マグサリオンの殺戮劇場 大長編 作:ヘル・レーベンシュタイン
とうとうこの旅も終わりを迎えようとしていた。彼が火山から一気に飛び、ガリバーの刺さったクッパ城へと、門を蹴り開けて突入する。中の者達は彼を足止めにするには足りず、ドンドンと最深部へと進んでいく。
やはり彼は、自分の所業に対して恥じず悔いらず。カリバーと対面し、攻撃を掻い潜って両目を一閃で潰し、一撃でコアを粉砕してついにカジオーのいる武器世界へと突入した。
憧れる、そう思わずにはいられない、負け犬な僕とは大違いだ。
慙愧の嵐が吹き荒れる、僕にはあまりに重過ぎた使命。生まれは王族でも無ければ異端でもない、どこにでもいそうな平凡な男に、世界を背負うには重過ぎて、その責任を精算するにはあまりに膨大すぎて押しつぶされる。辛い、辛い、あまりに辛くて消えてしまいたいほどに………
ああ、更に慙愧の嵐が増していった。
火山の火口から、巨大な剣の刺さった城へ無慙は突撃した。閉じていた城門を蹴り上げれば、敵をしっかりと見定めつつ斬り飛ばしていく。だが、その数自体はさして多くない。
トラップもちょっとした足止めにしかならない。殴り、斬り、そして突破していく。そして……
「死ね。」
遂に突き刺さった巨剣『カリバー』の元へと到着した。数多の攻撃や妨害が干渉するが、それはどれも想定内。両目を潰せば、頂点部分のコアを完全破壊。口にして門が開き、その中へと誘われていった。
その中は工場を連想する部品が見られるものの、暗黒で満ちていた。足場は浮遊しており、落ちて仕舞えば奈落へと誘われるだろう。だが、無慙はそんな光景を前に決して引くことなく、ただひたすらに前進し続ける。
その最中、見たこともある白い敵が押し寄せてきた。ケンゾール、ユミンパ、ヤリドヴィッヒ、オノレンジャーなどなど……ただし未完成品のように白い姿であった。
「退け、お前達は過去の敵の模造品なのだろう?過去の脅威に足止めされる時間なんぞない。」
そう言い放ち、無数の敵を解体していく。本人も言ってるように、過去の敵に苦戦しているようでは、最深部にいるカジオーに勝つことは困難だろう。
故に止まらない、ひたすらに殺戮をしながら進んでいく。それを繰り返し、そしてその果てに………遂に最深部へと辿り着いた。暗黒が消え、キャタピラの流れる場所へと至る。そして穴への入り込めば、其処には溶鉱炉から流れる液体に金槌を打ち込み怪人を生み出す王族の如き怪人。まさに王冠を被りし独裁者の如き者が其処にいた。彼こそがカジオー、無慙は一目見て確信した。
「貴様がカジオーか。」
「ほう、噂の剣士殿がご到着か。我が工場の見学……いや、御託は止そう。そしてこうして見るとなるほど、お前は剣とも言えるな。」
「……なんだと?」
「曰く、剣の巫女と正体不明の勇者の間に生まれた異端児。それがお前を構成する素材なのだろう?」
「ッ!?」
不意にカジオーから語られた無慙……否、“彼”の内情。不意なその発言に無慙は驚きの表情を浮かべ、直後に怒りと殺意の帯びた視線をカジオーに向ける。
「随分と、まるで最初から知ってたような口振りだな。」
「生憎と、長年武器製造に費やしてたのでな。武器を見れば、まるで目の前に納品書でも見せられたかのようにわかるのだよ。さて、では端的に聞こうか。ワシと組まんか?貴様と言う剣は二流ではあるが、その性能は中々に見込みがある。」
「ふざけるな。どのツラ下げて言っている、鍛治のやりすぎで耄碌でもしたのかよ。」
カジオーから出される交渉の進言、当然ながら無慙からは拒否される。しかしカジオーは自分こそが正しいと言わんばかりに一方的に話を続ける。
「殺意を糧にした強化、そして弛緩や解れを見極め作り出すと言う性能。それは実に大した力だ。だが、お前自身の意思で生命誕生と、理解度に応じた威力の上下効果という欠陥があるのが気に食わん、そこがまさに二流なところよ。命を生み出したり、威力が状況に応じて変動するなんぞ、兵器として欠陥以外の何物でもあるまい?」
