エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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ノノミはシンプルに善意をぶつけて来るから好き。

エメトセルクが耳掻きされる図はなかなか思いつかないものです。
でも寝てる姿は思いつくので中々難しい。





ノノミ絆ストーリー:偶然の出会い/優しい時間

 

偶然の出会い:00Ⅰ

 

偶然の出会いというのはあるのだろうか。

例えば、私たちの時代……エルピスにあいつが来たこと、そしてアーモロートにて私とあいつが戦ったこと。

 

偶然たまたま、あいつだったなどとは思わない。

世界が分たれ、アゼムの魂を持つ者が私を斃し終末の真相をするために過去に来る……それが偶然でなどあるものか。

 

アレは必然であり、そういう運命だった。

 

では、突然にある場所で出会った場合はどうだろうか。

本当の意味で偶然遭遇することも多いのだが……ことキヴォトス、かつ私に関係する偶然の出会い程信用できないものも多い。

 

今回はそんな思い出を振り返ってみるとしよう。

 

 

――今日はなんだか、良いことが起きそうな日です

――先生は今、どうですか?楽しい時間、過ごせてますか?

――今日が良い一日になりますように。私、先生のこと応援してますから!

 

モモトークの通知欄に浮かんだ文章。

それはノノミから私に送られてきた些細なものではあったが、

一日がスタートし軌道に乗りつつも面倒な仕事に追われる日だといつもの様に少し億劫に思い始めた頃に届いたそれはこの日に少しだけ前向きに取り組もうかと思えるくらいにはありがたいメッセージだった。

 

良いことが起きそうな日、か。

キヴォトスでは早朝の番組でその日の占いというコーナーがあり、生徒たちはそれでその日の運勢に一喜一憂するとかなんとか。

そんな占いに何の意味があるのかと私は冷めた目で見てはいるのだが、別にそれを信じる事は悪い事ではない。

その日を良くするのは自分自身の努力だろうと言うのは恐らく野暮と言うものだろう。

 

――では、私もお前の一日が良き日であることを祈ろう

 

簡潔すぎたか。

事務的なモモトークに返すような文面だった、今からでも補足を送るべきか。

そう思い再び文章を打とうとしたときには既に遅かった。

 

――こんなにも早くお返事をいただけるなんて!

――私はもう、今日一日これだけでも十分すぎるくらい幸せです!

 

早い、余りにも早かった。

送って直ぐに返信が来ると誰が思うだろう。

まさか私とのトーク画面を開けて待っていたのではないだろうな……。

ノノミが嬉々として返信を返す光景自体は想像できるのだが、普段から全員に返すのが早いのだろうか。

 

もしそうなら私はいつも申し訳ない事をしているかもしれない。

基本的に私は緊急そうな連絡以外は出来うる限りその日のうちに返すがやはり量が増えれば増えるだけ返信は遅くなり、仕事の量に比例することもまた然り。

しかもわざわざ古い順に返信を返すものだから、どんどんと返信が溜まっていく始末だ。

 

目についたものから返せばいいだろうと思われるかもしれないが、それでは均等な対応とは言えないだろう。

確かに個人的に共感できたり、いい奴だと思う生徒はいる。

私も人である限りは当然そうだが、それでも全て同じ生徒なのだ。

問題児と優等生への対応を誤れば、当然に片方に不満が溜まる。

この点は言い方は悪いが政治的なものに近い。

 

「本当に面倒だ、立場というものは……」

 

しかしこれでも、昔と比べたら遥かに心に余裕を持っているし冗談なども言えるし、一人一人と向き合う時間などは取れている。

先生の責任は重いが、それでもアシエンとしての使命に比べれば軽い。

混乱を煽る必要も、大勢を死に追いやる必要も、ましてそれを御破算にしてくるあいつもいない。

それにここには、私が毛嫌いするような『なりそこない』は少ないからな。

 

結局、ノノミに返信は打たずにその目線を窓の外へと向けアーモロートの街並みをあしらったグラスに入った水を飲み干す。

 

「さて、良い一日の為に私も動くとするか」

 

人生は短い。

今の私の寿命など分かりはしないが、それでも生徒にそれを説くならば私もまた惜しんで進まねばな。

 

偶然の出会い:00Ⅱ

 

外での仕事……アビドス郊外の市内での安全パトロールを終えた私は同じ様に進んで参加していた元ヘルメット団の生徒たちに別れを告げ、1人帰路に着いていた頃、ある違和感……と言うよりは私を陰からずっと見ている存在について考えていた。

