エメトセルク先生と透き通った青春   作:無名の古代人

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そろそろ本来の物語との分岐が始まります。


1-5 その手を伸ばして

00Ⅰ

 

ラーメンを奢り私は急ぎの仕事があるからシャーレへ戻ると嘘をついて、対策委員会の日常を陰から見守って下校時間ごろにはシャーレに帰ってきた。

 

主にどうやって金を捻出しているのかが気になったからだ。各々の日々の行動から少しでも割り出せれば、一体全体10億の返済にどれだけかかるのかがわかるはずだった。

 

結果、何百年かかるかわからないと言う結論だけがそこに残った。

預かり知らぬ『責任』、それが数百年分。

通常なら新たに入学する者たちと共にゆっくり返していけばいいのだが、アビドスの現状ではそれは不可能で卒業と共に一人また一人と減っていき最後には0人になって廃校。

これもまた良い結末などでは無い。

 

今の5人で返し切るのが最高の手だが、今は利息分で精一杯と。

セリカがバイトをしても、アヤネが地道な節約や修繕でなんとか費用を浮かせても、ノノミのカードで経費を誤魔化したとしても、『何か』が足りていない。

 

どれだけ嫌がられようとも、『先生』が何らかの手を打たねば『青い空』は難しい。

 

それを再認識出来たのならば、今日できる仕事は終わった。

そこで眠れば良かった。

 

だが、なぜか眠らずに夜空を眺めていた。それはアビドスの現状を忘れる為か、セリカが飯を食べたかを気にしていたからなのか、それともまた今日も見回りをしているであろうホシノを考えたのか……

はたまた、私自身がただ眺めて黄昏たかったからなのか。

 

「綺麗な空だな……」

 

その下に生きる者たちの事など知らぬ存ぜぬと言いたい様にそうある。

それは当事者たちからしたら不快に感じる時もあるかも知れない、どうして自分たちは苦しいのに空はこんなに晴れているんだと、綺麗なんだと。

だが、空が絶望に染まる様を一度見た身からしたらもう二度と見たくない。

 

逆に考えろ、その分まだ希望はある。

空が晴れている限り、綺麗である限り何度でも立ち上がれるはずなんだと。

 

『助言』と『戦闘の策』だけ、『選択』は彼女たち。

それが私に相応しい身の程であると考えて縛りを設けたが、彼女たちが『選択』さえ出来れば良い結末へ至れる様にあの手この手で『筋書』を立てている私は結局のところ、変わっていない。

 

それだけ人は簡単には変わらないのだろう、全てを思い出しても、新しい人生を得ても。

 

やはり私が思考を整理する為に黄昏たかったのだろう。一人で物思いに耽る癖は一度ついたらなかなか捨てられないな。

 

『エメトセルク先生!通信です』

 

こんな時間に通信だと?

 

「誰からだ」

『アビドス対策委員会のアヤネさんです』

 

アヤネならくだらない事で夜に連絡してきたりはしないはずだ。つまり面倒な事態が起きたと言う事だ。ヘルメット団か…?いや、だが……

 

「アヤネ、どうしたんだ」

『先生!?こんな時間にすいません、セリカちゃんが家に居なくて……普段ならもう帰って来てるのに……』

 

そっちを狙ったか。

私は狙われるならば支援担当で校舎に一人残ることが多いアヤネだと踏んでいた。戦闘要員よりも支援役を狙う方が楽なはずだと。

だからこそ、アヤネには一人になる時の心得なども話してはいたんだが……

 

「待ってろ。早まるなよ…私が行くまでな」

 

どうやって来るつもりなのかを聞きたいであろうはずの返答が返ってくる前に通信を切る。

流石にここからでは捜索もできないからアビドスへは『飛ぶ』しか無い。

言い訳は……いや、場合によってはセリカの魂の色からその位置を探る必要があるのだ遅かれ早かれ対策委員会の連中にはバレる可能性だってある。

 

どうしたものか……

 

