めだかボックスガールズ inブルーアーカイブ 作:普通な一般モブ生徒A
学園都市キヴォトスに数多くある学園の1つ、ミレニアムサイエンススクール、通称『ミレニアム学園』。このキヴォトスにおいては科学技術に力を入れている、『最先端』『最新鋭』と呼称される有名校にまた1人、正確には1体が訪れようとしていた。
「ここがあのミレニアム学園ですか。本日は観察させていただきます。」
学校であるからには避けられない数ある行事の中、その中の1つが始まった。キヴォトスの外の学校であればほとんどの在校生には「あーそんな時期か」とぐらいしか印象も関心も無い、大人達がいろいろ忙しそうにしているイメージのある行事。
そう、中等部卒業予定の生徒達による体験入学である。
ここは学園の運営を生徒達自らが行うキヴォトスである。つまり、大人達がいない分この時期の生徒達はあちこち忙しくかけまわっているのだ。
とはいえ、キヴォトスにおいてはほとんどの学園の授業は
で、実際に部活として活動しているゲーム開発部はというと、
「見なさい!この密かに練習してた超高難易度コンボ!!どうよ、ユズ。女王の名を譲る時が来たんじゃない!?」
普段通りの活動をしていた。どうやら「スチューデントファイターズ2」をプレイしているようで格闘ゲームが苦手な筈のモモイがトップランカーであるユズに対して優勢となっていた。
「そんな、あのお姉ちゃんが...」
「モモイがあのユズに勝つというのですか!?」
予想外の展開に観戦していたミドリとアリスが驚きの声を上げていた。しかし、優勢だった時間はごく僅かな時間だった。
「あっ、このっ!これが当たれば。...まだ必殺技が残ってい...る...。」
画面には『UZQueen win!』の文字が出ていた。あれから1発も攻撃を当てる事ができずに負けてしまったのだ。
「負けたー!なんでー?!」
コントローラーを持ったまま前に倒れ込んで足をバタバタさせていた。
「格ゲーはコンボが上手くても、勝てないよ。駆け引きの方が、重要なの。そ、それにモモイは、新しく覚えたものを、すぐ使おうとして、動きが読みやすい」
「く、くやしいぃー!」
「お、お姉ちゃん、また練習付き合うから」
部活とは別に姉妹で密かにゲームをしているようだ。流石ゲーム好きである。
「!パーティメンバーの強化は必要な事なのです!」
「アリスも付き合って!目指すは打倒ユズ!」「新しいクエストの依頼ですね!わかりました!」
本当に普段通りの日常を過ごしていた。そこにある人物が訪れようとしていた。
不意にガラララと扉を開ける音が聞こえた。そこにはミレニアム学園の生徒会『セミナー』の会計担当でゲーム開発部の実質的な目付け役、早瀬ユウカが立っていた。青筋を立てて。
「ユウカ!どうかしましたか?」
「どうかしましたじゃないわよ...。念の為様子を見に来て良かったわ。あなた達...今日が何の日かはわかってるのよね、それで、あなた達は何をしているのかしら...?」
ユウカは体験入学の日、つまり中等部の生徒達がいつこの部室に来てもおかしくない状況で、彼女達部員は仲良くゲームに励んでいて、それに怒っているようだ。
「わ、私は一度言ったんですけど、お姉ちゃんが大丈夫だって」
「ユウカ!そ、そう!ちゃんとこうしてる理由もあるのよ!」
「ほう?一応聞いてあげるわモモイ、言ってみなさい?」
「ゲームを作っている所を見ても面白いところなんてわからないだろうし、どうせならまずはレトロなゲームのやっている所を見せて面白さを伝えようかなって。そ、それに、どうせ人気のところにしか行かないだろうし来ないかなーって。」
「最後のが本音じゃない!モ〜モ〜イ〜!」
モモイがそれっぽい理由を上げたが、つまりのところ妹も言いくるめた、サボりである。ボロを出してしまい、ユウカ、更にキレた。モモイもいつものように逃げようとしたが、部室の入り口を本人に塞がれているため、着実に追い込まれていた。
そして部屋の角にまで追い込まれようとしていた
「た、助けて...みんな...」
他の3人は既に慣れている事で心の中で哀れモモイと思い手を合わせていた。しかし今日はいつもと違い救いがあった。
「ゆ、ユウカ!後ろ後ろ!誰か来たよ!」
「そんな咄嗟の嘘に私が騙されると思ったら...」
「新しい訪問者なのです!新イベントの予感です!」
「嘘っ、本当なの?!」
背後でガタッっと音を立ててロッカーに逃げ込む音と、誰でも嘘だと思うような発言だったが冗談も言わないアリスの発言を聞き、そこで本当だと思い入り口の方を振り返った。そこには実際に誰かが立っていた。
