マグサリオンの殺戮劇場 大長編   作:ヘル・レーベンシュタイン

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戦闘シーン書くの好きなのですが、あまり戦闘描写が少ないキャラを扱うのは本当に骨が折れます……


第十九陣 Ⅱ 異聞黄金風殺戮譚

 

 

 ポルポの室内から引き出した、隠し財産を示す地図。それを見ればカプリ島という場所にあり、海を挟んでおり当然徒歩で歩ける場所ではない。

 故に船を利用せざるを得ないと判断し、無慙は港へと足を運んだ。

 

「………」

 

 港の職員を気絶させ、船用の鍵を強奪する。そして最寄の船、ラグーン号へと足を運べば、突如帽子を被った男が現れる。

 

「よぉ、ポルポを殺したのお前だろう?」

「……」

 

 帽子の男は飄々とした雰囲気で話し掛けるが、無慙は答えない。目当てのラグーン号に足を運び、そのまま歩みを進めて帽子の男へと近付く。直後、ラグーン号のエンジンが起動し、大海原へと前進を始めた。

 船が進む最中、無慙が歩み寄るもののその威圧感にも怖じけることなく、男は話を続けた。

 

「随分と大胆なことをするなアンタ、どこの所属だよ?まあどこだって良いけど、ポルポを殺したってのは大胆なことをするよなぁ。」

「………それで?」

「あぁ、良かったら手を組まねェか?ポルポの財産を俺らで山分けするんだよ。えぇ、そしたらパッショーネの幹部になれるのも夢じゃあねェぞ。」

「要らん」

 

 熱く語りかける青年に対し、無慙は冷徹な口調のままそう答えた。神剣を発現させ、切先を向けながら続けて言い放つ。

 

「俺はお前ら屑共の強力なんぞ必要としていない、どうせ俺をバラしてポルポとやらの財産を強奪するつもりだったのだろう?その程度の目論見、見え透いてるんだよ間抜け。来いよ、お前と残りの一人も纏めて海の藻屑にしてやるよ。」

「………オイオイ、随分と穏やかじゃあねェな。しかも察しがついてて敢えて話に耳を貸すなんてよォ。じゃあ、仕方ねェなァッ!」

 

 瞬間、無慙の背後のスペースから男とそのスタンドが現れ小型のレイピアで背中から突き刺さんと迫り来る。ロールケーキのような髪型をしたこの男の名前はマリオ・ズッケェロ、帽子の男とコンビを組んでおり、ポルポを殺した無慙の噂を聞いたのだろう。

 だが、無慙はまるで背中に目でも付いているかのようにその場で宙返りし、背後から奇襲をした男の後ろを取るという奇天烈な反撃を実現した。男の首元に神剣を突きつけ、如何にも動くなと暗に示すかのように殺意の帯びた威圧感を放つ。

 

「船内から気配を感じたが、エンジンを起動させたあたりから確信に変わったが、正体はお前か。」

「………あっあ〜♪喋るのは俺だ、仕切るのもオレだ。そのスタンドを突きつけて、優位になったつもりか?マヌケが、ギャングに脅しなんて通用しないぜ。でだ、お兄ちゃんよぉ。お前はポルポの隠し財産を……」

「お前の都合なんぞ知ったことかよ。」

「ぶっ殺す!仕切るのはオレだと言ってるだろォがァッー!!」

 

 瞬間、ズッケェロがポケットから萎んだ風船のようにベラベラな物体を取り出し背後の無慙へと投げつけた。これだけを見れば、単なるヤケクソにしか見えないだろう。だが……

 

「“ソフト・マシーン”能力を一部解除しろォ!」

 

 そう言い放った直後、ベラベラな物質は元の大きさと質量を取り戻した。その正体は銛であり、その矛先が無慙の瞳へと襲いかかる。

 

「くだらん」

 

 当然、それを紙一重で無慙は回避する。だが、裏を返せばそうした行動を強いられたことであり、直後にズッケェロはその場から距離をとる。

 

「ヒヒヒ、油断したなバカが!もうお前は、オレに近づけねェよ!」

 

 そして再びポケットから何かを取り出せば、まるで鎖鎌のように円を描きながら振り回す。そして無慙の方へ先っぽを飛ばすと同時に能力が解除され、実態を取り戻す。

 それは錨、鉛のような質量が無慙へと襲い掛かり海底へ沈ませんと襲いかかる。仮に避けようとも連結する鎖が彼を縛るようにズッケエロはコントロールするだろう。だが……

 

「ふん」

「ッ!?」

 

 その最中、無慙は近くの空き箱を迫る錨へと蹴飛ばした。直撃すれば木屑が舞い、ズッケェロの視界を覆う。

 

