今回は人生初の戦闘シーンです、ちゃんと戦闘描写を書けてると良いなあ(遠い目)
side 達郎
泣きじゃくりながら暴れるゆきかぜを何とか宥めて、自宅に戻ったが僕の体は未だに女の子のままだ。あとゴムの匂いが凄い、自分の手を嗅いでみたけど強烈な匂いに少しだけ頭がクラっとしてしまった…。
そして今は姉さんに事情を説明している。普段はどんなに不利な状況でも毅然としている姉さんだが今回はどう反応すれば良いのか分からず眉間に皺を寄せている…。
「それで達郎。 今回は災難だったが、その………暫くは『その姿』なのか?」
「う、うん…。 博士が居ればちゃんと対応してくれたと思うけど……あの人また入院生活だし。」
「そ、そうか……。」
黒い光沢を放ち、ぴっちりと締め付けてくるスーツは体のラインを嫌でも強調してくる。 自分で脱ごうにも肌と一体化しているかのように張り付いており指一本入り込めない、手首と足首、首元に銀色の光を放つ計測器(リング型)も付いたままだ…。
長期の任務にも対応出来るよう設計されており、スーツの内側は常に清潔に保たれるみたいだけど……博士が退院出来るまで『この格好』で過ごすとなると今後の日常生活に支障が出てくるかもしれない…。
何より性別が変わった状態で登校すればクラスが混乱しかねない、なので学園には説明だけ行って今後の対応を検討してもらおうと思ったんだけど……?
「それで学園に連絡を入れたら……『コレ』が送られて来たのか??」
「あははっ…………本当に、何でこうなったのやら??」
僕としては男に戻るまでの間、授業はリモートにしてもらえると有り難い……なんて下心はあったけど?? 返って来たのは『女子用』の制服だった。
宛先の名前は僕。 何度も確認したけど僕だった。 嘘だと思いたかったけど僕の制服だった。
………まさかとは思うけど『着ろ』と?? 僕、オトコなんだけど??
………………………
………………
………
side ふうま小太郎
俺の名前はふうま小太郎。 本名を明かす事は出来ないが五車学園の1年だ。
「全く…、時子も叩き起こす必要は無いだろうに……。」
学園で講師を務めている時子への愚痴を吐きながら通学路を歩く。 急いだ所で特にやる事も無い、精々昼寝をする場所を探す程度だg………
「嫌だああああああぁッ!!! やっぱり僕、学校に行きたくないぃぃぃぃッ!!!?」
…………いきなり何だ? 声がする方に目を向けると何やら五車の女子生徒が騒いでいるが……。
「 い い 加 減 に諦めなさいッ!! 急がないと私達まで遅刻しちゃうでしょ!!」
「ゆきかぜの言う通りだ、少しは自信を持て! とても可愛らしい姿だ!!」
「可愛いなんて言われても嬉しくからッ!! 今日だけ! お願いだから、今日だけは休ませてよぉぉぉぉ…!!」
アレは凛子先輩と………ゆきかぜか?? 物陰から何かを引き摺り出そうと躍起になっているようだが……!!!
(なっ………何だッ! あの『美少女』はッ!!!?)
幾ら距離が離れていようと俺の『美少女センサー』から逃れる事は出来ない。 五車学園の制服に身を包みバランスの取れたプロポーション、顔立ちが凛子先輩と似ている辺り親戚の子か??
「やっ…、やっぱり無理だよぉ〜…。 僕、こんな格好で外なんか歩けないよぉぉ……。」
しかも僕っ子だと??! 凛子先輩が勇ましくリーダーシップを発揮するタイプだとすれば美少女は温和で夫を立てるタイプと見た。
フフフ…。 時子には悪いが学園など後回し、今はあの美少女だ!!
「安心しろッ! わっ、私が手を繋いでやる……、私と一緒に歩けば怖いモノなど無い筈だ!!」
「凛子先輩だけなんてズルいッ! 手を繋ぐのは私の役目ですぅ!!」
「……や、やっぱり無理ぃぃぃぃッ!!!!」
そうこうしている内に美少女が2人の腕を振り払い、俺の方へ向かって一直線………
……コレは、チャンスだな!!
