凍傷気味のみかん箱   作:凍傷(ぜろくろ)

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オリジナル。どこぞの学園生活部のお話ではありません。


学園生活のお話。

 歌のフレーズじゃないけど、好きとか嫌いとか最初に言い出したのって誰なんだろうなぁ……とか、恋ってものをしてみると考えることがある。厄介なことに、誰かを好きになるっていうのはかなり、相当、今までの自分ってものが覆る病のようなものだ。

 突然芽生えた恋心っていう初めての感情に翻弄されて、恥ずかしさを紛らわすために馬鹿やることもしょっちゅう。そんな馬鹿を恋人に見られてフラれてることもまああることだ。

 

  けど一番やっちゃいけないのは、きっとその“照れ隠し”みたいな感情で人を傷つけること。

 

 フツーに生きていればそれが相当イタいことだって分かるのに、それで精神安定が成功しちゃう例があったりすると、そういう人って相当ネジ曲がるんだよね。あー居る居る、失敗するとやたら声デカくして大げさに騒いで、笑いごとで済ませよう~とかこいつの所為にしちまおう~とか矛先向けて騒ぐヤツ。

 しかし。そんな“つまらない”を正面から全力で否定してくれるヤツが居たら、格好いいよな……なんて思ったことがある。いや、あった。

 

「あー……今日は転校生を紹介する」

 

 それは俺の人生を大幅に変えることに……いや、なったか知らんけど。だって自分の将来なんて予知能力でもなきゃ分からないし。え、えぇと、うん、きっと変えることになったんじゃないかな? なったんだよきっと。ほら、こう言っておけばなんか俺の人生とか誰かに語る時、盛り上がるかもしれないし。

 

「先生ー! 女子っすか!? 女子っすかー!?」

「男子ですか!? 転校生っていったら超イケメンで決まりですよね!?」

「男子だ。普通の男子だ。ていうか人の好みなんて様々なんだから、先生のくくりでイケメン認定とか出来るわけねーだろ。……入ってきなさい」

 

 正岡直樹先生、通称が正直先生な彼は、嘘は言わないけどべつに真っ直ぐでもないダル~く生きている先生だ。嘘は言わないけど他人の嘘が嫌ってわけでもないし、それを押し付けたりもしない。うん、まあ、きっといいヤツ。

 級友たちがわいわい騒ぐ中、引き戸が静かに開けられると、みんながごくりと喉を鳴らして黙る。少し空間を開けた引き戸は一度止まり、そこからスーっと静かに開けられると再び止まり、そこからさらに開かれた引き戸の先の廊下側から男子生徒が入ってきて、軽く頭を下げた。

 

「……いや、入ってきなさいとは言ったが、旅館の仲居のように入ってこいとは先生言ってないぞ」

「1を聞き10を学ぶ……そんな男になりなさいと親に言われて育ったもので」

「お前それ1聞いたら残りの9を誤解や無駄知識で記憶するダメなヤツだろ」

「……! さすがは教職……! そこまで看破するとは……!」

「いやこれ俺がすごいとかじゃなくてお前がダメなパターンだからね?」

「なにを仰る教師殿。学ぶために来る学生が完璧超人なわけがないじゃないですか」

「……そりゃそうだ。ほら、仲居ムーブはいーから自己紹介しろ」

「エッ……あ、えと。あの、ご趣味は……」

「見合いを始めるわけでもない」

 

 クラスメイトの誰もがきっと思っただろう。ああ、こいつはヘンなヤツだと。

 けどまあ確かにこの日から、俺の人生がどうこうの前にこのクラスの雰囲気は変わったんだと思う。

 

……。

 

 転校生が来てから、学校は変わった。なにもそいつが学園長のMAGOだとか、学校を牛耳る影の最高実力者だったとかそういうものではなく───

 

「それがさー、自販機でコーヒー買ってたら後ろから刺されちゃってさー」

「まっじでー?」

「そのくせ根性でコーヒーだけは持って戻るとかスゲくね?」

「え? その自販機ってあの、コーヒーがコポコポ出てくるタイプの!?」

 

 クラスの一部が昨日の夜にやっていた刑事ドラマの話で盛り上がる中、クラスの隅で一人弁当をつつく男子に、クラスでもガラの悪い二人がヨッタヨッタと威圧するような歩き方で近寄っていく。

