我らは己が運命の作者だ
神の恩寵を失うことさえ、曲に乗せてしまおう
舞台上で最も哀れな役者とも言える
この抗いが、我らを今際へと追いやるのだから
硝子に反射するのは
過ぎし日の思い出
闇のように素早く、灰のように冷たく
失われた楽園の夢の、遥か彼方へ
ーShadowbringersの一節
00Ⅰ
サポートをお願いされたものの初日以上に何か言うわけでも無くカタカタヘルメット団との戦闘は終わった事に私は感心していた。
やはり、連携についてはとやかく言う事は無いなと。
と言うよりも、土地勘も無く校舎の構造を碌に知らない私が横から口を挟んだとて耳障りになるだけだろう。殆ど完璧に近い連携は素人が見ていれば唸るだろう。
どちらかと言えば、私は個人の戦い方の方が気になった。
特にホシノの戦い方がな……
他3人も戦い慣れているが、その中でも別格。ふざけた態度の『仮面』を被ってはいるが常に効率的に相手の攻撃をいなし自身の攻撃を当てている。
人は一度『仮面』を被ったら最後、永遠とそれは己へと伸し掛かり外す事は出来ない。
どれだけ涙を流そうとも、逃げ出したくなっても、胸が痛もうともそれが厭で全てを捨て去ったとしても、外せないんだ。まるで罪を重ねていくかのように……
被らずに済むなら被るべきじゃない。
辛いときは辛いと、悲しいときは悲しいと言えばいい。そうして人は強くなっていく。
まだ引き返せるんだとその『仮面』も内に秘めたる『想い』も一人で背負うべきじゃない。
『過去』よりも『未来』を見ろ、その道の大先輩としてそう言ってやれればどれだけ楽か。
だが、この言葉を私はまだ言えない。
信用していない相手から己の本質を突く言葉を投げかけられた所できちんと向き合うよりも相手を拒絶したくなるだけだ。
今までがおかしかったんだ、『大人』だ『先生』だなんて理由で信用されていたことが。
この反応こそが正しいあり方で、私が勝ち取らなければならない物。
私が『アビドス』を裁定しようとしているのと同じで、ホシノもまた私を裁定しているのだろう。
いいさ、今はお前の裁定を先に終わらせるとしようじゃないか。
あいにくと、私の『責任感』は人一倍強い。
ちょっとやそっとで諦めたりなどしないからな。
『言葉』を贈るまでは絶対に。
当面の行動方針を定めた私は先ほどの教室へと戻った。
00Ⅱ
「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」
「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……」
練度の差は歴然で、そこに弱点であった物資の問題が解決したならばあの程度の雑兵に負けるようなことはないだろうに……それに最初から勝つ気だったはずだ。
にしても、カタカタ……言いずらいな、『あの連中』。
不良にしては装備が整いすぎていた、もちろん初日の様な場合もあるかもしれないがあの程度の練度でどうしてあそこまで新品同然の装備を揃えられたんだ?
もし元から金持ちならわざわざ不良にならなくても学園生活を送れたはずだろうし、誰かから奪うにしてもこれまでの話の内容を察するに基本的にアビドスに付きっ切りだ。
私の経験が告げている、『誰かが裏で糸を引いている』と。
私たちだってそうやって争いを起こさせてきたのだからよくわかる。自らは矢面に立たずに、現地の者たちで争わせる方が実に効率がいいんだ。
だからこそ、そんな『黒幕』の倒し方を身をもって経験している。
『計画をご破算にする存在』が現れる事。
アーテリスではあいつだったように、アビドスでは恐らくその役割は私。
既に『黒幕』の計画は私の介入によって、綻びが生じ始めているはずだ。
つまり、もう少しこの綻びを広げてやればその顔も見れるだろう。
ならば方針を訂正しよう。
『生徒』たちの争いなら私は助言程度にとどめるが、私以外の『大人』が関わっているようならばこちらも動くとするか。そうしないと公平じゃないしな。
別にそう変えた所で『生徒』が主役でありその結末も自らが選択するという初心を壊すことはない。
まだ見ぬ『黒幕』君、お前は随分と不運だよ。
善良で心優しい初々しさのある『先生』が相手だったのならもう少し影に隠れられたかもしれないが、1万2000年もの間分かたれた世界を統合するため暗躍を続けた『アシエン』、そのオリジナル『アシエン・エメトセルク』であったこの私が相手なのだから。
ありふれた言い方で言えば、歴が違う。
だがまぁ、むしろこの私で良かったじゃないか。お前たちの『筋書』にはある程度付き合ってやるんだから。
これが、ヴェーネスやあいつ──『アゼム』の座の者たちならどうなっていたか。
自由に動けるなら私ですら制御できないんだ、まだまだひよっこのお前たちでは何が起きたのか把握すらできないぞ。
「先生の指揮が良かったね。私たちだけの時とは全然違った。これが大人の力……。すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人ってすごい」
「私は大して指揮をしてないし、資源も連邦生徒会の力だ。むしろお前には色々と世話になった方だ」
