界王拳を極めし者   作:紅乃 晴@小説アカ

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激闘!英雄との戦い!(不本意)

 

 

「よぉ!界王様!何だかひっさしぶりだなぁ〜!」

 

界王様が訳分からんこと言った次の日。朝起きたら青い胴着に身を包んだこの世界最強の男が界王星にやってきてました。

 

孫悟空……言わずと知れた超有名人で、あのプライドと自尊心の塊みたいなベジータでさえ「お前がNo. 1だ」と認めるほどの純粋な強さを求める……穏やかな心を持った地球育ちのサイヤ人だ。

 

ひえ、近くで見るとなんて筋肉だ。あと、最近界王様から気の感じ方も教わったのだが、悟空から感じる気は穏やかで小さく、しかし底知れない……まるでどこまでも深く続く小さな穴を覗いているような……そんな得体の知れない何かを感じられた。

 

ただ、水色のような胴着を着ているということは……え、Zが終わった後の姿?それともGT前?サイヤ人は戦闘民族であることから、若い時代が長いと聞くので……ぶっちゃけ外見で何歳くらいかを判断することが非常に難しい。

 

そんな悟空さんに界王様はどこか懐かしそうな顔で頷き応える。

 

「当たり前じゃ、お主はすぐにフラフラとどこかに行ってしまうからのう」

 

ははは、わりぃわりぃと気安く謝った悟空は、そのまま界王様の横を通り抜けて、俺の前に……で、でけぇ……いや、身長とかじゃなくて、人として、生き物としての規格が違うとはっきりと分からされてしまう。やっぱり主人公、世界を幾度と救った伝説のサイヤ人。そんな恐れ多い相手は、感情が読めない表情のままジッと俺の顔を見つめてきた。え、なんなんですか、俺食べても美味しくないっすよ、界王様黙って見てないで何か言って怖い怖い怖い。

 

「んで、おめぇが界王様が鍛えてっつー弟子か?」

 

「え、あ、はい!は、はじめまして!孫悟空さん!」

 

「ふーん……界王様ぁ、こいつホントに強いんか?」

 

なんか……品定めが終わった後、大したことねぇなみたいな反応で界王様にそう言葉を向ける悟空。いや、貴方の規格で見れば俺なんて小指の先ほどの力で瀕死にされること間違い無いんですよ。すると界王様は面白いように笑顔を向けて、こう答えた。

 

「もちろんだとも。界王であるワシが保証しよう」

 

「じゃ、いっちょやってみっか!」

 

「え゛」

 

ばっと構える悟空。思わずお師匠である界王様に目を向ける。助けて、ここで殺されるわ。すると、「構わん、やれ」と無慈悲に指令を出すお師匠様。クソわよ。

 

そこに神はいなかった。アーメン。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁー、界王様。コイツめちゃくちゃ弱ぇーぞ」

 

結果。5分も持ちませんでした。

 

いや、最初の方は様子見みたいな感じで軽く撃ち合う程度に悟空が合わせてくれてたんだどさ!ある程度力量測られてからはもうコテンパンよ。流れるように悟空の拳が俺の右頬に突き刺さったよね。威力強すぎて一瞬意識がどっかに行ったわ。そのまま天国で目覚めてくれて良かったんだけど、残念ながら身(?)も心も界王星という地獄に囚われておりまして。

 

軽く打ち合って1分。

 

なんとか凌ぎつつやり返して1分。

 

残り3分は悟空のサンドバッグになってました。

 

クソわよ!!

 

5年かけてフィジカル鍛えてなかったら今頃ゲロまみれのボロ雑巾になってたわ!なんとか原型は留められたよ!鍛えてくれてありがとう界王様!けど精神も身もボッコボコなんだわ!!

 

に、逃げるんだぁ……勝てるわけがないォ……!

 

「やりあっててもこっちについてくる感じもないし、技を盗むわけでもないし」

 

そう言ってつまらなさそうな悟空さん。それ誰と比べてます?その胴着きてワクワクしたのって、純粋悪のブウの生まれ変わりであるウーブさんと比較されたりしてます?っざっけんな!