「……おっと?」
「わぷッ! ご、ごめんなさい…!!」
なるべく偶然を装い美少女を俺の胸元へと引き込む、この匂いはゴムか? ラバースーツの上に制服とは随分とマニアックな………
「む? そこに居るのはふうまか? すまない、手間を掛けた!!」
「逃さないわよ! 達郎っ!!」
……………。
…………今、ゆきかぜは何と言った?? たつろー? 達郎ってまさか……
………………………
………………
………
side 達郎
「…………それで……その姿になったのか??」
「………………(コクリ)。」
……気まずい。 何でか分からないけど凄く気まずい。 小太郎君に身バレした後、小太郎君と合流する筈だった相州蛇子委員長と上原鹿之助君も加わり、大所帯で登校する事になった。
「元凶は物部博士かぁ。 悪い人じゃ無いんだけど…。」
「まぁ……抜けている所はあるな。 俺も何度か世話になっている人だが……。」
小太郎君と委員長は思い当たる節があるのかやや気不味い感じで…?
「たまにスゲー発明したりする人だよな!! 5体の合体ロボとか恐竜のメカとか!!」
一方で上原君は楽しげだ。 そう言えば博士とロマンについて語り合っていたっけ…??
「………ところで達郎? 午後の授業はどうするつもりなんだ??」
「午後って今日は座学だけじゃ………あっ(察し。」
急に小太郎君が思い出したかのように話を降ってくる。 そう言えば午後の授業が急に模擬戦へと変更されたんだった!!
「模擬戦って事はーー…」
「対魔スーツ……だよね? 背が少し縮んだせいかブカブカなんだけど…?」
「模擬戦と言っても忍術を扱う実践形式の訓練だし、対魔スーツが無いと危ないから見学になるんじゃない??」
「案ずる事は無い、私が達郎を守りながら戦えば済む話だ。」
「いやいや凛子先輩はクラスも学年も違うでしょ…。 と言う事でぇ〜、達郎は私とペアにー…!」
「対魔スーツが無ければ参加自体出来ないだろ。 ……まぁスーツを新調するか男に戻るまでは見学が妥当なんじゃないか?」
模擬戦か…。 本当は参加したいけど? 僕の対魔忍としての実力は甘く見て平均。 ペアだとゆきかぜが無双して何一つ出来ないままだ……。
それなら小太郎君の言う通り、隅っこで見学していても…。
………………………
………………
………
「………。」
「………。」
「「…………………。」」
何でこうなった?? いやホント…何を、どう間違えたらこうなるの??(困惑)
「な、なぁ達郎? 『その格好』って……」
「言わないでッ!! お願いだから、あんまり見ないで!!」
登校早々職員室に呼び出されたと思ったら問答無用で押さえ付けられ、新しい対魔スーツ(女子用)に着替えさせられたんだけどッ??! 何でこんな時だけ手際が良いのさ?!
「ラバースーツの上から、さくら先生の対魔スーツ(色違い)か…。 これで中身が達郎じゃなければーー…」
「わーーッ!!! こ、小太郎君! コレ以上は言わないで!! 明日からどんな顔して登校すれば良いのか分からなくなるからあぁぁ!!」
制服にせよスーツにせよ男性用で良いじゃん、サイズを変更するだけで済む話じゃん! コレだと変態扱いされても反論出来なくなるよ?! 何で僕がこんな目に……?
「ではこれより模擬戦を始める! 両者位置に付け!!」
今回の模擬戦はペア。 パートナーはくじ引きで小太郎君となった。 ゆきかぜが地団駄を踏んでいたけど……うん、終わったら一緒にいないとご機嫌がヤバい事になるヤツだ。
「おいおい、今日の相手は『目ぬけ』と『腰巾着』かよ!」
「こりゃ楽だわ! それにしても腰巾着の方はソソる身体になったじゃねえか? 終わったらコッチの相手もしてくれよ!!」
「…………。」
目ぬけ……と言うのは小太郎君の、腰巾着は僕の事だ。 僕の事は別に何とも思わない。 ずっと2人の後ろに隠れて来たんだ、言われて当然だ。
でも小太郎君は違う。 忍術の解析は謎に包まれたままで開花する人も居れば、しなかった人も大勢いる。 本人ではどうする事も出来なかった事で蔑むのは間違っている!
