狼さん@がんばりたい   作:葬炎

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微グロ注意


第四

 

 

 

山を囲む巨大な壁の存在に気づいて(認めて)から更に数日経った。

今日も銀狼は朝日が昇ると同時に起き、いつの通りいつもの日常を繰り返そうと住処から一歩踏み出した、その時だった。

少しの違和感に気づく。

 

(…………?)

 

まだ寝ぼけている頭で考えが上手くまとまらない状態なのか、頭を軽く振ったあと無視して川に向かおうとする素振りを見せたが、その違和感がなぜかどうしても気になるのか住処の入り口付近で立ち止まって目をつむり頭をしっかり起こそうとする。すると、

 

違和感の理由が把握できた。

 

(……生き物の数が減ってる?)

 

なぜそれが理解できたかはわからない。それは狼としての、獣としての勘が鋭いのか、あるいは自分の知らないだけで特異な能力があるのか。ともかくとして狼は漠然と、しかし確信を持って山に住む動物たちの気配が減ってることに気づく。しかもそれは現在進行形で一つ、また一つと気配が減っていくのを感じていた。

 

(……っ!? なんだ!?)

 

さらに銀狼は感じる。

 

―――山が悲鳴をあげている。

 

生きてるわけではない、実際に悲鳴が振動となり鼓膜に響いて聞こえるわけでもない、だけど聞こえる。なんでだ。なんで。裏切るのか。そう言うような声にならない山の悲鳴が、銀狼には聞こえる。

 

―――彼は駆け出した。

 

目的地は今も尚一つずつ命が消えて逝く場所。目的はこぼれ落ちる生命を一つでも掬い上げるために。

 

 

なぜ救いに行くか、それは使命感のような感情。それを原動力に猛然と駆けている銀狼の眼は、なにかを宿してるかのように―――銀色に光り輝き残光を残す勢いで―――

 

 

その輝きが残す銀色の軌跡は現状とは場違いなほど美しく、力強いモノであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅かった…………!

あまりにも気づくのが、何を思ってあんな所業に走ったのか、気づくのがあまりにも、遅すぎた……!

 

そう考えながらどこかへと向かって走る女性がいた。

髪の色は銀髪で服装は中心に縦線を入れ、そこから左右で色が違うという奇抜な格好をしつつ美人と言える女性だ。

そしてこれは今や女性本人しか知らないが、あの銀狼に子供の頃助けられた少女が大人になった者である。

 

その様相は必死で死に物狂いだった。

目の前の道を突き当たって左折、次の右に見える路地に入り込みその先にある金網に登ったら一軒家の屋根に乗って乗り越えて広場の土管の上に降り立ちそのままの勢いで転がりながら出口から出て真っ直ぐ行き出たら右。

 

そんなとんでもないルートを、目的地に着くまでの最短のルートを突っ走りながら向かう先は―――山。

それは女性にとってはとても思い出深き山。かの神様と出会い、それが原因かはわからないが自分の住む村が今のような都市に発展する礎となる知識を得た原因と考えられる山。

 

そんな山が今、大勢多数の人類により壊されようとしていた。

 

(まさかこんな強行手段を取るだなんて……! こんな時ばっか腰が軽くなりやがってあの老害共めぇ!)

 

女性としてその言葉遣いはどうなのかと指摘してくれるような人間はそこにいない。そもそも心の中に秘めたその罵倒に突っ込めるのは悟り妖怪ぐらいしかいないだろうが。

 

(確かにあの山は数十年前から開拓する案が出ていた。だけど一部神聖視してる老人たちや神の存在を信じる者、それと有力者で協力者である数人と私の反対があって抑えれていたはず……!)

 

だがしかし今現実として今現在山は重火器と体全体を覆うアーマーで武装した者たちが山で生きる生き物を追討しているところだった。

 

(お父様はなにをしているの……!)

 

女性の父親は村の中の重役で軍部の最高責任者だった。

しかしこの時の彼女はまだ知らない。その父親や、山の開拓に反対していた有権者の多数は"集会中に少数の強硬派と共にクローンと言う人間もどきが暴走したことによる事故死"ということになっていることに。そして残った反対していた人間も急に手のひらを返すように開拓を推し進めようとしていることに。

それは反対意見によって滞っていたのが嘘のように一日で山の解体まで進めれるほど勢いを持っていた。

 

(……見えたっ!)