「………」
「鍛治として見過ごせんよ、そんなもの。故にワシが自ら治し、より最強の兵器として改良してみせよう。なぁ、お前だってそれを……」
「阿呆が。」
閃く剣戟、一瞬でカジオーとの距離を詰めて振り下ろす。しかしそれを、鉄槌で受け止めて鍔迫り合いを発生させる。
そして両者、弾けて距離をとる。
「交渉決裂か。」
「当たり前だ、誰がお前の処置を受けるかよ。俺の未来は俺が決める、そしてそもそもお前を殺すために俺は来たんだよ。」
「フン、交渉に応じていれば痛い目に遭わずに済んだものの。来い、その二流さを叩き直してやる!」
閃く剣と搥が交差し、遂にこの世界における最終決戦が開幕した。
「メガトンハンマー!」
カジオーのその宣告と共に、巨大なハンマーが無慙の頭上から落ちてきた。激しい激突音が鳴り響くものの、無慙は剣を盾のように構えて防ぎ、そして返しの刃でハンマーを斬り払う。
それを見て、カジオーは感心した表情を浮かべる。
「ほう、流石にやるではないか。」
しかし返す言葉もなく、無慙は疾走して再びカジオーとの距離を詰める。無論、第一戒律と第二戒律を併用しており、その軌跡をカジオーは認識出来てない。
だが、見えていなかろうと関係ない攻撃すればいい。カジオーはその力を持っている。
「ミルキりゅうせいぐん!」
「オォォォッ!」
煌めく星々が無慙へと襲いかかる。その全てが光速で迫り、周囲を穴だらけにしていく。だが、無慙の周辺だけは無傷。
迫る星々、その全てを斬り払い破壊していく。だがしかし、それでも足止めとなってしまったことも事実。カジオーにとってそれだけでも充分だった。
「ふん!」
溶鉱炉から出た液体に、金槌を打ち付ける。すると剣のホッピングに乗った怪人『できたてペイパー』が現れ、カジオーを守るように前に出る。
「いけ、お前達。あの出来損ないを殺すがいい!」
「レインソード!」
「グッ……」
レインソードの一つ一つはたいしたことない、しかし全体的に見ればミルキりゅうせいぐんとほぼ同等であり、単純に数が多すぎて厄介だ。
ならばと無慙は無価値の炎を解放し、横一閃にはなってファイアウォールを作り上げる。これで流星群と剣の雨を防ぎ、そしてカジオーの視界を潰す。だが……
「小賢しい、ライトセイバー!」
目の前に燃え盛る炎を、ハンマーの頭頂から出した光条の刃で切り裂いた。その直後に裂け目から無慙が顔を覗かせ、即座に剣先が牙を剥く。出来立てペイパーが咄嗟に身を挺して犠牲になるも、そのまま貫通してカジオーに掠る。
「グヌゥッ!」
「鈍い、遅い、欠伸が出るぞ。その様で王などとよく自負できるな。」
「黙れィ!こうなれば、さらなる数で圧してくれるわぁ!」
するとカジオーの意思に応えるように、溶鉱炉は無理矢理大量の素材を出し、それをカジオーはひたすらに叩いて大量のペイパーを創り上げた。
しかし、その光景を前にして無慙は呆れたように鼻を鳴らす。
「滑稽な、今更そんな術が通じるわけもないだろうに。」
そう言い放つと同時に、広範囲に撒き散らされる無価値の炎。それがヘルパー達を腐敗させ、そしてカジオーにも巻き込まんと迫り来る。
「おのれぇ、この様な……」
「遅い。」
「ッ!オォォォッ……」
無価値の炎から逃れようとするカジオー。しかし無慙はすでに背後に回っており、それにカジオーは気付くと同時に距離を取ろうとするも、既に手置けれ。
胴の部分に剣筋を刻まれ、カジオーは苦悶の声を出しながらも蹲った。そして、その屈辱に怒りの炎を燃やし……
「ヌオォォォ!!おのれおのれおのれおのれェッ!二流の刀剣風情がよくもが玉体に傷を!………許さぬ、許さぬ許さぬ許さぬ許さぬ許さぬわァァァッ!」
カジオーは怒りのままに地面へと鉄槌を叩きつけた。すると、足場が地震のように大きく揺れ、その果てに崩壊した。