「準備は出来てるな? では………始め!!」
上原先生の合図と共に距離を取る。 事前の打ち合わせ通り草むらの茂みに隠れた僕達は息を潜め、情報の確認を行う。
「……相手は3時の方角、距離27,5メートル。 対魔粒子の動きは無く、様子見をする構えかな?」
「風遁を応用した索敵術か? 随分と正確に分かるもんだな??」
「う、うん…。 会話の詳細までは拾えないけど……。」
「いや十分だ。 仮に拾えてもダミーの可能性がある、今回の相手は火遁使いと土遁使いだったな…。」
小太郎君は冷静に状況を分析している。 確か火遁の方は指定した範囲を大爆発。 逆に土遁は指定したエリアに結果を貼る忍術だったかな?
「時間を掛けると相手の忍法が完成して地形ごと吹き飛ばされるな…。 達郎、あの2人を引き剥がす事は出来るか?」
「相手の場所に風を起こす事は出来るけど、引き剥がせるかどうかまでは分からない。 何より対魔粒子を使うのでコッチの居場所まで把握されてしまうリスクがあるけど……」
「アイツ等の忍法は『互いの位置』を把握している状態で真価を発揮するタイプだ。 座標を指定出来なくすれば突破口はある、なるべく威力のデカいヤツで頼む。」
「や、やってみる…。」
模擬戦と言っても対魔忍同士、僅かでも隙を見せれば一瞬で勝負は決まる。 この距離だと忍法を使えるのは恐らくは一回だけ……
「風よ………」
「……んっ?」
集中して、相手の場所を常に把握。 1ミリもズラさない!
「ーーー…吹き荒れろッ!!」
「な、何だこの対魔粒子はぁ!?!?!!?」
発生したのは巨大な竜巻。 しかも触れたモノを全てを細切れに切り刻む風の刃……ってアレ? 以前より威力が跳ね上がっているような…??
「………な、何か思っていた以上に凄いのが出た。」
「よ、予想を遥かに超えた威力だったが……避けられたな。 呆けている暇は無い、行くぞッ!!」
我に返り、忍者刀(模擬刀)を手に飛び込む。 僕の相手は………火遁使い!
「舐めるなよ腰巾着ッ!!」
「………やぁッ!!」
距離を潰せば互いに虚実混じえた斬撃の嵐が交差する。 火遁使いは剣術を修めており、凛子姉さんには及ばないものの実力はかなりの物だ。 以前の僕では捉えきれない動きだったけど………今は視える!!
「もらった!!」
「おっと! 手首いただきッ!!」
…けど純粋な剣術や体術、そして培った戦闘経験は相手が勝る。 斬撃の合間を縫って六角手裏剣を飛ばし距離を取ろうとしたけど、相手は紙一重で躱して手首を取って来た……コレの流れは関節技か!
「オラァ!! まずは腕を逆の方向に曲げてやるよお!!」
「やらせないッ!」
体術を扱う対魔忍の関節技は相手の身体に触れた瞬間、即座に折る技が多い。 よって力の流れに逆らわず、弧を描くように空へ飛び上がる。
同時に火遁使いの周囲を囲むように風刃も放つ!
