これ大好き。いいよねー、師匠とフランの関係。
01/ようこそ、剣と鎧とお猫(ここ大事)の世界へ
転生。死んだものが別のものに生まれ変わること。
同種であったり異種であったりとその変化は様々らしいけど───
『キャメンン~~~ッ♪ ノリディ~~ヤァ~~ォオオゥ♪』
今現在の俺は武具として大地を彷徨っておりました。
おっと自己紹介が遅れました、ワタクシ、四天王になれたのが不思議なくらいの弱者を自称する世界屈指のド外道ヒューマン、姓を中井出、名を博光と申します。あ、ヒューマンとは言いましたが、今はただの彷徨う鎧です。
ええはい、中身無いんです。気づけば、武具を愛するあまりに武具そのものになっていた……そんな現在が今まさに。
幸いにしてフルアーマー博光として、中身が空洞のままにローリンローリン延髄突き割る勢いで荒野を駆けたりも出来てるわけですが……うーんどこなんだろうねここ。
『地獄から来た野生の少年のケツを粉砕する男! スパイダーマッ!!』
きょろきょろしながら、誰も居ないことを確認すると、素早くバッババッと様々なポーズを取ったのち、最後に身を屈めて意味もなく手を突き出してみる。古き良きスパイダーマッポーズだ。
『うーん……かの骸骨騎士様でさえ骨はあったといふのに、よもや中身が無いとは……。これ、武具としてのジークフリードに、僕の意識が移った~みたいな感じで受け取っていいんだよな……?』
なにしろ57億生きてきて初めての体験……! 一心同体な日々など散々ともに生きてきたし、絶体絶命の危機もいつだって一緒に乗り越えてきた僕とジークフリード……。そんな武具と一緒になれたのなら、べつに嫌悪や危機感を抱く必要なんぞこれっぽっちもない。
しかし何故こうなったのかくらいは知りたいってもんで……。
『んー……ジーク』
イメージして、構えた両手を剣を掴むような形にして集中。すると即座にシャキーンと紅蓮蒼碧の巨大長剣、
『おおっ』
その大きさは某ダークなソウルに現れる、大狼シフが口に銜えるアルトリウスの大剣よりもよほどに大きく長い。およそ、人が持つようなもんじゃねぇだろうと言われるような長さに幅にと、一見“これ作ったヤツ……絶対バカだろォッ!”なんて笑われそうではござんすが……長さ、自在に変えられます。なにせ意志が宿った武器ですけぇ、伸縮自在はもちろんのこと、重さだってフロートのスキルで自在に浮かしたりすることも可能ですよ。……フロート無ければドチャクソ重いけど。
ああ……この紅と蒼が絶妙に混ざった、様々な魔物素材と鉱物素材が完成させた造形……! なんと美しい……!
でも今は出せるかどうかを試しただけなので、武具の中に戻ってもらっておく。
大元が、初心者修練場で配布されている初心者用グレートソードを強化しまくった、初期からの僕の相棒……キミとひとつになれて、こんなに嬉しいことはないよ!
『でもそれはそれとして……ここ何処だろう』
依然として謎は謎のまま……だけど、何処でだろうと他人の迷惑になりすぎない程度に“楽しい”を優先したいお年頃の博光です。ここは元気にまだ見ぬ謎世界を楽しむ方向で進むべきでせう。
そう……例えば、この博光自らが誰かの武具となり、その相手を世界最強にしてみせる……とか。
ま、まあー!? 僕の相棒たるジークフリード(武器*1)とブリュンヒルデ(防具*2)とおまけに僕自身さえ預けるんですからー!? そりゃあもうどえりゃあ素敵な相手じゃないと許しませんがねー!?
『GO!』
そんなアホウなことをわざわざふんぞり返って胸を張り、考えながら突っ走った。
心の中ではクロノトリガーのリビングアーマーさんが暴れてる。ヌグォアアアアッ! グレン! グレェエエン! あ、なんかクロノトリガーやりたくなってきた。フルリメイクしてくれればよかったのになぁ。昔やったことのあるプレイヤーにとって、ベタ移植をそりゃあ喜ぶ人は居たかもだけど、思い出深いからこそフルリメイクでの登場を心待ちにした者も居たのにのにのにのにのに……!!
まあそれはともかく、鎧のみのブリュンヒルデ*3から鞘を二本エジェクション。左右の腰に付けると、そこに二振りの長剣を納める。
そこから鞘経由でスキルを引き出して、前へ前へと烈風烈風烈風ゥウウウ!!
……と、自分がまず何処に居るのかを探るべく、前へと進んだのでした。
その少しあとに、空飛んで辺りを見渡した方が早かったのでは? と気づくのでござーますが、人の閃きなんぞそんなもんです。そっちの方が早かった~なんてことは、あとで気づくもんですよねトホホイ。
……。
突然ですが同志が出来ました。
武具だけで中身のない俺に対し、なんと相手は剣のみというではないですか。名前は無いようなので、仮に
『あ、俺が剣なら、お前さんは鎧だし……ガイとかどうだ?』
『いいね~』
───ということで、
そうして台座から出たばかりらしいケンとともに自分らの現状を知るべく、ケンとガイの旅は始まったのでした。あ、名前が名前なので、せっかくだから武神流後ろ跳びを披露してみた。ネタ*4を知っていたらしく、ケンは笑ってくれた。理解あるパートナーっていいよねー!
