マグサリオンの殺戮劇場 大長編   作:ヘル・レーベンシュタイン

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第十九陣 Ⅲ 異聞黄金風殺戮譚

 

 

 サーレーとズッケエロを始末し、海の藻屑にした直後に目的の島へと無慙は到着した。隠し財産の示す場所へと歩みを進めれば、そこは公衆トイレだった。

 誰もいないと悟り、男子トイレの中へと入る。奥から二番目の便器の前へと出れば……

 

神剣(クイン)

 

 神剣を出し、まるで野菜を真っ二つに割るように便器を両断する。するとその中には、宝石類や大量の札束など、誰の目から見ても金品となるものが山ほど詰められていた。

 これがポルポの隠し財産と見て間違いだろう。

 

「君が……ポルポの跡を継ぐものと見ていいかね?」

「………」

 

 直後、男子トイレの入り口から声が聞こえ振り返った。其処には二人の清掃員がいるが、明らかに違う。ポルポと言ったのだから、単なる清掃員な訳がない。

 

「……組織の幹部か。」

「その通り、私はペリーコロ。ポルポの隠し財産を突き止めたものを見定めに、ここにきた。さて、財産はどこかね?」

「………」

 

 ペリーコロの問いかけに、無慙は無言のまま財産のある便器の場所へと指差した。ペリーコロはそのまま財産をカバンに詰め込み、検査器を取り出して一つ一つを鑑定し始める。

 その様子を無慙と、もう一人ペリーコロと一緒に来たものが見守っていた。そのもう一人を、無慙は警戒色を出した色で一瞥する。

 

「ふむ、全て本物だな。さて……ここで提案だが、その前に名前を聞かせてもらえないかな?組織に関わる以上、名前を教えてもらわねばこれ以降のことには関われんな。」

「……無慙だ。」

「ムザンか、ふむ……まるで東洋人みたいな名前だが、まぁよかろう。ではムザンよ、君は見たところ本来は部外者のようだが、どうあれこのポルポの隠し財産まで辿り着けた経緯と結果に敬意を表しよう。そして、この財産を組織に献上することで、ポルポの保有する賭博やホテルの支配者としての権利と我がパッショーネのファミリーの幹部としての座を譲渡しようと思うが、どうかね?」

「……要らん。」

「ッ!?」

「……何だと?ならば、この財産そのものを?」

「いいや、俺は……」

 

 ペリーコロの提案を、無慙は躊躇いもなく拒否した。彼の心情を知る者からすれば当然の返答だが、ペリーコロ側からすれば予想外だった。

 死んだポルポの財産を来た以上、その財産を活用するか、もしくは献上することで幹部としての権利を狙うかのどちらかか考えられる。だが、彼はそのどちらも否定した。ならば何が目的かわからなくなってくるものだ。馬が混沌とした、その時だった。

 

「ちょぉーっと待ったァッ!」

「なッ、何だね君は?」

 

 トイレの入り口から男性の声が聞こえた。三人が声の方へと向くと、そこにはテンガロンハットを被った、カウボーイ風の男が其処にいた。

 彼は少し慌てるような足取りで、無慙の前へと躍り出て声を張る。

 

「おいおい旦那ァ、勝手に行くなと言ったじゃあないか!」

「……貴様。」

「待ちたまえ、君は一体何なんだね?」

「おっと、こいつァ失礼。俺はホル・ホース、こちらの旦那と一緒に行動しているパートナーだ。悪いな……あー、ペリーコロさんよ。この旦那はどうも、特殊な育ちで他人とのやり取りが苦手でよォー、俺がいつも間をとってんだ。」

「……ほぉ、なるほどのォ。」

「というわけで、そちらの財産は受け取ってくだせェ、でもって旦那が幹部になる件については了承します。ただ、俺の方もサポートするということになるんですが、どうですかね?」

「ふむ、少し面食らったが良かろう。組織としては、この金を収めてポルポの後継者としてしっかり継いでくれればそれで良いからな。しっかり彼のサポートをして組織に貢献してくれ、ホルホース君。」

「うっす、了解しましたぜ。」

「……ふん。」

 

 ホルホースの進言に対し、ペリーコロは隠し財産を鞄に納めて了承を答えた。それを見ながら無慙は呆れたように鼻を鳴らす。

 その一方、ホル・ホースは内心酷く動揺していた。

 

(あ、危ねぇ……イタリアに来てみれば何やら隠し財産があるだの聞いて、コイツの後をつけてみればとんでもないことになってやがる!さっき絶対、この二人殺そうとしてただろ!?幹部になりゃ美味い汁吸えるだろうに、何考えてんだよ……まぁ、偶然とはいえ俺が上手く溶け込んだから幸いだし、コイツ強そうだからな。コンビを組めば強い戦力になれるのは間違いねぇ、俺の長年の経験がそう言ってるぜ。)

