葬送継のヒンメル   作:除外音

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これを機に、ヒンメルはガツガツ行くようになってしまうのだ。


新たな旅路

《告白、告白》

 


 

窓から入る、少し暖かい風で目が覚めた。

外を見れば空は橙色に輝き、王都の街並みを明るく染めていた。寝過ごしてしまったのかなんて思いもしたが、昨日の祭りの片付けに追われている民衆を見ればそうでない事も分かる。少し早いけど、皆を起こして朝食でも食べに行こうかな。

私が皆を起こしたらさぞ驚いてくれるだろう。

 

正直、私自身が一番驚きだ。すっきり目が覚めているのも滅多にない事だし。これは数百年は自慢出来る事かもしれない。

 

ヒンメル達は机に突っ伏して寝てしまっている。酒を飲み倒れてしまったのだろうが、アイゼンもそちら側とは意外な事もあるものだ。

 

「皆、起きて。朝だよ」

一人ひとりの頭を魔導書で小突いていく。

彼らは小さいうめき声をあげながら身体を起こし、驚愕の表情を見せる。どうだ、私だって早起き出来るんだ。

 

 

「フ、フリーレンが…起きてる!」

「ドヤ顔なのが何だか腹が立つな」

「フリーレンもやれば出来るという事ですか。出来れば冒険中にもやって欲しかったんですがね」

 

笑っているハイターの顔がなんだか恐ろしい。

ごめんよう…

 

「そ、それより朝食でも食べに行こうよ」

「うーん、ちょっと早くない?まだ空は青くないしね」

 

確かに少し早い気もするけど、早めに食事を済ませたい。珍しい魔導書を持っているという商人が王都周辺地域を徘徊しているとの小話を、耳に入れていたのだ。出来るだけ早く出発したい。 

 

「やりたい事があるって言ったでしょ。出来るだけ早く出たいんだよぉ〜」

 

ヒンメルが何故か情けない顔を見せている。仲間との別れが早いからか悲しんでいるのだろう。ハイターやアイゼンが背中を叩き励ましている。ごめんよヒンメル、50年後にはまた会えるから許して。

 

「……とりあえず何か食べたい…」

「ヒンメルがしょぼくれてる……」

「まあ、確かに小腹も空きましたね。ヒンメルの気分を盛り上げる為にもやはりここは定番の…………」

 

ヒンメルの好物(ハンバーグ)をたらふく食わせてやった。

後、師匠(せんせい)直伝の秘技(投げキッス)も特別にヒンメルの顔の近くで使った。結局気絶してしまったから普通に出るのが遅れてしまった。この技は数十年は封印かな…

 


 

 

王都より少し離れた橋の前で、皆と立ち話をした。恐らくここで…ここが皆との別れ道。

 

「…じゃあ、私はここで」

あっけない言葉。彼女は振り返り、橋を渡ろうとする。

行かせては駄目だ。自分の気持ちに嘘をつくんじゃない。ハイターとアイゼンも背中を叩いてくれている。

 

「フリーレン、待ってくれ!」

彼女の耳がピクリと反応し、こちらを向いてくれる。 

「なに?ヒンメル」

「僕も…僕も一緒に行かせてくれないか…?」

「…別に良いけど……何か他に言うことがあるんじゃないの?」

…え、なんでバレてるの?

 

「ヒンメル、早く言え」

「そうですよ、ここまで来たら一気に言っちゃいましょう!後悔する前に!」

ぬあああ!こうなったら、あたって砕けろだ!

 

「フフフフリーレン!君の事がずっと好きだった!だから付き合ってくれにゃいか!!」

呂律も回らない。決死の告白なのもあるが、フリーレンの返事がある程度分かってしまっているからだ。

 

「……ごめん?」

やばい、いざ聴いたら吐血しそう。やっぱりフリーレンは魔法が恋人の様なものなんだよね…

「全然気づかなかった。そうだったのか…」

「鈍いですね…」「罪な女だ」

 

あれ?そっち?フリーレンの様子が変だ。今までの10年間で見たこと無いぞあんな顔…【何をどうすれば…】みたいな顔だ。今までで一番情けない顔してる…

 

