凍傷気味のみかん箱   作:凍傷(ぜろくろ)

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オリジナル鍛冶師のお話。
鍛冶師のお話は好きなんだけど、肝心のそれぞれのブツの名前とかが分からんというポンコツっぷり。
所詮ヤツはにわか四天王の面汚しよ……!


ただひたすらにブツを鍛つ者

 鍛冶師、という職業がある。

 男なら、ファンタジーを知る者ならばほんのちょっぴりだろうと憧れを持つ職業だろう。

 もちろん俺もそうであり、それは前世から変わらない。

 神様転生~なんてものを経験して、見知らぬ世界に赤子として産まれ。自然とともに生き、土や金物とともに生きて来た。

 

 鉄を打つのも慣れたもの。鉄をうつ~とか、文字にするならなんとなく“鍛える”と書いて“()つ”とか書きたいお年頃はとうに過ぎ、生涯を鉄や鋼と生きた前世に笑みを送りつつ、今日も今日とて刃を研ぐ若者。

 それがワシ、オンディー・ヒムスカルブ。

 そう……前世だ。若い頃にファンタジー世界の鍛冶師に憧れ、最強の刃というものを創ってみたくなり、とりあえず鍛冶を学ぶべく研師(とぎし)に弟子入り。それから鉄と鋼について、学が無いなりに身体で覚え、感覚で憶え、ドチャクソ時間をかけて学んでいった。いや、ほんと前世のワシってばアホだったからね、学無かったのよほんと。学校の成績とかアホとか馬鹿って言われても自覚できるアホさ加減。

 最終学歴だって中卒だし、その中学だって学力は底の底。や、頑張ってみてあれだからさ、ほんとそういう方向ではダメだったんだよワシ。

 親にしょうがないねぇって顔で「ほんとお前は馬鹿だねぇ」なんて笑われるくらいだったし。

 

 じゃあ鍛冶方面は天才的だったのか? って言われれば、近所の奥さんがありがとねぇ~って代金支払ってくれるくらいには研げたよ、うん。

 ……現代の研師なんてそんなもんだろ。

 雰囲気出したくて、人前じゃあ“ワシ”とか“じゃろ”とか老人語を使ってみてたんだけど、近所の子供に「老人みたいな言葉使う人初めてみたー!」って指差されて笑われたよ。そりゃそーだ、実際あんな喋り方する老人居るわけねぇ。そもそもどうやって生まれたんだよあの言葉。

 

「オンディーさん」

 

 里から離れた一つの山小屋。そこで様々な素材で刃等を作るのがワシ、オンディー。

 今日の依頼はエルフからのモノで、矢を500本ってものだ。もちろん番えるための弓を作ったのもワシなんじゃから、あの弓ならばどう飛ぶか、をきちんとイメージした上で作った。

 

「感謝を」

 

 まあ、基本()ったら射ちっぱなしの矢とかだ。無事なら回収するだろうし、折れればそこまで。十数個の矢筒に入れたそれをホレと渡せば、代金を支払うのは特徴的な長い耳をした、基本が緑色の薄い服装に身を包んだ線の細い男性。

 

「しかしオンディーさん。里から離れたこんな場所で鍛冶をしなくても、里の中でも……というか、その口調も」

 

 そう。里、というからには、ワシ……俺もエルフだ。

 歴戦……歴戦? なんか雰囲気ありそげの爺感を死する時まで出して遊んでいた前世の俺から続き、今世はなんとエルフときた。

 現在18歳。まだまだ若造だけど、99……もとい100歳まで鉄を打ってた前世に比べればそりゃあまだまだ若造だ。

 いやしかし、コミュ力がこれっぽっちも無く、学も無かった所為で前世はほぼ無口で死んだなぁ……。そんな怪しげなテツウチジジーソンに連れ添ってくれる女性なんて居なかったから、結局100年童貞で、100歳になった瞬間に死んだし。

 あ、ちなみにワシ、生涯鍛冶一筋を誇るために、肉体は日々鍛えてたから、ピンと立つことも出来たし、身体だって年齢を疑われるほどマッシヴだった。

 その影響もあって、今世でも鍛え続けたお陰でエルフにしてはマッチョである。

 よし、里からの依頼はこれで終了じゃな。ほんじゃあまあ、ちと街へ研ぎ仕事に出るとするか。

 

「……やれやれ。鍛冶以外にも興味を持てばいいのに」

 

 うっへっへっへ、ほっとけほっとけ、ワシのこりゃあ死んでも治らんわ。

 荷物をよっこいせと担ぐと、忘れ物はないかと小屋の中を見渡す。

 ……鍛冶が好きだ。鉄を打つのも鋼を打つのも。

 鉱物の粘りを引き出し、素材の良さを引き出し、同じ鉱物だろうとモノによって違いを見極め完成度を描き、これならばと作るものを考えるのも大好きだ。

 むしろそれしか知らない。なにせ学がない。そして、大好きなそれを“教えるための学”すらない。

 

 “こん鉄ばこうやってこう叩いてこぎゃん打つぎんよか!”