ジルバード大陸の西に位置するクランゼル王国。その北部に存在する城塞都市アレッサより軽く南西にある枯渇の森が、俺達が舞い降りた場所だった。(あとで分かった事実である)
その枯渇の森の中にあって、さらに魔境と呼ばれる魔狼の平原の中心に、気づけばケンは存在していたんだと。
ハチャメチャに走り回ってた俺が、ゴブリン=サンにダンターグ流奥義ぶちかましをする結果になり、運命的な出会いを果たした日。俺ことガイと、彼ことケンは同じ無機物転生者同士意気投合し───
『オラオラオラオラァアア! 魔石とスキル置いてけやぁああああっ!!』
『ガイあっち! あっちにゴブリン逃げたぞ!』
『よっしゃあ追おう! あ、ケン、念動で自分以外も動かせる!? 剣貸すから二人で殲滅力上げてこう!』
『いいねぇ! よっしゃ、念動───!』
念じれば、ケンの体(剣)から薄っすらとした手のようなものが二つ出た。たぶん、俺とケンみたいな無機物じゃなきゃ見えない念で出来たお手々。
そこに霊章から取り出した二振りの剣を持たせて、俺は俺でケンを手に、ゴブリンを狩った。
しかし……
『あ、だめだこれ。ガイの剣でゴブリンの魔石を斬っても、スキル吸収出来ないわ』
『マジでか。俺の方もべつにケンが俺の剣で斬っても、スキル吸収出来た感じしないし』
『まいったなー、なんか三刀流のアレみたいな感じで面白かったのに』
『あ、じゃあケン自体を分裂させるとかどうだろう。俺のスキルで六閃化とかそういうのがあるから、それをいじくって……そりゃっ!』
『ん? んん? ───うおおっ!? なんか分裂した!? なのにどれにも俺の意識が繋がってるような……!』
『俺が元々、武具の意志で繋がっている絆を大事にしまくる寂しがり屋だからね。そこにある意志を大事にするなんて当然のことじゃい』
『よく分からんがなるほど! じゃあこれで各一本ずつで魔石を斬ってみて───』
『スキルを得られたら儲けもんってことで!』
『『GO!!』』
ケンとガイの冒険譚(中身無し)が、今ここからこの時代に馴染むためにルネッサァ~ンス! ……その内容の多くは、【妖怪:スキル置いてけ】と略されても納得できる冒険譚ではあるのだが。
あ、結果だけ言うなら、分裂したケンでも魔石吸収は出来ました。僕らの殲滅力と効率が上がった!
『ガイ! 俺、なんか自己進化ポイントってのがあるみたいだ! 魔石を斬ると魔石値ってのが溜まって
『マジかよケェエエン!! レベルアップはゲーマーの心! どーせ中身も持ち手もない俺達だし、めっちゃ強くなって美少女剣士に使ってもらおうぜー!』
『おう! その為には他の武具にはないスキルとかいっぱい必要だよな……や、ガイの能力だけでも十分な気もするけど』
『お馬鹿! そしたらケンが“この鎧だけあればいいや、この剣は売っちゃおう”とか言われるかもだろ!』
『ハッ!? い、いやだぁ! そんなのは嫌だ! よしガイ! スキル収集と
『構うもんか頼ってくれ! 水臭ぇことなんて言いっこなしだぜ! 俺達……同じ無機物同士の同志じゃねぇか!』
『ガッ……ガイー! お前ってやつはー!』
『ケッ……ケーン!!』
『……お前北斗の拳とか読んでた?』
『そりゃもちろん』
呼び方がいちいち北斗の拳のリンっぽかったのに気づかれたっぽい。
でも苦笑しつつも協力してくれることには感謝をってことで、俺達は剣と鎧で笑い合い、敵をとにかくコロがし続けた。
『タメてタメて……こらえてこらえて……一気に放つ!!』
俺がケンを二刀流で持ち、ケンが念動の両手での二刀流で自分を二本持つ。
なんかエスタークみたいな僕らが完成して、二人……二人? して笑った。
そんなケンは念動に込める威力で爆発的な飛行速度を出せるようで、それを念動カタパルトと称して飛翔した。飛翔っていうか発射っていうか。
俺の両脇で浮いていた剣が突如として飛び出し、ゴブリンを貫く様は、まさにカタパルトのようで、とても素敵だった。
『分割して考えることが出来る方法とかあればなぁ……そういうスキルを持ってる敵でも探すか』
『マアステキ。そしたら意識を四つにして戦う~とか出来るかもだしな。……いっそ平原の魔物、全滅させちゃう?』
『魔物ってくらいだし、襲い掛かってくる以上は敵だし、いいんじゃないか?』
『よっしゃ! いっちょどーんとやったるかぁっ!』
そして、今日も今日とて狩り狩り狩りで狩りばっかり。
【分析】で魔石が何処にあるのかも分かるし、見敵必殺を心掛けて、時に優雅に、そして力強く、魔物を狩って狩って狩りまくった。
『おおおワイバーン! 飛竜だ! やっぱファンタジーっていったら竜は見てみたいよなぁ!』
『あ、でもあやつ、レッサーワイバーンっていう竜族としてはよわよわなヤツっぽいぞ?』
『いいのいいの! 竜が見たかったんだ! ……で、俺達で勝てそうか? てか俺の体で斬って、耐久力保ちそうか?』
『勝てるけど、同時に砕けそう。普通にやるなら自己修復ないとキツいね。まあ僕のスキルでコーティングしてるから、そうそう砕けることはないと思うけど』
『よし! じゃあ行こうガイ! 竜退治じゃー!』
『オッケーケン!』
そして鎧と剣が竜族に挑み、思わぬ抵抗と反撃と竜鱗の硬さにパキィイインと剣が俺て、もとい折れて、俺が『ケッ……ケーン!!』と叫ぶのはまあお約束であった。
それでも自己修復と回復スキルでさっさとケンを治すと、残るワイバーンも殲滅にかかる。しばらく戦ってて解ったことだけど、俺とケンが出会った場所を中心に、ここら一帯は外に向かうごとに敵が強くなるっぽい。なんという弱者救済措置……もしやこの剣、主人公なのでは?