礼がまだだったのもあるし、本当に大したことは何もしていない。
敵の残り数と逃げ道の把握による追い込み指示くらいだ。
だから、これを私の力と言われても困ると言うのが本音だ。
「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」
パパ……父親か。
いい父親ではなかったな、私は。
今回は……こいつらにとってのいい『父親』になれるのだろうか。
帰るべき場所になってやれるのか。
「いやいや、変な冗談はやめて! 先生困っちゃってるじゃん! それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」
「そうそう、可哀そうですよ」
「ホシノ、働いた分はしっかりと寝ろ。……『明日』の為にな」
「……うん。そうだね、先生。ありがと」
冗談だという事は分かっているから、少し父親の様な言い方で返しておくか。
内に秘めたる思いで子を守っても言動で表すまでは、子に伝わらない。
それはラハブレア一家の出来事を星海で視て思ったことだ。
悲しいかな、子を護るために全力を尽くしていたが言動でわかりにくかったラハブレアよりも子供は嘘でも愛情を言動で示したアテナを事実を知るまでは愛していたのだから。
爺さん……と思ったが私もそういうきらいがある。
「あはは……少し遅れちゃいましたけど、あらためてご挨拶します、先生」
何とも言えない空気を変えようとアヤネが話題を変えた。
どうもキヴォトスの子らが私に言う冗談の中ではこちらの心に刺さる言葉をよく言うものだ。
それに対して私も刺さる言葉を言えばいいんだが……まだこいつらとの関係が浅い以上はそんな事をするべきではないという良心もある。
本当に悩んでいるときにこそ、その言葉を与えどうするかを見守ろう。
「私たちは、アビドス対策委員会です。私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネ。こちらは同じく1年のセリカ、こちらが、2年のノノミ先輩とシロコ先輩。そして、こちらが委員長の、3年のホシノ先輩です」
彼女の紹介に合わせて各々が反応を示す。
「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……そのため『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました。先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られていたかもしれませんし、感謝してもしきれません……」
「私は仕事をしただけだ……感謝ならお前たち自身の働きにそれぞれすればいいさ。それで対策委員会とはなんだ?」
「そうですよね。ご説明いたします。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です」
「うんうん! 全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです! 全校生徒といっても、私たち五人だけなんですけどね」
『アビドスを蘇らせる』、それも5人で……
ああ、やはりそうだ。
私がこいつらの手紙を見て思ったことは……
『似ているな』
だったんだ。
規模こそ違えど信念や想いは近しい物がある。
アビドスが栄華を誇った時代に生徒であったわけでもないこの少女たちが、自主的に『過去』を取り戻そうとしている。
『過去』に生きた者が『過去』を取り戻したいわけではないから、別に悪い事ではない。むしろ、このまま母校が消えてなくなるなら足掻いてみるというのは素晴らしい事だと思う。
だが、それをするにしても何もかも足りてない。
物資も人材も、そして力すらも。
どれだけ足掻いてもこいつらだけでは解決できないフェーズにまで事態は進んでしまっている。
それは本人たちが一番よく分かっているんだろうが、それでも止まらない。
生憎と『過去』の思い出で戦った私には『今』の思い出立ち向かう者たちの気持ちはぶつかってみないと分からない。
前回は命を懸け、そして今回はこいつらと向き合う事でそれを知ろう。
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして出て行った。学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに襲われている始末なの」
滅びゆく土地に残り最善を尽くそうと足掻く事を進んで選ぶ者はいない。
恐らくこんな事態に陥らせてしまった者たちも既にここを離れどこかで悠々と暮らしているのだろう。
結果、どうしてこんな事になったのかその裏まで考えて行動しようにも人手が足りない中でも残ったもしくは入学した罪なき者にその『責任』を負わせる。
こういう奴らは正式に廃校になってしまったら真っ先に言うんだ。
『お前たちの力が足りなかったんだ』と。
なんて、度し難いんだ。
人は己の始めた事に責任を持って行動するべきだと言うのに……
ちょうど第一世界の『光の戦士』たちがそうだ。