「甘ぇッ!! やろうとしてる事がバレバレなんだよ!!」
「くゔぅぅ……ッ!!?」
全ての風刃を放ち終わる前に距離を詰められたか。 振り下ろされた一刀を何とか忍者刀で受けるも力負けしていまい、弾き飛ばされた僕は背中を木に叩きつけられてしまった…。
「ハッ! 腰巾着の割に良い反応するじゃねえか?」
「はぁ、はぁ……ッ! ご丁寧に、どうもッ!!」
でも相手だって無傷じゃない。 術の最中に突っ込んで来たんだ、風刃によって火遁使いの右頬からは傷口は浅くとも血が流れ出している。
「まっ、こちとらテメェ等に合わせてタイマンで勝負してやってるんだ。 雑魚は雑魚なりに、精々楽しませてくれや。」
「減らず口をッ!!」
「なら実力で黙らせてみなッ!!!」
突進してくる相手の斬撃を捌き、放たれる火槍は周りの障害物を盾にしながら回避。 状況に応じて忍者刀と六角手裏剣、風遁を使い分け……お互い有利な距離を維持しながら一撃離脱を繰り返す。
……ふうま君は土遁使いと交戦中か。 ココから援護出来るかな?
………………………
………………
………
side ふうま小太郎
「オラオラオラァッ!!! どうした、アンタの実力はそんなモンか??! 目ぬけの頭領様よお!!」
「随分と好き勝手言ってくれるもんだ…、なっ!!」
スピードは俺に分があるようだが土遁使いの身体は岩盤のように硬く、コッチの斬撃はまるで通じない。 加えてコイツは自分の忍法に過信していない。
対象が出来る攻撃は手甲で防ぎ、対魔粒子を温存しながら着実に狙って来る。
「オラァァ!! 懐がガラ空きだぜぇッ!!!」
「グッ……!!」
刀を弾かれた隙をつかれ、ヤツの拳が腹にめり込む。 中国拳法の発勁か……咄嗟に後ろへ飛びダメージは緩和したが何度も受けるわけにはいかない…。
「悶えてる暇があんのかぁ? 早く俺を倒さねえと連れと一緒にタコ殴りだぜ!!?」
対魔粒子は火遁使いが戻くるまで温存か…。 火遁は達郎が抑えている筈だが向こうも一人では厳しい相手である事は間違いない。
「それとも目ぬけ以前に、誰かに守って貰わねえと何にも出来ねえ腑抜けか?? ならテメェから先に……グオッ!!」
突如として体制が崩れたヤツの背後を見ると刀で切り裂かれたかのような傷が出来ている。 今のは風遁…、達郎か!
「くっ…! この距離で狙えんのか…。」
「…ッ! う、おおおおぉッ!!」
アイツにも気を遣わせたな…。 だがコレはチャンスだ、一気に距離を潰して畳み掛ける!
「動きが鈍っているぞ? さっきまでの威勢はどうした?」
「抜かせッ! ちょうど良いハンデだッ!!」
土遁使いが負った傷は致命傷でこそ無いが中々の深手だ。反応が鈍った状態で攻撃を防ぐ為には土遁で肉体を強化するしかない。
「そらよッ!」
「おっと! 視えてるぜッ!!」
放った横薙ぎは体制を低くして、しゃがみ込む形で形で回避される。 だがコレで良い……。
「……あぁ、そう避けると思ったさ。」
横薙ぎはあくまで囮。 避けたと思ったヤツの眼前にあるのは…、俺の膝だッ!!
「幾ら硬くした所で……コッチはどうだッ!!?」
「ゴッッハアアアアアアッ…!!!!!」
膝蹴りがヤツのこめかみに直撃。 ヤツの土遁は肉体を岩盤のように強化する事も出来るが内側までは届かない。脳を直接揺さぶられ、一瞬と言えど意識が飛んだ土遁使いは身体は後ろへと仰け反った…。
そして既に次の攻撃を放つ体制に戻っている俺にとっては好機。 例え0,1秒でも隙を見せれば致命的だ。
「……破ァッ!!!」
「ごっっはぁぁあァッッッ!! く……、クソがッ!!!?」
俺はヤツの鳩尾に全体重を乗せた渾身の突きを放つ。 土遁使いは地面を何メートルも転がり、意識を手放した。
「…コッチは片付いたな。 急いで達郎と合流せねば!!」
僅かな気配や音を頼りに森を移動する。 ココで焦ってしまえば達郎よりも先に火遁使いから奇襲を受ける危険性が高まる、そんな事態になっては時子や蛇子から何を言われるか分かったものじゃないしな……。
因みに2人が戦っている相手はモブです、名前すらありません