 

「よーよー転校生くぅん? おべんと美味しそうだなぁ?」

「すげぇだろ。お手製だぜ? 昨日の夜からせっせと仕込んだんだ」

「ただの話すきっかけのおべんちゃらだよまともに受け取んな!」

「な、なんだとてめぇ! 転校生のピュアで心細き心を弄ぶなんて! キミには俺が今どれだけ心細い心境に居るのか……っ! わかっているのか!?」

「来るなり旅館の仲居の真似して空気死なせたお前の全部自業自得だろうが! ていうか一つのこと訴えるのに何回心って文字使ってんだよ!」

「おー、そこを拾ってくれるなんて、キミいい奴だな」

「なっ、ぁ、お……よ、よせよ照れるじゃ───ってちっげぇえええよそうじゃねぇ!」

「あの、人がメシ食ってるところで唾飛ばして喋るとかやめてくれませぬ? それともそれってホンダラ拳法唾の舞とかですか?」

「それも違うわ! ……おい転校生クンよぉ、随分とまあチョーシこいた自己紹介だったじゃねぇか……」

「え? 自己紹介はフツーだったでしょ? 入り方はアレだったけど」

「だぁーっ!! だっからいちいち揚げ足とんじゃねぇっつのぉ!!」

「なにをこの。だったらそっちだっていちいち回りくどい言い方してないで本題言えテメこの野郎」

 

 ああうん、それは俺も思った。特にツッコむこともなく、昼のメシモードに入っていた俺達弁当組も、さすがに空気を悪くされ続けるのは困る。ていうかいっつも校舎裏とかでパンとか食ってる彼らが、転校生クンがここに居るからって残るから、教室内の空気が沈みまくっている。

 べつにそれを転校生クンの所為にするつもりなんてこれっぽっちもない。むしろ悪いのは彼らの方だ。名前なんだっけ。えーと……ああ、財前マサルくんと佐藤タケルくんだ。

 

「んーじゃあ本題、入らせてもらうぜぇ……? なぁ、金持ってたら貸してくれよ。これから仲良くしていくために、平和に過ごすためにも……なぁ?」

「すげぇ、会ってまだ1日と経ってないのに人に金貸してとか言えるなんて。よし、じゃあここにキミの本名と読み仮名、年齢、両親の名前と住所と年齢、あとは血判を……」

「ふんふん……ってなんでンなことせにゃならんのじゃあ!!」

「初顔合わせの金貸しだってまずは相手の素性を知るところから始めるでしょーよ。無担保で金を貸すもんですかい。で? おこづかいどうしたの。まさかもう使っちゃったの? まったくもうあんたって子はお金を手にするとす~ぐ使っちゃうんだから」

「オメェは俺のなにを知ってんだ!?」

「フフッ……知らないとでも思ったのか? ……お前は、プチトマトよりもウィンナーが好きだ!」

「───!! ……、…………? いやそうじゃねぇだろ!? いや好きだけども!」

 

 いやうん、大体のヤツがそうだと思うぞ? 俺達の年齢からしたら、特に男子とかは大体そうだろ。ていうか転校生くんめっちゃ美味しそうにメシ食うなぁあ……。

 

「だから話聞けってんだよ! なにもぐもぐしてんだコラァ!!」

「……!? 咀嚼もせずに丹精込めて作った弁当を飲み尽くせと……!?」

「そうじゃなくてだな!? ああもうこいつめんどくせぇ!!」

「はぁ……もういーだろマサル。おいよ、転校生クン。ちとツラ貸せや」

「……? いやごめん、俺パンヒーローじゃないから、おいそれと顔を貸したりは……!」

「誰がアンパンマンの話しとんじゃコラァ!!」

「………」

 

 ガラの悪い二人が翻弄される中、転校生クンは急に黙り、佐藤くんにくしゃり……と何かを握らせた。

 

「っは、そうそう最初っからそうしてりゃあ…………なんだこれ、花?」

「クマツヅラと申します。ツラを貸せと言われたので」

「だからそうじゃなくてだな!?」

「ちゃ……ちゃんと返して……ネ?」

「ギイイイイイイイイイイイイッ!!」

 