「な、なんだ?ウオォォォォォ!?」
「………」
そのまま無慙とカジオーは落下していき、奈落の底まで落ちていった。その果てに、巨大な髑髏のような顔が当たり一面に置かれているという、なんとも不気味な空間へと二人は辿り着く。
それを知ってか知らずか、カジオーは更に怒りの炎を燃やす。
「やってくれたな貴様、それ程までに絶望を味わいたいか。ならば見せてやろう、ワシの真の姿を……見せてやろう、ワシの真の力を……見せてやろう、最強の力というものを……
そして悔やむがいい、己の浅はかさを!ヌオォォォ!!」
眩い光が晴れれば、髑髏のような頭部をしたカジオーが姿を現した。これが、彼の完全な姿である。
「グオォォォォッ!!かかってこい、小童めがッ!」
真の最終決戦が、地獄の底で始まった。早速カジオーは自分自身の体を改造し、最初に見せた姿は戦車だった。
「喰らってくたばれ、マグナム!」
「ッ!」
不意打ち気味に黄金の弾丸が火砲から放たれたものの、無慙は咄嗟に回避した。しかしその弾丸は背後の髑髏、壁面、そして空間諸共削りながら地平の彼方まで飛んでいった。アレを喰らえば、体に大きな風穴が開き致命を負ってたかもしれない。
流石にこれは、安易に受けてはいけない一撃である。
「ほう、よく回避したな。」
「黙れ、その呼吸が気に食わん!」
殺意を激らせながら剣戟を振り上げる、そして戦車の装甲もろとも断ち切らんと殺意の刀剣が振り下ろされる。しかし、無慙の耳に入ったのは何かが弾かれる音だった。
カジオーの頭部が戦車から、棺桶へと変化している。
「ッ!?」
「フフフ、フハハハ!貴様のようなタイプは、これが一番苦手だよな?喰らえ、ひっぺがし!」
すると、カジオーの棺桶になった頭部から怪しい光が発生し無慙を包む。すると、物理的な損傷は一切起きなかった。しかし無慙の肉体の内側から異変が起きる。
「グオォォ!?こ、これは……」
それは、カジオーに関する記憶が漂白され、それに比例して積み上げた強化率が下がっていた。あの怪しい光は、巻き込まれた者の基準値以上に上がった強化エネルギーを消去する効果があるのだ。
故に無慙は相手への理解に応じて強化を成すため、あの光によって強化の基となっている記憶が消されてしまったのだ。
「おのれ、貴様ァ……」
「フフフ、そうなってしまったら貴様なんぞ正に木偶の剣よ。そら、これでも喰らえッ!」
するとカジオーは今度は魔術師のような形に変形し、上空に魔力の塊を飛ばした。すると巨大な暗黒の星が落ち、無慙の身体を下敷きにせんと何度も叩きつけられる。
弾ける血飛沫、骨が砕ける音が奈落に響き渡る。
「フハハハハハ!どうだ、これこそがワシの最強の力だァッ!だが、流石に貴様の振り幅は極端故に油断できんからな。貴様の自由を奪い、確実な方法で殺すとしよう。」
そう言いながらカジオーは宝箱の形へと変化し、その中から無数の木の根が伸びてきた。すると木の根はカカシの様な形となり、抱きつく様に無慙へと絡みついた。
そして、これで動けないと確信したカジオーはまた戦車の形へと変化する。
「さらばだ、貴様を殺して貴様の因子を獲ろう。その果てに凡ゆるものを斬り殺す最強の剣として再生産してやろう。このワシのために光栄に思って逝くがいい。」
そして発射される黄金の弾丸、狙いは無慙の体の中心。心臓部を穿ち、その命を奪わんと迫り来る。
それを前に無慙は………良いや、見届けていた“みんな”の魂、そして私は……
「貴女は、どうやら祈りを集めている力がある様だね。」
「はい、そして貴方はカジオーに敗北した誰か。ならば、考えることは一つですね。」
「ああ、みんなの願い、そして祈りをここで解放しよう。僕が貴女の祈りの架け橋となり……」
「私もまた、貴方達の願いを聞き届ける架け橋となる。本来は簡単に出来ることではないけど……」
