『異世界で勇者召喚されたけどなんか勇者多くね?』 作:じぇのざうらー
来客室の豪華なベッドに座り、みんなそれぞれの武器をマジマジと見つめながら説明に目を向けている。かくいう俺もこの先をどう生き残るか必死だから念入りに説明やヘルプを見る。
「なあ、これってゲームみたいだな」
と、不意に尚文が呟く。
「っていうかゲームじゃね? 俺は知ってるぞ、こんな感じのゲーム」
元康がドヤ顔で言い放つ。
「え?」
「というか有名なオンラインゲームじゃないか、知らないのか?」
「いや、俺も結構なオタクだけど知らないぞ?」
「お前知らねえのか? これはエメラルドオンラインってゲームだぞ!」
「何だそのゲーム、聞いたこと無いぞ」
「はぁ?お前本当にネトゲやったことあるのか? 超有名なタイトルじゃねえか!」
「俺が知ってるのはオーディンオンラインとかファンタジームーンオンラインとかだよ、有名じゃないか!」
「なんだ?そのゲーム、聞いたこともないぞ。マイナーゲームじゃないのか?」
「はあ?そっちのエメラルドオンライン?ってのがマイナーなんじゃないのか?」
「皆さん何を言っているんですか、この世界はネットゲームではなくコンシューマーゲームの世界ですよ」
「樹も何言ってんだ?」
「あー、此処はラノベの世界じゃないのか?」
俺も一応会話に参加する、俺と尚文の世界はもしかしたら似通ってる娯楽文化とかあるかもしれないからゲームじゃなくてラノベの方が違和感ないだろう
「はぁ?ラノベってライトノベルのことか?」
「あの……皆さん、この世界はそれぞれなんて名前の世界だと思っているのですか?」
樹が軽く手を上げて尋ねる。
「エメラルドオンライン」
「知らない。っていうかゲームの世界?」
「あ、ちなみに僕はディメンションウェーブというコンシューマーゲームの世界だと思ってます」
「知らないなぁ…拓海は?何てタイトルのラノベなんだ?」
「えっと……、『異世界で勇者召喚されたけどなんか勇者多くね?』って名前」
とりあえず聞かれたから咄嗟に適当なタイトルを答えたけど…特に違和感のないタイトルだろう実際タイトル通り勇者多いし
「なんか、ありふれた名前だなあ。そういえば…俺が読んでた『四聖武器書』。あれもラノベだったのかもな。」
「皆さんこの世界に関する何かしらの媒体には触れてるんですね...ちなみにどれも名前を聞いたことはないです」
そのあとも色んな確認があったが皆回答がバラバラだったり、よくわからなかったりが続き…
「どうやら、僕達は別々の日本から来たようですね」
「そうみたいだね。」
「という事は異世界の日本も存在する訳か」
「このパターンだとみんな色々な理由で来てしまった気がするんだが」
あ、この流れ。自分は何で死んだか~のシーンだ
「じゃあ最初は俺だな」
元康が最初に答えた
「俺はさ、ガールフレンドが多いんだよね」
「ああ、そうだろうよ」
「それでちょーっと」
「刺された?」
元康は目をパチクリさせて頷いた。
「いやぁ……女の子って怖いね」
「ガッデム!」
尚文が中指を立てる
「えっと次は僕ですね。僕は塾帰りに横断歩道を渡っていた所……突然ダンプカーが全力でカーブを曲がってきまして、その後は……」
「「「……」」」
実際に聞くとまぁ生々しいな…。っと次は俺か、でもなんて答えようか…
「俺は…特に殺されたり、事故に遭ったとかはなかったけど…。なんていうか急に目の前が光って気が付いたら召還されてた。」
光った~は無いけど、気が付いたらここにいたのは事実
「目の前が光った?」
「ああ。で、気が付いたらここに」
「なんか俺と似たような感じだなぁ。俺も図書館で本を読んでいて気が付いたら~って感じだったな」
「…もし仮に全員死んだのだとすると…テロかもしくは災害等に巻き込まれた可能性がありますね」
樹がうまい具合に解釈してくれたようだ。これはありがたい
「うわ……話を聞いてるとありえるから恐いな……」
ただ実際俺もそんなんに巻き込まれたのかと思えてきた…爆発とかに巻き込まれて〜とか
「じゃあみんな、この世界のルールっていうかシステムは割と熟知してるのか?」
「ああ」
「それなりにですが」
「ある程度は…」
