『異世界で勇者召喚されたけどなんか勇者多くね?』   作:じぇのざうらー

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続きです


救える命

 

 

 

 

「無事着いたな」

 

「本当に一瞬で移動できた、ポータルスキルはこういう感覚なんですね。それはそうとここは…何処でしょうか?」

 

 

 ポータルで俺達はとある町へ移動した。辺りは大きな豪邸があり、若干高低差のある見晴らしの良い土地。警備は若干厳重な様で町の出入りする所に壁がある

 

 

「この町のある屋敷に目的の子が囚われていてな警護の目がないうちに早速幻影のスキルを掛けるぞ」

 

「わかりました」 

 

幻影スキルを使って俺と樹の姿を隠す

 

 

「よしじゃあ行くぞ。スキルを使っているとはいえあまり目立つ動きましないようにな」

 

「わかっています」

 

 

いまの俺は剣の力で特殊な力が使えるはするが身体能力までは強化されてない。だからループ元康みたいに壁をジャンプなんてできないし剣の時間制限もあるから急ぎたいが、焦ってバレたら本末転倒だ。時間が惜しいがここは慎重にいこう

 

俺たちは少し時間をかけて警備の目を盗み目的の場所に着いた

 

そこは先程の豪華な雰囲気とは打って変わってとても感じの悪い場所だった

 

 

「う……なにかの異臭が……」

 

 

かなりの死臭が漂っているな、俺と樹は鼻をおさえてすすむ

 

 

「この場所は何なんですか?見るからに劣悪な場所ですが……」

 

「おそらくここの貴族が亜人や獣人の奴隷を甚振る拷問部屋なんだろう」

 

「そんな……」

 

 

酷くショックを受けた顔をしているな俺も実際にはじめて見るが、とてもじゃないが言葉にできない光景だ。少し吐きそう…

 

 

いや今はそんなことしてる余裕はない

 

 

 

 

 

しばらく付近の探索を続けていくうちに目的の子らしき影を見つけたおそらくあの子が…

 

 

「あの子ですか?拓海さんの言う助けたい子というのは?」

 

「ああ、剣の探索の力で見つけたから間違いない。あの子が……リファナちゃんだ……」

 

 

そう、俺がやりたかったもう一つのこと。それがラフタリアの友人であり、召喚された数日にこの屋敷の悪徳貴族に殺されてしまうリファナちゃんを助けたかったことだ

 

おそらく時期的にこのタイミングで助け出さないと甚振られた末に殺されラフタリアの更なるトラウマとなってしまうだろう。それを阻止するためにも今ここであの子を助けてあげないと

 

 

幸い、まだここには誰もいないが何時誰がやってきてもおかしくない。見つかる前に早く助け出さないとな

 

 

「…誰かそこにいるの?」

 

 

不意に声を掛けられて俺と樹は驚いた。幻影スキルを掛けているのにこの子はこの場所に屋敷の人物ではない存在がいると本能的に分かったようだ

 

 

俺たちはスキルを解除してリファナちゃんの前に姿を現す。目の前に人が現れて驚いたようだ

 

 

見た感じボロボロな状態だ、この状態から更に拷問されていたなんて……

 

 

「驚かせてごめんね俺たちは君を助けに来たんだ。」

 

「…助けに?」

 

「ええ、なのでもう少しの辛抱ですよ。」

 

「ツライだろうけどパーティ申請を送るから頑張って申請を許可してくれないか?」

 

「は…い、よかっ…た…。……ちゃん助けが…き…」

 

 

助けが来たことに安心したリファナちゃんは段々と気を失ってしまったう。だが、ギリギリパーティの申請はできたようだ良かった

 

奴隷紋が唯一の気掛かりだったがおそらく子供の亜人に奴隷紋を掛ける必要性がないと思い掛けていなかったのだろう。皮肉にもその傲慢さが幸いしたな

 

 

「ひとまずこの子を安全な場所に避難させそう」

 

「はい」

 

おれは牢屋の解除レバーを操作し牢屋を開けリファナちゃんを抱きかかえる。奴隷がいなくなっては騒ぎが起きるためミラージュソードでしばらくの間幻影を作り出し隠蔽工作をする

 

 

……本当なら同じくこの屋敷の何処かにいるであろうラフタリアも助け出したいが……今ここで助け出したらこの先の未来で何かの大きなズレが生じてしまう可能性がある

 

 

悔しいが、今は物語の運命を信じるしかない

 

 

 

 

 

俺たちは何とか屋敷を脱出しリファナちゃんを救出するのに成功した

 

 

「拓海さんこの子助けたはいいのですがどうするつもりですか?保護をするにしてもこの国は亜人獣人を差別して中々治療できる場所はないんですよね?」

 

「ああ、だが一応心当たりのある人物にこの子を保護してもらうつもりだ」

 