「世界の危機は“みんな”の危機。ならばその祈りの熱量は実現するに値する。ただ、偏屈な彼は心底不愉快だろうけど……」
「大丈夫、あの子は自由を許してくれます。意地っ張りだから、自分一人で充分と言うでしょうし、実際時間さえ掛ければ単独撃破も不可能ではないのでしょう。」
「僕たちも託した側とはいえ、もうここまで来たのならば黙って見てはいられない。だから……」
「ええ、だから……どうか皆さん、手を伸ばしてください。私はクイン、異界にて無念を抱き同胞たちよ。どうかあなたたちの願いを教えてください。」
「僕はジーノ、天空の使者にして星を追うもの。異界の益荒男たちよ、どうかあなたたちの奇跡を教えてほしい。」
「だから、その果てに……」
「この架け橋をもって……」
『
二人がそう決意した刹那、奈落に極天の流星雨が降り注いだ。
「ヌゥ!?な、なんだこれは……」
「オォォォッ!」
突如現れた色彩、その逆光を浴びながら無慙はカカシの束縛を全て斬り払う。そして躍動を感じさせる跳躍と同時にマグナムを置き去りにし、カジオーの頭部に向けて剣を振り上げた。
「フン、小賢しい。何が起きたか知らんが、もう一度これで堕としてくれるわ。」
そう言いながら、再び棺桶の形態へと変形する。当然ながら無慙の剣戟を防ぎ、再び強化解除の光を放とうとした。
その時だった。
「美しく、優しくあれ。」
「何………こ、これは!?」
接触面を通して、棺桶が凍り始めた。その瞬間に光を発することができず、咄嗟に戦車形態へ変わろうとするも今度は電撃が発生して内部にある回路が狂って射撃ができなくなった。
この余りの異常事態に、カジオーは困惑を隠しきれない。しかし反面、無慙は当たり前の様に、だが鬱陶しそうな表情を浮かべていた。
「勝手なことをしやがって……」
『そうか、お前はお前の家族と再び出会うために、弱気を押し殺し勇気を持って旅立ったのだな。なんと優しく、勇ましい姿なのだ。』
『そんな、貴方だって一度は失った夢のために自分が壊れながらも立ち上がってたじゃないですか。その姿が、すごく美しいと思いましたよ僕は。』
美しき光輪と、泣き虫ながらも誰よりも勇気のあった王子の魂が微笑み合う様にそう語り合っていた。本来交わることのない出会い、だがその奇跡を願いの星を求めるもの、奇跡を集めるものが架け橋となって実現した。
「何故だ……何故、こんなことを……」
それを成したこと、実現させた意味をカジオーは理解できなかった。成した理屈と根拠は理解できても、それをやる意味がわからない。何故なら光輪を始め死んだ勇者達は、形はどうあれ敗北者の型に嵌められている。無慙本人の攻撃と比べても、ダメージも痛みも比較的に“弱い”のだ。だのに通る、結果的に無慙の攻撃であり相性を突いた攻撃とはいえ格下の攻撃が通ることはあり得ないと混乱を生んでいる。
この不可解な現象を前に、カジオーは怒りが限界突破に達した。身を蝕む凍傷と、痺れを振り切り、魔術師の姿へと変わる。
「おのれがァ、舐めるなよ貴様らァァァッ!がんせきガラガラァァァッ!」
「そうか、だが俺の欲望の方が強い。」
宣告と共に背後の空間から、大地震と共に無数の岩が傾れ込んでくる。
しかしそれを前に一歩も引かず、無慙は闘気と共に我力を迸らせた刺突を正拳突きの様に放つ。するとそれは螺旋を描き、欲望のままに岩石を喰らい、穿ちながらカジオーへと激突した。まるで自分の方が強いと傲慢に示唆するように。
『グワッハハハ!どうだ、見たか。小賢しい岩石なんぞよりワガハイの方が強いのだッ!』
『いいや、お前より俺の方が強い。』
『ハッ、好きなように宣言しろよ。この一戦はあいつだけじゃなく、俺達の命を賭けるだけの価値はあるんだろ?』
魔王、飛蝗、飢龍という三者三様の覇王が豪華絢爛の輝きと闘気を迸らせながら語らい合ってた。あまりにも我が我がという自己主張の様な塊の魂が、なんだかんだ意気のあったコンビネーションを繰り広げる。