『強い魔物も安定して倒せるようになってきたな』
『まあスキルごり押しな部分が大半だけどね』
『そりゃお前さんのスキルが有能すぎるのが悪い。格上殺しにも程があるだろ……』
屠竜剣の能力を付与させたら、竜鱗がバターのように斬れました。そんなことが出来るなら、当然ワイバーンなんぞコロがしまくるよね? そしたら『ウマー!』とケンも魔石の味にお喜びなもんだから、張り切ってコロがしまくったら……レッサーワイバーン、見なくなりました。
『……あ、アレェ……? ちょっと倒しすぎちゃったかな……?』
『飛竜は犠牲になったのだ……チュートリアルの自己進化……その犠牲にな……』
『あ、やっぱこれってチュートリアル的な感じなのか? 剣人生のチュートリアルってなんだよーって感じだけど、死ぬほど苦戦する相手に出会うわけでもないし』
『押忍。つまりここは初心者修練場みたいなところなんだろう。だから気にせずコロがしまくっていいと思うよ?』
『よし! じゃあ出来る限りの魔石を吸収して、自己進化ポイント貯めてくか!』
『おうともさ!』
そうして俺達は……やっぱり狩りまくった。お腹も空かないし疲れることもない無機物さんな僕らは、ケンの体で斬れないものなぞ無くなるくらいにレベリングに励んだのだ。
その過程、なにやらヌシっぽくてバカデカい魔物どもを発見。どうやら森に囲われたこの大地の四方……東西南北にそれぞれ存在するヌシモンスターっぽく、さすがに苦戦した。主にケンの体が砕ける方向で。
『ギャアー!!』
『ケッ……ケーーーンッ!!』
巨大スライムと戦ってはその身が溶けたり、
『ギャアー!!』
『ケッ……ケーーーンッ!!』
巨大な蛇と戦ってはその身が欠けたり、
『ギャアー!!』
『ケッ……ケーーーンッ!!』
巨大なカメと戦っては中ほどから綺麗に折れたり、
『ギャアー!!』
『ケッ……ケーーーンッ!! ケンがまた折れたーーーっ!!』
『またとか言うなー! ええい自己修復!』
巨大なサーベルタイガーと戦ってはその身が曲がったり。
それでもゴリ押しでブチノメした先に、次元収納や瞬間再生、分体創造や分割思考、空気圧縮や空気弾発射、振動衝や振動牙などなどを習得。
それらの能力を試すべく強敵を探し、見つけては様々なスキルと強化の先を調べたりしていたら───
『………』
『………』
誇張抜きで、平原で魔物を見なくなった。
【サーチ】で調べてみても、魔物の気配のけの字も感じない。
『さっ……さすがにっ……やりすぎちゃったかなぁっ……!? 生態系とかそのー……こわしちゃった系……?』
『い、いやぁ……まだだいじょぶじゃない? ほ、ほらっ、平原の先の森とかあるし……さぁっ……』
いくら相手が魔物だからって、生態系を崩すほどはやばいのでは……? ということにあとになってから気づいた。そう……これは現実であってもゲームではない……いや当たり前だけど。うろついてたらPOPし続けるゲームのモンスターではなく、普通に生息している魔物という生き物なのだ。殺し続けりゃそりゃあ滅びる。
『じゃっ……じゃあケン……? えーとー……森のほうとか……行ってみる? 案外そのー……まだ見ぬ強敵とか居るかもだし……』
『そ……そだな、ガイ。調子に乗って自己進化ポイントもスキル修得も派手にしたし……ままま魔物が居なくなっちゃったんじゃあ仕方ないもんなぁ?』
なんとなく、平原の魔物を生きる糧とかにしている部族が居たらごめんなさいな気分で、いそいそと森へと向かった。
敵滅んだやっべぇー! 滅んじゃったよ! ……やっべぇー! な感じの状況からそそくさと逃げるべく、平原を抜けて、なんか不気味に静かな森へ。
索敵するべくケンを地面に刺し、スキルを発動させ『……? な、なんだこれ!? おいまずいガイ! 抜いてくれすぐに!』……る前に、ケンが急にそげなことを。
『お、おう? どしたん?』
言われりゃすぐに抜きますとも。相棒が抜いてくれって言ってるのに、悠長に“なんで?”とか言う頭ポケポケの仲間とは違うのさ僕らは。なのでスボリと。
『ぶはっ……はぁっ、はぁっ……! まずいそガイ……! この地面、魔力を吸収する力があるみたいだ……!』
『魔力を……!? マジすか』
そういやぁなにやら、ある一定の場所からは少しヘンな感じはしてたけど。
それってもしや森っていう範囲から平原の境?
