『狭間の地?』
「ええ、ここは黄金樹に祝福された土地、女王マリカによって統治された地です。」
「貴方は・・この前の褪せ人とは違う。見たところエルフのようですね。それもただのエルフではない。」
『・・・・・。』
「・・・そう警戒なさらないで。あなたも祝福に導かれてこの地に来たのでしょう。それも意図せずにね。」
『・・・・・・。』
「ええ、分かりますよ。そうでしょうとも・・。」
「ですが、希望があります。この私、ヴァレーに出会えたことです。」
『・・・・・。』
「貴方が手にしている祝福の記憶が、その灯から光の筋が生じ、それは導き、進むべき道なのです。」
「・・ええ、そうですとも。導きが教えてくれるのです。何故貴方がここへ来てしまったのか。」
「貴方が、どこに向かうべきなのか・・何故この地へ来てしまったのか・・きっと、導きは指し示すと思います。」
「向かってください、貴方。あの褪せ人と同じように・・・。」
「導きの指し示す先へ・・そしてエルデンリングを求めるのです。そうすれば自ずとわかるでしょう。」
『・・・・・。』
正直、あの仮面男の話を聞いても全く理解が追いつかない。祝福?導き?エルデンリング ?聞きたいことは山ほどある。だがヴァレーと名乗る男は信用できない。これ以上話を聞かず、その場を後にした。
そう、昨日のことだ。
魔王を倒し、ヒルメンたちと別れ、一人で魔導書を集める旅をしていた。
数年経っただろうか。
それは冷たい夜のこと。
一寸先も見えない濃い霧が立ち込める森を歩いていた。
アオーン
狼だろうか?
ナニかの遠吠えが遠くから聞こえる。
どういうわけかその遠吠えの聞こえる方角へ歩み続ける。
遠吠えは誰かを呼んでいるような、助けを求めているような・・。
「ここは・・・。」
霧が明け、目の前には廃墟の教会が見えた。
敷地内に入ると、もうずいぶん前から使われていない状態だった。苔が生え、崩れ落ち、原型をほとんど失った椅子や机、辛うじて教会だったと分かる状態だ。祭壇らしき場所には両手を広げた女性の石像。これだけは妙に綺麗だった。ヒビもなく苔も生えていない。
だがなにより不可解なものがある。
教会の中央にある小さな金の灯。
光が宙に浮いてゆらゆらと揺れている。今まで見た事がない。どんな魔法だ?そもそも魔法なのか?
この光に興味を唆られ、近づいてみた。
「・・・・何・・これ?」
特殊な魔力も何も感じない光。
その光は弱く、だが黄金に輝く。
手で触れようとした瞬間、視界が光に包まれる。
光が明け、突如目の前に広がったのがこの狭間の地、巨大な黄金の樹木だったのだ。
「ここは・・どこ?」
そして誰かのささやき声が確かに聞こえた。
エルデンリングに見えよ
to stand before the Elden Ring.
そして、エルデの王になるがよい
And become the Elden Lord.
「・・・王?」
一章 狭間の地
あれから数日たった。
この地を探索し、私が居た地とは全くもって違う異世界であるという事がわかった。
見たこともない虫や動物や植物。こんな場所は全く知らない。どの本などにも書かれていない。
さらに、ここの住人は会話どころか近づくだけで平気で手に持つ武器で殴りかかってくる。死人ような人間がふらふらと徘徊し、不衛生な獣人や馬に乗ったデカイ騎士も容赦無く襲い掛かる。とりあえずゾルドラークを放っておけばなんとかはなる。だが全く効いている気配のない怪物や騎士のような奴もいる。あのバカでかい熊はなんだ??
頭蓋骨はそこらに散らばり、死体も平気で道端に転がっている。巨人を連れた馬車も、貼り付けにされている死体もある。ていうかものすごく叫んでいる。なんだここは、どうすればいいのだ・・・。
最初に出会ったヴァレーがまともな人間であったという事実を理解し、彼がいた場所に戻ってみればすでに姿はなく、もっと色々聞けばよかったと後悔しながら途方に暮れる。
さて私は現在近くの教会の祝福とやらの前で体操座りしているわけだ。あれこれと考えて状況を整理し、冷静になる時間が必要だとね。
ここが知らない別の大地であることを嫌でも思い知らされた。今までヒルメン達と巡ったどの場所ともかけ離れた大地。全くの未知だ。今のこの場所、狭間の地に関して圧倒的に分からない。エルフとして長い時で培った知識や常識が、ここ数日で全く通じないことは身にしみて感じた。殺意を向けるこの地の住民や生き物たちに恐怖すらも感じた。今でこそゾルドラークで戦闘を切り抜けはしているが、全く効果のない敵もいた。この地の攻撃魔法を知らなくてはならない。いつまでもここにいる訳にはいかない。だがこれからどこへ向かえばいいのか、そこは手探りで行くしかない。それに、魔族とは違うがだがそれと同等の気配を遠くで感じる。
別に今すぐ帰らないといけない理由はないのだ。それに実は存外にワクワクしている自分がいた。全く知らないこの地ではこの地でしかお目にかかれない魔法や珍しい魔導書があるのは間違いない、そうであれば是非とも学び、読んでみたい。そうだ、魔導書探しに専念しよう!
もはや現実逃避に近い考えを抱くのにそう時間はかからなかった。
「よし、とりあえずあの丘の上のデカイ城に行ってみるか。」
気を取り直し、魔導書探しの旅をここ、狭間の地で再開したのであった。