「心当たり?その人は信用できるのですか?」

 

「ああ、腕っぷしも強いし何よりこの子の他にも奴隷の被害に遭っている子たちを探して保護をしているから信用は出来るはずだ」

 

「…そうですかそれならひとまずは安心ですね……それにしてもゲームそっくりの世界と思っていた異世界でこんなことがまかり通っていたなんて…」

 

「ああ、だが今は俺たちがこの先強くなってこの国の現状を根本から解決するしか方法がない」

 

「……悔しいですがその通りですね」

 

 

樹が歯痒い表情をする

 

 

「そろそろ剣の制限時間が迫っているな…樹も早く戻った方が良いだろう。樹と会った酒場付近に転移するが…大丈夫か?」

 

 

「わかりました、お願いします」

 

 

そうして俺たちは樹を連れて行った酒場付近に転移する

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

酒場に転移して樹と別れようとした時樹が呟く

 

 

「明日、拓海さんの言うことが正しければ…尚文さんを陥れるための国の陰謀が始まる…」

 

「ああ…何度も同じことを言って申し訳ないが、今の俺たちでは強さ的にも立場的にも今は何もしてやることができない。ただ陰ながら尚文を支援してやることしか現状何もできない」

 

「……わかっています。わかってはいます…ただ僕も今回を機にもっと物事の本質をよく見るように努力して見せます。そして、僕が弓の勇者として召喚された義務を出来る限り全うします」

 

 

おお、この短い時間で樹がだいぶ成長したな、樹に真相を明かしただけでもかなりプラスだな。これならこの先下手なトラブルなんかは起こさないだろう

 

 

「じゃあ俺は早く件の人を探してこの子を保護してもらえないか相談してくる」

 

「お願いします。拓海さんもどうかお気をつけて」

 

「ああ、ありがとう。それじゃあ」

 

 

 

そう言い残して、樹と別れる

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

「……さて探索の能力によれば、おそらくこの付近にいる筈なんだが……どこにいるんだ?」

 

 

俺が転移したのは廃村……最初の波の被害を受けたルロロナ村の海岸付近だ。念のためローブで顔を深く隠している。こんなところに剣の勇者がいたら少し面倒なことになりそうだからな…

 

 

ここにあの人がいる筈なんだが一向に見当たらない……いったい何処に……?

 

 

「あらー?村に誰か帰ったのかと思ったら違ったみたいね。珍しいわね?こんな廃村に人が来るなんてー」

 

 

不意に後ろの方で間延びした特徴的な声がしたので振り返ると大きな二足歩行のシャチの獣人が海の方から現れた。間違いないこの人が…

 

 

 

「…すみません少しお尋ねしますが、…あなたはサディナさんですか?」

 

「あらー?なんで私の名前を知っているのかしら?」

 

「良かった…詳しい説明は後回しでまずはこの子を診てください」

 

 

俺は背負っていたリファナちゃんをサディナさんに見せる

 

 

「?……えっ!?リファナちゃん!」

 

 

サディナさんがリファナちゃんを確認すると驚きの声を上げる

 

 

「随分と衰弱しています、あなたの力で回復できますか?あいにく俺はまだ魔法が使えないので……」

 

今の俺は剣の力で特殊な力が使えるが残念ながら治癒などは出来ない、なのでサディナさんになんとか治療をお願いする

 

「ええ、分かったわ『力の根源たる。私が命ずる。理を今一度読み解き。彼の者を水の力で癒せ』 ツヴァイト・アクアヒール!」

 

 

リファナちゃんの周囲に水のオーラが纏いみるみる傷が癒えていく

 

魔法で回復されたおかげか、目に見える傷等は回復出来た様だ

 

 

 

「…まだ目に見える傷を治すだけで体力の回復は時間がかかるわね…申し訳ないのだけど名前の知らない旅人さん。この近くの森に生えている薬草や精の付きそうな食料を探してきてもらえるかしら?私はこの子の面倒でいっぱいで…」

 

「分かりました近くの森ですね?」

 

「ええ、お願いね」

 

 

 

サディナさんにそう言われ俺は急ぎ森に薬草と食料を採りに森に行く。念の為剣を採取系統に変えれば薬草の品質も多少上がるだろう

 

 

 

 

 

「何とか呼吸も安定したわね。しばらくはどこか休まる場所に安静にさせておかないと」

 

「そうですか…よかった。」

 

「…聞きたいことがいろいろとあるけど…まずはリファナちゃんを助けてくれてどうもありがとう。あなたは私のことを知っていたようだけど改めて自己紹介させて。私の名前はサディナ。以前はこの廃村で暮らしていた獣人よ」

 

サディナさんが自己紹介する

 

俺も出来ればしたいが…

 

 

「俺は…すみません素性は訳あって話せませんが、名前は拓海です。それとお礼を言われることはしてません、俺はただその子を助けたかっただけですから…」

 