だが私の行動は既に選択していた。

影が己の身を包み、そしてこのビル街と砂に塗れた街を繋ぐ。後はただ身を委ねれば、もうそこはアビドスだ。

この地を見下ろせる場所から私は、視線の焦点を物質界から『別の場所』へと移す。

 

「さて……魂の色は、どんなだったか……」

 

いくつもの異なる魂たちが犇めく言葉を見たことのある生徒たちで間引き、そして更に絞り込みを行う。

住宅街じゃないか、なら……

少し位置を変え別の廃墟を見れば、

 

「ああ…………見つけた」

 

ふむ、見たところ命に別状はない。

そしてその周りに居るのはカタカタヘルメット団の残党たちか。

とすれば脅し目的の誘拐というわけだが……

不可解だな、脅しなどと。

キヴォトスに生きる生徒たちは銃弾に対して異常なほどの耐性を持っている、何なら爆発に対しても。

それを捕まえて、要求し、呑まねば命はないとでも言いたいのか?

随分と悠長で杜撰……いや、表立って始末するという選択肢を取り辛い『相手』からの依頼か。

 

「なんであれ、私の責任だな。ならば……」

 

再び影が私を違う場所へと誘う。

アビドスの校門付近か……セリカの場所よりもここを選んだのは何故だ。

私は彼女たちに助けさせたいのか、それとも……

いや、私だけで助けるべきだ。

 

だから……

今度は気の迷いを無くして、もう一度影を生み出す。

我が身を包み、彼女の元へ――

 

「……先生?」

「ッ!」

 

声に驚き、影を消して振り向く。

 

「……ホシノか」

「……今のは?」

 

……見られたか。

足元だけならどうにかなったかもしれないが、流石に腰の位置まで上がっていた影を誤魔化す事は難しいだろうか。

だが、ホシノが知るべきことでもないはずだ。

 

「……セリカが誘拐された。あいつの場所を探し当て、そしてそこへ向かう……ただ、それだけの事さ」

「それにしては得体のしれないものだったけど?」

 

私か。

おじさんではなく、そう言うという事はやはりそうなのだろう。

その目が物語っている、『お前は信用ならない』と。

 

「私自身の……いや、私たちの力だ」

「……先生の?」

「キヴォトスの外、私たちの同胞が……同志たちが使う術の一つ。それ以上をお前が知る必要はない。知ったところでお前には使えない」

「先生はセリカちゃんが何処にいるのか、分かってるんだよね?」

「ああ」

「ならその術を使って一人で行こうとしたの?」

「セリカが誘拐されたのは、私の見込みが外れたからだからな。その責任は自らの手で取る」

「……先生一人で何が出来るって言うのさ」

「逆にお前たち『生徒』がどうやってこの『私』を斃すのか聞きたいがな」

 

互いの視線の交差は続く。

ホシノからすれば私は『少しだけ信じてみてもいいかもしれない大人』から『得体のしれない信用できない存在』へと格落ちしてしまっているだろう。

もはや『大人』とすら認識されていない筈だ。

『化物』……多くの者が『不滅なる者』であるアシエンをそう思っただろう。

だから今更そう思われた所で痛む心等、ないさ。

それにその『化物』が増えずに済むならいいじゃないか。

 

私は『シッテムの箱』を地面へと置く。

 

「信じられないと言うなら、いいさ撃てよ」

 

『丸腰』だ。その手に持つショットガンで撃ち抜いてみればいい。

もし私を斃す程の『想い』があるならそれもまぁいいかもしれない、悲しい『結末』になるが。

 

そんな私の行動をホシノはやはり鋭いまま、されとて少しだけ驚きの色を混ぜて見る。

 

「先生の本当の目的は何?」

 

本当の……か。

『生徒』たちを見て、判じて……それで何になるのか。

あいつが救った星々にある『物語』を見るためなのか、私が生きるためなのか……

正直なところ、全てが中途半端に留まっている。

ハーデスとしての私、エメトセルクとしての私、そして『アシエン・エメトセルク』としての私。

『導く』『見守る』言葉で聞けばそれらしく聞こえる。

だが、どこにも『エメトセルク先生』としての意思があるとはとても思えない。

 