かなり知ってはいるけど…、油断はできないよなぁ…俺というイレギュラーがすでに起こっている訳だし
「な、なあ。これからこの世界で戦うために色々教えてくれないか? 俺の世界には似たゲームやラノベは無かったんだよ」
元康と樹は尚文を優しい目で見つめる。
「よし、元康お兄さんがある程度、常識の範囲で教えてあげよう」
胡散臭い顔で元康は話しかける
「まずな、俺の知るエメラルドオンラインでの話なのだが、シールダー……盾がメインの職業な」
「うん」
「最初の方は防御力が高くて良いのだけど、後半に行くに従って受けるダメージが馬鹿にならなくなってな」
「うん……」
「高Lvは全然居ない負け組の職業だ」
「ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
尚文が悲鳴を上げる
「お前らの方は!?」
尚文が縋るように見つめる
「同じく……」
「じゃ、じゃあ拓海は!?」
うっ、そんな目で見ないでくれよ……ここで俺も盾は弱いって言うのは簡単だけど…
はぁぁ…、仕方ない
「あー、俺の知ってる知識だと盾は防御に特化していて…まず戦えたものじゃあない。」
尚文がおもいっきし落胆する
「だけどその分援護が強くて味方との強化や連携次第ではほとんど自分や味方にダメージを通さなかった筈だ。」
「ホントか!」
今度は目に見えて明るくなる。感情表現豊かだなぁ。
「そうなのか? 俺の知ってるエメラルドオンラインだと死に職なんだけど……」
「ゲームというより書籍での違いでは無いですか? 僕の知るディメンションウェーブだと弱職でしたけど、盾自体が役に立たない訳ではないです」
「どっちなんだろうな?」
「出来れば防御だけでも最強の一角の方でお願いしたい!」
尚文が祈る様に盾に手を当てている。
まぁ。防御に関してはマジで無敵だからなぁ。
「地形とかどうよ」
「名前こそ違いますが殆ど変わらないですね。これなら効率の良い魔物の分布も同じである可能性が高いです。武器ごとの狩場が多少異なるので同じ場所には行かないようにしましょう」
「そうだな、効率とかあるだろうし」
「地形に関しては俺は書籍媒体だから細かいとこはわからないなぁ。」
「なら、こっちはゲーム同士で話すからそっちは本同士で話してろよ。後で話し合った内容を共有しとくからさ!」
「ですね。本ならではの知識も多少なりとも必要かもしれませんし。」
なんかもうすでに勇者同士の腹の探り合いが始まってんな
そう思いつつ、俺・尚文、元康・樹とで情報共有が始まった。…といっても尚文に関してはほぼ知識ゼロなんだけどな。
「それで、どうする拓海?何から話す?」
「ちょっと待ってくれ…」
俺としては最初の波、さらに言えば三勇教徒共に負けない強さを尚文には持っていてほしいな…ここで下手なことを言って余計な不信感を与えるのもまずいし、かといって今の状態でみんなに俺tueeなんかさせたら思い上がって何するかわからないし難しいとこだなぁ…。
とりあえず上手いこと会話のキャッチボールをして話の流れで強化方法とか教えるか。
「まず尚文は基本的にこの世界に関する知識はゼロの認識で良いんだよな?」
「うっ、そうなんだよ…。だから俺が話せる情報は無いに等しいから期待しないでくれ」
「そうか、なら尚文がこの世界に来る前に読んでた『四聖武器書』ってのには何か情報はないのか?」
「確かに読んではいたんだけどほとんど冒頭の部分だけでこれと言って特にないんだよなぁ…」
「…ちなみにその冒頭の部分にはなんて書いてあったんだ?」
「確か…この世界が終末を迎えている~ってのはさっきの王様が話してたな、後はそれぞれの勇者の特徴が書いてあったな 槍の勇者は仲間思いで、弓の勇者は正義感が強くて、剣の勇者は献身的、盾は白紙だったな。」
献身的?確か剣の勇者は大活躍じゃなかったけ?あれ?どうだったっけ?俺もここの細かいところは忘れちまったけど…。まぁいいか
「なるほどね…。じゃあ次は俺の番かな?というか逆に尚文は何が聞きたい?」
「そりゃあ。やっぱり強くなる方法が聞きたいよ」
「それもそうか、ならまずは勇者武器共通の情報かな。まずはウェポンコピー、これは同じ系統の武器を持つことでコピーできる例えば剣ならアイアンソードとか兵士の剣とかそれぞれの武器に触れることでコピーされていくんだ」