……ふむ。とりあえず“森”の範囲内から出てみる……と、平原では奇妙な感じはしない。ので、森の範囲まで手を……ではなく篭手? を伸ばし、この土ならいいサイバイマンが出来そうだぜぇ……! な気持ちで地面に指を刺して……魔力解放! した途端にすげぇ勢いで魔力吸われた! うおあやべぇ!!
慌てて指を抜くけど、なんか指……篭手の指部分がレンジで加熱し過ぎたウインナーみたいにしおれてる! 鎧ボデーなのになにこれ!
『ウッヒャーオ、マジか……! もしかして森側に気配がないのは魔物がこれを嫌がってるからか……!?』
『有り得るな……いや、まあ地面に触れなければ魔力を吸収されることもなさそうだけど、だからって一生をこの平原で過ごすのもなぁ』
『まあ空は飛べるんだし、空からって方法もあるけど』
『虱潰しレベルで魔物殺し回った所為で、何十日、一ヶ月か二ヶ月か? ってレベルで 彷徨ったし、正直ここに居たってもうどうしようもないしなぁ』
『あ、でも弱い魔物の気配はあるな。どうする? 魔石だけでも削って、自己進化P溜めてく? 案外いいスキル持ち居るかもだし』
『そうだな。もう既に結構な数のスキルがあるとはいえ、俺だけが特別ってわけじゃないかもしれない。ガイっていう鎧も居るんだし、もしかしたら盾の転生者も……!』
『ハッ……!? そ、そうか~~~っ! 剣、鎧ときたら、盾の転生者も居るやもなのか~~~っ!』
『……時々出るお前のその間延びする声、もしかしてキン肉マン?』
『おお理解者!』
言われてみれば、剣、鎧ときたら、盾の転生者も、他の武器種の転生者も居るやもなのだ……! ここで張り切らなければ、『あ、わたし槍だけを愛する者なんで』とか言い出す槍をこよなく愛す全裸の絶世の美少女とか居るやもなんだ……!(*いません)
『…………ガイ』
『…………ケン』
『『行こう、俺達の
そう、弱い魔物なら大したスキルなんて持ってないだろ、なんて言えない世界かもしれんのだ……! こういう地道な作業をほったらかすからそれが油断となって、多くの勇者パーティーのリーダーはざまぁされる……!
もっと地力と自力を地道に稼ぐ、大器晩成を自分で磨くような熱い血燃やしてけ! 今血ぃ通ってないけど!
こうして俺達は───
───力が欲しい───……
弱き魔物の悉くを襲い、魔石を喰らい───
この手に何か───
数日の内に森の中の魔物もいざ殲滅、といったところで───
そう───【剣】でもあれば───
とあるモフミミ奴隷少女と、出会った。
02/師匠と師範とネコミミ少女
ア、アアーーーッ!!
『ケンケンやべぇ人居た人! どうするどうする!?』
『おおぉおおおつつつおちおちち落ち着けガイ! どうするったって……どうしよう!?』
『いきなり“僕らの装備者になってくだすヮァいィ……*5”とかキモすぎるよね!? 不審者ってレベルじゃねーぞ!?』
『でもようやく会えた人間……人間!? ケモミミに……尻尾!?』
『アッ……アアーーーッ!!』
人に会えただけでも嬉しいのに、まさかの獣人! ぼろぼろで、服もひっどい布の服、みたいな感じで腕の首には明らかな重りだと言わんばかりの枷……! もしや逃げ出した奴隷少女か!?
『って、ツインヘッド・ベアに追われてるっぽいぞ!』
『なんと!? ───ケン、俺にいい考えがある』
『なんだって!? ───あ、なんか察しついた。ククク……鎧の、そちもワルよのう……!?』
『いえいえ……おブレード様ほどでは……!』
することは簡単。襲われてる少女を剣と鎧として助け、そのままなし崩しに装備者になってもらう!
はい、控え目に言って最低ですね。
『で、でもどう声かける!? いきなり空洞の鎧と意思を持つ剣が“俺を使えー!”とか怖くないか!?』
『……リビングアーマーが【でんせつのつるぎ】を手にモノスゲー勢いで自分に向かって走ってくる場面をご想像ください』
『………………俺なら悲鳴上げて逃げるわ』
『俺なんて逃げようとして躓いて転んで惨めに命乞いしてると思う───ってあぁあああ言ってる間にピンチだ! ええいもう突っ込むぞ! 俺のスキルに【鎧化】っていうスキルがあるから、とりあえずそれで強制装着状態にする!』
『お、おおっ!』
『でもケンは俺とは違う個体だから、しっかり装備してもらわなきゃならんと思う! だからあの少女に手に取ってもらったら、【装備する】って意識させたほうがいいかも!』
『おおっ! よくありのパターンだな! よし!』
そんなわけで早速、鎧化をモフミミ少女に向けて発動!
すると俺の体(鎧)がゴパァと部位ごとに分解し、少女に向かってなんというかこー……正義の装着型合体ロボットアニメのように飛んでいき、ガコォン! ガキョォンッ! ゴパァッカァアアアン! ブッピガァンッ! と、謎の電磁波(?)を出しながらくっついていくではないか……!