結局、昔の命その延長だ。

 

「……それが分かれば、こんな夜更けまで起きてちゃいないだろうさ。お前たちを知り、助言し、そしてその『選択』を見て判じる……と言うのが当面の方針だが、どうしてそれを望むのか、それをして私の何になるのか。それはわかっちゃいない。だが……」

 

言うか言うまいか迷った事を、一度目を閉じ決心して言う。

 

「かつて『ある男』が歩んだ様なザマになる事を止める事は出来る。それが『今の』中途半端な私ができる事だ」

 

私の人生は軽くなかった。

それはヴェーネス一人の戦いを知ってもなお、彼女への評価で掌を返せないほどに。

だが、一つだけ確かな事はある。

決して、誰かに推奨する生き方ではない。

ましてそれを、子供が背負っていくなどあっていいものではないとそれだけは心の底から思う。

 

「先生は……ううん、ごめん、わかった。じゃあまずはみんなと話してその後、一緒に行こっか。可愛い後輩を救いに」

 

 

00Ⅱ

 

砂漠化が進み、廃墟となった住宅街を爆走するおんぼろの装甲車両が一台。

もし目の前に何かがいたらそのままひき逃げする勢いのそれには、共通の意識を持って挑む4人の為に私が放置されていた所を『ある手法』で動けるようにして運転していた。

 

『お前に最期の仕事をやる』

 

と。

 

正直な所、アヤネも同行した方がいいと考えていたが仲間の支援の為に一人、学校に残るという判断を彼女自身が下した以上私に出来るのは校内にいくつかの『罠』を設置してやる事くらいだった。

 

なら残った者の分も戦場へと赴く者たちは背負っていくのみだ。

 

『大切な仲間を取り戻す』

 

その想いを胸に進むお前たちの顔、私は嫌いじゃない。

 

『先生の言っていた場所付近です!……カタカタヘルメット団を確認……皆さん準備はいいですか?』

「セリカはあのコンテナの中だ……予定通り行くぞ、掴まれ」

 

更にアクセルを踏む。

ヘルメット団たちも反応し銃撃をしてくるが、それでも腐っても元は装甲車。

そうそうに破壊できるものではなく、勢いそのままにコンテナを乗せたトラックの前方へと衝突させる。

 

私への衝撃はかなりのものだが、他の4人は何の問題もない。

なんせ私の『謝罪(エウブレウス)』を与えているからな。

 

「私の事はいい!先にセリカを救出しろ!」

 

私の合図共に、戦士たちがドアを蹴破り出撃し轢かれないように受け身を取っていたヘルメット団どもを掃討していく。

その間に私はもう一度、このポンコツが動けるように『命』を与える。

せめて帰り道分だけでも動いてくれ。

 

「う、うわあああッ!?」

 

コンテナのドアを壊すために、あいつらが起こした爆発に心底驚いたような声を上げる少女。

 

『セリカちゃん発見!生存確認しました!』

「……あっ、アヤネちゃん?!」

「こちらも確認した、半泣きのセリカ発見!」

 

それくらい許してやれ。

誰だって、拉致されてコンテナに閉じ込められたら怖いだろうに……

 

「なにぃー!?うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと!そんなに寂しかったの?ママが悪かったわ、ごめんねー」

「う、うわああ!?う、うるさいっ!!な、泣いてなんか!!」

「嘘!この目でしっかりと見た!」

「泣かないでください、セリカちゃん!私たちが、その涙を拭いて差し上げますから!」

 

人生に涙は付き物だ。

今日くらい素直になってもいいとは思う。

だが、そんな悠長な事を言っている場合でもなさそうか。

 

巡回に出ていたヘルメット団の残党が大急ぎで戻ってきたようだな。

それもまた身の丈に合わない武器と共に。

 