「そして、君達はポルポのやり残した任務を引き継いでもらう。特に、ボス直々の任務を今より始める。」

 

 ペリーコロがそう言った瞬間、場の空気に緊張が走った。その一方で、もう一人の清掃員の格好をしていたものが、何も言わず女子トイレへと入っていくのをホル・ホースと無慙の瞳に映った。

 表情や口に出さずとも、雰囲気で察した。あれは女だったのだと。そして、ペリーコロが口を再び開ける。

 

「君たちも知ってる通り、ボスは自分の秘密を探られる事を嫌悪している。そして、これは私とポルポだけが共有された事だが、ボスには実は娘がいた。さて、君たちならこれだけで言いたいことが……」

「……あの女の護衛しろということか。」

「そしてボスのいるところまで連れていく、そんなところですかねェ?」

「………頼んだぞ、二人とも。」

 

 無慙とホルホースの返事を聞いたペリーコロは、無言の肯定の意を示してこの場を後にした。

 ペリーコロの姿が見えなくなった直後、無慙は鋭い視線に殺意を乗せながらホル・ホースの方へと向き、同時に神剣を突きつけた。それを前にホルホースは動揺の表情を浮かべる。

 

「な、なんだよ旦那!?いきなりそんな物騒なものを……」

「貴様、よくも余計な茶番に巻き込んでくれたな?殺してやる、逃げようと無駄だ。」

「待て待て待て待て、俺はむしろアンタに協力したつもりだぞ!アソコで無駄な血を流したところで、ボスを炙り出すなんて無理に決まってるだろ!」

「……どういう事だ?」

「ペリーコロも言ってたろう、ボスは自分の素性を明かさないとな。なら、いくら自分の傘下が不審な死をしたところで、自ら出てくることなんてあり得ねェ。それは例えどれほど貴重な幹部だとしてもだ。出てきたところで自分の身が巻き込まれるリスクが絶対にあるからな、だから力尽くでやるのは非効率ってもんだ。大人しく指示に従った方が、接触できる可能性があるだろう。」

「……一理あるな、かと言ってお前と手を組む道理は無いが。」

「……あんたの邪魔をしないと約束するぜ?」

 

 ホル・ホースはそう言いながら、自身の右手から拳銃のスタンド“皇帝(エンペラー)”を出現させた。

 そして、その銃口を無慙の方へと向ける。

 

「アンタも、誰かを殺すなら殺される覚悟はあるよな?まさか自分だけが、一方的に誰かを殺せるなんて都合のいい妄想しちゃいねェよな?」

「………それはお前にも言えるだろう?」

「ヒヒヒ、そりゃそうだ。というわけで…….抜きな、どっちが早いか勝負って奴だぜ。」

「……良いだろう。」

 

 冷徹な殺意を全身から出しながら、宣戦布告をするホル・ホース。それを肯定した無慙、故にいざ勝負……と覚悟を決めたホルホース。

 だが、意外にも無慙は矛先を他所に向け、ホルホースに背を向けながら何処かへと歩こうとしていた。それを見てホルホースはキョトンとする。無慙の顔からは、何処かしら懐かしむと言う、殺意だらけの男からは到底似合わない雰囲気を感じさせている。まるで、ホル・ホースみたいな男を昔見たことある、かのような……

 

「まずはお前を見定めるとする、俺の邪魔をするようならば即殺す。」

「え、あ、あぁ?」

「何を呆けてる、さっさと行くぞ。」

「お、おぉそうだな……」

「ちょっと待ちなさいよ」

 

 無慙の背を追いかけようとした時、公衆トイレから声が聞こえた。二人が視線を向けると、作業員の服から一変して女性らしい服装をしたトリッシュがそこに居た。

 それを見てホル・ホースは、感心したように口笛を吹き、一方で無慙は無感心さを感じさせる冷ややかな視線をしていた。するとトリッシュは一度無慙を見るも、即座にそっぽ向きホル・ホースの方へと向かい、2枚の紙を彼に押し付けた。

 

「お、おいコレは?」

「買い物メモと、隠れ屋とその周辺の場所を記載した地図よ。あとこっちに車あるから、それで移動して。」

「はいよォ、ほら旦那行こうぜ。」

「……チッ」

 

 そう言いながらホル・ホースと無慙は、トリッシュの言った車に乗ってまず地図に記された隠れ家の場所へと移動した。

 そしてトリッシュを部屋に入れれば、次に買い物へと向かうのだが……

 

「おい旦那、だから一緒に買い物に行ってくれって!」

「断る、なんで俺がそんな無駄なことをしないといけない。お前が一人で行け。」

「お、俺は誰かと組むことで本領を発揮するんだよ。だから、旦那が乗ってくれれば千人力だと……」

「………………」

 

 すると無慙は、渋々と車に乗りホル・ホースが運転することとなった。そして目的の場所へと着くと………

 