「クソが、舐めた真似しやがって……って、あいつは一体どこ……」

「確かにその能力は便利だ。」

 

 無慙を見失ったズッケェロは、動揺して周囲を見渡す。しかし、既に無慙はさっきまでの場所から彼の足元まで迫っていた。木箱と錨がぶつかり、木屑が舞う刹那。その隙を狙って接近を果たしたのだ。

 

「だが、炎を纏ったり鎧で覆うと言った自己防衛は出来ないだろう?こんなふうに間合いを詰められれば出来ることがほぼ無くなる。」

「う、うおぉぉぉぉ!ソフト・マシィィィン!!」

「遅い。」

 

 ズッケェロは動揺しながらスタンドを発現させて迎撃しようとするも、もはや時既に遅し。

 下方から跳ね上がる神剣の剣先が、ズッケェロの首を刎ね飛ばした。首が海面へと沈めばソフト・マシーンも自然消滅し体も崩れ落ちた。

 

「クラフト・ワーク!」

「ヌゥッ!」

 

 直後、帽子の男がズッケェロの遺体の背後から無慙に向けてスタンドによる襲撃をした。

 跳躍し撃ち下ろされるスタンドのパンチ、それをバックステップで無慙は回避する。だが……

 

「取った。」

「ッ!?」

 

 だがその直後、無慙はまるで見えない石に躓いたかのように背中から転げた。すぐさま起きようとするも、なぜか上手くいかない。

 その原因は右脚にあった、まるで神経でも断絶されたかのように足を前後左右に動かすことができない。その様子を見ながら帽子の男……改めてサーレーは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ズッケェロを始末したところ、油断したか?まあ見た感じ、あんたはどうやら殺し合いにおいては場数に長けてるようだからなァ。単なる剣のスタンドを出すだけかと拍子抜けしたが、なかなか機転を効かせたやり方するじゃあねェか。」

「…………」

「だが、この俺のスタンド“クラフト・ワーク”の力を使えばアンタのスタンドは木偶の剣も同然。間合いさえ気を付ければ、俺の髪の毛一本も斬ることすら不可能だ。アンタの戦闘スキルは惜しいが、もうこの場で殺すしかないようだなァ。」

 

 そう、サーレーのスタンドの能力は“触れたものをその場に固定させる能力”である。最初の交戦時、パンチが無慙の右足に僅かに掠ったものの接触に変わり無いためその場への固定を果たすことができたのだ。

 故に起き上がることすら困難、サーレーからすれば安易な接近さえしなければ神剣からの攻撃は当たらないも同然なのである。

 

「……遺産は、遊び目的か?」

「……あん?」

 

 だが、突然の無慙の問いかけにサーレーは眉を顰めた。しかし更に問い詰めるように無慙の言葉の刃が矢継ぎ早に放たれる。

 

「ポルポの敵討ちの様子も見られない、かと言って組織の連中からの指示のような動きも見れない。ならば、独断専行なのが伺える。加えて海の藻屑となったあの屑も同様だろう。察するに、奴の隠し財産で欲望を満たそうとしているのだろう。昇給による優遇待遇、あるいは金を使って女でも囲い酒池肉林に溺れる気か?」

「………」

「何にせよ、誰かのための行動とは思えんな。屑らしい身勝手な形振りだ、社会の塵屑らしい臭すぎて反吐が出るそ。」

「フハ、なんだそりゃ探偵ごっこかよ?えェ?推理ごっこがしたいならあの世でやりな。」

 

 そう言い放ちながらサーレーは、船内にある銛の刃をスタンドで掴み、そうして空中に放り出せば近場へと固定させる。

 そしてその尻部分を指で、まるでボタンでも押すように叩く続けていた。

 

「ちょこっとずつ指で叩くんだぜ、ちょっとずつなんだ……指で小さく連続的に何度も叩くことで、少しずつだが正確にスタンドパワーが銛に溜まっていくからな。大雑把に叩いてはダメなんだ、パワーが分散されるし、狙いもブレてしまう。

面と面を向かい、動き回る通常の戦闘じゃあ使えないが、今のアンタは右足が固定されてるからな。その剣が届かねェこの間合いなら、ばっちし使えるぜェッ!」

 

 自身で申告してる通り、指で叩かれてる銛にかつてないほどのパワーが重鎮されつつあった。

 無慙は右足を動かせないものの、それでも他の体を動かそうとしているのか身を震わせ始めていた。それを見たサーレーは声を荒げる。

 