「タクミちゃんね。…あなた、この国の人ではないでしょう?」

 

「確かに俺はこの国の人間ではないです。ですが…なぜ?」

 

「この国は亜人や獣人に風当たりが強い国よ?もしこの国の人間だったら今頃リファナちゃんは助かっていないはずだわ」

 

「…確かにそうですね」

 

「…でも例えあなたが何者であれリファナちゃんを助けてくれた事実は変わらないわ本当にありがとう」

 

 

サディナさんが俺に対し深く頭を下げる

 

 

「頭をあげてください。今の俺ではその子だけしか助けられなかったですし、それに訳があってその子の面倒を見るのは少し難しいです。詳しい話は話せませんが…その子を任せても?」

 

 

俺はサディナさんにリファナちゃんをお願いする

 

 

「ええ、この子のことは私に任せて。本当はあなたが何者なのか、どうして私を知っていたのか…色々と理由を知りたいのだけどリファナちゃんの恩人さんにそのことを聞くのは野暮よね?」

 

 

「すみません…ですが、いつかまたお会いした時にきちんとお話しします」

 

 

俺はリファナちゃんのパーティを解除する

 

 

「では俺はそろそろ行きます。突然のことで申し訳ないですが協力してくれてありがとうございます」

 

「ええ、今度会ったときはまた改めてお礼をさせてね」

 

「はい。……ああ、それと……」

 

「?」

 

「あなたの探している子のラフタリアちゃん。まだ生きています。」

 

「えっ!?」

 

「ですので。どうか希望を捨てないで」

 

「ちょっと待って!それって…」

 

「転送剣!」

 

 

 

俺は急ぎポータルで移動する。サディナさんには申し訳ないが、もうそろそろ剣の残り時間が無くなりそうなのだ

 

 

 

 

 

 

「……行っちゃったわね…」

 

 

サディナは拓海のいなくなった場所を見つめる

 

 

「…不思議な子だったけど。私たち亜人や獣人に対して悪い感情を持っていなかったわね。それに………」

 

 

先程の拓海の言った言葉が頭に残る

 

 

「もし彼の言うことが本当だったら……」

 

 

彼女が己の命を懸けて守りたかった、彼女の生きる意味であったある夫婦の忘れ形見

 

 

「生きているのよね……ラフタリアちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何とか俺が仲間たちと別れた場所に戻ってこれたようだ。きっと急に俺がいなくなって大慌てだろう早く合流しよう

 

 

 

 

 

…っとその前に改めて今まで使っていた剣を見てみると

 

 

龍刻の砂剣 ※条件を満たしていないため解放できません

 

??? ※この武器は条件を満たしていないため表示できません

 

??? ※この武器は条件を満たしていないため表示できません

 

 

 

…どうやらギリギリ間に合ったようだ…危なかった

 

そしてやはりというべきか、あの特別な剣は今はもう使用できないようだ

 

本当だったらもっと多くの救える命を救いたかったし、状況を変えたかった…しかし、もうあの剣の力がない今の俺だとこれくらいが精一杯か…

 

 

…なんにせよ、この短い時間で出来るだけのことはやったんだ。後はレベル上げと剣の強化をして鍛えていくしか方法はないだろう

 

 

ふと前の方から仲間の姿が見えた

 

仲間たちが俺に気が付くと一目散にやってきて

 

 

「タクミ様!」「よかったタクミ様!」

「ご無事でしたか!」

 

 

 

「タクミ様、今までどちらに?」

 

「心配をかけてすまない。少し弓の勇者の樹に会いに。」

 

「弓の勇者様ですか?」

 

「ああ、少し勇者にとって重要なことを伝え忘れていてな。何も言わずに離れてしまって申し訳ない」

 

 

俺は仲間たちに頭を下げる

 

「頭をお上げください。タクミ様。我々はタクミ様がご無事ならそれで充分です」

 

「そうですわ。確かに急に姿がいなくなってしまって驚きましたが、ご無事で何よりです」

 

 

うっ、随分と迷惑を掛けてしまったようだ…必要なことだったとはいえちょっと心苦しい

 

 

「タクミ様もお疲れでしょう。遅くなりましたが、言われた通りこの近くの宿をとっていますので。今日はそこでお休みになられてください」

 

 

「ああ、ありがとう。そして本当に申し訳ない」

 

 

「そのお言葉だけで十分です。さぁ行きましょう」

 

 

 

仲間に連れられ宿で一晩を過ごす。こうして俺は冒険1日目の長い夜を終えたのだった

 

 

いよいよ明日…盾の勇者の成り上がりの物語が始まる…

 

 

 

俺に何ができるのかわからないし、たかが知れているかもしれない。が、俺は俺なりにこの世界で救える存在を救って生きていくつもりだ

 

 

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