エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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エデン条約編ではエメトセルクが誰を気に入るのかを最初に考えた時に、中々答えが出ないんですよね。
全員が葛藤して進んでますから。


1-2 その道を最もよく知る者

00Ⅰ

 

「はい。補習授業部は……生徒を退学させるために、作ったものです」

 

決められた結末ほど何とも仕様もないものはない。

あなたの頑張りは無駄でした、舞台上の哀れな役者だったのですと言われて喜ぶ奴などいないだろう。

それはアビドスの時でもそうだったが、今回の場合は私がその決めた側に加担しなければならないというのが厭なところだ。

 

「流石に考えがあっての事だろうな」

「……」

 

私の問にナギサは再び沈黙する。

少し話しただけでもこいつは計画性を持って何かに取り組む類であることくらいは分かる。

ならば、この横暴な処置も何らかの要因があるはずなのだ。

だが、この沈黙を見るにそれをできれば今日の時点では話したくなかったのだろう。

いや、そもそも私にこうして根掘り葉掘り詮索されるのすら嫌なはず。

 

しかし、生徒の人生を左右する行いを訳も知らず協力しろなどごめん被る。

 

「……ここまで話をしてしまっている以上は沈黙を貫いてもあの手この手で理由を探るのがエメトセルク先生なのでしょうね」

「お前が話さないのなら、該当者にも聞いて回るだろうしミカにも聞くかもな。それか……入院しているお友達にでも聞きに行くか?」

 

セイアに話を聞きに行くと言った途端に二人の目の色が変わる。

それぞれの色は明確に違うがそれでも、私がセイアに『話をする』という状況は好ましくないのだろう。

今の反応で十分だ。

 

ハッタリのつもりだったし、平然とされればそこまでだったが所詮は子供。

特に深く詮索されたくない部分などには当然に多少なりとて反応は示すものだ。

どうやって私がセイアを見つけるのかを考えれば普通に考えて難しい事くらいは分かる。

だが、そうさせないように事前に向こう側の目的について探りを入れ優しい先生ではない事を理解させてさえいれば、面倒が嫌な性格なら素直に話すだろう。

 

はぁ……。

我ながら厭なものだな、こうしてあの手この手で相手の動揺を引き出して自分に有利に働いかけるなんて……あの頃を思い出す。

先生になって、あろうことかそれを生徒にするのはやはり気分の良いいいものでは無いし……自分の変わらなさを痛感してしまう。

 

「……わかりました。ですが、その前に……」

 

そして、悲しいことに私の手段は効果があったようだ。

私から目線をミカに向け、

 

「ミカさんは出ていて下さい」

「でも……」

「いいですから」

 

そう言いながら立ち上がり半ば無理やりではあったが、ミカをこの部屋から追い出した。

美しき友情……なのかもしれない。

自分が計画したものに巻き込ませる気はないとか、知られたくないとか。

 

だが、それをしてどうするのか。

私がナギサの意図を聞いて依頼を受ければ嫌でもミカは関わらざるを得ない。

片方が責任のない立場ならばまだしも、両方が責任ある立場であるのならばどうしても逃げられない問題もある。

 

老婆心ながら、もしそういう想いがあるのならば全てが明らかになる前に伝えてやるべきだと思う。

伝える相手が居なくなった時ほど悲しいものはないのだから。

 

まあ、多感な10代という言葉もある通り大人が出しゃばってもいいことではないのだろう。

交友関係に口を挟まれるのは一番嫌だろうしな。

 

「……お待たせしました」

「別に気にしてない。むしろ、もう少し時間をかけてやればいいのに」

「そうもいきません。客人を待たせてますから……」

「……深く言わないが、想いがあるなら言えるうちにな」

 

いつまでも続く時間などありはしない。

明日突然終わりを迎えるかもしれないし、自分が死ぬその瞬間まで共にいるかもしれない。

私の場合、終わりを迎えた後も一人長い時間居たがな。

 

「……さて、どうして生徒を退学させるために部活を作ったのかですが……この中に、トリニティの裏切者がいるからです」

「裏切者……?」

 

中々に大きな爆弾だった。

『裏切者』なんて言葉をキヴォトスの、しかも学園のトップから言われることになるとは思ってもみなかった。

一国で起きる話ならばともかく、大きな戦争でもしているわけではない、少しにぎやかすぎるがそれでもある程度平和なこのキヴォトスで。

 

