『異世界で勇者召喚されたけどなんか勇者多くね?』 作:じぇのざうらー
00:10
波の開始まで残り10分……
出来る限りの準備はしてきた筈だ…
俺たちにとっては最初の波だが、この世界の人たちにとっては恐るべき災害として既に認知されている
その所為か周りの騎士団や冒険者、民間人たちは今朝からずっとピリピリとした雰囲気だった
「みんな、前もって話したと思うけど。もし転送した先の近隣に村があった場合はまずは住民の避難が完了してから波の魔物の討伐を始めて行こう」
「わかっています。主に後方支援の自分とテルシアが住民の避難誘導をしタクミ様含む近接組が魔物を引き付ける役ですね」
仲間たちと再度波発生時での取り決めを話し波の開始を待つ
やっぱりわかってはいたが緊張してきた…いや充分レベルを上げたし、必要な強化も今のところ済んでいる
後は俺の心の持ちようだ、再三思ってはいるがここはゲームでも本の中でもなく現実だ
この波を抑えるだけでも、この世界で暮らす人々の希望にもなるんだ。絶対に勝つんだ
00:02
「タクミ様もう間もなくです」
「ああ」
いよいよ始まる…
00:01
残り時間が1分を切った
転送に備える準備を始める
00:00
カウントがゼロになったその瞬間
バキン!
と音がしその瞬間目の前の景色がフッと変わる。波の発生源に転送されたようだ
空に大きなヒビが入り、不気味なワインレッドに染まっている
周りを見ると俺の仲間たちに尚文とラフタリア、樹パーティに元康パーティが居る
俺はすばやく照明弾を空に向かって撃つ。それと同時に元康パーティが我先にと波の亀裂部分に向かって走り出す
「ちょっと待て、元康!」
尚文が元康に対して制止の声を掛けるが聞き入れてもらえず
「タクミ様。ここはリユート村付近のようです」
やはりリユート村か…
「俺とウェルトとファリーが波の魔物を抑える!テルシアとバクタ―は住民の避難を!
「「「はいっ!」」」
「拓海さん!」
樹とその仲間たちがやってくる
「樹、俺は近接戦に慣れている仲間と波の魔物を抑えていく。お前は俺の残りの仲間達と後ろからの後方支援と避難誘導を頼めるか?」
「剣の勇者様、勝手に我々に指示されては困ります。イツキ様、我々も槍の勇者様たちの様に亀裂に向かいましょう!」
樹の仲間らしき奴が文句を言う。こいつの言ってることも正しいが今は住民の避難が先だろうに
「ウェレストさん今はそんなこと言ってる場合ではありません。拓海さん時間がないので急ぎましょう!」
樹の仲間が不満そうな顔で了承する
「拓海…おまえ……」
尚文が何とも言えない顔をしているが今は波だ
「尚文。お前も俺たちと一緒に魔物を引き付けてくれ」
「……ああ、わかった」
尚文が渋々受け入れる
「君はどうする?」
「え?わ、わたしは…」
俺がラフタリアにどうするか聞くと少し困惑したように尚文と村の方角を交互に見る
「ラフタリアは村人の避難誘導をしろ」
「え、ナオフミ様は……?」
「俺は拓海たちと敵を引き付ける!」
尚文がラフタリアに命令する
「なら時間がない、村の方へ急ぐぞ!」
俺たちはリユート村の方へ駆け出した
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村に着くと既に魔物どもが押し寄せてきており騎士と冒険者が戦っているが見るからに多勢に無勢だ
「テルシア!バクター!頼んだぞ!」
「「はいっ!」」
2人に避難を任せ俺たちは防衛線に向かう
魔物が防衛線まで入り込もうとしたところで
「エアストバッシュ!」
「GUGEEEEE!」
なんとか遠距離スキルで押しとどめる
「け、剣の勇者様!」
「ここは俺たちが食い止める。あなた達は速く後方に下がって!」
「は、はい!」
そう言いほとんどの奴らが村の方まで下がっていった
「た、助け――!!」
別の方で逃げ遅れた村人が魔物に襲われそうとしていた。マズいっ!
