マグサリオンの殺戮劇場 大長編 作:ヘル・レーベンシュタイン
第十三陣 Ⅰ 異聞武器世界
一つの星が、夜空を駆けた。星の流れは自然現象であり意思を持って行われるものではない。しかし、その星は明らかに意思を持って動いてるように見える。
その数は合計5つ、向かう先は宇宙の深淵。本来は宇宙に巨大な力場を発生させ、特異点という穴を開けなければ到底不可能である。しかし、この神座が第二である事と、奇跡を起こしたいと言う強い意志がこの5つの星にその可能性の扉を開かせた。今、ついに深淵へと辿り着いた。悪を喰らう悪の楽土、堕天奈落。その宇宙な理を支配せし神、無慙と5つの星が対面した。
「……ん?なんだ、これは。星が、意思を持って俺の元に訪れただと。不可解な、殺すべきか。」
その星を見据え、手に携えた剣の穂先を向けようとした刹那。一つの星が煌めき、その意思を無慙へと飛ばした。
『オネガイ、タスケテクダサイ』
「……助けろ、だと?」
眉を顰める無慙、周囲には敵と敵の敵しかいなかったと認識している彼にとっては珍しい出来事だろう。続けて星は煌めいて意思を飛ばし続ける。
『ボクタチハ、ボクタチノセカイヲマモルタメニ、サイゴマデタタカイマシタ。ダケド、サイゴノサイゴニマケテ、シンデシマイマシタ。』
「負けて死んだ、とな。」
『ハイ、ソシテボクタチノセカイハ、ハメツニムカッテマス。
ケッシテヘイワトハイエルセカイデハナカッタケド、タシカニミンナシアワセデシタ。
ダケド、シゼンモソコニスマウミンナモ、スベテガウバワレテハカイサレマシタ。』
「……それで、なぜ俺がそこに向かわねばならん?どんな世界とて、いずれは終わりが訪れるもの。それが単に早くなっただけだろう。」
「……」
突き放すように言い放った無慙、それに対して星は沈黙をした。反論できない、ならばさっさと帰れと言おうとした時だった。
「……スクイガ、ナイノデス。」
「救い?」
「ワタシタチノセカイヲヒトツノモノガタリトミルナラ、ソコニナットクノイクオワリハアリマセン。ハッピーエンドヘノミチスジハナク、バッドエンドニムカッテマス。
ミンナクルシミトカナシミニミチテマス。ソシテ、ソレヲクツガエセルソンザイガイナイノデス。ダカラ……」
「俺に、その盤を覆せというのか?言っておくが、俺が動く以上は全てをこの手で滅ぼすぞ?例外は無い、それがお前たちのハッピーエンドとやらと一致するとは思えんが?」
「カマイマセン、ダレモスクワレナイヒゲキニイタルクライナラバ、アエテブガイシャノアナタニコワシテモラウマデデス。ソレガ、ボクタチノデキル、サイゴノキセキノイッテデス。」
「……良いだろう、ならば貴様らの世界とやらに向かうとしよう。どこへ向かえば良い?俺の殺すべき敵を示せ。」
「……アリガトウ、コッチデス。」
星がそう言い放つと、光の尾を引きながら宇宙の遥か彼方へと飛んでいった。それを見据えて、無慙は剣を頭上に掲げて、一気に振り下ろした。
「そこだな」
空間を裂き、時空を斬り、距離を破壊し、そして次元の壁を殺す。その果てに天地開闢が行われたような大爆発と共に、無慙は未知なる世界へと誘われる感覚に身が包まれるだ。
「……ここが、その世界か?」
世界の移り変わりが終えれば、目の前には野原が広がっていた。自分が宇宙そのものである覇道神から、人並みの姿に変わったのだと自覚する。近くの湖面を見れば、黒いスーツに、髪を後ろに纏め、そして片手には剣を握った姿であると理解した。この世界においても、この姿が適しているのだろうと考えた。もっとも、力は大幅にダウンしているものの、戒律の加護は生きている。少なくともここでかつて倒した魔王と再戦しようとも、負けないくらいの力はあると確信する。
「しかし、酷い有様だな。」
そして辺りを見渡せば、そこは一般的な和な野原とは違い生気がまるで感じない。まず夕暮れを連想するほどに空が赤く、木々や植物はほとんどが枯れ果てていた。当然、虫や哺乳類といった生物は見られず、端的にいって死んだ大地だ。