 

考え事をしながらも止まらない彼女の視界に入るは山の麓を囲うようにある巨大な壁に設置された一つの扉。

その入り口の扉を守るように立つ槍を持った者を視認した彼女はまっすぐその者のとこ向かい怒鳴るように声を荒げた。

 

「そこを通しなさい! 現場の責任者に話しがあるわ!」

「申し訳ありません。村長のほうから誰も通してはならぬと厳命されておりますので、例え貴方様でもお通しすることはできません」

「……くっ、いいからどきなさい!」

「なりません」

 

門を守る門番を説得が通じぬと見て無理やり押し通ろうとすると、門番は翻すように手の平を扉のほうに向けた瞬間、透明な壁のようなものが唯一ある入り口の扉を覆った。

門番は村を囲う結界を作っている中心人物の一人だったのである。

 

「正式に村長に許可をいただいてからもう一回きてください。大丈夫です、今日中に生物の駆逐は終わりますが山の解体はまだしばらく先になると思うので」

「私が心配してるのはそこじゃない……!」

 

どうやら門番は彼女がそこまで急いでるのは薬師故に山に生息する薬草や他植物の管理とかを物申す為にきたとでも思ったのか、そんなことを言ってきた。

だが当然彼女はそんなどうでもいいことを心配してるわけじゃない。

扉に手を当てどうにかとできないかと考えている彼女は言う。

 

「あれだけ世話になってきた山を、神の住む山を、人間が私欲のために自然や生き物を蹂躙することがどれだけ愚かしいことかあなたはわかっているの!?」

「……」

「答えなさ―――うっ」

 

どさり、と倒れる音がする。

そこには倒れている彼女と、そんな彼女が立っていた場所、立っていたとしたら首の当たりの位置に黒い手持ちサイズの機械―――スタンガンを突き出す格好の門番がいた。

 

「……やはり八意様は村長が言ってた通り、神なんていう存在しない存在を信じ狂ってしまったのだろう。山の開拓は間違いなく人類の成長に繋がるというのに反対するなんて。一回病院に連れて行かねば。大丈夫、俺も最初自然を壊すのに少し抵抗を覚えてたけどあの医療用ポッドに入れば迷いなんてなくなるさ。大丈夫。そう、神なんていないんだ。大丈夫。人間以外の生物なんてどうなったって問題ない。大丈夫。人間生きてる中で一番偉いんだ。大丈夫。俺が一番偉いんだ。大丈b夫。何wしたって人間だkkkrあいいnndあ。dいじょb。おrえはにんげnだっけ。だいじょうぶ。なにがだいじょうぶ。だいじょうぶ。おれってなんだっkkkkk」

 

意識が薄れる瞬間、早口言葉のように矢継ぎ早になにかを呟いてる門番と、

 

山のほうからかつて会った神の遠吠えのようなものが聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――それは地獄だった。

 

そう、銀狼は思った。

彼は命がある場所にたどり着いた。まだ狩られる前の、狩られている場所のすぐ近くにいる生命の元に。

そしてそこから見えた命が尽きて逝く光景は、

 

一匹のウサギが飛び出した。

人間が投げた銛のような棘に貫かれてもがきながら死んだ。

三匹のシカが逃げた。

銃のようなもので穿たれ動けなくなったとこでチェーンソーみたいなもので悲鳴を響かせながら首を撥ねられた。

五匹のネズミが穴の中で震えていた。

穴に爆弾が投げ込まれ爆発と共に肉片が飛び散った。

 

もしそれが生きるための致し方無い殺害なら銀狼は眉をしかめるかもしれないが特に思うことはなかったかもしれない。あるいは自分のような凶暴な見た目だったりしたなら理解されないことを嘆きつつ諦めがついたかもしれない。

