凍傷気味のみかん箱   作:凍傷(ぜろくろ)

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 たとえば、エネルギーのようなものの集まりで、ある凄惨な未来を変えることが出来るなら、多くの誰かや誰かが強く深く願えば、過去にだってそんな思いが届けられたりするんじゃないかな。
 ただね、そんな強い願いがあっても、紡ぐ人が馬鹿だとろくな結果にならんのだ……誰か続き書いてくれ。
 とりあえず長いから分割します。

 あ、ヒロアカです。



たとえばそんなエネルギーの集まる先

 人は。

 生まれながらに平等じゃない。

 これが齢四歳にして知った、社会の現実。

 

 僕らは一人一人形が違って、それ故に他者を思う───形の違うその身と心を。

 だからこそ他へ馳せ、交点を探す。

 これが齢17歳にして知った、社会の現実。

 

 雄英を卒業し、知ったつもりの社会の現実を学び。

 雄英に戻った頃には積み重ねたヒーロー知識で教鞭を振るい、あの頃とは目指すヒーローの像が変わった生徒らを導く日々。

 思い出はたくさん。濃密な、けれど充実した日々が変わらず心の中にあった。

 ふと心の中の思い出を振り返ると、その道には光があった。

 長い長いレンガを積み敷いた道に、淡く光る光の玉。

 そのひとつひとつが、とても大事なものに見えて。

 

  だから───

 

 この両手に掬い取った光を愛おしく胸に抱く。

 すると、道の上で淡く光っていた光が胸の光に集まった。

 ただただ暖かくて。

 でも、ひどく冷たいものもあって。

 届かなかった思いも、届くことの出来なかった想いも、光となってそこにある。

 だから。

 そう、だから。

 もしも次があるのなら、そんな光にも手が届くよう───

 強く強く、願って、祈って、そう出来る自分であれるように───!!

 

 

 

「諦めたほうが良いね」

「!!」

 

 

 

 気づくと病院に居た。びょっ……びょぼほっ!? え!? なに!?

 僕、昨日は学校から帰って眠って……!!

 うらっ……おぉおおお茶子さんと、ドゥデッ、ででデートの約束があるからって……あれぇ!?

 

「そんな……! やっぱりどこか悪いんですか? 幼稚園の子たちはもうほぼ───」

「失礼、奥さんは第四世代ですね? “個性”の方は───」

 

 夢!? 今までの、夢!?

 本当の僕は無個性だって知ったショックで気絶してて、今まで長い長い夢を───

 

「ァー……───」

「出久!? 出久ー!?」

 

 喉の奥から随分と音域の高いアーが出たと思ったら、僕はその場でぶっ倒れた。

 お母さんの方へ倒れたお陰で頭から床にってことにはならなかったけど、アレ? このお医者さんって……あれ?

 あ、だめだ、今は考えられない。

 ツバサくんのこととか、あの脳無の翼のこととか、全部終わったあとに知ったことを思い出し、考えることはいろいろあったけど、だめだこれ。

 

 

───……。

 

……。

 

 異常は無いってんで家に帰された。

 きっとショックだったんでしょう、で済まされて、現在は……懐かしき我が家。懐かしきあの頃の自分の部屋。

 

「オールマイト……」

 

 部屋中に貼り尽くされたオールマイトポスターを見て、ぶわりと涙が溢れる。

 まさか、今まで見ていた全てが、妄想逞しき自分の夢だったなんて。

 なにやってんだよクソナード、妄想にふけるにしたっていくらなんでも長すぎだろ……!

 

「……でも」

 

 でも。

 だったらやれることをやろう。

 幸いにしてあの夢のお陰で、いろいろな知識を学ぶことが出来た。

 これから歩む先が都合よく夢と同じであるわけがないんだけど、それでも。

 あのお医者さんは敵かもしれない。そうじゃないかもしれない。

 もし敵だとしても、小さい僕に出来ることはなくて、誰かに教えても笑われて終わるのが目に見えている。

 

「それでも。体を鍛えることくらい、出来るから」

 

 そうだ。前の自分は知識ばっかりで、体を鍛えることをしなかった。

 もし、もっと早くにワン・フォー・オールを継承出来ていたらと思わなかったわけがない。

 勝ち取るんだ、もう一度。あるかも分からない、未来のもう一度のために。

 

「更に向こうへ! プルスウルト───ラァアアアアアアッ!?」

 

 いつかの癖で、残り火の時の癖で、お尻の穴に力をグッと込めて気合いを入れようとした。───ら、体に走る赤い光とスパーク。

 エッ……なにこれ。エ!? 無個性って判断されたばっかりでは!?