あの星は言っていた、自分たちの世界には救いが無いと。なるほど、確かにそう思えるほどに荒んだ世界であると納得した。更に視線を凝らせば、少し離れた場所に大きな城を構えた街が見えた。そこで更にこの世界のことについてわかるかもしれない、そう考えて歩み始めた。
そして街へ入れば、そこは地獄が広がっていた。まず、街全体に火の手が上がっていた。窓ガラスは融解し、レンガの家にも大きな穴が空いてる。家具の類も火に呑まれており、楽しそうな住民の記念写真も火に飲まれて焦げていく。元々街の住民だったものはいる気配がなく、代わりにいるのは剣の形をしたホッピングに乗っている、小柄で仮面を付けた謎の魔物達だった。
「楽しい、とても楽しいね。」
「家を燃やすのも楽しい、家具を壊すのも楽しい。」
「ケンゾール様が許してくれた。この世界は僕たちの自由なままにして良いって。」
「なら壊しても良いよね、燃やしても良いよね。」
「だってそれが楽しい、だけど他人を困らせるのが一番楽しかったんだけどなァ〜」
「そうそう、燃えたり、悲鳴を上げて逃げたりする姿を見てるの面白かった。追いかけますのも楽しかったのに、もうみんな燃えて居なくなっちゃった。」
「だから気晴らしに燃やそう、怖そう、グチャグチャにしちゃおう!」
ホッピングに乗る生き物達は、そんな残酷なことを気ままに口にしていた。愛くるしさを感じるその姿から放たれる残酷性は、まるで絵本から出てきた魔物の様だった。
そしてそれを見て聞いた無慙は……
「なら死ね、それが一番刺激的で退屈凌ぎになるぞ。」
一番近くにいる者の首を刎ねた。首が飛んだソレは、血が溢れることはなくまるで最初からいなかったかの様に散り散りになって消滅した。
そして他の者達は和気藹々とした話を止めて、全員が無慙に注目する。
「人間だ」
「ヒトだ、久しぶりに見た。」
「なら燃やそう、怖そう。そして追い立てよう。」
「そうだ、そうだ。それが楽しい、絶対楽しい。」
「壊しちゃえ!」
そう言い放ちながら、ホッピングで跳ねつつ無慙へと襲いかかった。その突撃の威力は住宅一つを軽く壊せるほどだ。そして同時に、仮面の口から放たれる火球は直撃すればダイナマイトの様に爆発して火の粉を撒き散らす。
この事から、街を破壊し燃やしたのが彼らだということがより証明された。だが……
「オイ、お前達の親玉が何処にいるか教えろ。」
「ヒ、ヒィ………お、教えます。あの城です、城の玉座にケンゾール様は居ます。」
数分も持たずに、無慙は襲いかかってきた魔物達を一人だけ残して殺した。辺りに火の余波の痕跡はあるものの、服には擦り傷や焦げ傷は一切無い。
無慙に胸ぐらを持ち上げられながら怯える魔物は、城を指差しながら答えた。
「そうか、情報提供に礼を言う。」
「そ、それなら僕を見逃して……」
「故に用済みだ、死ね。」
「ウギャッ!?」
魔物の首を刎ねれば、王城を見据える。そして駆け抜けて門を蹴り破る。当然、中には同じ姿の魔物が多数存在している。全員が無慙の姿を目に捉える。
「人間だ、そして侵入者だ!」
「燃やせ、壊してしまえッ!」
「上等だ来い、皆殺しにしてくれるッ!」
そして数分後、玉座では。
そこには小柄な魔物達と比べて、2〜3倍以上大きな剣のホッピングに乗る赤い魔物が居た。彼が親玉である“ケンゾール”である。その手前に魔物の親衛隊が列をなして居た。
城全体が小刻みに揺れているのを不愉快に感じている様である。
「なんだ、今日は特に揺れてるな。オイ、何が起きて……」
「ケ、ケンゾール様!」
ふと、扉が勢いよく開き、一体の魔物が飛び入ってきた。
「何事だ、その様子だと何か……」
「は、はい。侵入者が来てガァッ!?」
「お前が親玉のケンゾールとやらか。」
報告に来た部下の魔物は、最後まで言葉を発する事はできず背後から無慙に斬り飛ばされた。そして剣を肩に担ぎ、ケンゾールを見上げる。
「……お前か、可愛い部下達を虐めてくれたのは。」