だがそれは違った。

生きるためでは無い。自衛のためでもない。

理由は知らない。だが元人間として予想はつく。

この山に住む生命は今―――人間の欲望に侵され死んでいってるんだと。

それは自分が人間の頃だったらなにも思わず、あるいは可哀想とは思っても一時間後ぐらいには忘れることだろう。だが彼は今山に住む一つの命として山の危機に直面していた。

 

人間が山を侵略し始めたのだ。生命を根絶やしにし、あるいは一部だけ連れて行き、この山をなにかに利用するのだと。

生物の理から外れた行為だ。そう今の彼は思った。もしかしたら人口の増加で生きるための土地を増やすためかもしれないという可能性はあったが、なぜか彼にはそうとしか思えなかった。

どういしようもなく、今の人間たちが行っていることが、

 

悲しいことだ。

 

愚かしいことだ。

 

許せないことだ。

 

そういった感情がごちゃまぜになり濁流となって銀狼の感情を巨大な渦となり巻き込んでいく。自分はこんな風に感じるような者だったかなんて考えれる冷静な部分はもはや存在しない。

そう、今の銀狼は、とても人間が―――憎かった。

故に次の生命の灯火が消えると同時に、銀狼の意識を抑えていた理性が

 

ぷっつんと

 

切れた。

 

 

-----ぐおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおんん!!------

 

おぉぉぉおおおおおん

 

ぉぉぉぉおおおん

 

ぉぉぉん

 

ぉ---ぅ

 

山を木霊する巨大な鳴き声が銀狼から発せられる。

 

山にとっては救いの、人類にとっては大いなる天罰の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所。巨大な建造物―――監視塔の中にある一室で老人たちが声高々に談笑していた。

 

「いやはや。これでようやく我々のための、ひいては人類のための計画を次の段階に移すことができますな!」

「あはははは! いやーここまで長かったですなあ。八意様はいかんとも御し難い部分がありましたから、これでようやく、今までより殊更人類のために役立ってくれるようになりましょうぞ」

「おやおや。酷いお方たちですこと。人類のため人類のため、果たしてそんなことを考えている方がこの中におりますかな。おほほほほ」

「おやこれまた手厳しい。婆様は人類のためのこの大経略に反対で?」

「まさか! これでようやく私が追い求めていた永遠の美に一歩近づけるかと思うと、今から楽しみでたまりませぬわい」

「私はもっと完璧で完全なニンゲンを生み出す装置が欲しいですの。今のモドキどもはやはりどこか違和感ありましての」

「私はこの完璧で幸福な町をさらに完全にすべく、全住民の無意識を操れるような装置ですかねー」

 

まるでそれは知り合いで集まって和気藹々となにげない話に花を咲かせるように、しかし内容は吐き気を催すような邪悪で醜悪な悪魔のような、どこまでも自分の願望や欲望を丸出しにした老人たち。

それはもう自陣の勝利が確定してるかのような振る舞いだった。ゆえに油断していたのだろう。

 

「そろそろ前線の部隊から定時連絡がくるころでしょうか―――おや」

 

ピリリリリリ

 

「噂をすれば、ですな」

 

なんの躊躇いもなくその通信機のようなものを取ってしまったのは。

 

ガチャッ

 

「作戦は無事に進んでい【あおおおおおぉぉぉぉぉおおおおん!!】……なんじゃ?」

 

その通信機に耳を当てれば聞こえてきたのは大音量の鳴き声。

咄嗟に耳を離したので特になにも問題は起きなかった。ように見えた。

 

「どうかしましたか___さんや。なにやら獣の声が聞こえましたが」

「……」

「……、___さん?」

 

電話を手に耳から離した状態のまま固まった老人を気にした老女が声をかける。しかし反応はない。

なにかあったのかと老女は立ち上がり近寄って肩を叩こうとした、その時だった。

 

「___さんや、いたずらにしてはちょっと長いです

 

"ブオン!"

