突然だが転生した世界が『対魔忍』だと知った時、皆さんはどう思われるだろう?? 男は殺され、美少女なら感度3000倍の奴隷娼婦…。
全力で逃げ出す? 意地でもニート? 自らの境遇に諦めて流される? いつ、ドコで、誰が敵になるのか分からず、常に不安とプレッシャーで押し潰されそうな日々…。
今の私がまさにソレだ。 チートは無く、強靭な身体能力も無く、実験は失敗続きで学会からも干されている科学者(36歳・独身)だ。
前世と同じく容姿に恵まれず、誰にも相手にされず。 こんな骨と皮しか無い、痩せこけたDTオッサンなんて見向きもされないだろう…。
……生きてきた証があるとすれば大量に積み上げられた資料と機材、それすら他人が見ればゴミの山だろう…。 だが私にとっては宝物だ。
前世同様、生まれて来た意味があるのか分からない人生だったが私だって科学者の端くれだ……、『結果』を残したい。
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「ごめんくださ〜い…!」
俺の名前は秋山達郎、五車学園に通う1年生だ。 今日はとある人物を保護するよう依頼を受けて来たんだけど……。
「ごめんくださ〜い! ご連絡させて頂きました秋山です。……留守かなぁ??」
インターホンを鳴らしているけど反応が全く無い。 指定された場所は間違っていないけど人の気配は感じられない。 相手は裏社会とは何の関係も無い人だから無茶なやり方は出来ないしなぁ………。
「う〜ん……。 1度連絡を入れ直した方が「ようこs」おわあああああああッ!!!!!?」
な、なななな………何この人ッ??! 顔色が悪いなんてレベルじゃないよ!? 土の色だよ、命が終わる瞬間の色だよ! 本当に顔写真合ってる!? 詐欺じゃないよねえ?!
「ははっ…。 本当だったら掃除くらいは……ゲフッ!!」
しかも吐血したよ!! 救急車だと間に合わない、なるべく負担を与えず、急いで病院へ連れて行かないと!!
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sideオリ主
「う〜……ん こ、ここは誰?? 私はポメラニアン??」
「目が醒めたんですね?! 良かった……、ちょっと日本語壊れてるけどご無事で何よりです!!」
視界が開けてくるとリンゴの皮を剥いていた青髪の少年が声をかけてきた。 確か今日は何年ぶりになるか分からない来客の予定があったはずだが…??
「き、君は……??」
「ご連絡させて頂いた秋山達郎です。 吐血して倒れてしまったのでコチラの病院へ搬送させて頂いたのですが……3週間も寝たきりだったので心配でした…。」
さ、3週間! そんなに眠っていたのか……、せっかく来てくれたのに悪い事をしてしまったなぁ。
「お医者さんの話では極度の過労と栄養失調、睡眠不足が原因のようですが体調は順調に回復されており、顔色も大分良くなっています。
……では改めまして物部研究所の物部博士ですね?」
「あ、うん。 博士……なんて呼べるのか分からないけど私が物部だよ?」
言われてみれば最近は寝食の時間が勿体無くって部屋に閉じこもりっきりだったからなぁ。 もう少しで形になるかもしれないと思うとつい徹夜してしまう前世からの悪癖が祟ったか。
「僕は博士の身柄を保護するよう依頼を受けて来ました。 博士の研究が米連や中華に目を付けられ誘拐を始め、命の危険性が出てきました。」
「わ、私の研究が?! 命を狙われるような代物を作った覚えは無いけど……」
「お金や兵器に掛けては敏感な人達ですから……、なので博士には僕達の手が届きやすい場所に避難して欲しくて…。」
今更かもしれないが……この子が秋山達郎君か。 賛否分かれて言われている子だけど? 話を聞いている分には私よりかはちゃんとしているようにも見える…。
それにしても米連と中華か……。 魔族の次くらいに関わりたく無い名前が出て来たもんだ。
「私の研究のドコに興味を引いたのかはサッパリだけど……まだ解析したいテーマが沢山あるのも確かだ…。 ご迷惑かもしれないが、暫くご厄介させてもらおうかな?」
「本当ですかッ?!」
対魔忍も数多くの問題を抱えているのは間違いない。 けど銃器1つ扱えない私では自衛なんて夢のまた夢…。出落ちで56されるのが関の山だ、それだったら対魔忍さんの近くに居た方がマシかもしれない…。
「では退院でき次第、出発しましょう。 物部さんの警護や細かい事は僕がやっておきますので安静に過ごして下さい。」
幼さは残るけど相手を不快な気持ちにさせない笑い方だなぁ…。 コレでNTRと言うか……不幸体質じゃなければ正統派になれたんじゃないかな?
