エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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大変長らくお待たせいたしました。

死人がゴロゴロでる大きな山を登っていました。
前回は杖を折り筆を持っていましたが、
筆をへし折ってヴ王に即位して挑んだ登山でした。
一番沼ったのは、2層の雑魚フェーズでちた。
何色がおちゅき?

シュガーライオット、許さんでちゅ

と言うことで、
無事今零式もクリア出来ましたので、再開します!
とはいえ、消化とかサブジョブチャレンジ、竜詩もあるので爆速ではないですけどね!


Vol.3 エデン条約編 第2章 不可能な証明
2-1 ある者の結末


00Ⅰ

 

「待たせたな、遅れた」

 

ミカとの話し合いを終え、新たな問題そして彼女の状態を頭の中で思いながらもどうにか表情をいつもの状態に戻して私は教室へと戻った。

真相へは辿り着いた。

もう止められないのならば、やらせたうえで救う他ない。

であるならば、今後はよりこちら側の問題に注力できる。

 

「いえいえ!あ、ところで見てください!こちら、ちょうど先ほど受けた模試の結果です!」

 

模試の結果、と言いながらも厳しめの顔ではなく柔らかい顔であるという事は……。

そんな期待を胸に私はヒフミから結果を受け取り目を通す。

 

ヒフミはもちろん合格として、目を見張るべきはアズサとコハルだ。

2人とも不合格ではある。

だが、その点数こそ意義がある。

アズサが58点、コハルが49点……そうつまりは全身している。アズサなんてあと一歩で合格できるのだから。

学問の上でならば、進捗があるわけだ。

 

「随分と上がったじゃないか」

「……紙一重の差だった」

「まあ、そうだな」

「はい!今回は本当に紙一重でした!アズサちゃん、すっごく惜しかったです……!」

「み、見た!?先生、ヒフミ、私も結構上がったよ!?」

「はい、しかと見ました!コハルちゃん、前回は15点だったのに急に49点まで……伸びしろでは一番です、すごいです!」

「きちんと勉強をする時間を設ければ、上がるじゃないか。それにお前はアズサに教えることができた、つまり基礎は分かっているんだからそこを固めて発展させればいい」

 

私との話か、ハスミとの話か。

どちらが起爆剤になったにせよ、奮起し進む姿勢を持てるのならお前はきっと大丈夫だ。

そして落ち着いたときに私からの『宿題』をやればいい。

 

「ふっ、ふふーん!言ったじゃない、本当の実力は隠してたんだって」

「素晴らしいです……!」

「物は言いような気もするが……よくやった」

「そして、えっと……は、ハナコちゃんは……」

 

問題は残り1人。

まあ、ハナコは学問上で解決できる問題ではない。

現在の状態でアズサとコハルの点数が改善の兆しがある以上は、本腰を入れてハナコの問題に取り組むときが来ているのだろう。

 

「あら?ヒフミちゃん、どうしてそんなに声量が下がってしまうのですか?最初の試験が2点、次の試験が4点、今回は8点ですよ?」

 

2倍になっていると言えば聞こえはいい。

だが、これに至ってはむしろ意図的であまりにも適当だ。

一応、上げておくかという意図さえ感じる。

つまり、ヒフミの想いを理解はしているのだがそれはそれ、個人の問題は個人の問題と。

 

「これは数列として考えたら、あと3回受ければきっと合格圏内に届くはずです♪」

「そ、そう考えたらそうかもしれませんが……」

 

さて、どうするか。

ここでハナコを褒めないで終わらせるのは恐らく得策ではない。

が、褒められる行為でないことは事実。

しかし、上がっているのもまた事実なのだ。

 

お前なら褒めるんだろうなあ。

それくらいはよく分かる。

あの太陽のような笑顔で、一切の疑念すら持たず、信じるだろう。

もちろん、知ったうえで。

 

ハァ……仕方ない。

私もそうするほかないか。

 