「っ!? な、なにっ!? なにっ!?」
<【名無し】が装備者に登録されました>
そしていきなり鎧に強襲装着を強制された少女は、当然のことながら恐怖しておりました。うん、ほんと当然だ。でもゴツいフルプレートじゃあせっかくの美少女がもったいないので、モンハン式重ね着装備状態モードのように、インビジブルで姿を透過。
姿だけを見れば、元のボロ布装備の少女の完成である。
『モフミミっ娘よ! 戸惑いの方が強いかもしれないが今は細かいことはいい! 急げ! 俺を持って【装備する】って強く念じろ!』
「!? ───……ん、わかった」
俺とは別に、宙を舞ってきたケンが告げた言葉に、少女は疑りも無くケンを手に、『強く! 強く念じろ! この剣は自分の手足の延長ってくらい強くだ!』───強く、強く念じた。
すると───
<名無しが装備者に登録されました>
「───!?」
『よし、スキル共有───!』
「!!?」
<【スキル共有】により【名無し】が称号を複数獲得しました>
<【火術師】を獲得、【料理王】を獲───>
『あ、じゃあ俺もスキル共有を』
「!?」
<【スキル共有】により【名無し】が称号を複数獲得しまガガガガガガ >
『おぃいィィィィ!? なんかナレーターさんバグっちゃってんだけど!? お前なに共有したの!?』
『アルェー!? いやっ……ちょ、ちょぉっと……スキル多すぎたかなぁ……!? ま、なんにせよ』
目の前には既にツインヘッド・ベア。その太い腕を振るって、モフミミ少女を潰さんとしているけど───
『このイージスの盾で君の攻撃は防ぐぞ』
正面戦士の盾を展開、攻撃をごすんと防いでみせた。
『お前盾展開なんて出来たのか!?』
『あっはっは、高性能ですぜ俺はァ! というわけで少女よ! チュートリアルバトルだ! ケン(仮称)を使って、この熊さんを倒してみせなせぇ!』
「───うん。やぁ!」
少女が駆ける───!*6 と同時に蹴り弾いた地面が爆裂し、目の前に居たツインヘッド・ベアさんに激突。盾を展開していたこともあって、ビッグバン・タックルめいた衝撃を受けた熊さんはバキベキと骨身を砕かれ、ドッゴォゴロゴロズシャーと転がり滑り……やがて息絶えた。
『………』
『………』
「………」
そこに、悲しい風が吹きました。
『ケンを使って、って言ったのに……』
「!? ご、ごめん、なさい……」
『ああいやいや責めているわけではござらん。それより少女よ、ちとあの熊さんに近寄って、魔石を剥ぎ取ってくれんかね?』
「ませき……」
『そう。それが欲しくて僕ら、森を彷徨ってたんだ。そしたらなんと、卑劣にも少女を襲う熊さんが! ……ということでキミぃ、よかったら僕たちとデートしなハァィ……?』
『なんでいきなりナンパになるんだよ! 装備者探してたんだろ!?』
『ご、ごめんよ! でも僕一度やってみたかったんだ!』
「……そーびしゃ?」
言いつつ、ツインヘッド・ベアをさくさくと解体し始める少女。
スキル・高速剥ぎ取りと剥ぎ取り上手は大変活かされているようだ。
『あ、あー……すまん、実は俺達、剣と鎧とで個別に分かれた意志を持つ武具ってやつでな? 当てもなく装備者になってくれる人(美少女に限る)を探してたら、丁度お前を見つけたって次第でな』
『ウヌ。だから少女よ、よかったら僕らの装備者にならない? 今なら僕らが持つ様々なスキルを進呈、とっても強くなれるよ?』
「ん……それはとても魅力的。……でも、私は奴隷だから、きっと取り上げられる」
『んん? ……逃げてきたんじゃないのか? 俺ゃてっきり逃亡奴隷生活の果てに、この森に逃げ込んだのかと』
『俺もてっきりそうだとばかり……なぁ、逃げられないのか?』
「無理。逃げられない。この首輪がある限り……逆らえないし逃げられない。何度か殺して逃げようとしたけど、だめだった」
『殺っ……ど、奴隷商人を?』
「そう。殺して、逃げようとした」
『お、おう……』
『OH……』
ケッナーゲ&パワフォゥどころじゃなく、ハングリーでデンジャーでした。
『あ、あー……壊しても? だめか?』
「ん……たぶん死ぬ。そういう呪詛がかかってる」
『あ、それならだいじょぶ。少女よ、キミに共有したスキルの中に、ジョブ秘奥義ってのがあると思うんだけど』
「? ……うん」
『【絶対回避】ってのがあるから、合図したら使って』
「…………ん」
『……おい? まさか───』
『はい使って!』
「ん! <絶対回避>!」
少女がジョブ秘奥義【絶対回避】を使用。
その、回避が発動するかしないかの間隙に、呪詛の首輪を異翔転移で空中に転移。
すると首輪はゴトォと落下し、途端にそこから溢れ出た呪詛は絶対回避によってあっさりと回避された。
あとは対象を見失って漂うだけの呪詛オーラを【ストック】で回収。
『よし! これでキミは自由だ!』
『お前こんなことまで出来るのか!?』
『出来ますとも! ほらほらケン!? 少女の枷を斬っておあげ!』
『っととすまん! すぐやるから!』
言って、ケンは素早く動き、少女の腕と足の枷を斬り落と───ミス! 少女に攻撃が当たらない!!