「うーん…好きとか付き合うってのがよく分からないんだよね。…まあヒンメルは信頼できるし、それ(好き)が分かるまで一緒に冒険でもしようか。」

 

返事的には『はい』という事で良いのかなこれ?フリーレンの事だし、一般的な告白にはならないとは思ってたけど、現状がよく理解できない。まあいいか…ゆっくり時間をかけて理解しよう、きっとフリーレンも同じ気持ちだ。

 

「そういえばなんでまだ話があると思ったんだい?」

ふと疑問に思った事を聞いてみる。フリーレンには悪いけど、僕が言えなかった事を見通して話を誘導出来るとは思えない。まさか二人が言ったんじゃないだろうな。

 

「いや、昨日の晩すごい騒いでたから、ちょっと聞こえちゃったんだよね。ウトウトしてたから内容はあんまり覚えてないんだけど」

 

「おや、一体誰でしょうね」

主にハイターのせいじゃないか!酒を飲んでいたとはいえ、何時間も熱弁してたのはハイターだけだぞ!

 

「なにはともあれ、上手くいって良かったですね」

「ぶっちゃけ振られると思ってたぞ」

…色々思う事はあるけど、今回は何も言うまい。というか心臓が鳴りっぱなしだ。こりゃ寿命が50年は縮んじゃったかな。

 

「…じゃあ僕も皆とここでお別れになっちゃうね」

フリーレンと旅路を共にするなら、恐らく皆と会うのも数年後になるだろう。最低でもという話だから、実際はもっと後になるかもしれない。手紙のやり取りはするとは思うけど、会えないのはやっぱり寂しい。

 

「…ええ、ぜひ幸せになってくださいね。結婚式の招待状をつけた手紙が来るのを待ってますよ。実は私は、聖都で職に就く予定なんです。大修道院から誘いを頂いていましてね、ちょっとばかし偉い役職に就くかもしれないんです。もしかしたら、あなた達の婚式も私が取り仕切る事になるやもしれませんな」

 

「俺はまだ迷っている所だ。とりあえずの所は筋肉を萎えさせない事を目標にしたい。人より老いるのが遅いとはいえ、戦える肉体を失うのは怖いからな…狩猟生活というのも悪くないかもしれん」

 

皆、僕らがおらずとも意外と余生を満喫するのかもしれないな。…というかハイターはその本性(生臭坊主)を隠しきれるのか…?

 

 

 

「あ、これを忘れるところでした。二人に渡したいものがあったんですよ。少々お待ち下さい」

ハイターがいきなり後ろを向いたかと思ったら、何かを破る音が聞こえた。

 

「これです。お守り代わりに持っていってください。」

そう言って渡されたのは、聖典のページを切り取って作られた花の折り紙だった。

 

「ハ、ハイター?!これって聖典の紙だろ?破って良いものなのか…?」

「はっはっは。ダメに決まってるじゃないですか」

ええ…

 

「私達の覚悟の表れですよ。それにこれがあれば、万が一の事があれば助けに行けます。戦士と僧侶が居なくなるのは痛手で…

「ヒンメルそろそろ行こう。やりたい事も出来なそうだし、予定通り中央諸国を巡るよ。皆とはまた会えるでしょ」

 

フリーレンが急かしてくる。エルフの時間感覚はよく分からないが、魔法の為には急ぐのがフリーレンらしいというか。…ハイターの話を最後まで聞けなかったが、フリーレンには僕が付いてるんだ。必ず皆とはまた会える。

 

「分かった、それじゃ行こうか」

意を決し、フリーレンの手を掴み、先導するかの様に歩く。後ろでハイター達が興奮している声が聞こえる。恥ずかしい…

 

「ヒンメル、手を握る必要ある?それに行き先とか分かってるの?」

「こ、こういうのがいいの!…ええと……最初はどこに行くんだい?」

 

カッコつけようとした瞬間に情けなくなっちゃった…

フリーレンに呆れられるのが今までに感じた事のないダメージになってるぅ…




<(´⌯ ̫⌯`)><<師匠(せんせい)(投げキッス)は恐ろしいね…
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