凍傷気味のみかん箱   作:凍傷(ぜろくろ)

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やっぱりオリジナル。
奴隷と僕の続きとして書いたのではなく、こんなのはどうか……という案を適当に書いていたら、ちょっぴり長くなったので保存しておいたやつ。


奴隷と僕とを結ぶHIMOの外っぽい話

 世界が、ひどくどうでもいいと思える瞬間、ございません?

 呆れるほどに“なんだこれ”を胸中に抱いて、理不尽を疑問に思い、口にしたところで理不尽で返される。よくある話ですわ。

 けれどわたくしとてそれに疑問を抱かないわけではありません。理不尽には理不尽を。“目には目を”、という言葉があるのなら、そうしていいのだと勉強中に知ることが出来ました。

 それからはとても世界が楽しくなりましたわ。まあ、苛立つことの方がまだまだ多いのは事実ですが。

 ええと、わたくしには両親と妹がおりますが、両親の愛は妹のみに向いています。え? 突然? まあまあ聞いてくださいな。

 わたくしの髪が両親の髪色と同じではないから、自分達と同じ色の妹……フローゼのことが可愛くて可愛くて仕方がないよう。わたくしの色は先祖返りのようなものでして、それを承知の上でも両親はひどく冷めたものでしたわ。母の不貞を疑うことなくその話を出すあたり、父も母を愛しておりますから。

 さて。両親の口癖は“姉なのだから”。妹の口癖は“お姉さま、それください!”と来ます。こう言えばなんとなく話の先は予想が付きますわよね? ……ほんと、笑ってしまいますわよね。

 さてさて、こんな家に産まれたからには“腐らず生きる”、“真っ直ぐ育つ”は無理と断言いたします。

 わたくしは正しく捻くれて成長しましたわよ? ええ、化け猫を被って生きてきましたわ? 猫ごときを被った程度で、この生活を続けられるものですか。

 

「お姉さま、それくださいませ!」

「お父様が良いと仰られたら、構いません」

 

 妹は笑顔でわたくしの私物を奪います。……ああ、誤解なさらず。これでも最初の内は抵抗しましたのよ?

 けれど“姉なのだから”が始まると、正直もう面倒臭いとしか思えませんの。だって、同じ言葉しか放てない人形の相手をするの、疲れません? わたくしの言葉の正当性など、あの両親という名の人形どもにとってはどうでもよろしいんですのよ?

 ならば、一応は“父が言ったから”ということにして、わたくしの私物を奪わせることにしたのです。

 日記に詳しく書くことを忘れたことなどありませんわ。

 さてさて、そんなわたくしですが、飾りも奪われ(父の命令で)、ドレスも奪われ(父の命令で)、化粧のための道具も奪われ(父の命令で)、自分付きのメイドも奪われ(父の命令で)、いよいよ私物と呼べるものが部屋から無くなりました。

 いえまあ、今日というこの日にそうなるように調整したのですけれどね。今日はわたくしの誕生日。親も既に覚えていない、わたくしがわたくしの努力を褒める日でございます。

 さて、わたくしには幾つかの特技がございますわ。それはわたくし付きだったメイドのカヤに無理を言って教えてもらった、裁縫から始まる様々です。

 小遣いとしてお金だけは貰えていたので、少しずつ道具を集めてコツコツと縫っていたものがございます。

 

「───フッ」

 

 それは、貴族令嬢が着ていいようなものに非ず。

 どちらかと言うまでもなく、冒険者が着るような衣服ですわ。

 それを着込んで、最後のドレスを化粧台の横に吊るし、日記を化粧台の上に。これにはこの家でされてきた全てのことが記されております。なお、同じことを書いたものがわたくしのもとにもう一冊。事実を隠蔽された時用のものですわ。

 さて、ここまで来ればもうこの家に用はない。

 口調だってお淑やかにする意味もない。

 かつてはこの部屋にあった、女性の冒険譚のように、わたくし……わたしは自由に生きていいのだ。

 今日の妹のおねだりが婚約者だった。誕生日に婚約者を奪ってくれるなんて、なんとよく出来た妹か。わたしは自由だ。結婚が女性の幸せ? 義務? 笑わせないでほしい。

 こんな家のために何故、好きでもない男のもとへ行かなければならないのか。

 相手からわたしを指名してきた事実など知ったことか。不敬? 罪になる? ああ、この家のね。わたしは知らない。だって、わたしはあの両親の子供ですらないのだ。それを、この日記が証明してくれる。血は確かに繋がっているのだろう。けど、それだけだ。

 だからわたしは───

 

「さぁってと」

 

 長い、自慢だった美しい髪をヴァッサリ切った。

 躊躇いなく、ヴァッサリと。躊躇うと散るからね、髪。

 なので一回一回鋏を入れる際には止めることなく最後まで切り込んで、切った髪を紙に包み、紐で縛った。

 女性の髪は売れる。これを道中で資金にして、わたしは───! と、まあ。そんな感じで駆けだしたわけですわ。ふふ、案外まだまだ丁寧に喋れるものでしょう?