 ポッと頬を染めて言う転校生クンに、ツッコみまくりの財前くんが謎の悲鳴をあげた。たぶんなんか忍耐的ななにかがブチブチいったんだと思う。

 その間にも転校生くんは弁当をつつき、やがてカタンと箸を置くと手を合わせてご馳走様でしたを唱える。

 

「はふぅー、食した食した……」

「……おい……ちょっと俺らに付き合え」

「いいか、てめぇに拒否権なんてねぇんだよ。平和的に過ごしたけりゃ言うこと聞きやがれ」

「いや、俺の拒否権をキミにどうこう言われる筋合いがこれっぽっちもないんだけど。あ、もしかして権利管理局かなんかの人ですか? お若いのに頑張っておりますなぁ。そんな管理局あるのかさえ知らんけど」

「~……てめぇの権利なんざ俺らが仕切れるっつってんだよ! いいから来いコラ!」

「フフっ……ほう、この俺に脅迫まがいのことをしようというのか……! いいだろう、ならばこの俺も、誠意を以って…………!」

「あ? ンだよ、テンコー早々俺らとやろうってか?」

「お前分かってんのか? 俺らのバックにゃ有名な不良グループが居るんだぞ?」

「………」

「あ? おい、どこに電話───」

「あ、もしもしポリスですか? いや、実は今現在───」

「「ちょ待ァアアーッ!?」」

 

 堂々とポリスに電話をする転校生クンに、二人は慌てて掴みかかった。

 

「な、なにをするっ! 離せっ! ……ええいっ、離さんかっ!」

「お前何処のリヴァース元帥殿!? ってそうじゃねぇよなにポリスにテルってんだオラァ!!」

「フフッ……なんだそんなことも知らないのか。いいですか? イジメは犯罪なのですよ? イジメってのは脅迫恐喝恫喝、様々な部類にあたり、キミらの人の権利を罵倒で貶すような行為は立派な犯罪行為にあたる」

「なっ、そっ……普通それでいきなりポリスに電話するか!? 普通もっとこう……っ! ほらっ……! 葛藤とか、なんで俺だけこんな目にっ……とかあるだろ!?」

「え? ないよ? 犯罪者は捕まるべきだと思うな僕。ていうかイジメられっこももっと法律を盾にするべきだと思うの。友達は居なくなるだろうけど、イジメが無くなるならそれでよくない? 大体その程度で避ける友など友ではないわ!」

「「───」」

 

 きっと恐らく二人は思っただろう。こいつやべぇと。

 

「警察があって、法律というものがあります。で、犯罪者が居て迷惑しています。ほら、頼らないでどうするの。ちなみに○○○がどうなってもいいのかコラァも通報します。“あいつの将来を守りたいなら……どうすればいいか、分かるね?”も通報しちゃってOK。教師がぐへへ目線で、誰かを盾に女生徒を狙った時も容赦なく通報しましょう。あ、でもまったくの誤解だった場合は名誉棄損で逆に訴えられたり捕まったりするから注意ね?」

「「………」」

「そして大事なことを皆様に。……名誉棄損って言ったけど、嘘告白も普通にそれにあたるから、仲間で囲ってギャッハッハしたら翌日捕まってました、なんて冗談じゃなくありえるから気をつけようね?」

「しょほっ……しょ、少年法は───」

「人は14歳から逮捕出来るぞ、やったな!」

「嬉しくねぇよ!」

「ところで随分手慣れた様子だったけど、今まで何人のお財布を寂しくしてきたのかな。ねぇねぇチャラリーナさん、通報するための情報を、オラに情報を分けてくれ~って呼びかけてもいい?」

「やめっ、ちょっふざけんなやめろ! いいか絶対やめろよ!?」

「て、てーか借りてるだけだし? 俺らべつに───」

「じゃあ返せるよね?」

「「───っ……!!」」

 

 にこりと笑って、そいつは言った。

 なんということでしょう、カツアゲしに来た二人が、気づけば追い詰められているのです。

 