何はともあれ私にとって秋山君は命の恩人である事実に変わりはない。 せっかく拾った命だ、秋山君が少しでもハッピーエンドを迎える為に使ってみるのも良いかもしれない。
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………………
………
「博士ッ! 研究が完成したって本当ですか!!?」
「いらっしゃい達郎君…。 完成と言っても形にしただけだよ、これからテストしないとね…。」
五車町へと引っ越してそろそろ3ヶ月、達郎君とは随分と親しくなった。 最初は戸惑ったけど彼の人柄に助けられ、何とか人付き合い出来ている……と思いたい(目逸らし)
「確か前回は『完全養殖のクローンウナギ』……でしたっけ? 空を飛ぶウナギなんて初めて見ましたよ。」
「いやぁ…その説はお恥ずかしい。 あの時はアサギ校長の目が変わっていましたねぇ…。」
確かニホンウナギの相場を口走ってしまった瞬間アサギ校長を含め、全員が空を泳ぐ大量のウナギ目掛けて一直線……。 容赦の無い乱獲&乱闘騒ぎになってしまった。
「……それで今回はどんなテーマなんです? 博士がやりたい研究って凄く多かった気がします。」
「そうだねぇ…。 やりたい研究は沢山あるけど時間は限られている。 きっと全ての研究を終える前に、私の寿命が尽きてしまう……のかな。
……話が逸れたね、今回の実験は達郎君に協力して欲しいテーマなんだ。」
「僕の協力………ですか??」
頭の上に『?』を浮かべながら首を傾げる達郎君に相槌を打ちながら説明する、今回のテーマは『対魔粒子』についてだ。
「達郎君も知っての通り、対魔忍にとって対魔粒子は密接な関係となる存在だ。 ……だが対魔粒子の内包量は個人によって差が大きく異なり、忍術と同じく『才能』によって決まるケースが多い。
そして現在、莫大な対魔粒子を内包しているのは多くが女性…。 具体的には井河アサギ校長や水城ゆきかぜ君等が該当する。
つまり何らかの方法で内包する対魔粒子を増加させる事が出来れば対魔忍の戦力アップに繋がると私は考えている。」
「それは…そうですが……。」
理解は示してくれるものの達郎君の反応はイマイチだ。 大切な家族や幼馴染を守りたい……でもその力を手に入れる術が無い。 努力を重ねても差は開く一方で実の姉と幼馴染は次世代のエースだと期待され、称賛されているのに……。
………いつだったか話してくれた。 自慢の家族と幼馴染を話す達郎君の目はドコか虚しさと言うべきか『いつか自分を置いて遠い所へ行ってしまうんじゃないか?』と疑問を投げかけていた。
「達郎君、私はね……。 夢を諦めて欲しくは無いんだ。」
「夢、ですか…??」
大切な人を守りたい…、良いじゃないか。 1人で思い悩む必要なんか無い、その為の私達だ。 出来なかった事を出来るようにする為に昼夜奔走し、見つけ出し、形にして送り出して行くのが私達『学者』だ。
「私は達郎君の夢を応援したい。 達郎君が2人を守りたいと願うなら私は手段を探し続けるし、その為の努力は怠らない。
けど対魔粒子を持たない私では実験すら出来ない。 だから君の夢を叶える為に、君の力を貸して欲しい」
一通り説明が終わった所で頭を下げる。 私に出来る事なんてこの程度だ。
「もちろん成功する保証は無いから無理にとは言わない。 返事は後日でm「やります。」
…………え?」
人体実験なんて断られるだろうと思っていたが意外な即答に顔をあげると達郎君と目が合う、その目は真っ直ぐに私を捉えている。