「感動の再会に水を差すようで悪いが……準備しろ」

「な、何で先生までいるの!?」

「……まぁ、なんだ。お姫様を助ける王子様たちのお供みたいなものだ」

 

私は王子様じゃない。

だが、それでもみんなで救うと決まった以上は私に相応しい役割をするさ。

 

『よかった……セリカちゃん……私、セリカちゃんに何かあったんじゃないかって……』

『アヤネちゃん…』

 

同期の桜を取り戻せた喜びかホログラム上のアヤネの目には涙が浮かんでいる。

花は散るのが定めと言われるが、散らずに残る花があってもいいだろう。

だって、こんなにも美しいのだから。

 

「さて、ホシノ」

「うん、わかってるよ先生」

 

Flak41改良型と呼ばれる重戦車と共に『誘拐犯』たちが戻ってくる。

顔はヘルメットで見えないが、おそらく怒り心頭だろうな。

だが、それはお前たちだけじゃない。

 

「それじゃ……」

 

ホシノの言葉と共に銃を構え、支援の準備を整え、そして。

私もまた、『シッテムの箱』を構える。

 

「……」

 

ホシノが私を見る。

ほう、私に続きを言えと?

いいだろう。

 

「対策委員会の可愛い部員に手を出したこと、後悔させてやれ」

 

 

00Ⅲ

 

もはや勝負とは言えなかった。

当然と言えば当然だ。

 

攻めてこられた者の『怒り』と仲間を攫われていた者の『怒り』、どちらが上かなどと聞くまでもない。

そしてこの戦いはこの世界にもやはり『想いの力』の概念がある事を示していた。

 

ホシノが放った攻撃によって頼みの綱の戦車が早々に破壊された事が決定打となり、統率の取れていないヘルメット団の残党たちは組織だった抵抗をする事もなくただ当たりもしない無駄弾をばら撒きながら、もしくはこんな筈じゃなかったなどと呟きながらまた一人また一人と倒され、仲間を突き飛ばしてでも逃げようとする者、懸命に歩けない仲間を背負って逃げる者、そして誰にも助けて貰えず取り残された者……

 

「勝者が敗者を見下さず、憐れまず、敗者が勝者を仇としない……か」

 

私はかつてラダー大昇降機前の前であいつに言った言葉と同じ言葉を繰り返す。

ヘルメット団たちはこのままいけば碌な結末が待っていないだろう。例え対策委員会が見逃したとしても、こいつらへ武器などを与えていた『上』はどう思うか。

 

十中八九、切り捨てられるだろう。

新しい『駒』に処分させるか、『上』自身の手で以って。

 

私は再び再会を噛み締め合う対策委員会たちから離れ、全てを諦めた様に空を見る赤いヘルメット……かつてシロコに蹴られたであろうヘルメット団の長だった少女に近付く。

 

「何だよ……笑いに来たのかよ……」

「生憎と、敗者を嗤ってやる気分じゃなくてな」

「じゃあ……何の様だよ……」

「……誰に雇われた?」

「誰が……言うか……」

 

不良なりの筋の通し方なのか、それともただ反抗しているだけなのか。

 

「わからない奴だな。今更、そんな風に義理立てして何になる」

「それは……」

「お前はもう戦えない……戦う目的がない」

 

かつてあいつに言って、あいつがエリディブスに言った言葉を私は彼女に言う。

 

「目的が……ない……」

 

誰しもが役目の前に自分の想いがあるはずなんだ。

だが人は役目を果たすためにどんどんと最初の想いを無くしていき、気が付けば『いったい自分は何をしたかったのか』を忘れてしまい、そのまま進めば最後には『何のために生きたんだ』と絶望するのだ。

 

だから、まだ振り返れる。

子供である、お前たちなら。

 

「お前が本当にしたかったものは何なんだ?」

「……ううぅ……私…は……」

「ああ」

「……私も……他の人たちみたいにッ…『普通の』青春……したかった……」

 