「その裏切者の狙いは、エデン条約締結の阻止。この言葉が持つ重さを理解していただくには……先生ならばご存知でしょうがエデン条約とは何か、という説明が必要ですね」

 

第三者から見たエデン条約と携わってきた者から見たエデン条約は当然違って見えているのだろう。

ならばナギサの目を通して映るエデン条約について聞くべきだ。

だからこそ、私は無言ではあるものの彼女に続きを促す。

 

「エデン条約……簡単に言いますと、トリニティとゲヘナの間に結ばれる不可侵条約です。その核心は、ゲヘナとトリニティの中心メンバーが全員出席する、中立的な機構を設立することにあります。『エデン条約機構』、『ETO』と呼ばれるであろうこの団体が、トリニティとゲヘナの間で紛争が起きた時に介入し、その紛争を解決することになります。これにより、二つの学園の間で全面戦争が起きることはなくなります。誰かが踏み込めば、両陣営が仲良く共倒れしてしまうことになりますので」

 

理論は分かる。

キヴォトスでもトップクラスの2校が全面戦争などを起こしてしまっては、それこそここいら一帯は見るも無残な荒地になるだろう。

それこそ、かつてはその名を轟かせていたというアビドスと要因は違っても同じになりかねない。

そうなった場合、残存する学園に難民とかした生徒を受け入れる余裕はあるかと言われたら不可能だろう。

 

まず、文化の違いや規模の違いがある。

例として今のアビドスで難民を受け入れたと想定した場合、本来のアビドス生5人など埋もれてしまうだろう。

現に元カタカタヘルメット団の連中を組み込む際も権利の決定に少し手間取った事もあった。

それが、百人も来たらどうだ。

よって、そうならないようにする為の条約と言うのは私だって分かっているさ。

 

が、致命的に足りていないのは何か。

その『ETO』とやらに参加するのが各校の中心メンバーであること。

今ならばナギサやミカ、ゲヘナならば万魔殿の面々ともしかしたらヒナもか。

話がまとまる筈がない。

ただでさえ、互いに少なからず偏見があるのだ。

妥協案を見つけるなんて至難の業だ。

 

ここに連邦生徒会かシャーレが顧問なりである程度の権利を持って参加するならばまあいい塩梅かもな。

私はごめん被るが。

 

「……先生。トリニティとゲヘナの長きにわたる敵対関係は、お互いに大きな重荷になっています。エデン条約はその無意味な消耗を防ぐための、恐らくは唯一の方法であり、キヴォトスにおける力のバランスを保つための方法でもあります。これは、連邦生徒会長が提示した解決策でもありました。彼女が行方不明になってしまい、一度は空中分解しかけたものを、私の元でどうにかここまで立て直したのです」

 

空中分解しかけた計画を立て直した手腕は間違いなく立派なものだ。

それだけの調整能力を持つ者などそうそういないし、心無い言葉を浴びせられた日もあったはず。

それをこの歳でやり遂げるのは並大抵の精神力ではないのだ。

 

なのにそこまで賢いお前が何故気が付かない。

連邦生徒会長が消えれば空中分解する程度でしかないんだよ、この条約は。

彼女が消えてそれでもまだ意志を継いで立て直したナギサが消えたらこの条約はどうなるのかを考えていない。

いや、考えているから裏切者を探すのかもしれない。

 

もし考えているなら分かるはずだ。

誰かひとりが居たから始まって、そいつが居なくなれば流れるようなモノが本当に互いの平和のためになる筈がないと。

人はそこまで賢くも、優しくもない。

 

「ですが……この念願の条約が締結される直前まで来た、このタイミングで……これを妨害しようとする者たちがいるという情報を耳にしてしまいました。まだ、それが誰なのか分かりません。特定には至りませんでした。そこで次善の策として……その可能性がある容疑者を一か所に集めたのです。裏切者はそこにいます、しかし誰かは分かりません」

 

容疑者がリストの4人。

しかし、この容疑者もあくまで可能性があるだけで確証などない。

極論、素行不良でもぶち込めるわけだ。

 

この人員の選定にどれだけ時間をかけたのかまでは推し量れないが……。

恐らく今のナギサに適当なトリニティ生の名前を言えば、容赦なくこのリスト行きだろう。

こういう状態の奴を何人も見てきた、いやそうさせてきたから分かる。

 

疑心暗鬼。

 

一度疑いを持つと止まらなくなり、最後には信じていた者、親しい者すら敵であると見始める。

させる側からすれば何とも醜いモノだろうとも思ったが、こうして陥った者を救わなければならない立場になるとこれの厄介さが身に染みてわかる。

 

「ですから、一つの箱にまとめてしまおうと考えたのです。いざという時、まとめて捨ててしまいやすいように」

 

酷い話だ。

裏切者の人数は不明だ、もしかしたら4人全員かもしれない。

それならナギサの策は正解だが、もし1人なら?