無慙とケンゾールの視線が絡まる。すると、ケンゾールは天井スレスレまで跳躍し、そして地震でも引き起こすかのように激しく着地しながら距離を詰めながら言い放った。
「覚悟しろ侵入者、このケンゾールが燃やし潰してやる。」
「貴様こそ覚悟しろ、屑を撒き散らして置きながら楽に死ねると思うなよ。」
「グオォォォォっ!!!!」
互いに宣戦布告を交えた直後、ケンゾールは大きく体を逸らしながら全身から爆発する様に火炎を撒き散らした。無慙はそれをすり抜けて、一気に距離を詰めてまず剣のホッピングを破壊しようと目論む。
しかしそれを読んでたのか、ケンゾールはその巨大からは信じられない様な俊敏さで剣戟を回避する。そして壁を巧みに跳ね飛びながら、無慙の頭上へと移動し、踏みつけんと落下してくる。無慙は咄嗟に跳ね飛んで回避するも、その衝撃で城全体が大地震にあったかの様に激しく揺れた。
「少しはやる様だな人間、絶滅してから久しいがこれほどの実力者が生き残ってたとはな。」
「絶滅?貴様らが滅ぼしたのだろうが。」
「おっとそうだった、あまりに脆い存在だったもんで覚えが悪くてな。」
「……屑めが。」
「好きに吠えてろ、どのみち生かして返すつもりはない。この世界を荒らす前に、このケンゾールが始末してやろう。」
「違うな、お前を含めて俺が全てを滅ぼす。例外なんぞ無い。」
「ほざけェ!」
再びケンゾールは激しく体を動かし、頭を伸ばしながら火焔を撒き散らす。所詮は同じ攻撃、無様に直撃なんて真似はしない……と言わんばかりに荒々しくも無慙は最短距離で詰めんと駆け抜ける。
そしてあと数歩で剣の間合いになる時だった。
「俺の奥手を味わえ……“ほのおのかべ”!」
無慙の足元から不意に、滝の様な炎の手が大きく弾け上がった。曰く奥の手、無慙の全身が炎に呑まれケンゾールは勝利を確信した。
「ふん、他愛もない。偉そうにしている奴なんぞ、大概はこんなものだ。所詮は脆い人間の……」
「こんなものか?」
「なァッ!?」
油断してたケンゾールに、ほのおのかべから無傷の無慙が現れる。そして空いている片手に顔面を鷲掴みされて、ケンゾールが持ち上げられる。あまりに不意な出来事で躱すこそができず、そして想像以上のパワーが痛みを全身に駆け巡らせる。
(う、動けん!?)
「もう打つ手は無しか?ならば、この茶番もここまでだ。」
「ま、待て!もしかして、ここの住民の敵討でもする気か?だとしたら無駄だ、どうせ絶滅した奴らなのだぞ。それに、異常を察知した俺の同胞が軍勢をつれてお前に……」
「だから何だ?別に敵討ちをするつもりもなければ、何人来ようとも、俺の手で全員殺すまでだ。故に、お前を生かす理由なんぞ寸毫も無い。」
「つ、強がりを……全員殺すなんて、どのくらい掛かると思ってるんだ?そんなこと、続けられるわけがない!人間の抵抗なんぞ何れ無駄に……」
「聞き飽きた」
踠きながらも言い放つケンゾールを、更に強く首を絞め上げる無慙。それはまるで、もう黙れと言わんばかりに。
「無駄だの何だの、その手の浅い言葉は聞き飽きたんだよ。それが俺の歩みを止める理由にはならない……否、どんな小細工の言葉を凝らそうと俺は止まるつもりはない。衰退していくこの世界に、俺が終止符を刻んでやる。」
そう言い放つと同時に、無慙によってケンゾールの首が刎ねられた。斬り飛ばされた体は、爆発四散して消滅していった。それに連鎖する様に、城と城下町で暴れ回ってた魔物たちの姿も消えていった。
「まずは一つ……次の殺すべき屑は何処だ?」
そう言いながら無慙は城を抜け街を抜け、まずは南へと向かっていった。
コンセプトとしては、もしもマリオRPGの世界でマリオ達が敗北した世界に無慙が行ったら?と言った感じです。
そのため、マリオ達という抑止力がなくなったことで、武器世界のキャラ達も原作と比べて残酷性や口の悪さなどがアップしています。
なので、某妖精國並みに詰んだ世界になってると言えます。