その魂の輝きを前に、カジオーはまだ屈しない。
「黙れ黙れェ!魂だと?そんなものになんの価値がある。生きるとは生存競争、殺し合いに長けたものこそが王者となれるのだ。愛だの魂だの、知ったことかァッ!」
「愛も魂も知らないとは、なんとも哀れだな。」
今度は宝箱の姿となり、盲目となる閃光、束縛に迫るカカシ、そして猛毒のガスを発生させた。
それらが無慙の体を縛り、内側から破壊するものの、それを前に一歩も引かない。攻撃を喰らった上で殺意を燃料に黒炎を激らせ、それらを上回る勢いで拡散していく。まるで殺意(愛)から一歩も引かない乙女の様に。死を跳躍する不死鳥の如き飛躍を成す。
『ねぇ、そこのお姉様。貴女も恋とかしてたりしますの?』
『ええ、そうよ。そう言う貴女も恋してるみたいね。良ければ詳しくお話し聞きたいわぁ。』
『全く恥ずかしい……女がそう、内情を語るものではあるまい……』
三人の乙女がそう語り合い、魂と愛を知らぬ独裁者にその概念をと刻まんとしていた。流石のカジオーも面くらい、遂に手が尽きたのか元の形態へと戻っていた。
だが、まだ戦意は尽きていない。
「ふ、ふふふ……そうか、それがお前の戦い方か。ならばワシも、渾身……否、限界を超えた奥の手でお前を砕くとしよう。覚悟しろ、メガトンハンマー・NEO!」
瞬間、髑髏だらけの空間が頭上に掲げた鉄槌に吸収されていく。それに応じて鉄槌も巨大化していく。それも常識はずれな程に。星を…….否、銀河を砕かんとしない程に大きく。
だが、限界を超えたと言うだけ合って、発動までには時間がかかる技の様だ。それを裏付ける様に、カジオーは動くことができていない。
「……」
それを前に、無慙は動く様子を見せない。まるで瞳が、虚空を見つめている様に。そして言い放つ。
「……安心しろ、しっかりお前を殺してやるよ、カジオー。」
「フッ、どうやらワシの奥の手で狂った様だな。ならば木偶人形のまま、砕け散るが良いッ!」
メガトンハンマー・NEO発動までもう僅か、無慙は一体どう攻略するのか………
みんなが戦っているのが伝わる、別世界であろうと共鳴する誰かと共闘しながらカジオーを押している。抵抗を受けながらも、確実に追い詰めているのがわかる。
そして、最後の一手。これで全てを終わらせられるんだろうけど……
「………」
慙愧の嵐の最中、僕に話しかけることなく彼は見据えていた。ああやめて、お願いだから見ないでよ。ごめんなさい、ごめんなさい、こんな平凡な男が何もかも手遅れにしてごめんなさい。
だって僕は、僕は、僕は君より強くないんだよッ!君に見られると、悪いとは分かってるけど惨めになるんだ。
「……何を根拠に言ってる?俺の歩いてきた軌跡を見て、勝手に自分との比較でもして嫉妬でもしたのかよ。阿呆か、結果なんぞ個人差が出て然るべきだろう。そんな当たり前に、何を……」
違う、違うんだ。単純な君の強さに驚いたのは確かにあったさ。もしも君ほどの力があれば、なんてのも考えたよ。それに分かってる、君は君で、僕は僕だ。強さが違う、そのくらいは納得して向き合える。
だけど、僕が……僕が君を本当に羨ましいと思ったのは……ッ!
「………」
君はお兄さんを失っても、取り戻すことができたじゃないか!挫折しても立ち上がって歩き出せたじゃあないか!
僕はもう、カジオーに負けて何もかも奪われて、もう取り戻すことは出来ないんだよォォッ!
「………そうか。」
それが君と僕の違いなんだよ、決定的に格差が違うんだ。失っても立ち上がって勝ち続けた君と、取り戻せない敗北に堕ちた負け犬の僕とじゃ、組み合わせが悪い。
他の誰かと一緒にやった方がいいよ、大事なところでしくじった僕だと、失敗して大変なことになるかもしれないから……
兄さんが落ち込んでいるのがわかる、そんな様子じゃ戦う事は出来ない。だから、僕が代わりに頑張らないといけない、そう分かっているけど………
(怖い、怖いよ!)