「ずっと分かっているつもりでした。 僕が幾ら頑張っても2人には追いつけない、足手まといにしかならないって……。
でも本当は……ずっと姉さんや、ゆきかぜの隣に立ちたかった。 僕だって戦える! 強くなりたい!! 『3人』で肩を並べて、一緒に歩いて行きたい!! その為ならやります!」
普段の達郎君からは想像も付かないくらい言葉に熱が籠もっている。 コレが達郎君自身の、紛れもない本心なのだろう。
「………ありがとう。」
真っ直ぐな瞳に惹かれると同時に思う。 私は子供を死地へ送り出し、守ってもらうような………『最低な大人』だったのかと。
「…『コレ』が対魔粒子を増幅させる装備、ですか?」
「厳密に言えば対魔粒子を『集める』装備だね。 空中に漂う対魔粒子を自動で保管して、着用者に還元する事が出来る。」
見た目は黒いラバースーツ。 使用するのが対魔忍なら隠密性も必須なんじゃないかと思っていたけど?? 達郎君の首から下が見事に黒一色になってしまった。
「んっ…! ちょっとキツい……かもです。」
「あ〜…うん、ゴメンね?? サイズまでは思考に入れていなかったものだから……」
「い、いえ…! 少し息苦しいだけなので大丈夫です。」
早速テスト現場で風遁を使ってもらいデータを取り始める。達郎君には性能以上に着用者の安全が最優先なので異常が見られた場合は即座に中止する事も伝えている。
「……す、凄い。 風遁を何度でも撃てる……対魔粒子を使うと、使った分だけ補充されているのかな??」
今の所は好調。 達郎君の脈が若干上昇しているのが気になるけど……システムに影響は無し、ナノマシンに異常も見られない。
「それに体も軽くなって以前より速く動けている!! 博士ッ! これって成功しtーー………
………あ、あれ?? ちょっと声が高くなっているよう…、なああああああぁ!!?」
「……? 達郎君、どうかしたのkーー…!!?」
2人揃ってまさにザ・ワールドな状態。 ワナワナ震える達郎君の視線の先にあるモノ……。 その正体は……
「なっ! なっ、なっ、なぁ…!! ななななな何で僕の胸が膨らんで??! 僕はオトkーー……!!」
達郎君の胸部は大きく膨らんでいた。 い、いや胸部だけでは無い! 肩は丸みを帯び、腰は括れ……達郎君の体付きはまさに女性そのもの!?
ま、まさか着用者に対魔粒子の供給を行うナノマシンがより効率良く供給する為に達郎君の体を作り変えたとか??!
い、いや私のナノマシンにそんな機能はーー…!!
「博士えええええぇぇええ!!! これって、どういう事ですかああああああ!!!!」(ガチ泣き)
「だ、大丈夫だよ!! 一時的な副作用だと思われるがテストは中止だ! 達郎君、直ぐに検査を!!」
「やっほー! 達郎っ、博士ー! 遊びに来たよ、晩御飯まだでしょ?? 良かったらウチで……」(石化)
最悪のタイミングで入って来てしまったのは達郎君の彼女こと水城ゆきかぜ君。 端から見れば私は達郎君(同性)の肩を抱きしめている構図に…………?
「嫌あああああぁぁァァ!!! 私の………、『私の』達郎があああああああぁ!!!!」
「ま、待ってくれ水城君! ごっ、誤解だ!!? まずは落ち着いて話をーー…!!!!?」
何とか事態を収めようとしたが間に合わず、銃を取り出した水城君の手によって私は研究所諸共吹き飛ばされてしまった。
ま、マズいな…。 達郎君の検査が終わっていな………ゴフッ!!(気絶)