「事実、上がってはいる。お前もよくやった。さて、となれば第二回までに届く可能性が出たわけだな?」

「はい!この調子でしたら、思ったより早く目標に届くかもしれません……!」

「必ずや任務を成功させて、あの可愛いやつを受け取ってみせる。それが、私がここにいる理由であり戦う目的だ」

「あ、アズサちゃん!?私たちがここにいる理由は試験と勉強であって、目的は落第を免れることですよ!?いつの間に変わって……!?」

「いいんじゃないか、別に。戦う目的があるのなら」

「そ、そういうものなんですか……?」

 

戦う目的が無いのに戦う。

そんなものはそれこそ虚しいだけじゃないか。

なあ、エリディブス。

 

白法衣の同胞を思い出し、少し目を細めたときに扉をノックする音が鳴る。

客人か?

わざわざ、こんな場所にまで。

 

「あら、どなたかいらっしゃったみたいですね?」

「そうですね……この合宿場に、どんな用事で――」

「し、失礼いたします……!」

 

随分と緊張した、初めて聞く声。

まだ知らぬ生徒は多いな私も。

 

「あら、この声は……」

「侵入者か。大丈夫、準備はできてる」

「なに、お前何を――」

 

ひと際大きな音がドアの向こう側から鳴り響く。

まさか、罠でも仕掛けていたのか?

ならなぜ私が引っかからない?

 

「きゃぁっ!?」

「ブービートラップ。誰かの侵入を感知したら起動するようにしてある」

「おい!確かに私は止めなかったがせめて用を聞いてから起爆するように出来なかったのか!?」

「こ、これは一体……?え、あ、こっちにも……!?」

「おい、待て――」

「きゃあああっつ!?」

 

遅かった。

賢いアズサのことだ。

何段にもわたって罠を張っていたのだろう。

あの時、無理やりでも止めるべきだったか……!

 

「逃げても無駄だ。逃げる方向を予測して、その先にもちゃんと仕掛けてある」

「もういい、やめてやれ。どうせ、一人で来てるんだから……」

 

私の教育方針も少し見直すべきだな……。

 

00Ⅱ

 

「けほっ……けほっけほっ……」

「だ、大丈夫ですか……!?け、怪我とかは……?」

「きょ、今日も平和と、安寧が……けほっ、けほっ……あなたと共に、けほっ、ありますように……」

「平和と安寧とは程遠いだろう……」

 

獣人……ミコッテ族とはまた違うタイプの生徒。

キヴォトスにもこういうタイプは多い。

私の知っている生徒ならシロコなどがその代表例だろう。

天使だったり、悪魔だったり、獣だったり……キヴォトスは随分と多文化である。

 

「あれ、よく見たらその服装、シスターフッドの……?」

「あら、マリーちゃんじゃないですか?」

「あ、は、ハナコさん……」

 

マリーと呼ばれた少女は何とか今の現状から落ち着き、シフター服を整えハナコの呼びかけに答える。

彼女が帰ればまた掃除だな……。

 

「まあ、とりあえず教室に入れ……」

「あ、ありがとうございます……」

 

マリーの手を引いてやりながら、私たちは無事に――まあ、アズサが私を爆破することはないだろうが――教室へとたどり着く。

とは言え、未だ少しだけ落ち着かないマリーを見かねてかコハルが水を差しだした。

 

「あ、ありがとうございます。……ふぅ。びっくりしました、入った途端に何かが作動して……」

「私の教え子が随分な対応をしたようで悪かった。……おい、アズサ。お前も謝れ」

「わたしも?」

「お・ま・え・が、やったんだろ!」

「ご、ごめん、てっきり襲撃かと」

 

誰これ構わず襲撃認定されては、いずれこの場所ごと更地になること請負だ。

まあ、あまり怒っても仕方がない。

私の責任でもあるし、アリウスではそう教えられたのかもしれないしな。

境遇の面も考慮はするべきだ。

 