自ら立ち上がり、世界を救おうとしたのにそれが出来なかったとなると扱いは一変。
『英雄』から『罪人』の様に思われてしまう。
「現状、私たちだけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生としては恥ずかしい限りだけど……」
「恥ずべきものか。お前たちは逃げずに抗っているじゃないか。それを自分で恥ずかしいと思う必要はない……決してな」
「先生……ありがとう」
心からの言葉だ、実際私だってお前たちの立場なら残っているだろう。
口では文句を言いながらでも、もしくはそれすら言わず擦り切れようとも逃げずに抗うさ。
だから、決して恥じないで欲しい。
シロコ、素直なお前だきっと受け止められるだろう。
「先生、褒めるのうまいねぇ~」
「そうですね! 私の事も褒めてみませんか?」
「やめろ! 私は褒めるのなんて苦手だ!」
「え~結構慣れてそうだったけど?」
「慣れてない! アヤネ、話の方向性を戻してくれ……頼むから」
深くまで『視た』私への反撃のつもりか絡んでくるホシノとそのノリにのったノノミへの対応に困り果てた私はこの場を何とか収めてくれそうなアヤネに縋るほか無かった。
それを見たアヤネがどうにか収めてくれる。
「まぁまぁ、先生も困っていますし……それに今はカタカタヘルメット団をどうするかの方が大事です!」
「あー確かに。しつこいもんね、あいつら」
「それについては、ちょっとした計画があるよー」
「えっ!? ホシノ先輩が!?」
「うそっ……!?」
おい。
幾らお前たちから見たら緩そうな先輩でも、存外な扱いじゃないか?
もちろん、それは仲の良さからくる扱いなんだろうが。
まぁ、私もあいつが『計画がある!』なんて言ったら同じような反応をするだろうし……
やはり、勝手知ったる相手にする反応は同じか。
「いやぁ〜その反応はいくら私でも、ちょーっと傷付いちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー」
「……で、どんな計画?」
おじさんと言うには随分と可愛らしいおじさんだな。そうだ、こういうおじさんと自称する分にはいいんだ。私は決して、断固として、言わないが!
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いてるからねー。だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」
「い、今ですか?」
「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし」
「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか」
「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしょうし」
「そ、それはそうですが……そうだ、先生はいかがですか?」
「……」
理にかなった行動だ。
相手は既に今日の戦闘を惨敗で終えて逃げた後、罠を仕掛けている可能性についてもそんな高度な計算が出来るならこれまでで既に占領で出来ていたはず。なら、こちら側が追いかけ壊滅させてしまえば今後の襲撃を無くせるかもしれないと考えるのは正しい。
それがヘルメット団だけの意思ならな。
だが、奴らから『黒幕』の正体に繋がる情報を手に入れられる可能性ある。
私の『方針』にも支障はない以上は乗らない手はない。
また、30kmも歩く事にはなるがこれが今日最後の仕事だと信じてやるしかない。
「追撃をかけるべきだな」
「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」
「ただし! 私も同行するぞ。椅子に踏ん反り返っているのは私の主義じゃないんでな」
「善は急げってことだね。先生は私が守ってあげる」
「自分の身ぐらい、自分でどうにかする。お前たちは普段通りやれ」
何故か私の事を気にかけてくるようになったシロコは少し不満げだが、誰かに守られながら何かをすると言うのに慣れてないんだよ私は。
悪意があるわけじゃないから、どうかわかってくれ。
「はい~それでは、しゅっぱーつ!」
襲撃に行くテンションではないと思うのだが……
まぁいい。
本日最後の仕事と思って歩くか。
エメトセルクが救うべきモノは多いのかもしれませんね。
それでも、彼ならきっと……
今後の展開について(絆エピソードや番外編は書きます。アビドス編後の流れについて聞きたいです)花のパヴァーヌ(花)、エデン条約(エ)、カルバノグの兎(兎)
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原作通り(パ1→エ→パ2→兎→パ2)
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変則(エ→パ1,2→兎)
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