 

あれでバレていないと思っているのだろうか。

確かに最初から見られていたわけではない。途中から私の事を監視……ではなく観察と言うかただ見守ると言うのか。

どちらにせよ、それがノノミであることくらいはすぐに把握できた。

 

それを知っているのならば声をかければ良いのだが、私がやっているのは報酬などでないボランティア活動。

そんなものに参加しないかと誘うのは私の立場を利用した圧に他ならない。

 

考えてみるといい。

断ればボランティアをやりたくない奴と思われるかも、と相手に思わせるそれに何の意味がある。

他意はない、なんて言葉は何の気休めにもならない。

 

それにそもそも安全パトロールなど一人で十分だと思っていたのに、いつの間にか人が増えて私自身が困惑してるんだ。

だから、誘わないし参加する必要もない。

 

とは言え、一言声をかけるべきだったかと考えていればノノミであろう存在が小走りで背後まで近付き大きな声を出す。

 

「わっ!」

 

よくある気付いていない相手の後ろに近付いて大きな声をあげて驚かせるアレだ。

残念なことに私はやられすぎて慣れているし、そもそも気配を察知するのは得意な方。

リアクションとしては不合格ではあったが、ノノミの方へ振り返る。

 

「あはは〜⭐︎じゃーん、驚きました?って言いたかったんですけど、やっぱり先生にはバレてましたか」

「気配を察知するのは得意なんでな、ノノミ」

「歩いていたら先生を見かけて、パトロール終わりまで待ってました!」

「殆ど終わりの頃から私を見ていたな。それでお前はどうしてここに?」

「ちょっと買いたいものがありまして。先生もご存知の通りアビドスはまだ店が一杯というわけではありません。生活必需品を買うのにも結構遠くまで出てこなきゃいけないので」

 

ダンベルでも買いに来たのか、と考えた私はなんて愚かなのだろうかとノノミの発言で我へと帰った。

そう、アビドスの復興はまだまだ始まったばかり。

人の来訪が増えたとは言え定住者はあまり増えておらず、わざわざ人の少ない地域にショッピングモールを建てる意味もない状態は継続している。

人の来訪もどこまで続くかはわからない、話題性だけでは継続し得ない。

 

借金が殆ど意味をなさなくなれば万事解決などと言う甘いものではない。

マイナスの状態から漸くゼロに近付いているだけの事なのだ。

かつての栄光を取り戻すにはまだまだ先は長く、少なくともノノミやシロコの代では厳しくアヤネやセリカの代で芽が出始めるかどうかというのが私の見込みだ。

 

それは私が魔法で校舎を新品同然にしようが、積もった砂を吹き飛ばそうが、幻影で人が多くいる様に見せようが変わらない。

だから私は『ルールの外』の方法ではなく、健全かつ正攻法で臨んでいる。

 

だからこそ、力不足を感じる。

出来ることならばノノミたち二年生とは言わず、三年生……つまりホシノの代で芽吹かせてやりたい。

あいつにとって学生生活は苦難の連続でも、その終わりは良かったと言える様な形にしてやることこそ私がしてやれる手向だろうと。

 

歯痒く苦いものだな。

 

「でも大丈夫です。こうやって偶然の出会いが起こったりもしますから⭐︎」

 

アビドスの奴らはこんな奴ばかり、それ中でもノノミは飛び切り。

あの苦境にあったアビドスが空中分解せずに結束し続けられたのはノノミの優しさや気が効く部分があったからだと私は思う。

それはそれとして、偶然という部分が引っかかりはするがな。

 

「偶然か……私のスケジュールを知っているような気がしないでもないが……」

「偶然です!」

「……はぁ」

 

本人がそこまで言うのならばもうそれでもいいだろう。

別に私の外出スケジュールを把握している事を咎める必要も無ければ、調べるなという権利もない。

 

「それで何か用でもあるのか?」

「私と一緒にパフを食べに行きませんか?この周辺によく知っている、有名なお店があるんです☆」

「……帰る――」

 

パフェなんて私向けじゃない、他の女子と行け。

そう言い終える前に、ノノミが私に抱き着いてきた。

 

「捕まえた~☆」

「おい!私は帰ってからもすることがあるんだ!!」

「帰り道だからいいじゃないですか!」

「第一、私はパフェなんて――」

「じゃあ、さっそく出発~」

 