「そのまま所持することはできないのか?」
「基本的に勇者の武器は規則事項で専用武器以外所持できない仕様なんだよ。」
「そうなのか!?」
「ああ、だから戦闘でも使うことは出来ない。今の説明を聞いてヘルプに表示されてないか?」
「ちょっと待てくれ、ええと……うわ本当だよ。つまり俺は盾以外を使うことが出来ないってのか!?盾だけで戦うなんてどんな鬼畜ゲーだよ!」
「だから尚文に関しては仲間の協力が必要不可欠ってことだな。」
「はぁぁぁ。仕方ない、明日王様が集める仲間に期待するしかないな」
残念ながらその期待は最悪な形で裏切られるんだよなぁ…
はぁ……、もどかしい。
「んで次はドロップ。魔物を倒して武器に吸収するとその倒したモンスターの持ってるアイテムを確認することができる。」
「ネトゲとかでよくあるアイテムドロップのことだな。なるほどこの世界だと武器…俺の場合だと盾か?そこからアイテムのドロップを確認できるんだな」
「ほとんど勇者専用のシステムみたいなものだけどな。さすがにこの世界の住人はそんなことはほいほい出来ないよ」
「確かにそんなのが普通にできたら需要と供給のバランスがおかしくなりそうだな」
「それにゲームみたいで勘違いしがちだけど魔物も一応生き物だから殺した数だけ生態系に影響が出るからそこも気をつけろよ?」
「うっ…。それもそうかゲームみたいだから忘れてたけどリポップするわけじゃないからそういうことも気にしないといけないのか。」
実際元の世界でも問題になってるからな、狼を駆除しすぎて絶滅してさらに天敵がいなくなった鹿が緑を食い尽くした~みたいな話。
「そういったところも本独自の内容ってところか?」
「まぁね」
この先ほかの勇者が起こす問題のうちの一つでもあるんだけど……、今話したら二人もちゃんと言うこと聞くかな?
「オーケーこれも後でヘルプで確認してみよう。とはいえなんだか俺だけ聞いてるってのもなんか悪いな」
「ならこの世界のことじゃなくても良いからそうだな……何かこういうネットゲーム的な要素とかバトルでの動きとかを教えてほしいな。俺はそんなに深くゲームをやりつくしてるって訳でもないからさ」
「そんなことでいいのか?」
「尚文にとっては馴れ親しんでるようなものかもしれないけど。俺にとっては割と重要なことがあるかもしれないだろ?逆に言えば俺には当たり前の知識が尚文にとっては値千金なるかもしれないし」
「確かにそれもそうだな。なら……」
そういって俺たちはいろいろとあれやこれやと話していき…
「なるほどねレシピに素材吸収、スキルアップにボーナスと盾の強化方法(信頼、エネルギーブースト、強化方法の共有)…これだけでもいっぱいいっぱいっだってのにどんだけあるんだよ全く。しかも強化に信じる心ってまたあやふやな表現だなぁ。」
「それでもまだほんの2~3割程度なんけどな」
実際、地理や魔法に魔物の種類。果ては龍脈法なんかもいずれ覚えなきゃいけないと考えると知っていたとしても気が滅入る。魔法は現地の文字も覚えなきゃだし。
「嘘だろ!これを覚えるだけでもやっとだってのに!これだけで時間が消費されちまうぞ!」
「とりあえず大まかな内容をお互い紙に書いて後でヘルプを見て擦り合わせようぜ」
「だな、あいつ等にも口頭で伝えるよりもそのほうが良いだろう」
先ほどの内容も含めて紙に書いていていきちょうど話し終えたであろう2人にも渡す。2人とも若干半信半疑な感じで見ているが。今のうちに軽く頭に入れるだけでも良いだろう。俺たちは何処でレベル上げをするのかやらを話していたら不意にドアの方から声がした
「勇者様、お食事の用意が出来ました」
どうやらお話はここまでらしい、あいつらにとっては盾の勇者が強くなるのは困るが倒すための俺たちが弱いのもまた同じことのようだ。それに勇者が3人いれば尚文を倒すのは容易だと考えてるんだろうなぁ。
まったく姑息な連中だよ。
とりあえず俺たちは食事を終えてそれぞれ就寝についた。いよいよ明日から物語が動き出すのか……
ほかの勇者達はこれからの冒険のワクワクで寝られないだろうけど、俺は今後のヒヤヒヤで寝るに寝れないよ。
はぁぁぁぁぁ………