何が、とは言いませんが。
しかし、今回もタンクが……。
00Ⅰ
ナギサとの話し合いを終え、名簿にあった生徒たちにでも会ってみるかと付近を散策しようとした矢先に目的の人物に会うことができた。
「あ、あはは……こんにちは、先生」
「……何を言いたいかくらいはわかるな?」
「あの、これはその、やむを得ない事情がありまして……」
「お前が何が好きで、どうしようと勝手だが……せめて、学生としての本分は何たるかくらいは忘れるなよ」
「あうぅ……」
言うまでもなく、ヒフミその人だ。
何なら申し訳なさそうに付近で待っていた辺りは可愛げもあるし、申し訳ないと思っている部分もあるからこちらも過度には言えない。
とは言え、褒められたことではないのだ。
己にとっては大切な事でも、他人から見たら不可解な言動は今回の様に自分の首を絞める結果に繋がっていく。
もし、ヒフミがブラックマーケットに足を運んでいるという情報をナギサが入手していた場合、どうやったって怪しいのだ。
それこそ、絶賛立てこもり犯や水着徘徊犯よりもずっとな。
「……大体察してはいるが、一応何でこうなったか教えろ」
「ペロロ様のゲリラ公演に参加するために、テストをサボってしまって……それで……」
「……今回は私も多めに見るが、次からはするなよ」
「そんなぁ……」
「そんな顔をしてもダメだ!いいか、そもそもお前は学生、授業を受けてテストも受けることが義務、そうして問題のない状態で初めて自由というのが謳歌出来るんだ!するべきことをしないでやりたい放題するのは、子供ではいいのかもしれないが人として褒められることじゃない」
うぅ……と心底申し訳ないような、それでいてペロロだから仕方ないじゃないかと言いたげな何とも取り辛い表情で私を見つめて来るがやはりダメなものはダメだろう。
世の中、その時と場合でどうしても見られない物は幾らでもある。今はこうしてある程度は甘えられても大人になったらそうはいかないはずだ。
いつか誰かに言われるのなら、まだ私が言っておいた方がマシかもしれない。
「ちゃんと試験の日程は確認していたはずなんですっ。何かの間違いと言いますか、手違いと言いますか……」
「……それで?」
「あうぅ……ご、ごめんなさい……」
「はぁ……趣味は出来る範囲で無理せず、それでいて後顧の憂いなく、だ」
もうこの件についてはこれくらいでいいだろう。
実態を知ればナギサもなんだそんな事かと納得はするだろう、信じ辛いものではあるかもしれないが。
それにヒフミも幾らペロロとは言え同じことを繰り返すほどバカじゃないはずだ。
だから、私からの小言はこれで終わり。
その雰囲気を察してかヒフミも話題を変える。
「は、はい。えっと、それで……その……ナギサ様に、先生のサポートを頼まれまして……」
「ナギサに?」
「はい、色々お話をして私が部長みたいです……」
アビドスの時に触れていたティーパーティーの知り合いはナギサか。
話を聞くに二人の関係は悪いものではなく、ナギサも悪感情を向けているわけではないと思う。
という事は既に、そんな関係性の相手にすら疑いの目を向ける状況……。
いや、これに関してはヒフミの行動も悪いから何とも言えないがそれでも、信じられる状態ではないと言う事。
中々に重症だな。
「なら、部長。お前の部員を集めて来い」
「ええ!!わ、私がですか!?せ、先生は?」
「あのなぁ、少なくとも私より同年代の落第候補同士の方がまだ心は開きやすいだろ。それに、私は生まれてこの方補習なんて受けたことがないから上手くできるか分からんしな」
「で、でも……せめて先生も一緒に……」
「なら、行くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください~~」
補佐がヒフミならばやりやすいとは思う。
彼女がどの程度まで情報共有を受けているかまでは知らない、裏切者関係については知らない可能性が高い。
それでも、私の行動をある程度知っているヒフミなら多少私一人で無茶な事をしてもフォローはしてもらえるだろう。
さて、部長殿。
苦難の道は共に行こうじゃないか。
00Ⅱ
幾つかの教室を通り抜け通常のトリニティ生の制服とはまた違った制服の連中が多くいる教室。
正義実現委員会の教室。
今は居るか分からないがハスミが所属している部活で、名前だけ見るととんでもなく過激で仰々しい名前だなと初見の時は思ったものだ。