 

 

 

 

 

 夜。家からは普通に出られた。両親よ……興味が無いにも程ってもんがあるでしょーに。まあいい、これでわたしは自由だ。

 髪も切った上で髪型を変えたし、色も魔法で変えた。服も令嬢とは思えない、手作り感丸出しの一張羅。でも、それでいいい。

 本で見た物語、冒険譚などには色々なものがあったけれど、わたしはそれに固められて生きるつもりはない。

 今まで出来なかったことが出来るのだ、何故それを放棄しなければいけない。

 

「すぅ……はぁ……、……───んっ」

 

 誕生日を迎えることで、16になった。

 この世界の子は16になると祝福を与えられる。

 わたしの耳に届いた祝福の名は“聖女”だった。

 よく聞く、虐げられていた子が実は聖女だったーなんて、そんなお話をどっかで見た気がする。

 そうするか? とんでもない、自由を得たのに何故に自分から関わりに行かなければならないのか。

 聖女の祝福を得たことで出来るようになったこと、使えるようになったものは多い。まずは身体強化。呼吸を整えて、んっ、と力を込めれば、自分の中の身体能力が向上したような気が…………する?

 まあいい、と駆けてみれば、随分とまあ速く走れるようになり、疲れにくくなった。

 聖女様らしく浄化や癒しなども使えるようなので、これで不潔さに苦しむこともなさそうだ。

 

「うん、いい感じ」

 

 わたしと同じ髪の色の先祖。なんでも迷い込んできたどこぞの誰かと我が家のお嬢様が恋に落ちたらしく、そこでその血が混ざった。

 わたしの血はその迷い込んできた誰かに寄ったために、あの髪の色だったんだろうけど。

 髪の色は大事だ。髪の色で、出来ることがわかると言えるほどに、この世界では色は大事。まあ、わたし勝手に変えたけど。

 わたしの元の色……黒は、迷い込んできたその人が使えたらしい技術に特化した色だ。

 親に、その人が書いたらしい本を親に投げつけられたあの日が懐かしい。

 それを読んで、何度も読んで、何度も試行錯誤して覚えたのが、氣、というものだった。

 人の体の中にはほぼこれが混ざっている。けれど、巧く扱えるのは黒髪の者だけ、という話。かつてのわたしは死に物狂いの気持ちでこれを必死に覚えた。

 

「集中───!」

 

 トンと聖女の力以外に足に込めたもので、地面を蹴る。

 ……そう、わたしはこれを、必死で勉強した。親の興味を引きたかったのだ、あれでも。まあなんとも可愛らしい努力じゃござーませんの。

 お陰で得られた気だけれど、親は自分には使えないものにまるで興味を持たなかった。

 自分と同じ色を持つ妹の力にデレンデレンだったのだ。

 そうなるとどうなると思います? もっと努力を? ええしましたわ。もっと興味を惹く? ええしましたわ。

 

  ───ただし。あの家、あの家族から離れるための努力を。

 

 興味を惹こうと動けばシラケた目で見られると知ったわたしは、ええそれはもう妹と比較してもらうために努力しましたもの。

 そして、見事こうして興味を無くさせて逃げることにも成功。ざまぁございませんわ。要らない婚約者も妹になすりつけられた。わたしを探す理由が今さらござーまして? ござーませんわよね? オホホホホ! ……っとと失礼。

 ともかく! わたしがこうして駆けだした先の物語は、決して暗く物悲しい冒険譚に非ず! 出てくる人物全員が暗い過去を持っている~とか冗談じゃない!

 わたしの過去? ハッ! 親に愛されないからこれからも不幸だなんて誰が決めまして!? わたしは今! 過去最大に顔がニヤケてございましてよオーッホッホッホッホ!!