 

 くらいにしか伝えられなかった。自身の評価を自信を持って伝えよう。俺は馬鹿だ。俺から学びたい、と前世で乞うてきた若者に、何一つ教えることが出来なかったのが俺だ。

 なにせ、ぼそぼそと「…………知りたきゃ盗め…………」くらいしか言えなかった。

 鉄を打つとなれば目を輝かせるくせに、話すとなると目が曇る。ダメなんだよ……生涯コミュ障になに望んでんだよ……。

 そんなワシでもさすがにヤバイと思い、今世は出来るだけ喋る練習はした。なにせ人里離れたエルフの里に産まれたワシじゃし、家族くらいとは話せるようにと。

 そしたら里ってもんは里こそが家族みたいなもんじゃ。そうなりゃ里の中くらいではまともに話せるようになった。じゃあ外では? ……お察しである。

 

「あらっ、オンディーさん、こんにちはー」

 

 あっ……あっ……!!

 荷馬車を揺らし、街に着いてみれば、こう……ふっくらした、いかにも村とか町に居そうなオカンっぽいおばさんに声をかけられる。

 いきなりだったもんだから大変驚いたものの、軽く会釈をしたのち、声を振り絞って挨拶。とりあえず、また世話になります的な感じで。

 

「あいよ。こちらこそだよ。うちは魚捌くもんだから、どうにも刃こぼれが速くてねぇ。家で研ぎ研ぎ繋いでも間に合わなくて、それがオンディーさんに頼めば一発だってんだ、頼まない筈がないよっ!」

 

 なんとか“任せときな”的な言葉を返せた……と思う。

 所詮こんなもんである。エルフだってことはバレてるけど、エルフ耳ってやっぱ視線を集めるからね、フードを深くは被っている。……そしてそのフードの奥のワシ、冷や汗だらだら。

 かっ……会話、会話早く終わらないかなァアアア……! とか思ってる時点で、ワシ今世もコミュ障かもしれん。

 や、これも慣れじゃい慣れ。

 

  さて。

 

 おばさん……海沿いのギルド内の食堂の女将で、エルマーさんという。そんな彼女と別れ、ワシはワシでギルド奥の工房へ。

 分厚い壁と大きな煙突、高熱に耐える炉に、様々な鍛冶道具に鉱物。全部、ワシが里や里の奥の山等で集め、ここに集めたものだ。

 スキルで作れるものはいい。やろうと思えば、そりゃあ刃物だって錬成出来る。が、それじゃあダメなのだ。スキルで作る刃物は、どうやったって“同じもの”にしかならない。だから1から研ぐのだ。ばらばらだった材料を1にして、熱して打って鍛えて伸ばして、1を10にも100にも育てていく。それが鍛冶師だ。ワシはそう思ってる。

 だから、金床等の鍛冶素材はスキルで錬成した。炉だってそうだ。けど、そこから先は鍛冶師の仕事でぃべらんめぇ!

 だって面白いんだぞぉぅ? たとえばロングソード分の材料を錬成で圧縮作成して作るのと、同じ材料で硬質ナイフを己の手で作るのとじゃあ、ナイフの方が丈夫さも鋭さも良いんだもの。

 

  鍛冶師がさぁ……こだわり見つけちゃったらさぁ……半端なんて無理でしょ?

 

 というわけで……うーふーふー!(ドラえもん)さあいざ鍛冶の時間!

 街の方での依頼はロングソードの研磨と破損部分の修繕。新人用の木剣の作成と……嗚呼、剣を打てる喜び! 切れなくてもいい! 木剣だろうと打撃武器だろうと、打たせてくれる喜びがここにある! 木剣は打たないけど!や、まあ細かいところで打ったりはするけどね。

 じゃ、まずは木剣から仕上げようか。刃渡りはロングソードと同様の90cmと、新人練習用の60cmを各10本ずつ。

 握りと鍔部分と……刀身の強度を考えると、木はこっちの……名前なんだっけ。

 それぞれの名前すら知らん学だけど、それがそうだと知ってりゃ打てる。

 こんなんだから教えられんのだ、ワシは。

 けど、やっぱりモノ作りはいい。集中できる。

 

「………」

 

 まずウッドキラーを宿したナイフで形を整える。

 木製のものに特攻効果のあるナイフは、木材の型を取るのに非常に便利だ。これもスキルで封入出来た。スキルスロットが一つしかないから、入れられた効果はウッドキラーだけだけど。その他に“のみ”にウッドキラーを宿したものを用意したりと、細かなところでスキル封入は役立つ。

 刀身……60を10本。90を10本。握りと鍔を……結局この握る部分と、それと刀身の間にあるこれの名前、握りと鍔で名前合ってるんだっけ?

