「フリーレン、君は王都には残らないのか」
あれ…何してるんだろう、私。これは思い出の中…?
確か、
「旅を続けるよ」
「一人でか?」
「気楽でいいでしょ」
この時の私は魔法や魔導書にしか興味がなかったな…もっと早く気づいていれば、ヒンメルの気持ちにだって答えられた。でも、ヒンメルは勇者だ。きっと私がいなくなったって…乗り超えてくれるだろう。
「弟子を取ったりはしないのか?旅は話し相手がいた方がいい」
「時間の無駄だからね。色々教えてもすぐ死んじゃうでしょ」
今の私は、かつてと違い弟子を取ろうという気持ちが芽生え始めている。いつか死んでしまうヒンメルのかっこよさ、勇気や意思や友情や…私との大切な思い出を…この世から無くしたくなかったから。
「フリーレン、人との関係はそういうものじゃない。」
「そういうものだよ。皆との冒険だって私の人生の百分の一にも満たない。」
違う。今ならそう言える。あの貴重な10年は、もう二度と手に入らない。
「アイゼンなら分かるでしょ?」
「俺は…」
アイゼンは私なんかより遥かに人との繋がりというものを理解していた。私がもう少し詳しく聞いていたら…何か変わったのか。
皆にも苦労かけちゃったな、この時は…いや、今もなのかな…ヒンメル……
「はいはい、暗い話は無し!今日はめでたい日なんですから、飲みましょう!」
「酒を飲む理由が欲しいだけだろう」
「ばれましたか」
……ハイター……ヒンメルには負けるけど、最後の最後にお人好しを見せてくれたな。
「お前はいつも飲んでるだろうが。」
「この生臭坊主」
「はっはっは!」
どんどん、皆の声が聞こえなくなってくる。思考も定まらない。かつての楽しい思い出は、もはや二度と作る事は出来ないのか。私とヒンメルの旅も…ここで終わり?
荒かった呼吸は逆に緩やかになり、視界は朧気になっていく。夜空の蒼色なのか、ヒンメルの蒼髪なのかも判断出来ない。もはや私の死は近いのだろう。
くちのなかからちがあふれてくる
いきがくるしい
「………てくれ!フリーレン!!君が死ぬなんてそんな残酷な事が…僕との旅はどうした!行くんだろ?!」
なにかこえがきこえる
きっとわたしをおもったこえなんだろう
てをにぎられている
いつか そんなこともあったっけ
なにがのこるんだろう なにものこらないのか
みんなとのおもいではどうなるんだろう。
意識を何とかはっきりさせていく。魔族特有の驕りがない奴らに、
…いや、あったじゃないか。魔王を倒す時に使った奥の手。唱えるのに多少時間はかかるが、ヒンメルならなんとかしてくれる。どうせ死ぬならやれる事だけやってみよう。私の…魔法使いとしての力を全て使うんだ。大切な人の為に。今だけは葬送のフリーレンじゃなく。
ヒンメルの、たった一人の想い人として。
大事な貴方だけには覚えていて欲しい。想いも一緒に。