巻き込まれた3人は無関係なのに退学の危機に瀕している。

 

勿論、己の学力不足が原因にしろだ。

 

「……ごめんなさい。こんな、血生臭いことに先生を巻き込んでしまいました。私のことは、罵っていただいても構いません」

 

言うだけ言って謝られても困る。

巻き込まれたことに関してはもう先生である以上は仕方のないことだ。

今までだって面倒事に巻き込まれた事もある。

私が聞きたいのはそんな言葉じゃない。

 

「それで?お前が求めているものは自分の話を聞く相手じゃないんだろう?」

「……流石、カイザーコーポレーションの計画を見破り逆に利用した人ですね……補習授業部の中にいる裏切者を、探していただけませんか?」

「……続けろ」

「トリニティを、延いては先生を騙そうとしている者がいます。平和を破壊しようとするテロリストです。私たちだけではなく、キヴォトス全体の平和を、自分たちの利益と天秤にかけようとしているのです」

 

平和を破壊しようとするテロリスト、世界の平和と自分たちの利益を天秤にかける。

耳の痛い話だな。

よりにもよって、アーテリスではそちら側に区分されているであろう私が今度はそれを阻止する側になれと。

本当にアシエンのような組織がいるわけでもあるまい、いやキヴォトスでもアシエンがいるとされてはいるわけだが……。

ナギサはそこには触れていない。

恐らくは神出鬼没のアシエンに構う余裕はないのだろう。

もし、現れたらその時は私にでも任せるつもりなのだろうか。

 

この条約に懸ける覚悟……いや、執念はよく伝わった。

だが、今まで述べられた言葉はどれも私を動かす程のものじゃない。

 

「裏切者を探し出すことが、キヴォトスの平和に直結します。いかがでしょう、連邦捜査部シャーレとしてご理解いただけますと幸いなのですが――」

「駄目だな」

「……どうしてでしょう」

「お前がエデン条約に心血を注いでいる事も、裏切者とやらが居てせっかくの努力を壊そうとしている事も良く分かった。だからこそ、面倒な奴をひとまとめにするのにも理解は示すし今のお前の状態も考慮はする」

「先生がエデン条約に反対をしているからですか?」

「どうしてそう思う?」

「エデン条約の話をした際の先生の態度でよく分かります。先生は条約の理念そのものがお嫌いなのだと。それは私が関わっているから等ではなくもっと根本の先生の価値観とは相いれないからかもしれませんが……」

「確かに、私はお前が心血を注いだ条約に好意的な感情は向けていない。だが、それを理由にお前の依頼を断ったりするほどではない」

「ではなぜ……」

 

決まっている言葉はある。

言うか言うまいか、今なお迷う。

今のナギサには重い言葉だろう。

普段でさえこれから言う言葉はきつい面があり、受け止めるには時間がかかるもの。

それを精神的にも不安定なこいつに言うのは些か酷と言うものだ。

 

だが、それでも責任ある立場に就きある意味では一国の頂点、その一人であると言うのならば避けては通れない『責任』と『覚悟』がある。

 

「お前はこの4人に対する行動にどう責任を負うつもりだ」

「責任?」

「お前の読みが当たってこの中に裏切者が居たとして、一人でもそうじゃない奴が居たのなら……もっと言えばここにはいないかもしれない。お前が言ったのはあくまで可能性が高い生徒であると言う事だけ。もしかしたら、裏切者は他にもいるかもしれない。そうなった時、この4人に対する行動に……今の立場、いや人としてどう責任を持つ?」

「……それは」

「ここに居たとして、リスト外の協力者が居たら?お前が疑ってすらいなかった奴ならどうだ。無実の生徒を疑った事への責任を……いや、それだけの覚悟を持っているのか?」

 

言い過ぎだろう。

余りにも酷だ、こんな詰める言い方は。

それも今、闇の中で彷徨っている者を相手に。

 

「……大義のためだと、無実の生徒たちに私が言えばどうします」

 