生まれ持った臆病な性分が、進む足を止めてしまう。ああそもそも、僕に一体何ができるんだ?いつも兄さんに守られていた、弱い僕なんかに。
だけど、黙って指を咥えてまた負けてしまう光景だって見たくない。なら、せめてちょっとだけでも手を出さないと。ああでも、僕が手を出したところで、結局足手纏いに
『ドーン!』
『ウギャー!?』
突如背中から感じた衝撃に、顔面から地面へと叩きつけられた。振り返れば、鳥の様な格好をした女の子と、赤髪の女の子、白黒した女の子、そして緑色の姿の飄々とした男がいた。
『まったく、さっきからこのヘタレ緑はウジウジウジウジと見ていられないっすねェ。仮にも大人の男が情けないっすよ。』
『言い過ぎだ鳥頭、けど見てられないのは同意だな。兄貴を助けたいなら、下手に考えずやることサッとやっちまえよ。』
『そ、それは……』
不意な雰囲気に呑まれて、自分でも驚くほどあっさりと本音を漏らしてしまった。
『勝手なことして、兄さん、勝手なことをして怒るかな?そう思うと怖くて……』
そう口にすると、周りのみんなは目を点にして呆気を取られた表情をしていた。そんな顔しなくても……これでも本気に思ってたのに。
すると、緑の男がヘラヘラと笑いながら僕の肩を掴みながら言い放つ。
『OKOK、分かったぜ兄弟。そんなにお兄ちゃんのお怒りが怖いなら、俺も手を貸すから安心しろや。一緒に頭下げてやるよ。』
『えっ……』
そんな不意な提案に驚いてしまう。そして彼に続くように、他の女の子達も………
『それなら私も、本当のところ怖くても助けたいんだろう?なら、とことんまでやってしっかり決めよう。あとはお兄さんがどうにかしてくれるよ。あの神様気取りに、いい一発当ててやろうよ。実は私こう言うの、得意なんだよね。』
『ああ、なんだかんだ盛り上がる展開だからな。ただ、単純に手を出すだけなら、防がれそうだが……』
『そこはナダレとアーちゃんにお任せをっす。しっかり仕事するから、お前達もバシーッと決まるっすよ。勿論、そこの泣き虫坊ちゃんもっすよ!』
『みんな……』
ちょっと荒々しくも、協力してくれる彼らの暖かさに涙が溢れた。ああ、そうだね。どうせもう直ぐ世界が滅ぶんだから、ここまで支えられたんなら、最期くらいしっかり泣き虫は克服しないと兄さんに顔向けできない。
だからやるんだ………と、その前に疑問を一つ晴らしておかないと。
『ねぇ、なんで僕なんかにここまでしてくれるの。泣き虫の僕なんかに……』
『………』
するとみんな、目を合わせた後に満面な笑みを浮かべながら答えた。
『
『………は、ははは……』
なんてことを、真剣に言うものだから僕もつられて笑ってしまった。ああ、もう恐れるものは何もない。両手に力を込め、渾身の緑の炎を激らせる。
狙いは
『大丈夫、兄さんなら必ず立ち上がってくれる!』
『よく言ったッ!』
僕の願いは、もう叶ったよ。あとは兄さん、頼んだ。
「フッ、カッコつけた割には結局何もしないではないか。所詮は木偶の剣、最強のワシに敵うわけも無かったのだ。故に死ねィ、メガトンハンマ……」
「それはどうかな?」
「何?グオォッ!?」
遂に全てを砕くメガトンハンマー・ネオが動き出そうとした刹那、無慙は口端を上げながらそう言い放った。
すると、カジオーの目の前に緑の閃光が爆ぜた。ずっとメガトンハンマー・NEOのチャージに集中していた、加えて不意打ちとはいえはカジオーらしからぬ失敗であった。
「ヌオォォォ、ワシの大事な決戦に水を刺したのはどこの誰だァ!?」
怒り狂うカジオー、しかしそんな彼を嘲笑う様な声が、彼の心理に響き渡る。
『おーおー、自称最強様が情けない姿だなぁ。この手の独裁者は、自分の思い通りにいかなくなるとすぐに怒り狂うよなぁ。』
『羽虫に刺された程度のダメージの割に、結構堪えるだろう?どれほど弱く、格差が離れていようとも、真剣に本気で打ち込んだ一撃は確かに生きているんだよ。まあ、君には分からないだろうね。』
『ずっと周りの連中に振り返らず、食い物にし続けたツケだバーカ。精々吠え面変えとけやヒゲモジャジジィが。』