「は、はっ! ンなもん覚えてっかよ! ッチ、萎えちまったよ行こうぜ!」

「あ、ああ、だな、はぁ~あ、ったくよぉ」

「ああもしもしポリスですか? 実は借りた金を返さず開き直る最低最悪のゴミクズが」

「「だから待てっつーの待てコラァアア!!」」

「あ、あれ? どうしたの? なんか知らんけど萎えたんでしょ? 行っていいよ? 俺通報しとくから」

「するなっつっとるんじゃァァァァ!! お前なんなわけ!? 俺らナメてんの!?」

「俺らのバックにゃ不良グループが居るっつーとるだろうがぶっ殺されてぇのか!?」

「コココ……! たとえ不良グループが居ようが言いたいことは言いツッコミたいことはとりあえずツッコむ……! それが俺らしく生きるということよ……! ───うぬらをナメる? ナメられて当然ではなかろうか。バックに不良グループが居る~って、じゃあキミらなにかスゴいこと出来る? キミらのやってるそれさぁ、親の七光りの知り合いの不良グループバージョンですよ? うっはーカッコわりー。大体バックになんたら~とかそれ言ったらあれだぞお前この野郎、俺のバックにゃ“ご老人・友の会”があるぞコラ」

「どこの老人会じゃコラァ!! お前ほんっとおまっ……おっ……お前ぇええ!!」

 

 財前くんがとても混乱している。が、そんな彼を他所に、佐藤くんが転校生くんの襟首を両手で掴み、座っている転校生くんを無理矢理立たせた。

 

「おい……テメェほんと口の利き方に気ィつけろよ……!? 転校生だからって容赦しねぇぞこっちは……!」

「………」

「だからポリスに電話するのやめろってんじゃぁあああっ!!」

「な、なんだよ! 僕はキミが口の利き方に気をつけろって言ったから無言で行動したんだぞ! なんてひどいやつだ……! これもうあれだな……酷いっていうか非道って書く方の非道いだな……!」

「全力で被害者ヅラして思ってもみなかった方向から傷つけんのやめろこの野郎!」

 

 いやうん、現在進行形で被害者だと思うんだが。そしてそれを助けない俺達も、結構アレなのだ。大丈夫、自覚してる。でも正直、成り行きの行く末を見てみたいって気持ちのが強いのだ。助けられるなら助けたいけどさ。

 

「ッチ……! おいてめぇ、いますぐ詫びろや。謝れや。じゃなけりゃ一発ブン殴る」

「試してみろ! 次の瞬間、僕の丸太のような足がキミの股間を潰す! それでもいいのなら!」

「!?」

 

 途端、内股になる佐藤くん。

 すかさず転校生くんに「パツキン・オカマ!」とからかわれて、とうとうその拳が振るわれた。

 しかしそれがシェェエイと躱される。

 

「………」

「………」

 

 振るわれる。躱される。振るわれる。躱される。

 

「だっ! こっ! ふっ! このっ! 避けんなコラァアッ!!」

「いやいやタケルいやタケルちょ待タケッ……タケルーッ!?」

 

 拳、蹴りなどの連撃が全て、ふにふにと軟体動物になったかのような転校生くんに躱された……っていうかなにあれ化け物!?

 

「おいタケルやめろって! 見ただろうがこいつの避け方! 明らかにやべぇって!」

「あぁ!? 避け方!? 見てねぇよンなもん! どう避けたってんだよ!」

「え? どう……え!? ど、どうって………………え? こう……ふにふに?」

「あぁ!? んだそりゃナメてんのか!? ちゃんと説明しろよ!」

「あぁ!? これ以上ないってくらい的確な説明だっつの!! これ以上どう説明しろってんだよ!」

 

 “まったくだ”って、クラス中が頷いていた。

 

「悲しいな……今のお子めらはターちゃんを知らんのか……」

 

 あ、はい、知ってます、親が大好きです。俺も大好きです。

 なんでジャンプバーサスに出てないんだよーと悲しんでおりました。まあ声優の事情っていうのもいろいろあるんだろうけど、山田太郎が大丈夫でターちゃんがダメな理由が分からん! とのことだった。

 ……ところで転校生クンの名前、なんだっけ。旅館の仲居的登場と、先生の言葉を真正面からからかいに使う大胆さで忘れてしまった。

 