「え、えぇっと……?」

「と、ところでどうして、シスターフッドの方がこんなところに……?」

「あ、それはその……こちらに補習授業部の方々がいらっしゃると聞きまして……ただ、ハナコさんがここにいらっしゃるとは存じておりませんでしたが……」

「……私も、成績が良くないので」

「そう……でしたか。はい……」

 

こうなる前のハナコのことをシスターフッドは知っているのだろうな。

ミカからもその情報網については知らされていたが、全部を知っている程の組織ではないのだろう。

宗教組織なんてものはそれくらいの方がいい。

ただでさえ怪しいのに、政治まで口を出して来たらそれこそイシュガルドのアレだ。

 

「ハナコ、知り合いなの?」

「あはは……少しだけご縁があって、と言いますか。マリーちゃんは、私を訪ねて……というわけでもなさそうですね。補習授業部に、どういった用事で?」

「あ、はい。本日は、補習授業部の白洲アズサさんを訪ねてこちらに参りました。伺ったところ、ここにいらっしゃると聞きまして」

「私?」

「はい。実は、先日アズサさんが助けてくださった生徒の方から、感謝をお伝えしたいとのことでして。諸事情ありまして、こうして代わりに」

「アズサが助けた?」

 

先ほど罠で爆破してきた奴を相手に感謝の言葉を持ってきたというマリーに何とも言えない同情の念を禁じ得ない。

それにしても、人助けとはな。

不思議じゃないが、内容にもよるか。

 

「感謝……?」

「クラスメイトの方々から、いじめを受けてしまっていた方がいらっしゃっいまして……その日もどうやら突然、建物の裏手に呼び出されてしまったのだと聞きました」

「いじめか……やはり所詮どこの世界も変わりはしないな」

 

巨大な学園だ、切っても切れない問題ではあるのだろう。

きっとそれはミレニアムでもゲヘナでもあることではある。

『人』の負の部分。

避けては通れないにせよ、気分が良いものでは無い。

トリニティとゲヘナ。トリニティとアリウス。

それだけではない、同胞同士で妬み蔑みあう。

私からすれば理解できないもの。

 

『なりそこない』の行い。

 

「そ、そんなことが……!?」

 

驚きつつもヒフミの目は、マリーでもアズサでもなく私を見ていた。

恐らく私の顔色を見てこう考えたのだろう。

 

『エメトセルク先生は絶対にそういうの好きではないだろう』

 

と。

 

むしろ好きな奴などいないだろう。

 

「いじめ……っ!?」

「……まあ、聞かない話ではありませんね。みなさん狡猾に、それに陰湿な形で行うせいで、あまり表には出てきにくいですが」

「……不愉快極まりない。唾棄すべき行為だ」

 

言葉は選んださ。

そのいじめをした奴も私の『生徒』ではあるのだから。

だが、もしそうでなかったのなら言うだろう。

 

『なりそこない』、『何度私に失望させれば気が済む』……そんな言葉を。

 

「私たちも、その方から相談を受けてようやく知ったのですが……そうして呼び出されてしまった日に……そこを偶然通り過ぎたアズサさんが、彼女を助けてくださったとのことで」

「ほう」

「そ、そうなんだ?」

 

立派な行いだ。

その魂を持つに相応しい程に。

やはり、お前ならきっとアリウスを救う希望になれるはずだ。

 

……なるほどな。

ヴェーネス、あの負けず嫌いが言っていた言葉をほんの少しだけ理解は出来たさ。

 

「……そういえば、そんなこともあったな。ただ、数に物を言わせて弱い対象を虐げる行為が目障りだっただけだ」

「そしてその後アズサさんに怒られた方が、正義実現委員会と連絡を取られて……どこで情報が歪曲されたのか分かりませんが、何やら正義実現委員会とアズサさんの間でそれなりの規模の戦闘に発展してしまったとか……」

「十中八九、いじめをしていた奴だろうな。そういう奴はいつだってそうだ、いざ自分に帰ってくると我先に私は被害者なんだと喚き散らす」

 