「ご、ごめんなさいね、変なところ見せちゃって。えっと、体験の人...であってるわよね?」
ユウカが訝しみながら聞いたのは当人の容姿がキヴォトスにおいても珍しいものだったからだ。制服こそ普通だが、頭部以外の露出している腕や脚は人のものには見えず、明らかに機械的なものだった。顔の左右にはもみあげから上をセンサーのようなものがついたパーツが付いていた。しかも生徒にはあるはずのヘイローが彼女には存在していなかった。
「ウィ。私は聖カーゴ女学院三年、
あってはいたが人ではなくアンドロイドだった。似たような存在であるアリスが身近にいるがほとんど人そのものだったため、ゲーム好きな彼女達は突然現れたそれに興奮し駆け寄って行った。
「アンドロイド?!それってロボットって事!?」
「ウィ。機械的に言えばそうです。取り扱い説明書がありますのでご一読お願いします」
「説明書あるの!?」
「すごいよお姉ちゃん、ちゃんとメカだよ!」
説明書を手渡され、それに書かれている彼女に内蔵されている機能に驚きと興奮を抑えられずにいた。そこには膨大なデータバンクに演算能力、高度のセンサーに飛行能力。魅力的なものばかりだった。たまたま立ち会う事になったユウカもまたミレニアムの生徒であるため、興味を隠しきれず、感嘆の声を上げた。
「こんなの作れる人いるのねぇ。実はウチのエンジニア部あたりの開発されてたりしない?」
「ノン。機械的に補足しますと、当機は御舟製作所で制作された試作機23号『ホープ』です」
「大人達ってやっぱりすごいのねぇ。それに比べてあのバカ達は...」
ユウカは一度身近な大人である先生を思い浮かべた。そして部費という金銭的な縛りを持たないとはいえ作れるものなのかと思い、同時によく知るエンジニア部やヴェリタスの少女達が際限なく自由に物作り出したらと思うと寒気を覚え、考えるのをやめた。
「水晶!アリスは空を飛んでみたいです!」
「あっ!私も私も!」
「あんた達ねぇ...。彼女が今日何しに来たのかわかってるわけ?」
「ノン。問題ありません。機械的に言うと当機は皆を笑顔にするために作られましたので。それにここに寄ったのは大きな声が聞こえたからですので」
「そ、そう。まぁ、希望が丘さんが言うならいいんじゃない?」
ユウカは扉を閉めていなかったとはいえ、自分達のやりとりが校舎に響き渡っていたと言われ恥ずかしそうにしたが。切り替えて本人(?)が言うならいいかと丸投げしようとした。
今にも外に行こうとばかりの雰囲気の中いつのまにかロッカーの扉が開いていて、ユズが顔を覗かせていた。
「あ、あの、私も...」
「ユズ!早く行きましょう!」
「!私も行っても、いい?希望が丘、さん」
「ウィ。もちろんです」
「ユズもロボットの誘惑には勝てなかったみたいね」
「パンパカパーン!パーティにアンドロイドが加わりました!」
そしてアリスが水晶の手を取り連れ出して行こうとした時、ミドリがふと何かを思いついたようで、足を止めた。それに気づき少し遅れて足を止める一同。
「ミドリ?どうしたの?」
「別に外に行かなくてもいいんじゃないかなって」
「ちょっ。まさかこの学校内で済ませようって事じゃないわよね!?流石に見過ごせないわよ?!」
学校内で希望が丘に飛ばせようと言わんばかりの言葉に流石に無視できず止めに入るユウカ。しかし、思いがけない所からフォローが入った。
「ノン。機械的に訂正するとミレニアムサイエンススクールの校則に空を飛んではいけないというものはありません」
「へー、そうなんだ」
「ま、まぁ。そんなもの想定されてないもの。これから追加される可能性はあるけど。だからって校則に無いならなんでもしていいってわけじゃないのよ?」
「ウィ。この周囲には他の生徒の方たちの作品がありますので、安全な場所で行いますので安心してください」
ドローンなどを飛ばす事には校則で規制されていたが、生徒本人が飛んではいけないというものは流石になかったようだ。アンドロイドに思っていたよりもモラルがあって安心したユウカ。そしてゲーム開発部の彼女達よりもモラルがあるのではないかと思った。
「ならさっさと行ってきなさい。はやくしないと日が暮れてしまうわよ」
「!速く行きましょう!タイムリミットが迫っています!」
「ちょ、アリス速いよー!」
急いで走り去って行く開発部たちの後ろ姿をユウカは見届けていた。そして見えなくなると扉が開きっぱなしになっている彼女達の部室に戻った。部屋は先程まで遊んでいてコントローラーなどが散らかっていた。
「はぁ、まったくあの子達は...」
ユウカは愚痴のような言葉を吐きながらコントローラーを手に取り片付けを始めた。なんだかんだで甘いユウカであった。