 

こちとら凡人やぞ!修行し始めて5年と少しだけど、頭から足の先っぽまで界王様の教えてくれてる武術で染まってるんだ!他の流派の武術を見て技を盗めとか無茶振りもいいとこだぞ!?

 

でも手も足もでなかったんだから反論できんのよなぁ!悟空は武術に関しては辛口評価気味だし……。

 

「わざわざ界王様がここまでやって育てるような奴には見えねえんだけどなぁ」

 

「そこまで言うか。それでは何か?ワシにみる目がなかったとでも?」

 

「そうだとも思えるなぁ、オラは」

 

プッチーン。なんか、その言葉を聞いて……俺の中の何かが切れたような気がした。ま、まぁ?俺自身才能もクソも無いミジンコだし?界王様の出すお題に答えるのに何単位時間かかるし?成長速度で言えば凡人のそれですよ。

 

ただ、それは俺の問題だ。界王様の見る目がない?それって界王様が間違ったって言ってるんだよな?界王の武術を極められる存在として俺を認めてくれた界王様のことを否定するってことなんだよな?

 

……よろしい。

 

「言ったな?お前言ったな?よし、よくわかった。ここから先は戦争じゃあァア!」

 

ヒャア!開始の合図なんて待ってられねぇ!構わず襲うぜ!ボロボロの体に喝を入れて界王様と向き合っている悟空に取り掛かる。すぐに振り向かれて裏拳を右頬に叩き込まれるが、構うことはねぇ!こちとら死んだ身だ!今更体など労わる必要などないわぁ!!

 

「とりあえず、一発、思いっきりぶん殴る!!!!」

 

裏拳を喰らいつつも、クロスアッパーを悟空めがけて繰り出す。それはギリギリで避けられるが、一時的にでも流れを掴んだのはこちらだ。構わずに突き進んで拳を繰り出すぜ!

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃッ!!」

 

力の限り、最高速度の連打を繰り出すものの、そのことごとくが致命傷にはならない。肘や側腕の受けで悟空の顔に拳など一切届かない。打てども打てども……けど、そんなことは関係ないね!!

 

「俺を馬鹿にするのはいい!あぁ、そうさ!アンタらに比べたら俺の成長速度なんてミジンコレベルよ!ただ、それがどうした!それは俺の問題なだけだ!ただなぁ!」

 

連打がダメならと一気に屈んで足払い。回転の力を利用して飛び上がり、右側から側頭蹴り。受けられる。その反動を利用して膝蹴り。これも受けられる。何だこいつ、未来でも見えてんのかぁ!?肘打ちも食らっとけ!避けた!?一気に距離を空けられたが、姿勢を崩しつつも着地。体を屈め、バネのように飛び出す。

 

距離を取られたら流れが持っていかれる!とにかく攻めろ!攻めて攻めて……流れはまだ、渡さない!

 

「こんな俺に期待してくれてる界王様のことを……界王様の武術を馬鹿にすることだけは!」

 

拳に気が宿る。それはバチバチと音を立て、荒々しく漲る。そのとき悟空の目の色が変わったと界王様から教えられたけど、当時の精神状態じゃそんなことなどお構いなしだった。

 

「界王拳を馬鹿にすることだけは!それだけは!絶対に……絶対に許さぁああん!!!!」

 

渾身の横振りの一打。しかし屈んだ悟空に避けられ、今度は俺が空高く蹴りで打ち上げられる。だが、真上はとったぞ!!!!

 

「持ってくれよ!俺の体ぁ!!」

 

ずっとイメージしていた。界王様に認められ、界王拳を教え、授けてもらう時を。

 

ずっとイメージしていた。界王拳を自在に扱い、より高いレベルに上がった自分を。

 

ずっとイメージしていた。俺だけが操れる……俺だけの界王拳を!!

 

「いくぞぉお!なんちゃって……界 王 拳 ぇぇえ ん っ!!!!!」

 

半透明の気が一気に赤く燃え上がる。気を思いっきり放出すればすぐにスタミナが切れてしまうと言われていたが、もう関係ない!そんなこと!

