純愛のワルキューレ   作:筆先文十郎

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愛気づかぬ武神の最期

「俺が……負ける……?」

 インフィニットジャスティスガンダム弐式の頭部センサーのビームブレードによって機体を両断されたシュラは自分に起きた現実に納得することが出来なかった。

(ちゃんとした戦いであれば……相手が卑怯な手を使わなければ……)

 戦闘能力、機体性能……全てにおいてアスラン・ザラを超えた自分が負けるはずがなかった。

(俺はこんなところで負けるわけにはいかないのだ!)

 勝つこと、自分こそが最強だと証明することが創造主(アウラ)から与えられた使命。それが存在意義だとシュラは思い返す。

(そうだ! こんなところで負ける訳にはいかないのだ! そう、あの女を利用してまで……ッ!?)

 アグネスのことを考えた瞬間、シュラは心が締め付けられる感覚に不快感を示す。

(まただ! なぜあの女のことを考えると、心が痛むのだ!?)

 

 アグネス・ギーベンラート

 

『月光のワルキューレ』の異名を持つほど強く美しい女性だと聞いていた。しかしそれ以上の興味を彼は抱かなかった。

 シュラにとって強さこそが全てだったからだ。

 実際ファウンデーション王国で初めて見た時も「噂通り綺麗な女だな」という程度だった。

 その程度だった彼女の評価が変わったのは港で彷徨(さまよ)っていたアグネスを見つけた時だった。

 

『ねぇ……私、綺麗じゃない? 魅力ない?』

 

 そう言って泣きながら自身に(すが)りつくアグネスをシュラは思わず抱きしめた。

 

 誰かが守ってやらねば砕け、壊れてなくなってしまう……

 

 そう思わずにはいられなかった。そんな今にも消えてしまいそうなアグネスにシュラは思わず返した。

 

『きみは美しい。月光のワルキューレ』

 

 自信を無くす彼女の言葉をすぐに否定しなければならない。

 思わず出てしまった言葉にシュラは「まるでキザな詐欺師のようだ」と心の中で苦笑した。

 それからアグネスのことを考えると胸が苦しくなった。なぜ苦しむのか原因を探るが、どれだけ考えてもその答えは見つからなかった。

 その苦しみはキラ・ヤマトを殺すなど今後の作戦が頭を占めることによって自然と収まった。

 ふと思い出す。アスランの駆るズゴックの攻撃で戦線から離脱できなくなったアグネスを見て『来るかい?』と言った自分を。

 見捨てることは出来た。しかし出来なかった。

 

 失いたくない。あの強く、そして光り輝くガラスのように美しく、今にも砕け散りそうな(はかな)げな彼女を。

 

 その想いをいないよりはマシという合理性で塗りつぶして。

(なぜだ? なぜ俺はあの女のことを考える? 俺にとってあの女は都合がいい(こま)。それ以上でもそれ以下でもない。そうだったはず!)

 戦いよりもアグネスの事を考える自分に怒りを覚え、そう思い込んで切り捨てようとする。しかし

 

(アグネス……もう一度会いたい。言葉を交わしたい……あのぬくもりをもう一度感じたい!)

 

 心が苦しくなる。目から流れる涙を止めることが出来ない。もう会えないと思っただけで恐怖で身体が動かなくなる。

 

「アグネス。俺は──」

 

 それが愛と気づかぬまま。ファウンデーションの武神、シュラ・サーペンタインは機体の爆発に飲み込まれて逝った。




小説を読む限りだとシュラはアグネスに利用価値があると思っただけで愛してはいないのかな?と思いました。
しかしそれじゃあアグネスがかわいそうな気がしたのでこんな小説を書きました。

アグネスとシュラが結ばれてほしいと思っている方の心を打つことが出来たら幸いです。
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