明確な怒りが込められた言葉がナギサの口から紡がれる。

当然だろうな。

いきなり部外者に頭ごなしに説教をされて受け入れられる奴など居ない。

 

それにこいつは恐らく生半可な覚悟でエデン条約を立て直したわけではないことくらい分かってる。

ただ、私の我が儘に過ぎない。

どう見ても暗澹たる闇の中を彷徨っている生徒にさせるべき行為ではないのだ。

 

「どうもしない。私にはそれを否定したり叱る権利も資格もない」

「なら、なぜ問いを投げたのですか」

「……お前の選ぶ道は決して推奨されるものではないからな」

 

出来れば進んで欲しくはない。

まだ引き返せるだろう、ナギサやミカの守りを固めて確実に調査をする事だって手伝える。

生徒の手がなくても、私ならば。

しかし、ナギサはすでにこの道を選んでいる。

明確な意思と覚悟で持って。

責任についても同様に、エデン条約の締結を持ってそれを果たすというのだろう。

 

何がこいつをそこまでさせるのか。

全てを犠牲にする事になってもエデン条約を締結させたいと言う想い。

それは特別なもの、少なくとも自分の利益のためにしているわけではない。

キヴォトスのため、学園のため……あるいは誰かのため。

 

「不思議ですね。いざ話をしてみるとどうしようが咎めないしその権利も資格もない、にも関わらず選ぶのは推奨しないとは」

「まあ、年長者の戯言なのかもしれないな」

「年長者の戯言……」

 

その言葉を皮切りに少しの間、お互い残りのお茶を飲むだけの時間が流れる。

沈黙も時には必要な事だ。

 

ナギサは言われたことを整理して、今一度ほんの少しでもいい。

進む道、その先を思い描いて立ち止まる機会になれば。

 

私は私で、この依頼について。

恐らく私が依頼を受けなければ、この4人は退学まっしぐら。

ヒフミへの大きな借りを返すには参加せざるを得ず、この先に万が一起きる可能性があるエデン条約阻止のためのテロを止めるためにも。

言うなら私は人質を取られているわけだ。

受けるしかない。

 

ナギサが考えを変えるのは難しいことだ。

それを今日一日の会話だけで出来るものではない。

この先でも会話する機会くらいはあるだろうから、そこで何度でも呼びかけるしかない。

 

5人もの問題児を一度に抱えるわけか。

アビドス対策委員会とは訳が違う。

あれもあれで各々に問題な部分はあったが、それでも目的は一つだった。

 

しかし今回は違う。

4人の退学阻止、裏切者の発見、そしてナギサの問題。

果たして1人で全て出来るのか、そんな考えが頭に浮かぶ。

一番避けたいのは、全てが中途半端に終わる事。

次に誰かを見捨てる事。

 

何て難しい問題なのか。

しかも、ナギサの問題に関して言えば恐らくエデン条約を締結させてやりさえすればある程度は緩和されるかもしれないが、やり遂げて満足して自己嫌悪に陥られても困る。

だが、この問題の嫌なところは私が補習授業部に肩入れすればするほどナギサとは敵対的になる事だろう。

私が裏切者を見つけるまで、ナギサはナギサのやり方で4人を揮いに掛けるはず。

そうなれば当然、私はそれを阻止しなければならずナギサは更に強硬な手を取る可能性が高い。

ソルとしても、アシエンとしても、はたまたハーデスとしてもこんな問題に向き合った事はないだろう。

むしろ、疑心暗鬼を煽る方が簡単だ。

それを解消させて、全体的に見て良い結末に落とし込む。

 

これはゲーム開発部の面々が良く使っていた『修羅場』という言葉がピッタリだ。

どちらに肩入れすぎてもダメ。

天秤どころではない、三方向に重りを装着して行う綱渡り。

 

だが、悲しい事にこういう問題を前にしても怯む友の姿がない。

お前は必ず飛び込むだろう、きっと滅茶苦茶な方法で、それでも最後には全員を救う。

私に出来るか?

夢で決めた決意を今一度振り返り、それでも尚もし迷えば初心に帰れるか?