 先生、足の指の関節がどーたらって話してたじゃないか! むこっ……無個性の概念!!

 

「…………付与、力のストック、変速、発勁、危機感知、黒鞭、煙幕、浮遊、……円環推進? えっ……これ歴代の個性!? 感じられる……けど、歴代の気配は全然……なんだこれ!? ていうか円環推進って……いや待てよ……? 僕は死柄木に個性を譲渡したはずだから歴代の個性がここにあるってことはつまりもしかしたらこれはオール・フォー・ワンに出会う前の死柄木の元の個性である可能性とかがあるわけでブツブツブツ……」

 

 そうだ。死柄木との接触で見たじゃないか、オール・フォー・ワンが死柄木───転弧にした酷い仕打ちを。

 まだ見ぬ因子があった。それを抜き取られて、粗悪な複製品を与えられた。

 崩壊がここにないのは、つまり───“怒り”と“憎しみ”が無いからだ。

 

「あったんだ……ちゃんと。でも…………」

 

 でも。言ってしまえば、オール・フォー・ワンが居なければ転弧は産まれなかった。

 姉を支える姉弟が居れば、とそそのかしたから産まれた存在。

 どこまでも、選ばせてもらえなかった子供。

 

「個性がここにあるってことは、夢なんかじゃなかったってこと。でも、じゃあ今のこの状況って……?」

 

 考えてみる。……纏まらない。

 誰かの個性が暴走して、過去に飛ばされたとか?

 可能性としては否定できない。

 世代が進むにつれて強力な個性はどんどんと生まれてきた。

 その中にそんなものがないなんて、完全に否定出来たりはしなかった。

 疑問は残る。なんで自分なんだろうってこと。

 お母さんは覚えていなかったし、医者だって反応はあの時のまま。

 僕だけがここに戻って、歴代の意思もないままに、僕になにを為せっていうんだろう。

 

「───」

 

 なにをって。

 そんなもの、決まってる。

 もう一度があるんなら、物語を紡ぐだけだ。

 そう、これは僕が、僕たちが───最高のヒーローになるまでの物語だ。

 

「出久ゥウ!! 病院でブッ倒れたッッッて……!!」

かっちゃん!?

 

 心に、更に向こうへの意思を刻み込んでいたら、どぱぁんと自室の扉が開かれて……現れたのは、懐かしき小さなかっちゃん。

 うう、この頃のかっちゃんには正直苦手意識が……!

 寮を抜け出して喧嘩した日もそうだけど、それでもこの頃ほど理不尽に殴られたり囲まれてボコられたりなんてされなかった。

 

「え……? かっちゃんが、僕を心配……? え? それに出久って……え!? もしかしてかっちゃんも記憶を!?」

「記憶? ……って、お前……じゃア、お前……」

「かっちゃん!?」

「爆豪のかっちゃんだ文句あっかコラァ!!」

「文句とかはそりゃないけど!!」

 

 かっちゃんがかっちゃんだった。

 BOM、と掌に集めた汗を爆発させ、僕を見る。

 見て、息吸って、吐いて、ごくり、と喉を鳴らして。

 

「出久……そンで、その。ぶっ倒れ……は、平気そぉだな……ああ、よし。で……その。個性、どーだった。やっぱ……」

「……ううん、あるみたいなんだ、個性。医者の判断は無個性だったんだけど、意識してみたら出来て───」

「───!!」

泣っちゃん!?

 

 その日。

 僕は目玉が飛び出しすぎて千切れるかと思うほど、驚愕した。

 なんなら飛び出て伸びた目玉をパァンとかっちゃんに叩かれて、のたうち回った。

 

「おまっ……くそっ……なんで……! おっ……俺ッ……俺……ァ……!!」

アァアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

 目が大激痛です。

 しんみりした空気なハズなのに絶叫が止まらない。

 

「ズッ……~……出久」

「ァアアア……!! ゥェ、え、な、なに……!?」

「個性、なんだったんだ……。その、引き寄せる個性とか、火ィ噴くか……だったか」

「あ、うん。お母さんとお父さんの個性とは違ったよ。その複合型ってわけでもなくて」

「……じゃあお前、まさか」

「う、うん……なんか……ワン・フォー・オール、使えるみたいで……」

 

 言って、体からスパークとか煙とか黒鞭とか出しながら、足元に円環を出して、浮いて見せた。

 今度はかっちゃんが、「ンッだそりゃぁああっ!?」と目を飛びださせる番だった。

 

