マグサリオンの殺戮劇場 大長編 作:ヘル・レーベンシュタイン
第十三陣 Epilogue 異聞武器世界
「………」
カジオーの姿が消え、武器世界が崩壊をはじめた。否、それだけではない。外もまた同様に崩壊を始めている。
世界の終焉、この世界においてもはや生物は無慙以外に存在しない。その光景を、血を拭いながら見渡す無慙の背中を、光となったマリオたちが見守っていた。この旅路を得て、かの英雄は確かな答えを得た。故に終着、ならばこのまま別れるか、或いは無慙に殺されるか……もしかしたら、後者の方がある種の救いとなるのかもしれない、そう考えてしまった。そして無慙の視線が絡まる。剣を肩に担ぎ、殺意を露わにした言葉を紡ぐ。
「さて、ついにこの世界が終わりを迎えた訳であとはお前達だけが残った。ならばどうするか、決まっていよう。」
『……』
彼の進む道は、冥府魔道。例え神だろうと殺し、屍山血河を築き上げる魔剣。ならば例外なんてあっていいわけもなく……自分達も殺すのだろう。
「ここがお前たちの墓場となる。だから、お前自身がこの世界の終了をちゃんと見届けろ。」
『ッ!?』
「ああ……俺の手でお前達を殺そうとも考えたが、どのみちすでに限界を迎えている。俺が殺しようもないほどに、消耗しているんだよ。」
そう、彼らは元より死者。奇跡的に無慙との接続が繋がっていただけであり、目的が果たされれば潰える運命である。
故に、無慙は役目を終えた以上は長いは不要。元の世界に戻るのみである。
「ではな、良い機会となったと礼は言ってやる。」
『……ア……アァッ……』
「……」
踵を返し、神座の元へと戻ろうとする無慙。その背へと手を伸ばさんと、声を張り上げる彼。淡い光が次第に消える最中、最後の一絞りを出した。
『アリ、ガ、トウ……』
「………」
感謝、その言葉を肩越しに聞き届けて無慙は終わりゆく世界を後にした。男の往く道は冥府魔道、無慙の所業である。屍山血河を築き上げるその所業に、一切の恥も悔いも無い。しかし、どんな相手だろうとしっかりと真実を見据え、断末魔を聞き届けるそれはある種の救世主的と言えるかもしれない。
ここに、敗北と屈辱によって潰えていたかもしれない世界の歴史を、たった一人で覆した。それでも無慙の戦いはまだ終わらない、世界の根幹にある大義の流転を終わらせるまで。男はその結末に至るまで、ただひたすらに歩き続ける。
崩壊する世界、もう殺戮の救世主はここに居ない。ヒーローと呼ばれた凡夫は、大の字で倒れるように暗黒の空を仰ぐ。長い長い、旅路だった。世界の終わりとはこう言うものかと、ふと周囲を見渡す。まず最初に愛する姫の城、自分の冒険譚の全てはここから始まったと言える。次に宿敵の城、自分の家、森に洞窟に海原とetc……
それらが崩壊と共に崩れていく、まるで限界を迎えた砂場のお城のように。だけどそれは無意味であると言う悲観的な意味ではなくて、役割を終えたからと知っているから。
(あぁ、ちゃんと終わらせることができたんだ……なら、決して無駄なんかじゃなかったんだ。)
去り際に無慙に言われた言葉を思い出す、ちゃんと見届けろと。これには、そんな意味が込められていたのだろう。終わりを知っているか否かでは、大きな違いがあると。
自分の冒険譚、守ってきた世界にちゃんと了を刻むことができた。ある日不意に、移り変わったように閉ざされたのでは無いと確信ができた。ならば、最後まで争う意味があったのだと、心から理解できたのだから。
(なら、やっぱりちゃんとありがとうと言えてよかった……これで僕も、眠ることができる。)
こうして、この世界のために冒険を歩み続けたヒーロー、マリオは世界の終わりと共に安らかな眠りについたのだった。
以上でマリオRPG編の完全終了となります。
前からやりたかったこと、どうにか踏破できてほっとしています。
次回からはいつも通りの予定です。