『そうだ、僕達の思いを馬鹿にするな。今度はお前が負ける番だ、カジオー!』
その言葉を残して、彼らの残滓は消え去っていった。消えたのを確信すれば、カジオーは鼻で笑いながら言い放つ。
「フン、所詮は負け犬の戯言だ。例え有効といえど、羽虫以下の損傷で戦況は傾くものかよ。この程度では何も……」
「いいや、お前の負けだよカジオー。この一瞬で勝敗が決まった。」
「ッ!?」
「震えて死ねよ、貴様には最後の切り札をくれてやる。」
ああ、慙愧の嵐が視界を覆う。自分の手の輪郭を失いかけてるし、僕を見る彼の全身もほとんど見えなくなってきた。彼と二人きりでよかった……姫達にこんな姿、見せたくなかったしね。
だけど、彼が近づいて、しゃがんで座り込んでる僕と目線を合わせてきた。何を言う気だろう?そもそもこの戦い自体、彼一人で充分だろうに……結果的にみんなの力を使った方が効率的なだけで。僕なんかの力を活用しても、上手くいく気が……
「勝手に自分に失望して塞ぎ込みたいならば好きにしろ、元より俺は一人で戦うつもりだからな。」
うん、その通り。彼が力押しでやり続ける限り時間がかかるだけで、決してカジオーに勝てないわけじゃあない。だのに何故……
「だがな、お前のが立ち上がるのを最後まで信じてるやつはいるだろう。あの馬鹿どもが、勝手に煽りやがって。」
え?何を、言って……
「顔を上げろよ馬鹿兄貴、大好きな弟に情けない姿晒してるんじゃないぞ。」
「ッ、ルイージィ!」
彼の見上げる方を見ると、慙愧の嵐の中に薄らと浮かぶ緑の光が見えた。その光は、こちらに攻撃しようとしているカジオーにぶつかる。
結果、ちょっとした目眩しになった程度。だけど、だけど、その光景に涙が浮かび上がった。そしてルイージ(おとうと)の声が聞こえてくる。
『兄さん、勝手なことをして怒るかな?そう思うと怖くて……』
なんて、些細な不安を口にしていた。ああ、そんなわけないだろう。お前が勇気を振り絞って、俺のために、みんなの頑張ってくれる姿に。ああ、ならば……
「さて、時間も惜しい。俺はそろそろ……」
「待ってくれ。」
「……ほう?」
慙愧の嵐が吹き荒れる、彼が前進しようとした刹那に背後から声が聞こえる。
熱く、魂が紅蓮の炎の如く燃え踊る。
刮目せよ……雷鳴を身に纏い、不屈の……否、敗北に屈しようとも、
「引っ込み思案な弟が、小さな勇気を振り絞ったんだ。ここで応えなきゃ、
「どの口が、さっきまで慙愧に囚われて塞ぎ込んでた奴がほざくなよ。」
「自分の事だ、よく知っている。それでも一つだけチャンスを与えてほしい。」
「……良いだろう。」
審判者の如く、彼は見据える。これより半端な覚悟で向き合えば、死は避けられないだろう。
「ならば聞かせてもらおう、お前がこの一戦で賭ける
「当たり前だ、君にこそ聞いてほしい。」
剣を肩に担ぎ、こちらを殺すと決意しているであろう彼の視線が僕と絡む。ここで半端な答えをすれば、間違いなく落伍者として殺される。
まあでも、例え“99回”殺されようとも僕の願いはもう決まってる。無慙……否、マグサリオン。君と出会った事で見えたものがある。感謝の意を込めて、伝えさせてもらうよ。
「みんなを守りたい」
願いはそんな、現実の痛みを知らない子供の夢のようなもの。だけどそこに偽りはない。
「ノロマでも、
始まりはルイージと一緒に配管工を始めてから。不思議な土管に迷い込んで、本当は怖いと言う想いを押し切り、ピーチ姫と一緒にルイージをクッパから救うため。それから何年か経ち、マロと出会って、ジーノと出会って、カジオーに負けて死んで今ここに至る。願いが叶うなら、今度はルイージと一緒にまた旅をやり直したいと思うけど、それはもう叶わない。
だけど、それでも確かに言えることはある。僕自身、ちょっとジャンプが得意なだけの、何処にでもいる平凡なただの男だ。だけど、この人生を無価値だなんて言われて黙っていられない。そしてそれは、僕だけでなくピーチ姫、マロ、ジーノ、そしてクッパ、そしてそして大事な弟のルイージ……そして普通に生活してた“みんな”の命。その価値を、たった一度負けたから無かったことにするなんて黙って受け入れられるわけがないだろッ!だから……