 ……まあ、やっぱり学が無いってこんなもんだ。感覚感覚。

 んじゃ、細かく削って穴空けて、杭を打ち込んで……ほい60一本完成。60はあと9本か。さくさく進めようか。

 

……。

 

 木剣が終われば次は鉄。

 ロングソードは刃渡り90cmほどの鉄製の長剣と相場が決まっている。ゲームで習った。

 もうモノを見れば何処から何処までが何cmかが分かるくらいには打ってきた。

 鉄の大きさを見れば、それをどう伸ばせばどのくらいの厚さで、どれくらいの長さのものになるのかも分かる。

 だから、インゴットを作る時には溶かす量も考えなきゃだ。

 それはそれとして、熱して十分に熱くなった炉に突っ込んでおいた鉄を引き出し、打って打って打ちまくり、形を整えていく。

 熱耐性のスキルは作業服に封入してある。ただし、その上で微妙な熱を感じて作業をしていく。これに慣れるまでも苦労したもんだ。前世では慣れたものだったのに、それよりも下に感じる熱を感じなきゃいけないんだから、かなり手探り感はあった……が、それも慣れた。

 

「おぅい、オンディー居るかー? お、居た居た」

 

 白々しい、と思いながらも入り口近くに木剣は置いておいたので、視線もくれてやらずに集中する。

 直剣ってのは刀や包丁みてぇに反りなんぞ考えなくていいから楽だ。他の誰かは知らんがワシは楽だ。もちろん前世でも刀鍛冶を依頼されたことはあったが、ありゃあ面倒だな、うん。ワシもまあ鍛冶に憧れたからには、きっかけはあった。ロングソードの刃渡りを知ったのもゲームだし、鍛冶に憧れたのも漫画を見てからだ。

 が、思ったことは、ファンタジーに来てまで日本の刀なんざ打ちたかねぇってことだ。折角のファンタジーなのに、なぁんで日本刀なんざ打たなきゃならん。

 包丁はいい。ありゃあ異なろうが異ならなかろうが、どこの世界でも同じだ。

 が、日本刀は違う。ありゃあ異世界じゃ異物も異物だ。要らん。

 

「おーおー、今日もまた随分集中してやがる。木剣分の金はここに置いとくぞー? ロングソード分は……明日でいいか」

 

 やかましい、鉄を打ってる最中に話しかけるんじゃねぇ。木剣でも怒るが。

 仕事しとんのだぞこっちは、半端なんて許されねぇ。

 コミュ障だろうがなんだろうが、俺の腕が包丁研いだり新人の木剣作り程度でしか稼げない腕だろうと、それなりの職人プライドくらいはあるんでい。

 ……や、まあそのー……色つけてくれるならほんとありがとうですけどね?

 

 っと、いい形になったな。この水に入れる瞬間がいい音鳴るんだよな、しゅき♪

 さて、打った後の更なる整形として、アイアンイーターでソリソリ~……っと。よし、整形完了。あとは切れ味の方を……砥石を使ってる時はワクワクするのと同時に、心が安らぐ。前世では番号順に丁寧にやっていたが、今世ではある程度省略する。

 アイアンイーターのスキルを封入したカンナでしゅるる~っと削り、ある程度鋭くしてからさらに鋭く研いでいく。

 ワシが使えるスキルなんて初級も初級、始まりの町で出てくる初級モンスター程度くらいにしか通用しないものだが、それら全てがなにかしらの生活に活用できる。

 スキルスロット追加を覚えてからは、低級武器や生活用品にスキルスロットを追加できるようになって、たった一個だけだけど、スキルの封入が可能になった。

 ウッドキラーやアイアンイータ―等は本当に重宝している。

 熱耐性だって自動回復だって、衣服やアクセサリに封入すれば大変重宝するものだ。まあ、作業工程が変わるたびに着替えるのは結構面倒なんだが。

 

 ───よし、刃の部分完成、と。

 考え事をしながらでも集中は継続出来ている。これもスキルの恩恵だ。

 達人みたいでちょっぴり誇らしい……まあ、街の包丁研ぎで満足しているジジイの戯れみたいなもんだ。

 同じ工程を続けて刃を依頼分用意して、次に……あー、握り? と、鍔? の部分を作り、打ち付け、刃とともに、埋め込むようにくっつける。あとは仕上げを軽くして、一本完成。

 軽く振るってみるけれど、生憎と剣関連のスキルは一切ない。普通に振るえる程度だ。

 あとは同じように全部作って……スキルスロットを空けるようには言われてないからこれで完成だ。

 結局一日で完成してしまった。スキルポイントの全てを鍛冶関連に役立つものに振ってきた恩恵ってものだ。……まあ、大きな街の鍛冶職人なんかはもっと速く出来る、なんてどこぞの冒険者が笑っていたから、ワシなんざ底辺も底辺ってもんだろう。

 が、それでいいのだ。誰かと競うつもりなんてない。

 っと、剣の研磨もあったな、と出入口を見てみれば、木剣を置いておいた場所にごちゃりと置かれた長剣の束。

 さてさて、どんな乱暴な扱いしてんのかね、と一本一本見てみれば、あー……雑! ちったぁ作ってる奴の気持ちを考えやがれ!

 ……ま、鍛え直すんだがね。

 

 

 




鍛冶師に見えて、実は大体をスキルで作る男~とかやってみたかった。
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