実態としてはゲヘナの風紀委員会の様な任務を行っているだけで、別に危険な奴がいるわけでもない……とは思う。
強いて言うならどうして、こう前髪で目が隠れている生徒が多いのかとは思うが。
ハスミにも悪いことをしたなと思う。
私自身なかなかゆっくりトリニティを訪れる事はなく、来たとしても依頼やら仕事やら他の生徒を伴ってばかりで、ゆっくりしに来た事はない。
今日にしてもそうだ。
もしかしたらある程度は知っているかもしれないが、お前のところの部員はこれから補習授業部に入って暫く活動できませんと伝えるなんて仕事、誰がしたいのか。
「あ、あぅ……あんまり来たくはなかったのですが……」
「右に同じく、だな」
それぞれ事情があるにせよ、治安維持担当の場所まで来たいやつなど通報目的以外でいるとは到底思えない。
ヒフミからすれば基本関わりたくないのかもしれないし、私にしてもハスミに何と言うかを悩む。
はぁ……。
何とも、今回の仕事は開始時点からすでに色々と疲れるな。
「えっと、失礼します……どなたかいらっしゃいますか?」
我らが部長殿はさっきまでの言葉とは裏腹に案外乗り気で声を出していた。
ヒフミの性格を考えれば、やらなければならない状況になればきちんとそのパフォーマンスを遺憾無く発揮できるタイプの性格。
普段のオロオロとした対応とはまた違う、溌剌とした振る舞いが出来るのだ。
さて、そんなヒフミの声に反応してかこれまた小柄な──私からすれば全員小柄だが──少女が姿を現す。
ちょうどいい、目的の相手じゃないか。
「あっ、こ、こんにちは」
「……」
「え、えっと……」
「……何?」
なるほど少女──下江コハル──は人見知りするタイプなのだろう。
ヒフミの顔を見た後に、私の顔を見て少しばかり後退りする。
中々に悲しい対応をするじゃないか。
まあ、確かに今日の私の顔は中々に険しいのかもしれないが。
「あ、あう……そ、その……」
「……」
「あうぅ……わ、私、何かしてしまったんでしょうか……」
会話になっていない。
おそらくヒフミは向こう側から何らかの返しがあると思ったのだろう。
何かご用ですか、どうされましたか、など。
が、コハルから帰ってきたのは『何?』の一言。
これでは会話にならず、お互い相手が何か言ってくれるのを待つ状態、つまりは居心地の悪い時間だけがそこにある。
「気にするな、単に人見知りなんだろう」
「……だ、誰が人見知りよ!?た、ただ単純に知らない相手だったから、警戒してるだけなんだけど!?」
それを人見知りと言うのではないか、と言う指摘は胸にしまっておくとしよう。
あの文句の言い方を見るにおそらく自分が人見知りだとある程度は自覚しているだろうからあまり言い過ぎてもな。
それに人付き合いに関してのアドバイスは、私もこっちに来てからはするがそれでも私を参考にされても困る。
「……そ、それで、正義実現委員会に何の用?」
「え、えっと……探してる方がいまして……」
「はぁ!?正義実現委員会に人探しを依頼しようってこと?私たちのこと、ボランティア団体か何かだと勘違いしてるわけ?そんなに暇じゃないんだけど?」
最初とは打って変わっての大攻勢。
ヒフミの伝え方も伝え方だが、コハルの早とちりも中々だ。
このままヒフミに任せてもいいのか、私が伝えた方が早いだろう事は明確だ。
しかし、人見知り相手に私の話し方は返って逆効果の可能性もある。
泣かれでもしたらそれこそ一大事……いや、泣かせる言い方を意図的にしてるわけじゃないからな。
「いえ、えっと、ここに閉じ込められているって聞いて……」
「……はぁ?」
「ですから、えっと、その、良くないことをした方がここに……」
一つの情報を伝えるのにかかる時間を測っていれば面白い結果が得られそうな、奇妙な会話が続く。
こういう会話は中々見ないから見ている分には、面白くもあるが仕事中と思えばもっと上手くやれと言いたくもなる。
「え、それってもしかして……?」
「こんにちは。もしかして、私のことをお探しでしたか?」
そうコハルが言い終えるか終えないか定かではない瞬間、キヴォトスでは特定の場所に行かなければ見る事のない……もっと言えばイシュガルドやガレマルドでは到底生きてはいけない恰好……
つまりは水着の少女が現れる。
「!?」
「……」
当然各々驚くなり微妙な反応をするしかない。