 

―――よ?」

 

なにか巨大な質量を持ったものが高速で振られたような、そんな音がしたかと思うと老女はキミョウな光景を見た。

自分の―――首から上がなくなった体が高速で離れていく姿を。

 

「……やや?」

 

いや、離れてるのは自分だと。そう気付いたのは果たして意味があったのか。

 

ぐちゃっ

 

それを考えるには

 

この場にいた人間はみんな

 

首から上がなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれはなんだ。

 

あれがニンゲンなのか。

 

あれが愛したイキモノの末路なのか。

 

実を与えたのが間違いだったのか。

 

知識を与えるのは間違いだったのか。

 

私が間違いだったのか。

 

だったら戻そう。

 

間違える前に戻そう。

 

最も愛する元ニンゲンに頼もう。

 

そして謝ろう。

 

お前の考えてた通りニンゲンは醜かったと―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はっ」

 

不思議な夢を見ていた。いや昼間だし寝たわけじゃないから白昼夢か。

そこにいたのは真っ裸の少女と人間だったころの自分。どうしても警察不可避な状況で二人は楽しそうに談話していた。気がする。

もっとも人間の頃の自分はいじめられっ子で人とまともに会話したことないしあんな美少女と話したことも見たこともないしやはり夢か幻のようなものだったんだろう。そう結論付けた銀狼は何事も無かったかのように住処に帰る。

 

地面に真っ赤な水溜りができ足が真っ赤に汚れてるのを欠片も気がついてないとでも言うように。

 

山を囲っていた壁がなくなっていても最初からなかったじゃないかと言うように。

 

さきほどまで自分が何を考えて行動したかなんて―――微塵も覚えてないと言うように。

 

 

 

 

 

この日、村の重役が軒並み死亡するという怪事件が起きた。

 

それは人が行ったにしては明らかな怪異、異常性を見せつけながら。

 

村の重役はその日会議をするために会議室に集まっていたのだが、全員が生きるために必要な、首から上がなくなったままの遺体が発見されたのだ。

 

現場はあまりにも異様な雰囲気を伴っていた。

 

まるで普通に話しているかのような、談笑をしている場面の写真を首から上だけ切り取ったように。

 

あまりにも静かでなにも違和感のない場面から首から上を編集して消したように。

 

唯一それ以外に変化があるのは一つの席に向かって歩いていたのか、そっちを向きながら倒れてる老女と、

 

その先にある、村長がいつも座ってる場所の空席と近くに落ちている通信機だけ。

 

 

 

 

このことに気づかれたのは事件から次の日であった。

その真相が判明されるのはまだちょっと先。

その日まで誰がやったのか、なにがどうなってるのかわからず数多のクローンが暴走し、集会に参加しなかった重役や何人かの能力者が血あらゆる穴から吹き出しながらうわ言を呟き死んだのはまた別の話し。

 

村は狂気と混沌に包まれていた。







どうも葬炎です。ホラー的な表現にチャレンジしてみましたが私程度だとチープな表現になってしまうのは仕方ないこと。ですがおかげでR15やらを付けなくても大丈夫ですね!
今回の話しは調子にのっちゃっちゃってる人たちに対し天罰を与える的なもの。補足説明をば。

まず重役集会のとこ。
油断してたってなんぞや?ってとこ。この先話しに大きく関わってくるものでもないので。
ようするに銀狼の遠吠え? をしている時に前線部隊が恐怖を感じ本部に連絡して、その遠吠えが通信機に入り、狼の遠吠えということでつまり遠くにいるモノと連絡するためのもの、ようするに重役たちの場所を明確にわからせちゃったわけですね。
そんでナニモノかが元凶(重役たち)を即ぶっち。ということです。
わりと関係ない人や陰謀に巻き込まれた人なんかもいましたがその人だけを避けるなんて器用なことはできなかったので集会にいた人は全滅、すべての元凶と思われる村長がどうなったかは次回。

他にわからないこととかあったら手紙でも感想でもいいので質問お願いします。一応できる限り一つ一つの行動に理由を考えてますが当然ガバ思考なんで意味不なとこも多々あるし、理由ができていても説明しないことが多いです(忘れたとも言う)。
まあ話に関わってくる部分の質問だった場合また次回。と説明を省かせてもらいますが。


あと関係ないですが最近モチベの保ち方を探してます。理由はたぶん私の連載してる小説の最終登校日見ればわかります(遠い目)
なにかいい方法知ってる人がいたらお願いします。葬炎でした。
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