られず次々と想像を超えていく展開、一見してそれらとマッチしそうにない不可思議な世界観と、最初は困惑の連続でしたが……新しい世界を旅して、ひとつひとつ新たな絆を結びながら、魔王を倒しにいく……そういったRPGの根本的な楽しさが、しっかり込められた作品だと思います。それに何より序盤から登場し、仲間でも敵でもない立ち位置で助言する男性キャラクターなどそれぞれのキャラクター造形もしっかりとし全員が魅力的なキャラクターでした。』

 

助言する男性キャラクター……。

そんな奴、私のチェックした脚本には無かったが……それを追加したのか。

なんだその敵でも味方でもないって。

しかもそれを最初に持ってくるくらい印象に残るキャラクターだと?

そんなことをするからギリギリになるんだ……。

 

『それらの点を評価して、この作品に今回ミレニアムプライス特別賞を授与します』

「え……あ……」

「本当におめでとう!その、実は私もプレイしてみたの。決して手放しに面白かったとは言えないけど……良いゲームを遊んだ後の、独特の感覚が味わえた。それに助言してくる男の人が敵か味方か最後までわからないのがよかった!」

 

謎の男は気になるものの、ユウカがなんだかんだ言いつつもプレイしてくれていた事に喜びを禁じ得ない。

やはりお前は、ゲーム開発部の味方じゃないかと一言くらい言ってやりたい気もする。

 

そして賛辞を送りたいと思っていたのはユウカだけではないらしい。

 

「モモ、ミド!あたしも『TSC2』やってみたよ、すっごく面白かった!今ネット上でも大騒ぎだよ!ヴェリタスの調べだと、有名アイドルの名前より検索数が多くなってるってさ!」

「ほ、ほんとに……?」

「確認しました。3時間前にアップした『テイルズ・サガ・クロニクル2』は、先ほどまでダウンロード7705回、合計1372件のコメントが付いていましたが……ミレニアムプライスの発表以降、約26秒間でダウンロード回数が1万を超えました。」

 

途轍もない速さだ。

こう言うのを『バズる』と言うのだとこの間何かの記事で見たが、まさしくその状態。

それくらいダウンロードされて当然だと思うし、もっと増えるべきだと私は思っている。

それに見合う作品だ。

 

「見て。今同率で、一番多くの共感をもらってる二つのベストコメント……」

 

〈chicken:実際にプレイするかどうか、最初は迷いました……でも今はこう思ってます。このゲームに出会えて、よかったです〉

〈kotoha0507:これまでミレニアムに対して、偏見を持ってしまっていました。冷静さと合理性しかないというミレニアムの生徒たちへの偏見は、今回のミレニアムプライスと、この『テイルズ・サガ・クロニクル2』を通じて、完全に無くなったと断言できます〉

 

出会えてよかった、偏見がなくなった。

そう言ってもらえるのは中々ない事だ。

人と人の付き合いですら難しい事をを、より難しい作品──それもゲームで成し遂げたんだぞ。

 

これがモモイの言っていたゲームの力、か。

 

「えっと……っていうことは、廃部にはならないんだよね!?」

「ええ、そうよ。あ、あくまでも『臨時の猶予』だから。正式な受賞ではないし、生徒会としてはまた来学期まで……ゲーム開発部の部室の没収および廃部を、『保留』する事にしたの。えっと、それから……その……」

「ん?」

「あなたたちのおかげで思い出したわ。小さい頃に遊んでた、色んなゲームのことを。久しぶりにあの頃の……新しい世界で旅をする楽しさを感じられた……ありがとう。それじゃあ、部室の延長申請とか部費の受取処理とかは必要だから、落ち着いたら生徒会室にきてね。じゃ、また後で!」

 

ユウカらしい真摯な言葉だったなと、出ていく背を見て思う。

モモイは冷徹だ何だと冗談含めて言うが、むしろ情が見えているタイプだと思うのだがなぁ。

 

それに、『廃部』の猶予か。

危機は去ったが、また暫くすれば訪れる。

となれば私がまだこいつらを見守る必要が出てくる。

サボらないようにな。

 

「じゃ、じゃあ……!」

「お前たちは勝利したと言うことだ」

「や……やったああぁぁぁっ!」

「良かった……!」

「やった……嬉しい……!」

「えっと……?」

 

モモイ、ミドリ、ユズは安堵、達成感、その他の感情が合わさった歓喜の声をあげるが、アリスだけは事態をまだ飲み込めていないようだ。

 

「アリスちゃん!私たち、特別賞を受賞したんだよ!この場所も、私たちの部室のまま!」

「えっと、つ、つまり……。アリスはこれからも……みんなと一緒にいて、良いのですか?」

「うんっ!」

「これからも、よろしくね……!」

「私も……私も、嬉しいです」

 

そう言って全員が抱き合い、『これからも一緒』と声をあげ互いの健闘を讃えあう姿を見て私はまたあいつへと問いかけるのだ。

 

(どうだ。お前ほど私は器用ではないが……それでもよくやったと思わないか?)