『斬れないんだが!?』
『あ、まだ絶対回避が続いてるのか。……よし、効果切れた。どうぞ』
『フレンドリーファイアにも対応とか万能だなおい……』
『絶対回避だもの、絶対に回避できなきゃ嘘だ。そして回復とかも回避しちゃうから結構使いどころが難しい』
『あーうん、絶対回避なんだもんなぁ……そうまで融通効かない能力もめずらしーよ。……っと。ほら、これでお前は───』
自由だ、と……ケンが口にしたまさにその時。
「くそっ! 何から何まで大損だッ! 使えない奴らめ……!! おい! そこのお前!」
「っ!」
森の先から現れた、なんかターバンとマント巻いた……クエクエVで主人公張ってそうな装備の白髭のおっさんが現れた。
少女は怯えたように身を竦ませて、ケンを胸に抱くと震え出した。
「残ったのはケダモノ一匹か……まさかお前がツインヘッド・ベアを倒したのか? ……その剣で?」
「ん……」
「フンッ……高そうな剣じゃないか、よこせッ!」
もちろん少女はそれを拒否するようにケンを抱き、遠ざける。と、奴隷商は舌打ちをして手を振り上げ、なんと少女に向けて振るうではないか!
『<反射>』
パァンッ!!
「いだぁっ!?」
一定以下のダメージを反射する能力にて反射すると、奴隷商はとても驚いておりました。
「ッ……てめぇがなにかしやがったのか? その剣の能力か? チッ……いいからよこすンだ! 逆らえねェのは分かってンだろうが! その首輪とこの【契約書】がある限りてめえら奴隷はなァ! 首輪───あれ? 首……え?」
『
すっげぇゲスい顔で契約書? とやらを取り出したおっさん。その契約書のサインを、【調べる】で調べておいたおっさんの名前にして、異翔転移で落ちてた首輪を装着させた。
「へ?」
で、驚いてる隙にケンが念動で契約書を強奪。
「えっ、あっ!」
ええっとなになに……? 奴隷として身を堕とし、己の名である“フラン”を捧げるとともに、命令には逆らわないことを誓いますぅ……?
『少女よ。きみ、フランって名前なのか』
「……! そ、そう、フラン……! 私は、フラン……!」
『じゃ、この取り上げられた名前ってのをおっさんの名前にして、主人をフランに、と』
「……! すごい……! そんなことできるの……!?」
『おーできるできる。さてフランさん? 最初にこのおっさんに命令してみたいこととか、あるかなー?』
「ん。……」
「あ、あ……あ……! お、お前! なにをした!? なんで俺の首に首輪が……! 契約書もいつの間にお前の手に……!」
あら? 念動ってもしや他人には見えない? 俺にはちゃんと見えるんだけど……とアイコンタクト(?)をしてみると、そうらしい、とケンが頷いた。傾いただけともいえるけど。
「……命令。今まで奴隷たちにしてきた仕打ちを後悔しながら、これからお水だけ飲んで、飢えても食べ物は食べずに勝手に生きて」
「───!? ふ、ふざけっ……ぐあぁああああああっ!! い、痛っ……おいっ! これを外せ! 契約書をっ……契約書を千切れ! 燃やせっ!」
「逆らうことも危害を加えることも許さない」
「っ……ぐあぁああああああっ!!」
「……自分がしてきたこと、悔やみ続ければいい。お腹が空いても食べられなくて、傷つけられても手当てもなくて。でも、簡単には死んでほしくないから水だけは飲んでいい。そのままそうして、空腹がどれだけ辛いか知りながら死ねばいい」
「あっ……あ、ああ……あぁあ───!! ま、待ってくれ……! 頼む、待っ……まって……!」
……うん。やっぱりハングリィ&デンジャア。
まあ、自分を痛めつけて私腹を肥やすようなやつに優しく、なんてフツーは出来んよ。あ、ちなみに水は間隔も空けずに大量に飲むと中毒起こすらしいよ。怖いね。
だから水を大量に飲めば飢えも凌げるのでは? って考えは甘いらしい。怖いネ、人体。
『じゃ、あとは有り金全部強奪してと』
『容赦ないな。まあ相手が悪いのは確定的に明らかってやつだしなぁ』
『そうそう、外道の世界は単純でいい。悪には悪を以って返す、だ。さて、首輪の強制力も長続きはしなさそうだし……ホイ!』
師匠のように、念動の応用でデコピンを一発。攻撃を介して状態異常を付与しておいた。かつてこの博光も味わったドラゴンズカーニヴァル。バハムートの竜宝玉の欠片を持っていたがために、竜族に襲われまくったあの呪いを、プレゼンテッドバイ・博光。
「ひ、ひぃっ!? なにをした!? なにをっ……! ひぃっ! 寒気がっ……悪寒が! 足が震えて……! お、おい! なにかしたんだろう!? 治せ! なんとかしろ! なんっ……頼む! お願いだ! お願いします! 後悔ならしたから! ほ、ほらっ! なっ!? みっともなく涙も流してこうして頭もっ……なぁっ!?」
「………」
「お、俺にも理由があったんだ! 仕方が無かったんだ! どうしてもそうしなきゃいけない理由があったんだ! 分かるだろう!? こ、こんな状態のまま置いていかれたら死んじまう! ~……ま、魔物を前に動くなって言ったことを気にしてるのか!? あれは俺じゃないだろう!? だからっ……なっ!?」
「………」