ヒフミからすればその格好に、コハルからすれば捕えてた人物が平然とここに居る事に、そして私は……何とも言えない気分だった。
衝撃がなかったわけではないが、それでも既に知っている情報だったから驚く事はない。
ただ、どうして水着なのかもっと奇天烈な格好……例えばヘルメット団みたいな恰好をするなりする方法もあるだろうとか、何をもってこんな行動をしているのかとか、謎があるだけだ。
資料を思い返せば、彼女は優れた才能を持っておりこのような性格ではなかったとあった。
何らかの転機があったのか、それとも生来はこちら側で演じるのに疲れたのか。
転機があったのなら、言い方や接し方は幾らでもあるだろうがもし、疲れたと言うのであれば難しい。
才能を持っている者はそれを正しく行使する義務がある、それこそ私たちが星を愛し星の為に働いていた様に。
だが、それと同時に与えられた、いや押し付けられた使命や役目に疲れる気持ちも痛いほど分かる。
人の心を救うなんて私向けではない、本当にそう思う。
あいつやヴェーネスなら、きっとこの任務は良い導き方が出来る筈だ。
私は……。
物思いに耽り、眼前で繰り広げられる問答に不参加だったからだろうか。
件の少女が私へと声をかけてくる。
「大人の方、ということは……先生、ですね。あらためまして、こんにちは。もしかして授業補習部の?」
「ああ、その『大人』だ」
先生と返せばいいのに、わざわざ大人と返すところに私の愚かさがあるのだろう。
含みを持たせたい等と言う意図は全くないが、それでもやはり先生というよりかは大人として、人としてしっかりと向き合うべきなのだろうと心か頭かがそう判じた。
――先の道を生きると書いて『先生』……つまり、『導いてくれる役割』ってことだよね?
先程ミカから言われた言葉を思い出す。
私はお前たちの遥か先を生きた。だが、私の経験はお前たちの培ってきた経験とは違う。
偉そうなことなど言えた義理はないのかもしれない。
かつて、アビドスで自分なりに立てた指針もこうしてまた別の問題が起きればそれでよかったのかと立ち返り考え始める。
先生として、大人として、人として、そして私として一つに纏まった意見など簡単に出せないのが実情だ。
「何で学校の中を水着で徘徊するの!?」
「ですが、学校の敷地内であるプールでは、皆さん普通に水着になられますよね?ここもあくまで学校の敷地内で……あ、もしかして下江さんは、プールでは水着を着ないタイプですか?」
「え、は?それってどういう……」
コハルに救われたな。
議論の内容は酷く低俗なものであったとしても、あのまま押し黙って顔を見ているだけでは話も前に進まなかっただろう。
そこを本人は恐らく意図してやっているものではないだろうが、私を救ったのだ。
色々と大きな声で騒いでいたと思えば、ハナコを再び牢屋か何かまで押し戻した。
……今回は救われたが、こんな内容の議論を補習中もされてはたまったものでは無いことだけは今唯一自信を持って言えるだろう。
「……先生、大丈夫ですか?」
「ああ……。色々と忙しくなりそうだと思っただけだ」
「そういう顔ではなかったと思いますけど……」
どんな顔であったにせよ、忙しそうだとは事実思ったのだから嘘ではない。
ヒフミには銀行強盗前の私の顔に近いものがあったと思ったからこそ、聞いたのだろうが。
「はあ、はあ……」
「え、えっと……ハナコさんは、この後どうなるんですか?」
「そんなの当然死刑よ!エッチなのはダメ!死罪!」
「……随分とキヴォトスの死刑判決は軽いのだな」
「そ、そんなことはないと思いますが……」
水着で徘徊が死刑ならば、アーテリスの民……とかく原初世界の民は大勢死刑になるだろう。
紅蓮祭の会場にコハルを連れて行こうものならばそれこそ終わりだ。
服装による判定か……あいつの旅でもそんな事をしてくる奴は居なかったと思う。
どちらにせよ、暴論ではあるが。
「何にせよ、今あいつとこれ以上話すのは難しいだろう。となれば、もう一人だが……」
そのもう一人も問題である。
そろそろ捕まったのだろうか。
それともまだ奮闘しているのだろうか。
そんな心配を払拭するかのように見知った声が聞こえる。
「ただいま戻りました」
00Ⅲ
「エメトセルク先生?」
「久しぶりだな、ハスミ」
久しぶりの再会である。
今度トリニティに来て欲しいと言った相手が中々ゆっくり話す機会もなく、目の前に来たとしてそれも仕事だとしたのなら……。