女子のスイーツにかける情熱から来る力には勝てず、最初こそ若干引きずられ途中からは私も諦めてその後を着いていくことにした。

まあ、別にパフェなんてそこまで大変なものでもない。

それこそ、柴関ラーメンの大盛の方が辛いだろうと考えていた私は到着した店で1m級のパフェを半ば強引に二つずつ頼まれ、危うくそのまま星界に帰りかけた話はまた今度。

 

優しい時間:00Ⅰ

 

「あ、先生!ここです~こちらへ~」

 

ノノミから買い物に付き合ってほしいと連絡を受けた私は、さては荷物持ちかと少しばかり嘆きつつも呼ばれたショッピングモールまで出向いていた。

別に買い物自体は嫌いではないし、生徒の買い物の仕方や何に興味を持っているのかは先生として勉強になる部分も多い。

つまりは、見聞を広めるためちょうどいいわけだ。

 

「お待ちしておりました☆」

「少し遅かったか?」

「いえいえ、30分くらいですし」

「それは待たせすぎじゃないか」

「いえそんな、先生は時間通りにいらっしゃいましたし、私が勝手に待っていただけですので☆」

「それでもだなぁ……」

 

いくら時間通りに来たとしても、30分も待たせたと言うのは余り良いことではない。

私の場合その気になればすぐに現地に到着することもできるわけだから、早く到着したのなら一言くらいは欲しかった。

それに私の方が待たされるのには慣れているしな。

 

「それでは出発!楽しいデート……いえ、ショッピングの時間ですね!」

 

ショッピングと聞いていたのだが、ノノミの目的はデートだったのか。

別に私との行動をどう捉えようとそこは生徒の個人の問題ではあると思ってはいたのだが、よく分からないスクープ記事に書かれても面倒だなとかそんな厭な考えも過りはする。

ただ、こういう場合はそう。

ノノミの言葉を否定しない方が、本人の楽しみを壊さないためにもいいのだ。

今日一日くらいはそういう役を演じてやってもいいだろう。

 

そう思いながらついていけば、本当に目的の買い物よりも色々見て回る事が目的かのように店へと入っていく。

 

「あっ!先生!あそこも行ってみましょう!」

 

とか。

 

「うーん、やっぱりディフューザーも買った方がいいですよね?教室に置いたらよさそうです」

「あ、オセロゲーム?やっぱりこういうのも一つあると……」

 

あれよこれよと買い物かごの中に押し込まれていく。

ノノミは確かに金を持ってはいるようだが、それにしても買いすぎである。

もはや見かけて興味を持ったものはどんどんと押し込んでいると言った方が正しいのかもしれない。

 

「買い過ぎじゃないか?」

 

注意するべきかどうか、女子の買い物を邪魔してはいけないのではないか。

幾分かの葛藤を抱えつつも、流石にその量を纏めて買う行為とそれを持って帰る労力を思えば流石に一言漏れてしまった。

 

「だって、アビドスからこのショッピングモールまで、こんなに遠いのですから!何度も頻繁には来られないので、これぐらいは買わないとダメです」

「……そうか」

 

怒られてしまった。

何個ダンベルを買うつもりだもう十分だろう、そんなに買って本当に使うのかなどなどの言葉を続けるための取り付く島もない。

やはり女子の買い物に文句を言うべきではないのだろう。

それに必要以上の買い物などノノミが初めてみるわけでもない。

アゼムやヒュトロダエウスも当然のことながら必要以上のものを買っていたのだから、買い物とは元来そういうものなのかもしれない。

 

「それに……みんな自分のアルバイト代を、学校の借金を返すのに使っているので……このままじゃ学校の教室じゃなくて、まるでアルバイトの休憩室みたいで可哀そうなんです……」

 

借金が大幅に緩和されてもなお、アルバイトを辞めずにコツコツを返済にあてようとする行為は変わらなかった。

曰く、賠償金で賄うのもどうなのかやはり出来るなら自分たちで最後は完済したいとか。

私からすればゆすれるだけゆすればいいだろう、カイザーからなんてと思うのだがやはりこれまでの歩みを変えるというのは難しいのだろうしこれは彼女たちの物語。

 

バイトを続けようが、コーヒークッキーを始めようが、ノノミがみんなの為に買い物をしようが私があれこれと障害になるべきではない。

 

「なら、一つだけ条件がある」

「なんですか?」

「お前の買い物を黙認する代わりに、ここは折半といこうじゃないか」

「でも、私のカードの限度額オーバーまでは……」

 

ノノミのカード。

恐らく現金化出来るのであれば、かなりの額になるそれ。

それを一人の時に使うと言うのならば止めはしない。

しかし、この私の前だ。

 