 聖女の力で疲労を癒し、ギュリィッ……と大地を踏み締める足には氣を。そうして前へ前へと全力疾走して、わたしはとっととわたしを知る場所からの離脱を早めました。

 あ、ちなみに日記を置いてきたことに関して、少しでもわたしを思ってくだされば……などといった軟弱な思想はこれっぽっちもございません。一切様子を見に来ない親や妹は、もちろんそのままわたしの部屋を放置するでしょう。

 けれど、婚約者であったあの方はどうでしょう。

 結局相手が婚約者の変更を受け入れたのかも聞いていなかったわけですが、まあ話し合いのために一度はわたしの部屋には来る……いえ、メイドに呼んでくるよう言うだけなのでしょうね。

 けれど出てこない、鍵も開かない部屋を不審に思い、強硬手段かなにかで開けた先にはわたしの日記が……!

 コポォッホホホホ……! いやですわ傑作ですわ耐えようとしても笑いが口から漏れ出てしまいますわ!

 そう、わたしが日記を見てもらいたい相手は元婚約者です。

 それを見てどういう反応をするのか。あの親や妹がどう反応するのか。

 妹に全てを奪われたなど嘘です、などと親が言おうものなら、すかさず“ではこの何もない部屋をどう説明するのです?”と元婚約者様が仰ってぁあああああ! それを見られないことだけが心残りでーすわー!!  オホーホホホホホ!!

 などと一人賑やかに全力疾走をしている、ぶきっちょに切られた上に魔法で変色された緑色の髪を揺らす、華麗なる平凡着こなし冒険者風の気色の悪い少女は誰でしょう。

 はい、紛れもなくわたしです。

 ……隣国、入れるといいんですけど。

 

……。

 

 夜になりました。

 国境いにある関所まではなんとか辿り着いたのですけど、はてさて、身分証を証明するものも持たないわたしを通してくれるかどうか。

 ソッと抜ける? ……ノン、なにやら歴戦の勇者のような筋骨隆々な門番さんがいらっしゃいます。目に映るものすべて、滅ぼさずにおれんって感じの猛者ですやばいです。なんでか上半身裸ですが……その。門番さんですよね? え? 野盗? 蛮族?

 

「あ、あの、すいません」

 

 こういうお方にはまず会話。問答無用は死にます。……死にます。

 

「っと、なんだい嬢ちゃん、こんな時間に」

 

 ムキーンとポージングされましたわ。何事ですの?

 

「こ、ここは、その。隣国へ続く関所で間違いありませんか?」

「がぁっはっはっは! そうだぜ嬢ちゃん、ここは隣国、サラスパクロイスに続く関所だぜぇ!?」

 

 合っているらしいです。そしてポージングが止みません。

 サイドトライセップスをしつつ、胸筋をムチチッと揺らすのはやめてください。

 

「えーと、家で要らない子扱いされて嫌になって出て来たんです。隣の国に行きたいのですが、通るのに必要なものはありますか? あ、身分証さえ持たされないような存在だったので、身分証はないです」

「おーそかそか。んじゃあここに手ぇ翳しな。まずはそっからだ」

「? はい」

 

 言われた通りに、石板のようなものに手を翳す。と、なにも掘られていなかった石板に、なにやら文字が現れて……

 

「ふむ。アデーレ・ロンデルミューレ。犯罪歴は無し。髪の色のみ偽装、と。よし、偽装色は解いてくれ。その色で判断させてもらう」

「はい」

 

 ここでわざわざ躊躇することはしません。ただし“ひっ捕らえよ!”な展開になったら、刺し違えてでもこのマッスルの黄金を潰す。門番の仕事をしていただけ? 知るか。だったらわたしは生きるために、自由を得るために必死だっただけだ。

 いえまあなにかをする前にワンパンで潰されそうですが。

 というわけで髪を元に戻すと、「黒か……」と顎に手を当てふむと頷いた。

 ……なんでしょう、意味もなくショートパンツの下のショーツが気になりました。女性を見て黒か……などと、下着当てでもしたいのでしょうかこの殿方は。

 

「お? おー……っとと、そういう意味じゃなくてだなっ!? あ、あー……うむ、問題は無さそう……か? てか、ロンデルミューレっつったら随分とまあ離れているが……ま、そりゃ個人の都合だしツッコまんさ。よし、んじゃあ……よっと」

 

 慌てたり誤魔化したり、頭をゴリガリ掻きつつ、彼は石板の端をコンと折った中指第二関節で叩く。と、石板が光って、縮小。一枚のカードになって、彼の手に落ちた。

 