私だって、本当はゆっくりしたいさ。
とは言えハスミも忙し身、そのような事を追求する暇もなければ私だけ責めると言う真似もしない。
それに現在の所、ハスミや私の注意を引き付けているのは別の問題――そう、連衡されてきたガスマスクの少女。
本人の色合いは髪の色も含めて白を基調としているだからだろう、そのガスマスクは異様に目立った。
それ以外にも気になる点があるとすれば胸元にある横を向いた髑髏のエンブレムも、このトリニティにはあまり馴染んでいない。
髑髏のエンブレム……か。
幾ら何かのブランドのロゴだったとしても、それを前に持ってくる必要はあるのだろうか。
もっと観察すれば左腕にも同じエンブレム。
やはりブランドにしては自己主張が激しすぎるだろう、しかもそれを制服かの様に着ているのだから。
だが最も気になる点があるとするならば、資料に載っていた行動の割には随分と綺麗な魂を持っていることだ。
多かれ少なかれ人は苦難を味わい、その魂の色を変えていく。
だが、彼女の色は白……。
無垢の魂とは違う、彼女自身が今日まで生きた証がこの色。
「……ほう」
興味深い奴を見つけてしまった。
このキヴォトスにおいて、ここまでの白さを持つ奴を初めて見た。
しかも、こいつはそれでいてこんな無茶苦茶な事をして捕まっているのだから。
ヒュトロダエウスが居たら同じように興味を持つだろうな。
つくづくあいつと二人で先生だったらどれだけ良かったかと思う。
あいつの会話力と言うのは目を見張るものがある。
私には出来ない方法で会話を広げていけるし、今回のような複雑極まりない問題についてももっと上手く対処できるだろう。
しかも、あいつはあんな風体と態度だが仕事には真面目だった。
だからこそ、創造物管理局の局長をあの若さで見事に務め上げ、後にビエルゴの元となる男を従えていたのだ。
まあ、彼は彼なりにヒュトロダエウスに苦労させられた部分はあるだろうが……。
ヒフミの反応が気になり見てみれば、
また濃い奴が出てきたなと思っているのだろうか、言葉を失っている。
それだけならいいのだが、どうにかしてくれと言いたげな顔で私を見るのは辞めろ。
私に言葉を求めた所で所感として面白い奴だなんて言えるわけもなく、ヒフミの思っている事を更に回りくどく言えるだけなのだから。
「……惜しかった。弾丸さえ足りてれば、もう少し道連れにできたのに。もういい、好きにして。ただ、拷問に耐える訓練は受けてるから、私の口を割るのはそう簡単じゃないよ」
さてどうしたものかと考えていれば件の生徒が随分と気になる発言を零した。
前半部分についてはこの際いいとして、『拷問に耐える訓練を受けている』か……。
そんな訓練を受けられる組織がこのキヴォトスにあるのだろうか。
風紀委員会、正義実現委員会、C&C……各校の武力組織は確かに戦闘訓練などは行っているだろうが、対拷問用の訓練などを行っているなど聞いたことがない。
そもそも、キヴォトスで拷問されるという事態が稀で、それこそ黒服と取引をしたホシノが『実験』されそうになっていたくらいであれも未遂ではあるのだ。
と考えれば、元々所属していた学校なのだろうがそれについての情報は皆無。
やはり、ナギサの人選は見事と言わざるを得ないだろう。
ヒフミ、コハル、ハナコ、アズサと全員を一目見た時点での印象としては確かに、コハルを除いて不審な言動が多すぎる。
特にアズサに至っては通常キヴォトスで生きていれば聞かないような言葉を出し、事実大暴れして見せたのだ。
しかしそれと同時に不可解な点もある。
もしコハル以外の3人の誰かが裏切者ならば、こんな目立つ行動をするだろうか。
裏切者とは影に隠れその実態は常に闇の中、発覚は成就する寸前であるべきだ。
これでは各々見つけてくれと言っているようなもので、疑わしき点こそあれどうにも確信を持てない。
こういう時、あいつの様に過去視でもできればいいのだが……。
「それで、エメトセルク先生がどうしてここに?」
「補習授業部の担任に紆余曲折を経てなった……なってしまったと言うべきか……」
「なるほど、先生が補習授業部の担任になられると。残念です、できればお手伝いをしたかったのですが」
「嬉しい申し出だが、私の一存で決められる話でもないんでな」
ハスミが手伝ってくれるなら楽ではあるのだが、ナギサの意図がある以上は好き放題出来ない。
やろうものなら、それこそナギサの問題を拡大してしまうだけだ。