愚かで、弱く、見るに堪えない。

そんな奴すら救うのが英雄なのだろう。

だが、私は救いたくない。

どうしてそんな奴を救う必要があるのか、自業自得だ。

つくづく、私は先生に向いていない。

 

「……先生」

「そうしてアズサさんが催涙弾の倉庫を占拠し、正義実現委員たちを相手にトラップを駆使して、3時間以上戦い続けたと……」

「それってあの時の!?」

 

正当な行いだ。

不当に擦り付けられた罪に対して毅然と抵抗するアズサを責めるなど私には出来ない……いやむしろ褒めてすらやりたい。

お前はよくやったのだと。

一人では何も成せない愚か者たちと違ってお前は一人でも戦ったのだと。

 

「何がどうあれ、売られた喧嘩は買う。あの時も弾薬さえ切れてなければもっと長く戦えたし、あれ以上に道連れも増やせたのに」

「あ、あうぅ……」

「それで、その方が報告もかねて私たちの元を訪れてくださり、アズサさんに感謝をしたいと……ただ学園では見つけられずに、ここにたどり着いたという次第です」

「……そうか。別に、特別感謝されるようなことじゃない。結局私も最終的に捕まったわけだし」

「素直に受け取っておけ」

「でも……」

「いいか、アズサ。お前は『人』として正しい行いをした。愚かで弱く、一人では何も成せない奴とは違ってお前は一人でも信念を貫いたんだ。お前は自分の信念を曲げずに持ち続けろ」

「…自分の信念、か。エメトセルク先生が言うなら、受け取っておく。けど、いつまでも虐げられてるだけじゃダメ。それが例え虚しいことであっても、抵抗し続けることを止めるべきじゃない」

「……そうかもしれませんね。はい、あの方にもそう伝えておきます。アズサさんは、暴力を信奉する氷の魔女……だなんて噂がありましたが、やはり噂ですね」

「ふふっ。それはそうですが、アズサちゃんには意外と『氷の魔女』らしいところもありますよ?ほら、他の方からするとちょっとだけ表情も読み辛いですし」

「……!私がそうなら先生もだと思う」

「あはは……エメトセルク先生はむしろ、顔に出てると思いますが……」

「……私を巻き込むな」

 

ヒフミの言う通りだ。

私は存外顔に出る方だ。

出さないで言うのならヒュトロダエウスの方が得意だろう。

ポーカーフェイスとここでは言うのだろうが。

 

「ハナコさん……」

「……マリーちゃんが元気そうでよかったです」

「はい、私は……ですが……」

「玄関まで送りますね。さあ、一緒に行きましょう」

「あ、はい……」

 

やはりかつてのハナコを知る者にとっては、今のハナコは良い状態ではないのだろう。

別にマリーが悪いことを考えているとかではなく、純粋な精神面での心配だ。

お互いあと少し踏み込めたのなら違った結末があったのだろう。

人の心はかくも難しいのだ。

 

「で、ではみなさん、お邪魔いたしました。先生も、急に訪ねてきてしまってごめんなさい。それではまた」

「気を付けて帰れよ。あと、アズサの件、真実を伝えてやれ。こいつはくだらない噂で石を投げられるべき奴じゃないからな」

「はい、わかりました」

 

人を何度でも信じなおす、か。

キヴォトスでなら、本当にできるかもしれないな。

 

00Ⅲ

 

昼間の騒ぎが嘘のように、私たちの一日は穏やかに過ぎ去る。

言うならば、これが平常運転の日常。

しかし、その度に刻一刻と期限へと歩を進めてしまっている。

とは言え、一日の工程を終えた後すら何かを強制的にさせるつもりは湧かなかった。

 

――もし次に会って、全てを見て判じたとしても……それでも私と話してくれるなら……先生の事をもっと知りたいな

 