『……フラン。もしキミが、コイツを突き放すことにほんのちょっぴりでもチューチョがあるのなら……うぬを守る鎧たるこの俺が、この言葉を授けよう。【いくらひどい目に遭ったからって悪いことをしていいわけがねえ。悪いことはやっぱり悪いんだよ】。過去のそいつにどんなことが起きようが、それがそいつ以上の残虐非道で悪逆無道の相手だったとしてもな、フラン。お前に笑みを浮かべながら非道を行なったのは間違い無くそいつだ』
「ん」
『そうだとも。で、ガイがそう言うんだったら、ケンたる俺からはこんな言葉を届けよう。……罪を憎んで人を憎まず、なんて言葉があるけどな? 罪を作り上げるのが人間で、罪で人を傷つけ、殺すのが人間だ。人が居なけりゃ罪なんて出来上がらないんだからな。だから、憎んでもいい。激怒したって構わんのだ。ただ───』
「ん」
『憎んだ相手を殺すなら、俺で殺せ。もしくは、剣である俺が殺そう』
「けん……」
『うむ。そしてこの鎧が、フランをどんな攻撃からも守護ってみせよう』
「がい………………しゅごって、ってなに……?」
『『まあ……普通は通じないよなぁ……』』
全部本部っていうおっさんが悪いんです。
なので…………この奴隷商のおっさんがこれからどうなろうとも、全部本部が悪い。
『で、どーするフラン』
『このおっさん……処す? それとも処す?』
「ん、もう鎧……? が、呪い? かけてくれたみたいだから、いい」
『そか。そんじゃ』
『おうとも、そんじゃ』
涙とよだれと鼻水を撒き散らしながらしつこく懇願してくるおっさんだったが、衝撃波を放って吹き飛ばすと、やがて僕らは歩き始めた───!! そう、さりげなく、なにも引っかかるものも感じさせず───!
「…………? 一緒に、来てくれる?」
『ンッグ!?』
『(バレてるーーーっ!!)』
さりげなーく同行伝説は失敗に終わった。それっぽい会話も含めて、ついていくことが当然のような流れを作っていたというのに、そこに気づくとは、やはり天才……!
でも、来てくれる? と訊いてきたからには、悪い印象は与えてないようだったので……俺とケンとで、精一杯セールスするようにして───こうして、装備者は見つかったのでした。
『よろしゅうな、フラン』
『よろしくな、フラン』
「ん。うん、そう。フラン。私はフラン……♪ ……あなたのことも名前で呼びたい。名前は?」
『俺はハーン! よろしく頼むぜ!』
「ハーン……!」
『ぁうそ! うそですごめんなさい! あーその、俺、鎧としての名前はないんだ。そっちの剣はウポポ族のチンコケースって名前なんだが』
「うぽぽぞくのち」
『だー! それ以上、いけない!! フランになんてこと教えてんだお前は!! んでもってなんつー見事な真っ赤な嘘ついてんだよ!』
「うそなの?」
『うむ。本名はドクターキングオブゴッデンシュタイナー博士だ』
「かっこいい……!!」
『嘘だからな!? いや、こっちでの俺の名前は……まあ、仮の名前くらいしかないわけだけど』
『うむす。だからフラン、お前が名付けてくれないか?』
「私が……?」
『そう。その方がフランの装備だ~って実感がめっちゃ湧くと思うし』
『お、なるほどそれは確かに』
「じゃあ……剣は師匠。鎧は師範って呼ぶ」
『それ名前!?』
『フランフラン! 鎧使ってフランの体動かしていい!? ねぇいい!?』
「? いいよ?」
───許しは得た。
ならばいざ───!
仁王立ち、半回転しながら頭上で拳同士を殴り合わせ、最後に───ガッツポーズ!
『・・・・すごい漢だ。』
師範と呼ばれては、こちらも不破忍道師範の彼の真似をせねば……不作法というもの……!
<名前が【師匠】と【師範】に認定されました>
『『アッ……ハイ……』』
でもまさか本当に認定されるとは思ってなかったので、しっかり認定されてびっくりした。
「ねぇ師匠、師範。二人はなぜしゃべれる?」
『フッフフ、その理由についてはとても深い理由があってだな……!』
『え? お前さんもトラックに撥ねられてとかじゃないのか?』
『え? ケンはそうなの?』
「ケンじゃない、師匠」
『……君はシショ・ウランドーだね?』
『そういう君はシハサン・ジョースター』
「…………師匠と師範」
『OK僕師範』
『OK俺師匠』
「ん」
『で……なんで喋れるか、だったよね? 実は俺は元々別世界の住人でね?』
『ちなみに俺もだ。まあ俺はトラックに、ってテンプレだったわけだけど。ガイは?』
「むー……師匠、ガイじゃない。師範」
『アッ……ハイ……。で、そのー……師範は?』
『俺は仲間らに飛ばされたようなもん……かな。求めるモノの元へと逆召喚する、みたいな』
『召喚されるんじゃなくて、“俺が突然召喚されたぞオラァ”みたいな?』
『そうそうそんな感じ』
「……?」
フランはいまいちよく分かってないようだった。
まあうん……そうだよね……。
『詳しく話すとなると長くなるんだけどな、俺らの世界にはそのー……トラックっていうやべぇ乗り物があって───』
「長くなるなら……10文字以下で」
『『短ぇなオイ!!』』
10!? 10って……あー……あ、文字でっていうならあれだな。
『うーんとりあえず……』
『一言で言っちゃうと───』
転生したら
かな?