『普通の』青春。

何をもって普通とするのかは人によるだろうが、おそらくこいつは学校に通って勉強して、そして他愛もない時間を過ごしたかったんだろうな。

 

「……大人の…駒になんてなりたくなかった!」

 

『悪い大人』の陰謀の為の駒、履いて捨てられる程度の何処にでもいる何者でもない物。

それをこいつは今になって、涙を流して漸くわかった。

『どこにでもいる誰か』じゃなくて、『自分』だけの誇りを持てる人生を送りたかったと。

 

「でも……う…もう無理なんだ……ここまで来たらもう……」

「無理なものか」

「…へ?」

「お前はまだ子供じゃないか。確かに過ぎ去った時間を巻き戻してやる事は私にはできないが、それでも『明日』を歩む事まで否定はしない」

「……でも……私は……」

「そうだ、お前はアビドスの敵だ。いや、敵だった。だが、明日はどうだ?」

「……」

「お前、あいつらがどうしてあそこまで眩しく見えるかわかるか?」

「……わからない」

「廃校寸前の学校の為に戦う理由もお前は知らないだろう?」

「うん」

「互いを知らないまま殴り合い続けることほど、野蛮で不毛なこともあるまい。何故あそこまで眩しいのか、大変そうなのにどこか楽しそうなのか。どうしてお前はそれと知ろうとしないんだ」

「……それ、は…」

「『悪い大人』の言う事を聞いているからじゃない。お前自身が目を逸らしているからだ」

 

知ろうとしよう。

向き合ってみよう。

 

初めはそんな軽い気持ちでもいいのだ、例え相手に信用されていなくても、敵視されてしまっていても。

自らが先に向き合ってみなければ見えてこないものなのだから。

 

「私は……羨ましかったんだ……」

「ほう?」

「あんだけ苦しめてるのに、こっちは武器だって人だって多いのに、なのに!……あいつらみたいな笑顔はなかったんだ……」

 

妬み。

人が持ち合わせる負の感情の中でも最も面倒なモノの一つ。

怒りならいつかは晴れるかもしれない、敵対しても和解できるかもしれない。

だが、妬みは仲のいいものに対しても芽生えてしまい中々消え去ってくれないモノ。

そして、妬みは他の負の感情を増幅させる。

 

『私たちばかり、惨めにはさせない』

『悲しかった、苦しかった、惨めだった、憎かった……必死に生きて、でも駄目だった……』

 

「……生きている限り、誰しもが悲しみ、苦しみ、誰かを憎み、そして妬むさ」

「……」

「だが、それすらお前の人生の一部だ。全てじゃないはずだ」

「……そう…かな」

 

ああ、きっとそうだ。

 

「お前は今、苦しみを知り、悲しみを知り、絶望を知った。なら、それを胸に刻んで進め。それが『生きる』強さだ」

 

だから私は指を鳴らす。

己の弱さを知った子供に明日への切符を渡すために。少女に少しの祝福を与えるために。

 

「身体が、痛く…ない?」

 

先程までの痛みが嘘のようだと己の体を確かめる少女に少しだけ微笑んでやる。

 

「帰り道は自分で探せ。私が与えたモノを無駄にするなよ」

 

聞けず終いだがまぁいいだろう。周りに残っているトラックの残骸にあるロゴや戦車で大体の予測はできるから。

そう思いその場を去ろうとした私に彼女が声をかける。

 

「待って『先生』!」

「なんだ」

「……カイザーコーポレーション、もっと言えばカイザーPMC。それが雇い主」

「……わかった。次に会うときは私に『新しい』お前を見せろよ」

 

期待だけを示し、今度こそ私は対策委員会の元へ戻る。

 

カイザーコーポレーション、結局お前たちか。

だが、今回は『ぬかったな』。

全く……私の生徒に手を出したんだ、お前たちに碌な結末など与えるものか。

せいぜい、嗤ってやるさ。

お前たちの計画が無様に崩れ落ちる、その瞬間をな。

 

「あのヘルメット団の子と何話してたのー?」

 