 

と。

あいつならもっとゲーム作りを手伝えたかもしれない、失望した目など向けなかったかもしれない、もっと優しくできたかもしれない。

それでも私は私のやり方で今の光景を目にすることができた。

 

それにな、こいつらを見ていると厭でも思い出すんだよ。

お前とヒュトロダエウス、私の3人で居た頃の記憶を。

叶わぬことだが、もし3人で先生をやれていたら……まあ退屈はしないだろう。

 

「先生もありがとう!」

 

懐かしさと目の前の光景の微笑ましさに少しだけ顔が緩んでいた私にモモイが声をかけてきた。

また感謝の言葉か。

何もしていないと言うのに……。

 

「だから言ってるだろう。この結果はお前たちが勝ち得たものだと」

「それでも、先生があの時私たちを信じてくれなかったら、怒ってくれなかったら、今の『TSC2』はできてないよ!」

「それは……はぁ、ならそう思っていろ」

「うん!」

 

1万2千年以上生きようと慣れないな、感謝されることは。

普通は慣れると思うのだが、私は違うらしい。

すぐに厳しく返してしまう。

できれば今回の人生ではそれを辞めたいものなのだが……いかんせん記憶があるからな。

 

……そういえば聞いておくべきことがあったな。

 

「モモイ、一ついいか?」

「なに?」

「審査員やユウカが言っていた『仲間でも敵でもない立ち位置の男』だが、後から追加したのだろうが随分と好評だったな。あれは何だ?」

 

気になることだ。

私が知らない以上は後から追加したキャラクターなのだろうが、あそこまで好評と言うことはストーリーとも上手く合わさっていると言うこと。

しかしそんな奴をよくもまあ突然追加できたものだと。

 

「ごめん先生!」

「何がだ」

「先生には黙ってたんだけどさ。ミドリ、ユズ、アリスと相談して先生みたいなキャラを出そうよ!ってなって……それで急遽入れたんだ」

「私を元ネタにしたキャラだと……?」

 

私の顔を見て何かを思いついた顔をしていたモモイの真意はこれか。

まさかと思ったが本当にそう言うことだったのか。

 

「駄目だった……?」

「いや駄目ではないが……どうして私を?」

「先生はどんな時も私たちを見てくれてたし、厳しいけど見捨てたりしなかったじゃん。それにゲームを作るってなった時も先生は経験なんてないのに、それでも率先して手伝おうとしてくれた。そんな先生に何かお返しできないかなってなって。勿論スタッフロールには乗るけどさ、サプライズとして残そうって思いついたから」

 

むしろ私はかなり口うるさかっただろうに。

もう少し甘い対応でも良かったとか、モモイにあそこまで言う必要はなかったかもしれないとか、自分の至らない点なら幾らでも沸いてくる私に感謝して御礼まで用意するとは。

 

最初に想定はしたが否定したものが実際にされるとなるとまた違った気分だ。

だか胸を張って言えるのは、嬉しいのは事実だと言うこと。

 

「お前たちは、私に約束通り『ゲームの力』を見せた。そして、そのゲームに私を出すと言う御礼までつけてな。身に余る光景だ」

「本当!?怒ってない?」

「誰が怒るか。あの感じでは名前はないのだろうし、魅力的なキャラクターらしいからそれなら何も言うまい。むしろ、喜んでいるくらいだ」

「じゃあもっと喜んでよ〜!」

「そうですよ!」

「先生の喜んでるところ、あんまり知らないです」

「アリスも見てみたいです!先生がうわああ!っているところを!」

「う・る・さ・い!」

 

何とも最後の最後まで締まりがない終わりだったとも思うがこれはこれで良いのだろう。

 

そして、私はこの日再び胸に誓ったのだ。

ゲーム開発部に何が起ころうとも、この日のこいつらの笑顔はどんな手段を使おうとも守ってみせると。

 

00Ⅲ Side:???

 

照明が消され皆が寝静まり帰ったゲーム開発部の部室。

静寂が支配するこの空間で一人でにゲーム機が起動する。

 

データの復旧率98.00%

システム再起動……

準備完了

プログラムをセット……

 

画面は赤く染まり、文字が浮かび上がる。

まるでそれは全ての始まりを予兆するかのように。

 

Divi:Sion……

 

AL-1S……いえ……

アリス……私の……

私の、大事な………!@#$%$^&*(!`$!!

 

機械の少女と旧き人の物語はまだ、始まったばかりである。

 

つづく

 




無事、第一章は完結です。
展開としてそこまで大きく変更点はない様にしたつもりです。

エメトセルクについて。
ゲームのキャラとして登場させるのは最初から決めてました。だって本人が1拡張のオオトリでしたからね。
彼は今回のストーリー上では特に大きな暗躍もしてませんし暴れてもいないです。
少しくらい彼の『休み』期間があってもいいのではないかと思っていましたし、次の本筋からは基本休めませんから。

パヴァーヌ2章について。
基本的な骨子は出来てます。そのうえで、推奨BGMや話の内容にある程度レガシーのネタバレが入っていいのかが気になります。
親和性事態はあると思いますし、実際書くのはエデン条約とカルヴァノグ1章終わってからなのでかなり先だから流石に少し挟んでもいいのかなと考えてます。

次回以降について。
本編書くと本編ばっかり書く人になっちゃうからそろそろ絆エピソードも消化していかないと。
エデンのプロローグだけは書いてるかもしれない。


次回以降もよろしくお願いします。

黄金のレガシーのネタバレネタは有り?

  • 有り
  • ダメ!死刑!
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