「よし到着だ、行こうぜ旦那。」

「お前だけで行け。」

「は?いやだから、さっきも言ったように……」

「買い物なんて無駄な行為を、俺にやらせる気か?二度は言わん、さっさと行け。」

「はい。」

 

 剣を突きつけ、殺意の帯びた威圧感を出しながら言われるとホル・ホースは即座に踵を返して買い物へと向かった。流石の彼も、本気で今すぐ殺されそうになれば従わずには居られないのだろう。

 そして数分後、ホル・ホースが買い物袋を持ちながら戻ってくる姿が見えてきた。

 

「フィー……ようやく終わったぜ。たく、あの子の注文は無茶が多くて大変だったぜ。」

「……御託はいいからさっさと戻るぞ。」

「ヘイヘイ、パートナー使いの荒い相方を持って苦労するぜ………」

 

 そう呆れた声を出しながら、ホル・ホースは車のドアへと手掛けようとした。その時だった、無慙の背後から見慣れないスタンドの長い鉤爪が襲いかかってくる姿を。

 

「なッ、危ねえ旦那ァッ!」

「リトルフィートォッ!」

「……」

 

 ホル・ホースが皇帝を出すよりも早く、無慙は振り返りと同時に神剣を出しながら鉤爪へと横薙ぎの一閃を放ち込んだ。

 

「グオォッ!く、そ……しょうがねェなァッ〜………たく、とんでもねぇパワーを出しやがってよォ〜……」

「こ、こいつ……車体の後ろに紛れ込んでたのかよ。しかし一体、どうやって……」

 

 すると鉤爪のスタンドと、その本体と思われる男性が車の後ろから飛び出てきた。スタンドのダメージも本体にフィードバックするタイプのようだ。

 男の名前はホルマジオ、、彼はこの直後に不敵な顔を浮かべていた。

 

「へ、だがよォ。この俺の“リトルフィート”の攻撃に触れた時点でお前の負けだぜ?なァ、新入りの兄ちゃんよォ〜。」

「……なんだと?」

「お、おい無慙の旦那……」

 

 その異変に気付いたのはホル・ホースが先だった、何故なら彼から見ても高身長の無慙の身体が中学生ほどに背が低くなっているのだ。

 しかもそれは数センチ程度ではなく、自覚が経つにつれてどんどん低くなっているのだから。そして……

 

「なるほど、無慙ねぇ。ソイツがポルポをやったわけか。だが、こうなっちまえば無力だ。よなァッ!?」

「む、無慙の旦那ァッ!」

 

 無慙の大きさがホル・ホースの腰部分よりも小さくなり、最早手持ちの人形サイズ程になったと確信すれば、ホルマジオは無慙をそのまま踏みつけんと踵落としの如く脚を振り下ろした。

 まるでカエルを踏みつけるかのような光景に、ホルホースは戦慄する。

 

(こ、こいつ……スタンドで接触したやつを小さくする力なのか!こりゃマズイ、無慙の旦那もコレで終わりか…‥俺一人でこんな奴とやらないといけないのかよォ!?)

「加えてボスの娘もいると、こりゃ俺たちにも良い風が吹きつつあるぜ。だったらよォ、しょうがねェなァ〜。」

「く、クソォ……」

「へ、アンタもやる気か………ん、なんだ?」

「阿呆が。」

 

 やむを得ない、そう覚悟を決めてホル・ホースは掌から皇帝を出して構える。だが、その直後にホルマジオは足元から違和感を得る。

 直後に二人に聞こえた声は、無慙からのものだった。彼はまだ戦闘不能(リタイア)になってない、それどころか次第にホルマジオの足を持ち上げていた。そして大きく腕を薙ぎ払えば、信じられないことに小さな無慙がホルマジオを弾け飛ばしてしまったのだ。

 

「ヌオォォォ!!」

「にゃ、にゃにィィイイッ!?」

 

 驚愕、呆然とした声が二人には帯びていた。その光景はまさに古代においてダビデがやったジャイアントキリングの如く。近くの住宅の壁面すら破壊する勢いなのだから、普通の人間基準で見てるホル・ホースからすれば出鱈目な威力であることが窺える。

 しかし、その程度造作もないと言わんばかりの声がホル・ホースに届く。

 

「おい、ホル・ホース。せっかくの機会だ、この屑を殺す為に俺の役に立て。」

「へ、や、役に立てだァ?」

「そうだ、俺と共に行動するならば最低限貢献はしろ。無論、足を引っ張るようならば殺す、そのくらいは覚悟しろよ。」

「……へッ、アイアイサー!」

 

 ホル・ホースが返事をすれば、無慙はその小さな姿を敢えて活かすかのように何処かへと姿を隠した。




すみません、時期もあってホルマジオ戦は一話内に収められませんでした………
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