「動くんじゃあねェぞ!何をしようと無駄だ、アンタの剣の間合いをオレは把握している。こっからの位置じゃあ届かねェし、この一撃を片足だけで避けることもできねェ!アンタはもう終わりなんだよ!」

「…………」

「ズッケェロとは結局のところビジネスパートナー程度の関係だが、それでも他の連中ほど無関心な仲って訳でもなかった。解るか?これでも、アイツを殺されて苛ついてるんだよ。

アンタは言ったな、俺たちはただの遊び目的の屑野郎だって。ああ、その通りだ……だがそれの何が悪い?人間、死ねば無意味な存在なら遊びで充実した生き方をしてなんぼだろう。強いていうなら、俺らはその日暮らしの連中とは違って、本気で凡俗に生きている。」

「……つまり、本気でポルポの遺産を奪おうとしてると言いたいわけか。」

「その通りだ!幹部になれば、受ける待遇も選択の幅も広がる。俺はより高みへと目指すことが出来るんだ!そうすりゃ、ズッケェロだって喜んでくれるはずだ!えぇ、希望とやる気がムンムン湧いてくるじゃあねーかッ!おいッ!」

「………」

「そういうわけだ、情熱を持ってアンタを始末………」

「予言してやるよ、お前は俺に心臓を貫かれて死ぬ。」

「……あァ?」

 

 ついに溜まったパワーを解放しようとした刹那、無慙からの会話名の流れを無視した一言が海上に静寂を齎した。

 受けた側のサーレーも勿論眉を顰め、その意味不明な言葉が脳裏にこびりつく。

 

「何寝ぼけたこと言ってやがる、さっき言ったろうが。アンタの剣の間合いは把握していると。

あぁそれとも、剣から斬撃でも飛ばせるってか?ハッタリはやめろや、それが出来るならズッケェロが錨を投げた時にあんな小細工するまでもなく、斬撃飛ばして殺す方がよっぽど効率的だろうが。」

「ああ、その通りだな。俺は斬撃は飛ばせん、だがそれを踏まえた上でお前の心臓を串刺しにしてやるよ。」

「………無意味な予言だ。」

 

 瞬間、サーレーは銛の固定を解除すれは最大出力で発射された。狙いは無慙の心臓、弾丸のように風穴を胸部に空けるだろう。

 だが……

 

「阿呆が。」

「ッ!」

 

 その最中、無慙はまず右足の前にある床を斬り裂いた。確かに今の右足は床に接着剤がついているかのように固定されているが、床全体が固定化されてるわけではない。ゆえに僅かでも切り口ができれば、ほんの少しでもジャンプ台のようなゆとりが出来る。

 その行動を見てサーレーの顔に驚愕が帯びる。

 

(こいつ、最初からそれを狙って……だが、銛を潜り抜けたところで俺のクラフト・ワークなら多少は剣戟を避けることを……)

 

 サーレーは銛を潜り抜け、本体を狙うことを予測して眼前にスタンドを盾にするかのように出現させる。だが、その予想は外れることとなる。

 

(な、こいつ真正面から打ち砕くつもりか!?)

神剣(クイン)!」

 

 無慙は飛来する銛を回避するつもりはなく、むしろ真正面から刺突で砕かんと腕を伸ばした。

 スタンドという形態になろうとも、戒律は以前継続のまま。第一戒律による殺意の飽和で、銛のパワーをカウンターのような形で返し、上回り、そして砕いた。だがそれで終わりでなく……

 

「このまま、突っ切る気か……オォォォッ!クラフト・ワークゥッ!」

 

 そのまま突進する無慙の刺突、当然クラフト・ワークが拳による回し受けで矛先を逸らそうとする。だが……

 

「さっきまでの俺と思うか?」

「ッ!?」

 

 第二戒律は隙を見極め、或いは作り上げる力だ。床が破壊されてない状態なら、例え無慙が限界まで体を伸ばしてもサーレーのところまでは届かないだろう。ゆえに例えスタンドに刺突を与えたとしても、サーレーの身体までは到達できない。

 だが、今は小さな亀裂とはいえ自由の効くスペースが存在する。それは、ほんの僅か、半歩程度の距離だが……

 

(まずい………まずいまずいまずいまずいこれはぁぁぁ!?)

「言っただろう、お前は俺に心臓を貫かれて死ぬとな。」

「………ゴプッ」

 

 サーレーの空間把握が乱れ、ほんの僅かにクラフト・ワークの速度を上回ったことで受け流されるよりも早くスタンド諸共胸を穿たれた。

 逆流する血流、砕かれた魂。穴という穴から血が溢れてサーレーは床へと倒れ伏せた。それと同時に、目的の地であるカプリ島へと到着し、無慙はその地へと足を着けたのだった。

 

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