あの目、あの顔、あの後ろ姿が私の脳裏から離れない。

 

(何をやっているんだろうな、私は)

 

どうして止めなかったのか。

知っているのならきっと止めるべきだった。

どんな理由があれ、これ以上背負うのは間違っていると手を差し伸べなければならなかったはずなのだ、『先生』であるならば。

だが、私はその背を押した。

 

あいつなら止めるだろう。

全力で『先生』或いは『英雄』であろうとする。

ならば、私はどうしたいのか。

 

『先生』ではありたい。

だが、私は『英雄』ではない。

なれなかった側の……負けた側なのだ。

 

では、その私はミカに何をしてやれるのか。

己自身で分かっている。

結局は選んだ路を進ませるしかないのだと。

反論も口論も、面倒だからと片付けられたあの頃ならよかった。

今それをするのは不誠実だろう。

あれほど語っておきながら、味方でありたい等と抜かしておきながら。

 

目に見えているのだ。

どうせ、もうしばらくすれば再会しきっと私の側とミカの側は相容れず戦う事になる。

そして、ミカがどれほど強かろうと勝利するのは私の側……つまりは、補習授業部の側。

何故か。

それは、『先生』が介入しているからだ。

只の先生ではない、他ならないこの私が関わる故にミカは勝てない。

 

私は誰の味方なんだろうな。

お前ならその問いに素晴らしい答えを用意して叩きつけるだろう。

この事態の裏側に居る愚か者の意図すら砕いてしまう。

お前が関われば、全ての運命……いや物語はお前の物語になる。

 

「……先生?」

 

ハナコの声かけが私を思考の淵から現実へと引き戻した。

ああ、そういえばこいつらはこいつらで何かの話をしていたんだ。

 

「……なんだ?」

「先生の洗濯物はどうしましょうか?」

「……ああ、私の物は私で対処する。まずはお前たちのを優先しろ」

「わかりました。……大丈夫ですか?」

「大丈夫とは?」

「随分と考え事をされていましたので……中々見ない厳しい顔で」

 

心配そうな顔で私を見るハナコは、これまで見てきたふざけた面などは一切も存在してない。

心の底から、心配なのだろう。本当にそれで大丈夫なのかと。

 

「……元々だ」

「……そうですか」

 

私が話さないのを察したのだろう。

ハナコは残りのメンバー分の洗濯物を洗いに外へと向かう。

 

本気で心配して声をかけてきた人にするべきではない態度だった。

こういう部分がつくづくダメだ。

ありがとうと素直に伝えなければならないと言うのに。

 

ハナコが洗濯へ向かうのがちょうどいい区切りだったのだろう。

アズサの言葉を皮切りに皆が、眠る準備を始める。

私はきっと今日も眠れないだろう。

随分と長く感じる夜を、どうせ夜更かししているであろう奴らの魂を眺めて過ごすことになる。

そして、しっかりと物事を考えながら。

 

「あの、先生ちょっとお話が……後でお部屋に行っても良いですか?……お疲れだと思いますが……」

 

だが、どうも夜を孤独にさせまいとする意志があるのかどうか知らないが、

ヒフミにも話すことがあるらしい。

ここのところ連日であるが、私としては長い夜をほんの少しでも有意義に過ごせるからありがたいのだ。

これまた、言葉で伝えたことなどないが。

 

「わかった。だが、お前も根を詰めすぎるなよ」

「……はい」

 

結局その場は、ただ過ぎ去り部屋へと戻った私はこれからと己の方針について悩み続けた。

アズサのことは正直に言おう、あいつなら問題なく超えられるだろう。

それは重い期待であることは承知しているが、それでもあの魂ならばと。

 