「ほれ、このカードがお前さんの身分証になる。無くすんじゃねぇぞー? っと、俺はこの関所で門番を務めるマッチョ・ロクローってもんだ。がぁっはっはっはっは! よろしく頼むぜ!」

「は、はい。あの、お金等は───」

「あぁいらんいらん。ガキから身分証発行のための金取ってたまるかってんだ。ただし、失くしたり破損した、なんてことになったら金は普通に取られるから、無くすんじゃねぇぞ」

「……なるほど。わかりました」

「ところで嬢ちゃん」

「はい?」

「……ジョブ欄の聖女ってなぁ、俺の見間違いか?」

「はい、見間違いですね。わたしの目にはただの“(ひじ)ってやがる(アマ)”にしか見えませんね」

「なるほど、そりゃあ聖ってやがるな」

「ええ。聖ってやがります」

「ま、言った通り俺達門番は“お関所仕事”が仕事だ。当たり前なんだがな。そこにお家騒動とかこれっぽっちも関係ねーんだわ。だから嬢ちゃんがロンデルミューレでどんな扱いされてようと、どんな祝福を得ようと関係ねぇ。お国様が聖女を欲したとか言い出そうが……っはは、知らないねぇ。俺達ゃ正しく門番してただけだぜぇ? 聖女は引き留め国王に知らさにゃならん、なんて聞いたこともねぇ」

「もちろんわたしもです。あと聖ってやがる女です」

「おーおー、わかってるっての、別にお前さんのこと言ってねぇって。俺ゃ聖女の話をしてんだからら」

「おっと、これは失礼しました」

 

 くすくす笑って、ガコォン……と開かれた巨大門を抜ける。

 さ、隣国ですよ隣国。わたしはここから船に乗って、さらに隣国を目指します。

 何処行くの? 少し遠くまで。はい。わたしはわたしを知らない人ごみの中、ソロ冒険者になろうと思うのです。

 そのためにはまず、なにはなくとも船代でーすわ!

 

「そうと決まれば───お仕事ですわ!」

 

 腕を組み、誰に見せるでもなく表情をドヤらせ、閉ざされる扉を背にわたしの冒険が始まった───!!

 よく見る物語で隣国の王子様に見初められたーだの、村で聖女的癒しのスローライフをーだの、そんなことはどうでもよろしいんですのよ!

 血なまぐさかろうと冒険をして、世界をこの目で見るのですわですわでーすわー!?

 

「GO!!」

 

 そう……わたしは走り始めたのですから……!

 この華麗でも優美でもない、泥臭いくも鈍行にて歩んでいく、冒険者の世界を───!!

 

  そう。走り始めた……のですが。

 

 ……どうしてもう、なんの苦労もせず隣国に居るのでしょうね……。

 

「じゃーなー嬢ちゃん! 夢ってのをしっかり叶えるんだぞー!」

 

 関所から出て、最寄りの町に寄ったところで、足である馬車の馬が骨折してしまったところに出くわしました。

 馬に罪はござーませんわ。けれど動けない馬は殺処分が大体だ。

 なにせこの世界、魔法はございますけど癒しは廃れて久しい。馬の骨折が治るまで待つのは大変だし、そもそも旅先で骨折した馬を自分の家まで連れ帰るのは大変だし、誰かに頼めばそれだけ金がかかる。距離があるなら余計にだ。

 なにより、馬車を動かしていた商人っぽい男性は、この馬の骨折に泣きながら、馬の名を叫ぶほどにこの馬が大事らしいのだ。

 救わないわけがないでしょう? 一応、癒しのことを秘密にするならという条件で馬の骨折を癒した───ら、めっちゃくちゃ感激されて……海沿いの町まで馬車に乗せてもらった上に、自分も海を渡るからと船代まで出してくれたのだ。

 それで……現在はこの町、マラカルニに来ている。

 初心冒険者が集う場所、といえばここ、とか言われているからここに来た。

 ええはい、ソロ以外に興味などありませんわ? 癒しが衰えて久しいこの世界で、癒しなんて目立つ能力を人前で行使するのは自殺行為。

 そうなれば、必然的に他人の協力など得られたものではありゃあせん。

 

「なにはなくともまずは登録。カードは貰っていますから、あとは宿を取って……」

 

 旅費から宿代まで握らされてわたくしなにやっとんのでしょーね。いえまあ楽なら楽で、その幸運にサンクスと言えばそれでいいのですが。

 まあいいです。まずは登録。

 町の入り口前で大工に指導をしていた、腹のでっぱった男性……ドルモス、という方の話では、宿とギルドは向かい同士。ひとつを発見すればあとは簡単とのことなので軽く歩くと、すぐに発見できました。