「俗に言う爆買いの共犯者、それに私もあいつらの為に何かしてやりたいしな」

「先生……。分かりました!今回は先生と半分こで☆」

 

生徒に金を出させる行為など、私からすれば到底許せるものでもない。

極論私の場合はいくつかの障害はあれど経費として計上できるのだから、やはりこれくらいは一緒にさせて欲しい。

 

そんな私の想いを汲んでかノノミもそれ以上は言わずに再び楽しいショッピングへと戻っていった。

 

さて、帰りの荷物は……恐らくとんでもないことになるな。

 

優しい時間:00Ⅱ

 

案の定、配送などは行っておらずとんでもない荷物を私とノノミとで部室まで持ち帰るハメになった。

余計な意地を張って、ノノミの分を少なくしたのは失敗だったと到着してからの疲労感で内心思う事になろうとは。

大きな荷物をこれまた大きな音を立てて下ろし、私はぐったりと椅子に座りこんだ。

 

「せ、先生。だ、大丈夫ですか?」

「……問題ない。ノノミ、お前もお疲れさまだな」

「はい、お疲れさまでした!」

 

問題ないと言いながらも、荷物の重さと帰路の暑さにより凡そ普段よりも元気は出せなかった。

寄る年の瀬と老人ならば言えたのだが、外見上は青年であるこの私がこの程度でくたびれるとは……キヴォトスに来て鈍ったのではないかとすら感じる。

それでも、その体に鞭打って荷物の仕分けを行う。

 

「……すいません、ちょっと買いすぎましたね。いつもはここまで買わないのですが……今日は少しテンションが上がり過ぎちゃったみたいです」

「全部必要なものなんだろ?なら、別に謝るほどの事でもない」

 

そして、次の荷物を徐に持ち上げてみるとあまりの重さに危うく落としかける。

ああ、私の荷物が重かった最大の要因……ダンベルか。

 

「シロコちゃんにプレゼントするダンベル、これもありましたね……」

「なら、効果があるだろう。私がその証明者だ」

 

何とか尋常ではないと感じる重さのダンベルを丁寧に下ろし、次に持ち上げたのは植木鉢。

植木鉢……?

 

「それはセリカちゃんにあげる植木鉢で……」

「よく割れなかったな……」

 

他にも幾つかの割れ物があったなと、全てを慎重に進めていく。

プレゼントで植木鉢か……。

まあ、それはそれでいいのかもしれない。

 

「あ、ここに入ってたんですね」

「それは……耳かきか?」

「はい、そうです。耳かきです。じゃーん☆実はこれ、先生のために買ったものなんです」

 

そう言いながら、その耳かきを私の前に誇らしげに突き出す。

私に、耳かき……そう言えば、昔ノノミとの会話でそんな話が出ていたなとふと思い出す。

あの日は全力で断った気がするな。

 

「私に?」

「はい!そうなんです!ちょっと待ってくださいね!」

 

そそくさと荷物をどけ、床にシートを敷き始める。

幾ら私でも分かる。

恐らくはあの時の続き……。

 

「さあ、先生。ここで、私の膝の上で横になってください」

「……またか」

「さあ、いい子ですから、早く~」

 

第一私は人に寝顔を見られたくない。

第二に私は先生だ、生徒の膝で寝る等あり得ない。

第三に耳かきくらい自分で出来る。

 

眉間に皴を寄せて、ただ棒立ちするしかない。

ノノミが嫌だとかそう言うわけではない、誰にされても同じことを返すだろう。

 

「あのなあ。私はいい大人だ、耳かきも自分で出来るし横になるときは一人で眠る」

「駄目ですか……?」

 

何とも捨てられた子犬か子猫の様な顔で見られても、それはそれで困る。

本来の私なら頑として拒否しているのだろうが、キヴォトスに来て『先生』と呼ばれるようになってからと言うものこういう顔に何故か弱くなった。

まるでそうさせられたかのように。

 

演技なら見破れるから簡単に断れるのだ、だが本心からされるとな。

それはそれで私の心も痛むわけだ。

仕方ないか……。

 

「はぁ……」

 

ため息をつき、ノノミの膝ではなくあえて手前で横になる。

少しやりにくくなるかもしれないが、私の最後の抵抗だ。

 

「いいか、私は何故か知らないがとても眠たくなったから、私は寝る。寝ている間に何が起きても私は知らん」

 