ナギサについての対応は大いに頭を悩ませた。

自分を犠牲にしてでもエデン条約を、というのはあくまで私の考えに過ぎないがそれでもそうであった場合、私は態度を改めて接しなければならない。

だが、賢いナギサのことだ。私の変化には機敏に反応するだろう。

そうなれば、ミカの計画が詰んでしまいかねない。

ミカをその重荷から解放するには、その計画をある程度軌道に乗せてやれないと私の方法では救えない。

だが、きっとそれはナギサに害を及ぼす。

よって、私は秤に手を掛けながら均等に対処しなければならない。

 

それをしながら、ハナコの問題だ。

ヒフミも言っていたことだが、私とハナコは似ているようで似ていない……もしくは似ていないようで似ている。

才能があるならば、その才能を活かす責任と義務があると思い、世界が分かたれた後も暗躍した私と他人の期待に潰されたか、或いは嫌気が差したハナコとでは取った選択が致命的に違う。

しかし、その苦しみを厭だと思う本心が私にはある。

だから、ミカの問題がある前は最も対処に困った生徒なんだ。

 

「ハァ……」

 

心の底から漏れるため息に何処か懐かしさすら覚える。

あの頃もこうだったな。

今よりも冷徹であれたと思うが。

 

「……失礼します」

「開いてるぞ」

 

そんな風に思い悩んでいたからだろう。

普段なら簡単に気が付く、誰の声かに私は全く気が付かずに反射的に返した。

 

「こんばんは、先生」

「何を今更、堅苦しい挨拶――ハナコ?」

 

部屋に入って来たのは、ハナコだった。

それも水着で。

この際、着衣はどうでもいい。

何よりも驚いたのは、ハナコが来たことだ。

そこまでは想定していない。

 

「ふふっ、鍵を閉めておかないなんて、不用心ですねぇ♡」

「お前、どうして水着で……いや、そもそもどうしてここに?」

「ああ、これについてはお気になさらず。パジャマなので」

「パジャマ……だと……?」

 

アーテリスでの人生を思えば、どんな服を着ていようが何の衝撃もないだろうと信じていたが、

流石に水着を寝巻と言い張る奴がいるとは思わなかった。

アム・アレーンの荒れ地ですら、もう少しマシな格好で歩く。

 

「それよりエメトセルク先生にちょっと相談したいことがありまして……」

「お前から相談されるとは正直、今の今まで考えたことがなかったよ……」

「うふふ……実は……アズサちゃんのことなのですが」

 

夜更かしして動き回っていたのは、アズサとハナコだ。

恐らくそこでハナコはアズサが夜更かししているのを目撃した。

それを不審に思ったか、心配になったかどちらにせよ通常の夜更かしではなかったのだ。

だからこそ、私に相談しようとそんなところだろう。

 

「アズサのこと、か」

「後は、先ほどの先生が少し気になったと言いますか……」

「それは――」

「し、失礼します……先生、いらっしゃいますか……?昨日より遅い時間になってしまってごめんなさい、実は……え?」

「……あら」

「本当に失礼しましたぁ!?ご、ごめんなさい!私、そんなこととは知らずに……!せ、全然知らなかったんです本当です!?え、一体いつから!?」

「……ヒフミちゃん、今『昨日より遅い時間』って言いましたね!?つまり昨晩も来たということですよね!?そうなんですよね!?」

「あぁ……厭だ厭だ……」

 

もう少し空気を読んだタイミングにしてほしかった。

それだけはヒフミに言いたい、私エメトセルクであった。




リハビリもかねて。

言い訳になりますが、
今回の零式がこんなにかかるとは思いませんでした。(3週間掛からない予想でした)
漆黒時代から触れてましたが、今回は個人的に最難関です(ギミックというより、DPSチェックが)攻略情報も少なかったし、ジョブハブも多かったし…。

みなさんは踏破されましたか?
まだの方、ゆっくりでいいんです。
3層でメンタルブレイク仕掛けた私が言います。
無理はダメ!!死刑!!

次回もお楽しみに!!

弊ヒカセン像について(選択肢や行動、人物像)

  • 出しても良き
  • ダメ!死刑!
  • 良いが、幾つかの選択肢を混ぜて欲しい
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