マグサリオンの殺戮劇場 大長編   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回から前回と同様に、連載先のストーリーを展開していきます。


第十九陣 Ⅰ 異聞黄金風殺戮譚

 

 

 

「……」

 

 無慙が闘技場で待ち続けていた時、再び意識が奈落の底へと落ちていく感覚が走った。またか、そんな表情が浮かび上がる。また一つの世界を、或いは誰かを殺しに行かねばならないのだと。

 そして気がつけば、西洋風な建物が並ぶ場所へと到着する。辺りを見渡せば遊具が見られ、公園にいるのだと理解した。

 

「ッ!これは……」

 

 そして近くの水面から自分の姿を見れば、座を掌握した時と同じスーツ姿が確認できた。だが、一点だけ異なる、それは神剣を握っていないこと。

 つまりは非武装状態、であれば第二戒律の縛りを破り破戒して死んでいる。だが死んでいない、何故だ?戒律が根本的に無くなったと予測したが、それは違う。今も尚、殺意の無い誰かに触れれば死ぬと確信しているし、目を閉じず、食事や休息も不要でそこから生じる痛みも実感している。ならば戒律は継続されている、であれば考えられることは一つ。神剣はある、ならば呼べば良いだけのこと。

 

「神剣(クイン)」

 

瞬間、右手から件の神剣が実体を持って現れた。どうやら武器は強く認識すれば出てくる様だ。加えて、どうやら人に認識されてないと見れる。神剣が実体化しているのに、誰も奇異な目でコチラを見る様子がない。ならば、まずはこの世界において最も殺すべき屑を探さねばならないだろう。

 その為に、まず周囲を見渡す。一般人自体は特に至って平穏、社会的な活動以外に特に強いられる圧政は無い。ならば、と今度は裏路地を見る。すると、そこには明らかなギャングの様な格好をしたものや、注射器を片手に呆然とするものが見られた。否、よく見ると表を歩く一般人の中にも、麻薬による後遺症の痕跡があるものが見られた。然も、特に若者にその傾向が見られる。ならば、決まりだろう。悪を喰らう悪たる無慙が、目の前の悪を見逃す道理は無い。

 

「まずは、麻薬を締めてる屑に当たるか。」

 

 こうして、無慙は裏社会側の人間への接触を始めた。当然、ギャングたちから暴力を振るわれるが彼にとってはいつもの展開。隙を見定めて神剣で身体を斬り飛ばしていく。冷徹にギャングたちに尋問しつつも、無駄な接触は省いていく。

 何故なら、戒律自体はいつも通りだがどれだけ理解を深めても攻撃の威力は相手を必殺しつつも対人規模より超えることはないと確信していたからだ。故に、麻薬を始めた諸悪の根源を見つけたからといって、彼らのいる大地、国、大陸ごと斬り殺すと言うかつての手法はできない。故に無駄な殺戮を行なって、無慙を脅威に感じ国外逃亡なんて真似をされれば詰みなのである。殺戮は最低でも邪魔をする無法者のみにしておくと判断した。そしてギャングへの接触を繰り返す最中……

 

「言え、この麻薬は誰が締めている?」

「ひ、ひぃ……パ、パッショーネのポルポだ。」

「そいつは何処にいる?」

「あ、アソコの刑務所だ。あの中のか、監獄だよ……アイツに会いたいと言うなら、パッショーネに入りたいとでも言うんだな。まぁ、アンタのような明らかな部外者、そうそう入れるとは思えないけどな……」

「……」

「な、なァ、ポルポのことは話したから解放してくれよ!」

「ああ、この世からな。」

 

 そう言い放ちながら、無慙はギャングの首を跳ね飛ばした。路地裏に溜まる血の海、死体の山が積み上がっていた。

 ようやく掴めた麻薬の元締め、曰くポルポという人物と会う必要がある。場所は刑務所内の監獄、加えてどうやら組織に入るための面接もやってる様子である。ならばと、刑務所へと足を運んだ。

 

「止まりなさい、要件を聞かせてもらおう。」

「……ポルポとの面談だ。」

 

 中に入れば、4人の警官が無慙の周りを囲いながら問いかけた。無慙がそう答えると、警戒的な表情をしつつも箱を机に出しながら言い放つ。

 

「……なら、この箱にスーツに入れている物を入れて持ち物検査を……」

「退けよ。」

「ッ!………」

 

 刹那、無慙が覇王の如き威圧を放てばその場にいた警官全員が白目を剥きながら倒れた。そしてそのまま歩みを進め、ゲートを無理やりこじ開けて奥の方へと進む。

 そして、ガラス張りの部屋の前まで到着する。その中には、ベッドにデスク、そして簡易的な絵画などが飾られた牢獄があり、明らかに誰かがいる痕跡が見られ……

 

「おや、面会の連絡は来てないが誰かな?」

「……」

 