出来る限り、私が出来るならば全て私がやるべきなんだ。
「まあ、落ち着いたらゆっくり話すとして……該当者3人を連れて行ってもいいか?」
「はぁ!?ダメに決まってるでしょ!?絶対ダメ、凶悪犯なのよ!?」
「コハル。先生はシャーレの方として、ティーパーティーからの依頼を受けてこちらにいらっしゃったのです。規定上は何の問題もありません。補習授業部の顧問、担任の先生になるのですから」
「え、えぇ……まあでも、先輩がそう言うなら……」
コハルの対応を見るに、ハスミの事を尊敬しているのだろう。
事実、他の正義実現委員会を見る時の目とハスミを見る目は違う。
だから、その尊敬する先輩が良いと言うのならそこは折れてくれるらしい。
しかし、コハルの暴走は止まらなかった。
「ふ、ふん!まあでも良いザマよ!こっちはこんな凶悪犯たちと一緒にいなくて済むし、そもそも補習授業部だなんて!恥ずかしい!あははっ!良いんじゃない、悪党と変態の組み合わせ!そこに『バカ』の称号だなんて、私なら一緒にいるだけで羞恥心で死んじゃいそう!」
「……ふぅ、コハル……」
アズサの行いについて言えば確かに凶悪犯だが、水着で徘徊を凶悪犯に含めるのは違うとは思うし何よりここまでニコニコとした少女は露ほども思っていないのだ。
悪党、変態に『バカ』の称号が加わっている二人とは違い……自分は『バカ』の称号だけを冠しているという事実を。
「何をぼさっとしてる。該当者3人と言っただろう、お前もとっとと準備をしろ」
「……え、私っ!?」
「ヒフミはそもそも私と共に来たし、ハスミやマシロが該当するわけもなく……となれば残った1人はお前しかいないだろう」
既に3回赤点を叩きだし、留年目前。
更に成績が向上するまで、正義実現委員会に復帰は出来ない。
そんな悲しい事実を提示することはしないが、それでも今目の前で顔を真っ赤にして固まっているコハルを見て確信した。
こいつは裏切なんて出来る奴じゃないと。
00Ⅳ
ひと悶着あったものの、無事に3人のメンバーを集め合計4人のパーティーメンバーが補習授業部の部室……というよりは教室に集った。
水着のままのハナコ、未だに顔を赤くしているコハル、ガスマスクを付けたままのアズサ、そしてヒフミ。
何とも本当に……前途多難で濃い面子ばかりをナギサも選んだものだ。
「では、ここに揃っているのが補習授業部のメンバーということですか?」
「は、はい……えっと、これで何とかみんな集まりましたね。補習授業部……」
「既に疲れたんだが……」
「先生……ここからが本当の問題なのですが……」
そう言われても、正直今日はドッと疲れたと言うのが正直な感想だ。
それはメンバー集めだけではない。
ナギサとの話し合いで己の変わらなさを自覚する場面が多々あった事も多分に影響している。
あれ以降、どの程度の距離感が最適なのかを常に計り続けている。
これがまた、私を疲れさせるのだ。
「ふふ、何をすれば良いのでしょうか?阿慈谷部長?放課後に人気のない教室で、素行の悪い女子高生と大人が集まって……ふふ、始まってしまいそうですね」
「始まる……?まあ、何だって構わない。ちなみに私は本気を出せば、この教室で一か月は立てこもれる」
「死にたい……本当に死にたい……」
会話がかみ合っていない。
私はこいつらをこれから導いていくと言うのか、しかもナギサのフォローもしながら、この中に居るであろう裏切者を見つけて。
無意識か、それともいつもの癖か頭を抱えため息をつきかけた。
辞めよう、そんな事をこいつらの前でするべきではない。
何処まで行っても私は『補習授業部の担任』としてこのメンバーの前では振舞わなければならないのだから。
「先生……その、よろしくお願いします……」
「厭だ……とも言ってられないか」
「私も出来るだけ頑張りますので……」
いよいよ私が舞台に上がる時が来た、そして上がればもう引き返せない。
では、これより開演するとしようか。
かつて星の為、同胞の為、友の為に『悪役』として暗躍した男が贈る新たなる物語を。
エメトセルクは絶対に補習なんてならない、多分ヒュトロダエウスも。
アゼムは……皆さんなりのアゼム像があると思うので、どのラインまで書くかいつも迷っています。
個人的にアズサは群を抜いて綺麗な魂なんじゃないかと思います。
黄金のレガシーのネタバレネタは有り?
-
有り
-
ダメ!死刑!