 上手くいくならそれに越したことはない。ただ油断はしないように、とばかりに冒険者ギルドの羽扉をコキィッチョと開けて、中へ入っ───

 

「おぉ? 嬢ちゃん見ねぇ顔だなぁ。こんな冒険者の吹き溜まりみてぇな場所になんの用だい」

 

 入った先に、白い肌のマッスルがおりました。……なんでしょうね、この旅、マッチョに縁でもあるのでしょうか。

 

「誰だ、って顔をしてやがるから自己紹介させてもらうぜぇ? 俺はハァーン! よろしく頼むぜ!!」

「おいらオンディ! 張り切ってこーぜ!」

「あたしミコレ・ミール! よろしくね!」

「拙者、キン・ジロー。以後、よろしく」

「あたしはサティー!」

「……ゴッシュだ」

「ラインホルト・ガバルーだ」

「……っはぁあああっ!」

 

 いえ最後の方? 自己紹介してくださいまし。

 

「あー……キン? マッチョ・ロクローのヤローは国境警備に出たままか?」

「ム。拙者も久しく会っておらんな……」

「まあ居たとしても笑うか、薔薇を銜えながらフンとか言うだけだし……」

 

 あら。ロクローさんって、あの関所に居た方?

 やたらとマッスルかと思いましたけれど、なるほど、お知り合いでしたか。

 

「ま、冒険者ギルドにようこそだ、嬢ちゃん。登録か? それとも依頼か?」

「登録を、お願いします」

「うっしゃ、んじゃああそこの受付に声かけな。あの三角眼鏡のちっこい緑髪エルフだ」

「親切にどうも」

「なぁに、これから同じギルドの仲間になるんだ、仲良くしなきゃあな。っと、嬢ちゃんが女だから言っておくんだが……ひとつ忠告だ。もし仲間を募ってクエストをしていくんだとしたら、“俺の翼”って名前のチームだけはやめときな」

「問題ありません。わたし、ソロでやっていくつもりなので」

「っは、そうかい。そりゃあつまらない助言をしちまったな」

「いえ。そのチーム? クラン? とやらに声を掛けられた時には、警戒レベルを最大にします」

「おう、そうしな。毎度新人がそいつらに潰されちまってな。せっかく初心冒険者の町って売り出してるってぇのに、最近じゃ新規登録者がめっきり減っちまってな」

 

 おおう、それはそれは、ますます気をつけないと。

 軽くお礼を言うと、けれど絡まれたなら一度は自分の目と耳で判断しようと思いつつ、受付の前へ。

 そこには、なるほど、緑色の髪を三つ編みにまとめ、左肩から胸元まで垂らしたエルフの少女が居た。彼女はわたしを見るなり三角眼鏡をクイイと持ち上げると、それをテコーンと輝かせる。

 ……え? 今、眼鏡輝きました? どんな手品ですの?

 

「冒険者ギルドへようこそ。あの暑苦しい連中に絡まれても登録受付まで来てくれたことを嬉しく思いますョ」

 

 受付カウンターで迎えてくれた緑髪の幼女エルフ。ネームプレートには、エミュル・アルフェルム、と書いてある。

 

「早速ですけど冒険者登録をさせてください」

「はいなはいな。ンー……あ、プレートはもうあるのデスね。ではちょほいとそれを拝借。そしてこの指サックを指へドーゾ」

「? はい」

 

 ブスリ。

 

「あいったー!?」

「はい採血完了、と。これに魔法をちょちょいとー……はい、プレートをギルドプレートに変換しましたョ。これで登録は完了ですョ、ようこそ初心冒険者が集う冒険者ギルドへ。仲間を募るならあちらのギルドボードで募集の申請を、ソロで行くなら早速クエストをどうぞ。Fランククエストは常時あちらで受け付けておりますョ」

「~……了解です」

「あ、それと。ギルドカードのネームプレートを見せれば、向かいの宿、海の波風亭の宿泊料金が多少安くなりますョ。家を持っていないなら是非に」

「はい、それも了解です」

 

 募集なぞいたしません。というか指サックのことへの謝罪とかござーませんの!? それともこういう場所なのですか!? ……なのでしょうね、ヤヴァンが売りの冒険者どもですもの、そういうルールなのでしょう。

 気にしていても仕方ない、クエストボードを見て、Fランクのものを……。




やべぇ、繋がりがハァーンさんしかない……!
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