我ながら素直じゃないと思うし、どうせされるなら真っ直ぐに受け止めてやるべきだったとも思う。

だが、それでも私にも譲れない線引きはある。

しかし、これまでも他人を支え続けてきた彼女がやりたいと言うのなら、ささやかな褒美としてこれくらいはしてやってもいいと思ったのも事実。

 

「ふふ……じゃあ、先生が寝ている間に耳か……イタズラしちゃいますね」

 

先程までは固い地面に触れていた頭が柔らかい感触……ノノミの膝に乗る。

そして、優しい耳かきの時間が始まった。

 

「くすぐったかったら言ってくださいね?」

「……」

「うんうん、いい子ね、よしよし」

 

まるで子供をあやすかの様な口ぶりをされては何か言ってやりたくはなった。

しかし、寝るのだと言い張った以上は何も言い返せない。

 

思い返せばこうして誰かの膝の上で寝ることなどあっただろうか。

アゼムの悪戯でそれをされたようなされていなかったような。

生憎と眠りについては、一人で孤独にしていた記憶の方が強い。

こんな暖かくもなく、ただ冷たい大地に横になり空を眺めていただけだ。

 

漸く暖かい眠りについたのは、星界だったがそれもすぐに起こされキヴォトスへ。

そこからの眠りも、別に暖かいわけではなかった。

確かに、布団の中で眠ったことも太陽の日差しを浴びながら昼寝をしたこともあった。

しかし、結局それは孤独の延長だったのだ。

 

だから、遺憾ながら今の眠りは非常に心地が良い。

そしてそのせいで、閉じていた口がいつの間にか開いたことも。

 

「先生は、本当に背が大きいですね。先生の故郷では皆さんそうなんですか?」

「……そうだな」

 

ソルのこの身は確かに大きい。

だが、旧き人はこれよりも大きいのだ。

あんなサイズ感の物がキヴォトスに来たらそれこそ大変な事になるだろう。

それでも、確かに背は高いのだと言う事は出来る。

 

「先生の故郷は……ホシノ先輩にあげた綺麗な花がいっぱいあるんですよね」

 

エルピスの花。

ホシノに贈ったそれは今、対策委員会の部室の花瓶に飾られている。

そんな花をどこからと聞かれたホシノは、私から貰ったとだけ。

今なお、虹色に輝くそれはアビドスが希望に満ちている場所であることを指し示している。

 

「私の故郷から少し離れた場所、エルピスにならな」

「だから、エルピスの花なんですね☆虹色に光る花……夢に出て来そうな花で素敵です」

「夢に出てきそう……か」

「はい!」

 

私がここに来るまでの話を知っている生徒は数少ない。

詳細を知っているとなればホシノしかいない。

だから、突然私の時代に関する品などを渡されて興味を持つのも必然ではあるのだ。

故にある程度であれば回答することくらいは別に問題ない。

 

「先生は、アビドスに来て良かったですか?」

 

今度は今の私に関する質問。

来て良かった、か。

勿論、色々とあった。

遭難、運転、強盗、爆破……そして、こいつら自身の輝き。

なら、悔やむも何もないじゃないか。

 

「良かったさ。こうしてここにお前たちが居て、変わらない日常を送る……それを私は嬉しくもあり、羨ましくもある」

「羨ましい……?」

「私にとって青春はもう、遠い過去の……記憶の中の話だからな。それを今こうして送れているのが、本当に」

「なら、先生もここでいっぱい思い出を作ってください。私たちの青春には先生もいるんですから☆」

 

お前たちの青春に私が……ね。

通り過ぎただけの星ではなく、そこに居る者として。

何て暖かい言葉なのだろうか。

 

「……まさか、一度役目を終えた私がこうして青春を送ろうと言われるとはな」

「昔の先生の事、私は深くまで知りません。けど、それがどれだけ大変だったかくらい先生を見ていたら分かりますから。今の先生が将来、楽しかったなって思ってくれたのなら嬉しいです」

「……そうだな。私がこの旅を終えた時にそう言えるように、お前たちと今を生き、楽しむことを忘れないようにしないとな」

「ふふ」

 

当初の恥ずかしさやら、頑なさは何処へやら。

膝枕の効果か、それともノノミだからなのか。

 

不思議な事に、膝枕をされる前とされた後では少しだけ自分が柔らかくなれたようなそんな気がした。




皇帝時代に膝枕をされたのかどうか。

絆エピソードって書いてて楽しいですけど、書けば書くほどこれで問題ないかと心配になりますね。

そろそろエデン条約のプロローグくらいは更新しないとね。

黄金のレガシーのネタバレネタは有り?

  • 有り
  • ダメ!死刑!
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