「エアストシールド!」
尚文がスキルを使って盾を出現させ村人を守る
「早く逃げろ!」
「……あ、ありがとう」
さすが盾の勇者だな、守りに関しては誰よりも固い。それにおそらく武器の強化もちゃんとしているんだろう
「きゃああああああ!」
逃げ遅れた女性の方で魔物の群れが押し寄せてくる
「シールドプリズン!」
尚文が球状の盾のスキルで女性の周りに覆うように盾が出現し魔物は襲うのを失敗する
「ハンドレッドソード!」
その隙に俺は範囲攻撃で一斉に魔物を倒す。が、それでも魔物の数は減らない
「数が多すぎる、ここは手分けして行くぞ」
「「はいっ」」
「拓海!俺が魔物のヘイトを買う!その隙にお前らで攻撃しろ!」
確かに尚文の防御力なら大丈夫そうだが…不安だがしかたない
「…分かった頼んだぞ」
俺は了承すると尚文は離れたところへ行き魔物の注意を引き付ける。その後ろを俺たちは攻撃していき倒していく
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一向に魔物の数が減らない…なんでだ?
……いやまてよ、最初の波は3人の勇者がボスを倒して鎮めたが、今は元康一人だけだ
不味いな…今の元康は碌に強化なんてしてないだろうから、苦戦してるはずだろうな…
「拓海さん。こっちはあらかた避難の誘導は終わりましたよ」
樹とその仲間2名とテルシア、バクタ―が戻ってくる
すると同時に騎士団の連中もやってくる
「おお!弓の勇者様!剣の勇者様!お怪我はございませんかな?ここは我々に任せてお二方は波の大本へお急ぎください!」
偉そうな騎士団の団長らしき奴がそう話す
だが実際、俺らが行かないことには波も収まらない。それにほとんどの住民は避難が完了したはずだろう
「わかった。樹、俺たちは波の亀裂に向かうぞ」
「分かりました。それでは騎士団の皆さんあとはお願いします」
「はい!お任せください!」
あの騎士団長、隙を見て魔法で尚文ごと焼き払う気だな…尚文が心配だが、今は波を鎮めないと。それに原作よりも強化してある今の尚文ならおそらくは大丈夫だろう…
俺たちは村を後にし波の亀裂へ向かう
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「エアストジャベリン!」
亀裂付近では元康とその仲間たちが波のボスのキメラと戦っていたが大したダメージを受けてる感じではないな
「樹!拓海!何やってたんだ!」
「村の住人の避難誘導だよ!」
「そんなの城の連中にまかせればいいだろ!」
「今は言い争っているよりも波のボスが優先でしょう!」
樹がそう言い、俺たちはキメラに意識を集中する。元康はまだ何か言いたげだが渋々了承といった感じだ
「イナズマスピア!」
「雷鳴剣!」
「サンダーシュート!」
「グギャアアアアアァァァァァ!!」
3人で雷系統のスキルを放つが俺と樹の方が威力が強すぎるのかほぼ一発で倒してしまった。完全なるオーバーキルだな
「へへっ!ほとんど俺が削ったおかげで二人のスキルを合わせた攻撃がとどめになったようだな!」
元康は気づいていないのか今までの元康の攻撃がボスの体力を削っていたと勘違いしているようだ…
「ああ…」
「そうみたいですね…」
俺と樹はもうほとんどあきらめに近い状態で同意する
と、元康があたりを見渡し
「そういえば尚文の姿を見てないな」
「いなくて正解ですわ。邪魔になるだけですもの」
「それもそうだな!」
こいつら…
「勇者諸君よくやってくれた!」
偉そうな団長がいまさらやって来た
「城では宴の準備をしております!無事波を退けたことをまずは祝いましょうぞ!」
「そうだな!早く城に行って祝おうぜ!っとその前に…」
元康がテンション高めに同意すると同時にキメラの死骸に目を向け
「今回は俺がこいつのライフをほとんど削ったし、ファーストアタックもしたから俺が好きな部位を持って行っていいよな?」
元康が自信満々にそう言う。ファーストアタックはそうだが、ライフを削ってたのは俺と樹だぞ?
ただまぁ…今のこいつには何言っても無駄か…
「…ああそうだな」
「…ええかまいませんよ」
俺と樹は元康に譲る
「それじゃあ俺はこいつの獅子の頭をいただくぜ!」
そういい元康は獅子の頭の方に向かい歩く
「樹、お前はどうする?」
「拓海さんは何が欲しいんですか?」
たしか錬は竜の頭を持って行ったが……ぶっちゃけ俺はどっちでもいいな
「俺はどっちでもいいから樹が好きな方を選んでくれ」
「そうですか?なら…」
そう言い樹は山羊の頭の方へ行く、結局ここは原作と変わらないか。なら俺も……待てよ…尚文用に竜の頭を残して俺は尻尾の蛇にするか?