「
「フン……よく吠えた、その心意気を使ってやる!」
慙愧を振り切り叫ぶ僕の声を聞き届け、彼はそう答えた。その口調、そして表情はそれを待っていたと純粋に微笑んでいるように見えた。
「なんだ、それは……」
「我が民よ、星に祈りを込めし者らよ、巨悪を喰らう悪となれ。一つでいい、その魂に獣を飼うのだ。
その所業に恥じるな悔いるな、無慙無愧。罪と罰を抱いて生きろ、それが人だ。」
無慙は神剣を頭上に掲げる、それを中心に堕天の覇道が渦を巻く。地獄の業火が螺旋を描き、彼の苛烈さをよく表しているだろう。
だが、それが解放される刹那に赤き英雄と姿が重なる。それは即ち、この技は彼の最後の切り札を踏襲した形であり……
「「Let's Go!」」
再起した彼の勇気を象徴したモノに他ならない。
これはまずい、そう確信したカジオーは即座に振り下ろした。銀河を砕き、世界を崩落する裁きの鉄槌を。
「メガトンハンマーNEOォォォッ!」
そして相対するは地獄の業火、無価値なるものを腐敗させ、この旅路に終焉を齎すもの。
「
漆黒の業火が渦を描きながら、巨大な鉄槌を飲み込み腐敗させていく。有形無形、目に見えぬ概念だろうと、いかなる存在をも腐敗させて消滅させる無慙無愧の覇道。それがメガトンハンマーNEOを完全に消滅させ、そして独裁の裁きを齎さんと、カジオーの全身を包み焦がしていった。
「グオォォォォォッ!?馬鹿な、最強たるワシが負けるだと?あり得ん、木偶の剣如きに、負け犬どもの嘆き程度に屈するだと?あり得ん、あり得んあり得んあり得ん!?
が、ぐ、グガァァァァァァァァ!?」
その断末魔とともに、カジオーは完全にこの場から消滅した。それを無慙は見届ければ、この世界………否、外の世界も諸共崩れ去ろうとしていた。
そう、遂にこの異世界での旅も終わりへと辿り着いたのだ。
『ハァ、ハァ………おのれ、愚か者どもが。覚えていろ、お前たちが戦いを求める限り、ワシは必ず………』
どこかわからない世界において、カジオーは這いずり回りながらそう呟いていた。しかしその姿を捉えた影がそこに居た。
『へぇ、なるほどな。武器を作り上げる最強の武器か。面白いじゃないか。』
『な、なんだお前……いや、その顔と姿は』
『うん、気に入った。お前という武器の存在ごと、俺にくれよ。』
『………は?何をお前は言って』
『あの外郭は一部は俺の要素もある。つまり、お前は俺に負けたに等しいんだよ。』
それはかつて零の勇者だったもの。その顔は無慙の顔と似て非なるものであり、ガシオーは戦慄を覚えた。勇者としての資格は敗北して喪失しているものの、彼の戒律は生き様であり永久不変の誓い。故にここでもまだ機能しているのだ。ならば……
『なぁ!?な、何故だ、何故ワシがコイツに吸収されているのだぁ!?』
『だから言っただろう、お前は俺に負けたに等しいって。』
零の勇者の戒律はの本質は『敗北を認めた相手が最も大事にしている武器を奪う』というもの。ならば、カジオーが大事にしているのは、自分自身そのもの。ならばそれが奪われるという法則が機能するのだ。
『やめろ、やめろやめろやめろやめろぉぉぉ!!この人でなしがァァァッ!』
『酷い言い様だな、お前が散々やってきたことと同じだろうに。』
こうしてカジオーは存在ごと、勇者だったモノに奪われたのだった。
というわけで、マリオRPGの武器ボス戦全踏破完了しました。元々、この世界線のマリオは映画版の性格をかなり踏襲させた設定となってます。仮にも元一般人が世界の命運を背負わされ、尚且つ敗北して全てを失ったら、そりゃ、ゼファー並みにトラウマ抱えてもおかしくないだらうなと思って、こんな感じにしています。加えてジーノは除外するにしても、ピーチクッパマロは王族関係なので、共感してくれるか怪しい所ですし……
さて、これにて戦闘は全て終わりました。次回にエピローグを流して、マリオRPGは締めさせてもらおうと思います。