03/オンデョバ・ビー
ビッバノーン!!
『ハイ、というわけで───お風呂タイム終了!』
『まさか即席で風呂を作っちまうとは……』
『劣悪環境での生活の所為で、いろいろ汚れてたからね。んー、綺麗になった綺麗になった』
装備者になってもらったところで、まずはフランを即席露天風呂でゆったりたっぷりの~んびり♪ してもらった。
まず月然力・地で地面に穴を掘り、堀った穴は月聖力の標的固定で覆い、そこに月然力・水で水を張って、月然力・火で一気にファイヤー。水中に火を出現させるんですよ。スキルだから、TPがある限りず~っと出していられるしね。
もちろんスキル:月清力で清めることや、スキル:創造でボディーソープやヘアシャンプー(ハーバルエッセンス)、その他ケア用品を創り、彼女を美しくすることも忘れなかった。
汚れは……さすがに、うん。ケッコー出た。
でも今は湯上り美人さん。しっとり上気した顔に、湿り気を帯びた黒髪。そして用意した服(防御力一千万越え)を着た彼女は、なんかやべぇくらいに色っぽかった。
『……あどけない黒猫少女が妖艶な小悪魔に……!』
『はーいはいはいシショー=サン? ヘンな想像しないの』
お風呂が終われば食事の準備。
師匠の料理王スキルと俺の創造とが合わさって、素晴らしい料理の数々がキャンプ飯風に並んだ。なお食器類や調理器具は普通に創造しました。
調理は料理王スキルを持つ師匠に任せて、俺はフランの髪を創造したドライヤー(アルティメットマイナスイオン発生型)でファゴオオと乾かして、長い奴隷生活の中で凝り固まっていた筋肉や関節などをほぐし、リラックスさせていった。
そんなこんなが終われば料理は出来て、フランはスゴイ・オイシイ級の料理に舌鼓を打ち、目をきゃらんきゃらん輝かせながら食事を終えた。
食事が終わればマッサージ用にと風呂上りから着させていた服を(防御力一千万越え)を変形させ、綺麗でありつつ冒険者に見える服へと変える。その際、しっとりと出ていた汗などは浄化、霧散させるものとする。
「おー……! すごい、軽くて邪魔にならない……!」
猫だからね、なんかゴテゴテしたのは嫌ってると思ったのだ。そしたら案の定。むしろちょっぴり露出が多いくらいの方が好きっぽい。
足も、今まで素足で歩いていたのを、汚れを徹底的に排除、浄化し……や、まあ風呂自体が浄化と清潔さを保つ力を含んだ湯舟だったから、ほんの1ミリの汚れさえ見逃さずに落としてはあるんだけどね? ともかく綺麗になったおみ足にはこれまた窮屈に思わないのにしっかり包んでズリ落ちないソックスと、靴は足をしっかりガードしつつも不格好にならん程度の見栄えの黒いブーツ。ちなみに重さはほぼ無い。鎧としての俺が、変形鎧であるブリュンヒルデと一緒になって模ってるから、どんな形にもなれるのさ! ただのYシャツ一枚でしかないのに、防御力が一千万を越えてるとかね。
……? そうしておなごの素肌を堪能してるんだろうって? ホホ、ノンノン。博光ですぞ? この某めは。適齢期に到らぬおなごに対してそげな感情なぞ求めませぬ。
こんな世界に落とされる前に、そんな感情はきっちり抑えるよう誓約を埋め込まれておりますゆえ、男女の関係なぞありませぬ。
それこそ、相手から求め、この博光が望まぬ限りは。
……べつにいいのにねー? 一途のどこが悪いってんでぃ、とか思わなくもないけど、様々な世界を旅し終えて復活して、やっぱり俺が頷くだけで幸せになれた人ってたくさん居たのです。そんなおなごらを悲しませぬためにも、ってことで誓約っていうかほぼ呪いに近いかたちでいろいろ埋め込まれた博光ですが。
『(でもまあ! この世界じゃ俺鎧だし! 武具だし! 人ですらないし!)』
なのでこの世界で俺は、この少女フランさんをスバラゴイ獣人少女にすることに全力を尽くしとうございます。いっそ過保護って言われるほどになァ!! ヌッハッハッハッハ、ハァーーッハッハッハッハッハ!!
……一途で居たいって気持ちはそりゃああった。でも、それよりも俺が頷くだけで幸せになれる人を見過ごし続けることが辛かった。そしたらドリアード=サンが“幸せにできるのでしたら、頷いても構いません”とか言い出すし。そしたら“答えは得た。大丈夫だよ博光。私もこれから、頑張っていくから。……健気な気持ち、10点”とか言い出すお子が居て、それからはもう逃げ場なぞなかった。
よーするに後方宙返り→阿修羅閃空の構えで着地。みたいな石塚流究極最強奥義。ガイは死ぬ。
ノリノリで書いてもハッと気づくと別のことをやらなきゃいけなくて手が止まる……そんな経験、ありますか? 僕はあります。
そしてああもうこんな時間だ文字書いても大して書けない……と別のことをやるのに、その別のことになんか時間を食われまくってて、いや書けたやん! とかセルフツッコミしたあと、目覚めた後に軽く自己嫌悪。うーん、世の中、というよりは自分を完全にコントロールできるようになりたい。
欲に弱いよねぇ人間ってやつは……ちくしょい。