 

あいつも意志を、想いを貫いた。

その結末を身をもって知る私が、ここで引く……。

そんな姿を、あいつに見せるわけにもいかない。

 

「……お前の依頼受けてやる」

「……どういう心境の変化でそう決めたのですか?」

「お前のエデン条約に向ける覚悟自体は問いを投げる前から分かっていた。だが、問いを投げてもお前は躊躇わずに返答した。なら、私も出来る限り協力はするさ」

「では――」

「ただし、補習関係と裏切者の問題については私も私なりのやり方でやらせてもらう」

 

正直自分なりのやり方なんて分からない。

むしろ、教えて欲しいくらいだが……それでもナギサに任せてしまえばよりこいつ自身も疲弊するだろう。

そこは避けなければな。

 

「先生なりのやり方……それが、トリニティに利するものであることを願っていますね」

「利するかは分からんが……まあ、少なくともこのリストの3人は問題がある行動でお前が疑うに足る理由はある。こいつらにも非はあると言う事は私も分かっているつもりだ。そんな中で不躾な質問をして悪かった」

 

この部分に関しては謝るべきだと思っていた。

裏切りに関しては無実でも、普段の行動は問題だ。

だから、疑われて当然ではあるのだ。

為政者の立場から見れば法を破る者を放置は出来ない。

 

それを知っていてもなお知りたかった。

どれだけの覚悟かを。

 

「謝られましても……先生からしても私の行動が不快だったこともあるでしょうし」

「その謝罪とアビドスの一件の貸しという事も含めて、シャーレの権限を使った事は事前に知っていたことにしよう」

「よろしいのですか?」

「もうすでに使われたものだ。後からだが、そこらへんは上手く調整してきちんと許諾を得たことにしておけ」

 

それだけ言い終えた私は席を立ち大きな扉に向かって歩みを進める。

何だか妙に遠く感じるそれにたどりつきそうな頃にナギサから再び声がかかる。

 

「いつか、お互いこうした問題を抜きにお話をしてみたいものです」

「その時はシャーレに招待するとしよう。ここより優雅ではないし、お前ほど美味い紅茶は入れられないが精一杯の歓迎はするつもりだ」

「では、問題が解決してそういう日が来ることを楽しみにしています」

 

社交辞令かもしれないし、本心かもしれないそんな言葉を背に扉を開け出たが、あの綿菓子の様な雰囲気はまやかしだったかのようにミカは居なかった。

 

00Ⅱ

 

キヴォトスの天を舞う一筋の光。

この透き通った青き世界に相応しい青い鳥はきしくもかの魔道士が訪れていた場所と近くて遠い場所を飛んでいた。

 

そこは忘れられた土地。

幸福などなく、あるのはただ憎悪と虚しさだけ。

 

かつて鳥は孤独にこのような想いが満ちた宇宙を、星を翔んだ。

そして同じように、いやそれ以上に謳ったのだ。

 

憎悪を、妬みを、虚しさを──即ち、等しく幸せになれる結論、終焉を。

 

何故、私だけが苦しむのか。

全ては虚しい、どこまで行こうとも全ては虚しいものだ。

 

鳥はこの痛みを知っている。

いや、この地の誰よりもこの痛みを、苦しみを知っている。

両者がその考えに至るまでの道は大きく違っても、その想いによって蝕まれる苦しみは同じ。

 

彼女は思う。

出来ることならばすぐにでもその苦しみから解き放ちたいと。

砂漠で出会った少女のように謳い救いたい、だが今の彼女たちに希望の唄は届きはしない。

 

然るべき刻に然るべき星がいなければ、彼女たち暗澹たる夜を越えられない。

そして、未だ彼の地に『英雄』は訪れていない。

故に今の彼女に出来るのは、それを観測し飛び去る事だけ。

 

しかし彼女は未だ青さを保っている。

何の因果か、かつて彼女に花を送った一人でもある見知った男がこの地で奮闘し多くの絆を繋いできた。

彼の歩んだ足跡がこの欺瞞と悲しみに満ちた夜の地に彼なりの夜明けを届けるだろう。

 

その時はこの地に響かせよう。

命の意味、生きる理由。

全ては虚しくなどなく、誰にでも可能性がある。

そんな希望の唄を。




その道の先駆者である、エメトセルクなら早々に裏の考えがあることは理解しそうです。
本人も言ってますが、やはり悪意の種を蒔く方が簡単なのではないかと思います。

友人がプライマルズのライブに行き、花の写真を送ってきました。
私は当たらずオンラインで見ましたが、大変良いモノでした。

FF14の音楽はいいぞ。

黄金のレガシーのネタバレネタは有り?

  • 有り
  • ダメ!死刑!
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