「ところでえーと、チャラリーナさん? もうメシ食う時間無くなるよ? いーの?」

「あっ……ッチィ行くぞマサル!」

「くそっ……テンメ覚えてろよ!? 今日のこと忘れねぇからな!?」

「あ、あのっ……お名前からしてまさかとは思いましたが、もしやセクシーコマンドーとかお嗜みなさっていたり……!?」

「しねぇよ!!」

 

 二人は転校生クンに揶揄われつつ、教室から出ていった。

 同時に転校生クンは歩き出したのだけど、他のクラスメイトらにあっという間に囲まれてしまう。

 

「ややっ?」

「転校生! お前すげぇなぁ!」

「あの二人にあんなに真っ向から言い合えるなんて!」

「いや~、あいつら自分がなにかしてるわけでもねぇのに不良グループ盾にしてウザかったんだよね~!」

「言えてる! それ真っ向から言ってくれてすっげぇすっきりした!」

「おっほっほ、これこれ、そんなに人をボロクソに言うもんじゃあないよ……。むしろ言ってしまえばキミらもいたいけな転校生を助けず知らん顔してた猛者どもなんだから……」

「「「ほんと歯に衣着せねぇなおい!! 確かにそうだけど!」」」

「ていうか何処いくつもりだったの? もう昼休み終わっちゃうよ?」

「え? どこってスモールに」

「スモール!? スモ……はうっ!?」

「ちょっと転校生! カナになに言わせてんのよ!」

「し、質問に対して答えただけだよ僕! な、なんだよ! そっちが質問してきたんだろ!? 僕悪くないもん!」

「あー、なるほど。テンション高くなると冗談とかケッコー言えるタイプか、転校生」

「おお、分かりますか。うんうん、人ってのは多少馬鹿じゃなきゃ楽しく生きられないからね」

 

 その言葉に、スモール言うことになった金森カナさんが、「なんだ冗談かー!」とか言って、彼の背中をバシーンと叩いた。途端、彼は「ギャアー!!」と叫んでズキーンと苦しんだ。

 

「わっ!? ど、どしたの!? えっ、そんな強く叩いたつもりなかったのに……ごごごめんねっ!?」

「い、いえ、ただ背中が弱いだけだから。知らないのなら仕方ありませぬ。でもほんとご注意をば」

「へええ……普通背中って頑丈なもんじゃないのか? 弱いって、どのくらい?」

「こう、拳を用意するとします」

「こう?」

「そうそう」

 

 クラスの女子の長本さんが、可愛い感じで作った拳を見下ろす。

 

「そして、鼻っ柱を殴ります」

 

 そして物騒だった。

 

「痛いよそれ!」

「それを勢いよくやられた痛みが背中全体を襲うのです」

「なんで!? お前背中にデケェ傷でもあるの!?」

「や、傷とかがあるわけじゃないんだけど、内側の問題で」

「うわー……もしかしてなんかの事故とか? お、おうわかった、背中な、覚えておく」

「てかそういうのも話題作るための嘘とかじゃねーの? 大げさに言ってるだけとかさー。慣れりゃどってことねーだろ、おりゃっ」

 

 と、そんな輪の中に、お調子者のくせに空気が読めない竹中くんが混ざり、転校生くんの背中をばしーんと叩いた。

 

「ギャアーッ!!」

 

 ドタッ。

 

「…………あれ?」

「……お、おい? 転校生? おい? …………おいやべぇ泡噴いて痙攣してるぞ!」

「ちょ保健委員! 居たら保健室運ぶの手伝ってくれ!」

「なにやってんのよ竹中! ほんっとアンタって空気読めない!」

「え、あ、いや」

「この前も傷の所為で指が曲げられないって言ってた由香の指、無理矢理曲げて! 傷開いちゃって泣かしたのもう忘れたの!?」

「三島ー! 今はそれよりこいつ運ぶの手伝ってくれ!」

「ああああもう! 高田! そっち持って! 肩貸す感じで!」

「あいよっ! っつーわけだから午後の授業遅れたらセンセに言っといてくれ!」

「ラジャった・シャーマン」

「ジャガッタみたいに言ってねーで!」

 




たまぁに書きたくなる言葉遊び漫才みたいなの。
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