……いや、いまは周りの目もあるし元康が要らないのならくれって言いだしかねないな…
ここは素直に竜の頭とその他の素材を剣に吸わせるとしよう
キメラミートソードの条件が解放されました。
キメラボーンソードの条件が解放されました。
キメラレザーソードの条件が解放されました。
キメラドラゴンソードの条件が解放されました。
………etc
キメラドラゴンソード
能力未解放……装備ボーナス、スキル「ドラゴンバスター」、魔物解体技術向上、火炎耐性(中)
専用効果 竜属性 ドラゴンキラー
…この専用効果ドラゴンキラーっていうと竜殺しってことだよな?なるほど…原作の錬はこの武器を手に入れてからガエリオンを討伐しに行ったのか
…って、そういえばガエリオンの事もどうしよう…俺は錬みたいにガエリオンを討伐なんてしたくないしウィンディアと幸せに暮らしていてほしいが、おそらく国から依頼が出ることだろうし…どうしたもんか…
それに後々のことを考えると龍脈法やレベル上限解放も視野に入れないといけないよな…
「よしっ!いい武器が手に入ったし早く城で宴を始めようぜ!」
俺が考え込んでるとどうやら元康もキメラの武器を手に入れたようだ。…ひとまずこの問題は保留だな
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「いやあ! さすが勇者だ。前回の被害とは雲泥の差にワシも驚きを隠せんぞ!今宵は宴だ!存分に楽しむがいい!」
城で開かれた大規模な宴に王が高らかに宣言した
原作では死傷者が1桁だが、今回は俺と樹も避難誘導に加わったから死者は出てないらしい
ただ怪我を負った人が少なくない数出ているから何とも言えないな…
「タクミ様お疲れ様です」
「ああ、ありがとう」
「流石は勇者様たちです。あの恐ろしい波を容易く鎮めるとは…」
今回の波は確かに容易かったんだろう。それに今の俺と樹とおそらく尚文も4つの武器の強化方法を使っているからこのまま行けば何とかなるだろう
しかしそんな都合よく物事は進まないだろうな。何かイレギュラーなことが今後起こるとも限らない、それにこの世界に蔓延る波の転生者共のこともある。問題はまだまだ山済みだな早めに対処しないと……
「おい!尚文!そこを動くな!」
なんて考えてたら、元康の怒鳴り声が聞こえてきた
いけね、そういえばこのタイミングは元康の奴隷解放しろ!云々の時間だったな
俺が騒動の中心に移動していると元康が尚文に手袋を投げつけていた
「決闘だ!」
「いきなり何言ってんだ、お前?」
「聞いたぞ!お前と一緒に居るラフタリアちゃんは奴隷なんだってな!」
「だからなんだ?」
「『だからなんだ?』……だと?お前、本気で言ってんのか!」
「ああ」
「アイツは俺の奴隷だ。それがどうした?」
「人は……人を隷属させるもんじゃない! まして俺達異世界人である勇者はそんな真似は許されないんだ!」
「何を今更……俺達の世界でも奴隷は居るだろうが」
確かに奴隷もいたし何なら今の日本人も社会の………いや、やめておこう
というより、なんとか手助けできないものか……
「許されない? それはお前の理屈で俺は違う。生憎ここは異世界だ。奴隷だって存在する。俺が使って何が悪い」
「き……さま!」
元康が尚文に矛を向ける
「決闘だ! 俺が勝ったらラフタリアちゃんを解放しろ!」
「はぁ…?」
「ちょっと待ってください私は……!」
ラフタリアが間に割って入ろうとしたが
「むぐぅっ」
「ラフタリア!」
兵士が布で口を塞ぎ喋れないようにする
「モトヤス殿の話は聞かせてもらった」
すると王の声がし人込みがモーゼのように割れてが王の姿が現れる
「勇者ともあろう者が奴隷を使っているとは……やはり盾の勇者は罪人という事か、モトヤス殿が不服と言うのならワシが命ずる。決闘せよ!」」
「おい待てよ!勝手に決めるな!」
「勝負なんてする必要ありません! 私は――ふむぅ!」
ラフタリアが再度口を開こうとすぐが直ぐに黙らされる
「哀れな…本人が主の肩を持たないと苦しむよう呪いを掛けられている可能性がある。心苦しいがしばし拘束しておけ」
酷いな…どこまで尚文を陥れれば気が済むんだこの国は…
「拓海さん」
樹が騒動に気が付きこちらに来たようだ
「今の王の言葉は本当ですか?」
「樹には彼女が強制されてるように見えるか?」
「……見るからにとてもそうは見えません」
樹から見てもラフタリアが嫌々従ってるようには見えないのだろう
「では城の庭で決闘を開催する!」
王がそう宣言し盾と槍の決闘が始まる
今の尚文はおそらくちゃんと強化しているだろうが……はたしてどうなるか…心配だ