 不意に、部屋の中から男性の声が聞こえた。その直後にベッドが一人でに動き出し……否、ベッドと思われたものは実は人が横たわってただけなのだ。

 対面したのは肥満体型の男性、冷蔵庫からワインを取り出す様子を見据えれば無慙が問い掛ける。

 

「お前がポルポか?」

「如何にも、そういう君は?」

「…………」

 

 無慙は返答しない、ポルポはその様子を見据えれば冷蔵庫から出したワインを飲み上げ息を吐きながら話を続ける。

 

「ブふゥ……無愛想な態度だね。その様子でどうやって此処まで来たのか知らないが、まあ良いだろう。組織に入りたいのだろう?君のような成人が来るのは、今どき珍しいがね。」

「手続きでも必要か?」

「まあね、試験をしてもらうよ。が、その前に聞かせてもらおう。人を選ぶにあたって、大切なことを君はなんだと思う?」

「……実績だ。」

 

 ポルポの問いかけに対し、無慙はそう答える。するとポルポは、不敵な笑みを浮かべながらライターを取り出す。そして不穏な雰囲気を纏いながら言い放った。

 

「確かにそれも評価に値するが、人を選ぶにあたって最も大切なのは“信頼”だよ。信頼に比べたら、実績がどーだこうだのと、この歯の間に挟まったカスほどのことも価値はないんだ……」

「………」

 

 ガラス越しに歯のカスを無慙へと放つポルポ、それはまるで立場的な格差を理解させるかのような姿勢を感じさせる。

 直後、隣の扉の小窓が開きポルポはそこにライターを置いた。

 

「では、試験を始めよう。君はこのライターを……」

「知ったことかよ。」

「ッ!?ガァ、ギエェェェッ!?」

『ガアァァァァ!?』

 

 ポルポの手がライターから離れるより先に、無慙の剣がポルポの手とライダーを貫いた。同時に、ライターから黒衣の幽波紋『ブラック・サバス』が姿を現した。床を朱色に染め上げ、同時にポルポが叫喚の声を上げる。その様子を嘲笑うかのように、無慙は扉を蹴破りながら言葉を紡ぐ。

 

「信頼だと?屑が一丁前なこと言う。麻薬とは、行き場を失った落伍者が行き着く偽りの楽園だ。それを売り捌くという世間への裏切りをしている貴様ら屑が信頼などと、どの口でほざく。」

「ぐ……ウ、舐めるなクソガキャァァ!!」

 

 問い詰める無慙に対して、ポルポは先程までの紳士的な態度から豹変しギャングらしく汚い言葉を吐き捨てる。するとブラック・サバスが口から鏃を出しながら無慙へと掴み掛かる。

 だが、その腕を払い除けて同時にその首を剣で切り飛ばした。

 

(馬鹿な、掴み掛かる力限定とは言え私のスタンドを生身で退けるだと!?まさか、スーツみたいに着込むスタンド使いなのか……)

「どうやらそのスタンドと矢を使って、試験者を選定していたのだな。察するに、ライターの火が消えて再点火すればそのスタンドが現れて矢に刺されて生き残るか死ぬの選定を行う。或いは馬鹿正直に火をつけ続ければ従順な下僕として扱えると……そんなところか。」

「グゥッ!?」

 

 無慙は試験の真実に対する考えを述べながら、ポルポの顔面を掴み壁へと押し付ける。もはやこの時点でポルポは詰みである、まず第一にこの肥満体型では逃げ足が皆無なのは火を見るより明らか。そしてこの監獄は密室、逃げ出す隙間もない。

 あとは精々が、ブラック・サバスを再始動させて無慙に抵抗するくらいである。幸い、監獄である以上暗がりの多い空間、何処からでも出現させることはできる。だが……

 

「どちらにせよ、糞を撒き散らす屑に相違ない。ましてやライターの発火を使った試験なんぞ見知らぬ奴も巻き込むリスクもあるが、どうせそれも承知の上で無視してるのだろう?臭すぎて反吐が出る、そんな屑を逃す道理はない。」

「ま、待て!私の財産をお前に渡す、幹部の座も譲る!だから……」

「要らん。」

「ッ!なら、一緒にボスに叛逆しよう!君程の力を持ったスタンド使い、私は初めて見た!私達が組めばボスを倒して組織の掌握だって夢では……」

「俺に糞を撒き散らす援助をしろとでも?舐めてるのか、貴様。ああもう戯言はたくさんだ………死ね、屑が。」

 

 無慙の剣が横薙ぎに放たれる、脚元から現れたブラック・ザバスがそれを止めるより早く。血の華が咲き乱れ、ポルポの命がそこで潰えた。

 その光景はまさに惨殺現場であり、常人であれば失神しかねない光景だろう。警察はこの件を取り上げるものの、後にポルポに恨みをもつものからの報復と結論付けて検挙を放棄した。

 

「……奴は財産があると言ったな、であれば死んだ以上狙う奴をいるだろう。そこを突くか……」

 

 無慙は警察署を出て、そう呟く。彼の監獄から出した手がかりとなりそうなものを握りしめ、次なる現場へと向かうのであった。

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