 

蛇口を捻って水をめいいっぱい出すイメージじゃない。ひねった蛇口の先を狭める。水の量は変わらないが、狭い道を通ることで圧縮され、より鋭く、早く、勢いよく飛び出していく。それが必要な気だ!それを纏う。鋭く早く放出される気は、色づき、赤くなる。

 

これが俺の中にある……界王拳のイメージだ!

 

「ヅァアァッ!!ア゛イ゛ッ!!」

 

ギュンッとこれまで体験したことない速度で悟空の懐に飛び込み、着地。その着地の衝撃、荷重移動、重心、全てを拳に乗せて……悟空の頬をとらえた。

 

ボゴォッと凄まじい音が響き渡り、悟空は真横に吹き飛んでいく。すごい手応えが拳にあった。木を薙ぎ倒して飛んでいく悟空を見て、俺はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「へへ、ざまぁみやがれ」

 

界王様の拳を……舐めるなよ……。

 

それを最後に、俺の意識は真っ暗な闇へと落ちていったのだった。

 

 

 

 

「っあーっ!イチチ……すげぇ1発だった」

 

吹き飛んだまま地面に接触する前に、舞空術でなんとか姿勢を立て直したけど、頬に走った痛みは全く消えねぇ。目を前に向ける。そこには満足そうな顔をして倒れた男がいた。

 

「どうじゃ悟空。結構見所があるじゃろ?」

 

ニヤニヤした顔でそういう界王様。どうやらハッパをかけたのは間違いじゃなかったらしい。どうにもこいつとやり合ってると、何か遠慮してるような……力をセーブしてるような感覚があったからなぁ。

 

なので、ウーブと戦ったときみてぇにワザと相手を怒らせるような態度をとって見たらドンピシャりだったわけだ。

 

打ち合ってよくわかった。こいつは強くなるぞぉ。もしかするとウーブ以上かもしれねぇ。それに最後に使った界王拳のような技……。

 

「界王様、コイツに界王拳教えたんか?」

 

「いや、まだ教えておらぬ。おそらく独学であの域への扉をこじ開けたのだろう。ただ……あのやり方はワシも初めて見た。おそらく、根本的な考え方が、ワシの界王拳と異なっておるのだろう」

 

「つまり?」

 

「こやつが使ったのは界王拳の形をした……別の何かじゃろう」

 

ひぇー。まさか界王様に教えられる前にやっちまうとは……おでれぇたもんだ。それに界王拳と違う何かとなると、こいつはもうちっと面白いことになるかもしれねぇな。

 

「これでもう一歩近づいたわけだな。真なる界王拳ってやつに」

 

「うむ。あとはこやつがどこまでいけるかじゃが……」

 

「いけるぜ、界王様」

 

そう答えるオラに、界王様は複雑な表情を見せた。わかってるよ、界王様。ただ、オラは後悔なんてしてねぇし……こうやって、いつか現れるすげぇやつを相手にすることができる。こんなにワクワクするのも本当に久しぶりだ。

 

「悟空……」

 

「なぁ、界王様。こいつが真なる界王拳の使い手になったら、今度は手加減抜きの本気の勝負をさせてくれねぇかな」

 

「おまえ……そんなことしたら宇宙が吹っ飛ぶぞ」

 

「でぇじょうぶだって!なんとかなるさ!」

 

そう言って界王様の背中をバシバシと叩く。気絶しているあいつをバブルスとグレゴリーが家の中へと運んでいく。こいつはこの先の楽しみが増えたってやつだな。楽しみにしてるぜ?オラはお前の更なる進化を見たいんだ。

 

「だから、もっとワクワクする戦いをしていこうぜ」

 

 

 

 

悟空との戦いの後、なぜか練習相手にフリーザやセルが地獄から呼ばれるようになったんですけど……え、いい練習相手になる?お前なら大丈夫?いや、宇宙の帝王と、究極生命体が相手なんですけど!?

 

……やはりここは新手の地獄に違いないと思う。

 

 

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