オンボロ装甲車に戻り、車を出そうとする私にホシノが話しかけてきた。

まあ、疑ってるんだろうな。

 

「……説教だ」

「へぇー。先生もするんだね、お説教」

「まあ、よくしていた……とだけは言っておく」

 

主にアゼムにだが。

説教と言う言葉に納得したのかそれ以上の追及はなかった。

嘘はついていない。

『先を生きる者』からの助言だから、説教ではある。

 

「さあ、帰るぞ」

「そうだね。先生も、お疲れ様」

「これから運転して帰るのは私なんだがな……?」

 

運転も案外疲れるんだぞ、ホシノ。

 

 

00Ⅳ

 

学校に着くやいなや、緊張が解け倒れたセリカを保健室に運び私も少しだけ仮眠を取った。

別に取らなくても良かったんだが、運転したお礼にとそう言われたので好意に甘えさせてもらったわけだ。

 

だが目が覚めると既に辺りは暗くなっていた為、戻りがなんだかんだ昼頃だったことを踏まえるとかなり寝ていたわけだ。

生活リズムが崩壊したな。まあ、あってないようなものだが。

 

ベッドから起き上がり、椅子に座りアロナからの報告文書を読んでいるとちょうど目を覚ましたセリカがカーテンを開けた。

 

「あ、れ……?先生!?ど、どうしたの?」

「私もほぼ徹夜で運転までしたからな、寝ていたんだ」

「そ、そっか」

「その調子なら爆風を受けた分も大丈夫そうだな」

「……ああ、私なら大丈夫。いつまでもこうしちゃいられないし。アヤネちゃんや他のみんなも心配してるし……バイトにも行かなきゃだし」

「……そうか」

 

やはり昨日の今日では上手く会話を繋げられなかった。

私は言わなければならない事があるのに、それを言うのがもどかしい。

だが、言わねば。

 

「あ、あの!!」「セリカ」

「「……」」

 

被ってしまった。

セリカも何か言いたい事があるようだが……私自身は自分の行いをうやむやにできない。

 

「先にいいか?」

「ど、どうぞ……」

「すまなかった」

 

ただ頭を下げた。

 

「え、ええ!?謝るべきは私の方で……!」

「お前がどうして『大人』の手を借りたくないのか、お前と向き合いもせずに一昨日も昨日も……失礼な態度を取ってしまった」

 

そうだ。

なぜ意地を張るのかまでは私だってわかってはいた。

だが、その過程でどれだけの努力をし自らを犠牲にしてきたかを見てきたわけではない。

向き合いたいと言いながら頑張りを知り、認めてやることもせず己の考えだけで距離を縮めてみようとしたのだ。

 

「お前は誰かが頑張れば救われるというときに、その「誰か」になれる。だから……よく頑張ったな」

「……先生」

 

やはりこうして素直に褒めるのは苦手だ。

だが、それでも伝えよう。

伝えられずに後悔するよりも、伝える方がずっといい。

 

しかしそれでも、恥ずかしいので席を立ち保健室を出る準備をすると、セリカが先ほどの続きを紡いだ。

 

「あ、ありがとう……私と向き合おうとしてくれて……私を助けるために徹夜で運転までしてくれて…それに、ラーメンを奢ってくれて……」

「……大将め……黙っていろと言ったはずだ」

「だから……また明日ね、エメトセルク先生!」

 

そう言って私より先に保健室を出ようとしたセリカに私からも微笑んで言葉を贈ろう。

 

「ああ、また明日」

 

と。




セリカ編……と言っていいのでしょうか。
これにて一旦一段落し、次回は彼女たちを出せるくらいにまで進むといいなと考えてます。

今後の展開について(絆エピソードや番外編は書きます。アビドス編後の流れについて聞きたいです)花のパヴァーヌ(花)、エデン条約(エ)、カルバノグの兎(兎)

  • 原作通り(パ1→エ→パ2→兎→パ2)
  • 変則(エ→パ1,2→兎)
  • その他(コメントでお願いします)
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