「おンまッ……あ? ……おい、なんだその、足元の輪っかみてぇなの。見覚えが……あ? それ、あの腐れオール・フォー・ワンが使って飛んでたやつじゃ───」

「元は転弧の……ええっと、僕が譲渡したから、って意味で、十代目の個性みたいなんだ。崩壊、なんてものじゃなくて、軽く宙を飛べる個性だったみたいで。祖母である七代目が浮遊なんだから、それに近いものなのも納得だよね」

 

 今は浮いて、多少好きに移動出来る程度。浮遊と合わせるともっと楽に宙を進める。

 七代目と合わせることで楽になるって、なんか嬉しい。あんな過去の光景を見たからだろうか、胸が熱くなる。

 

「………」

「……かっちゃん。顔が悪い顔になってるよ」

「出久。こっからやるこたァ決まってるよな?」

「うん、もちろん。今のこれからがあの時にまで繋がってるなら、あの頃よりもなにかを出来る自分になる。……負けないよ、かっちゃん。キミが言う“クソナード”の知識を持ったまま、ちゃんと鍛えた僕で挑む」

「…………ヘッ。個性はひとつありゃ十分だ。お前があれこれいじってる間に俺ァこれ一本で、今度こそNo.1ヒーローになる」

「……かっちゃんはもうちょっと相澤先生の話、聞いてあげて」

「矯正ってなぁ他人が勝手にそう思ってるだけのもんだ。自分の信念貫いてるやつを曲げるのは、矯正でもなんでもねぇ、押し付けっつーんじゃボケ」

「言葉が強いよかっちゃん……」

 

 大人になっても子供に戻ってもかっちゃんはかっちゃんだった。

 それでいいんだと思う。

 

「あ、でも……ツサバくんとかどうしようか。かっちゃんが急に変わった! とか驚くかも」

「見せつけたれ。今さらイジメなんぞで曲がるかよ、お前が。てか無個性だって分かってからだろ、そーゆー……その。……ああ、ったく……! つくづく俺ァ……!! なにやっとったんだろうなァアア……!!」

 

 言って、かっちゃんは僕の目を真っ直ぐに見て……この頃の、この時のかっちゃんのまま、頭を下げてきた。

 

「本当に……悪かった、出久。もう、あんな俺にはならねぇ」

「よ、よしてよかっちゃん! もう十分だからっ! 本当に……本当に、十分なんだ……!」

 

 あの、辿り着いた瞬間に、心臓の音が止まったきみを見た瞬間の絶望。

 あの時、目を覚ましてオールマイトを救ってくれた、頼もしさ。

 勝てるって思ったから全てを出した。

 僕だけじゃだめだったんだ。

 もう、十分だったんだ。本当に本当に、きみが手を伸ばしてくれただけで、僕は。

 

「けどだ。それとこれとは別で、これからの活動……お前にゃ負けねぇ」

「空気の変化が凄すぎて息継ぎが出来ないんだけど!?」

「サポートアイテムもまだ万全じゃねぇこの時代に、どっちが最高のヒーローになるか勝負といこうや……九代目ェ……!!」

「だからぁ! かっちゃぁあああん!!」

 

 でも、それはそうなのかもしれない。

 あんな戦いがあって、人々がヒーローっていうショーを見る観客であることを辞めて、手と手を取り合い立ち上がったから、サポートアイテムは進化を速めた。

 悪を成すために個性を使おうと企む人を止める手が増え、ヒーローに任せきりにしない、ヒーローが暇で笑える日々を作り上げていった。

 でも───今。

 まだオールマイトが現役で戦っているこの時代に、まだオール・フォー・ワンが蠢きを止めないこの時代に、未来に向けて努力をすること。

 それはきっと、前よりももっと、この世界の先を温かくする筈だから。

 

  頑張れ───!!

 

 ……今もまだ、胸の奥であの時の声が聞こえる。

 うん。頑張るよ。頑張ろう。

 あの頃よりももっと、やさしい世界に辿り着くために───!

 




 すまない、チームアップミッションは読めたんだけど、ヴィジランテはまだ読めていないんだ……。
 ほんとはね、車のエンジンかけた時に、『今日は〇月〇日、〇曜日です。愛と勇気と希望の日です』って言われた時、「そんな日あるの!?」って驚いて、これはなにか書かねば~! と書き始めたんだけど。
 あ、書き始めたのは別の作品なんだけど。
 まあ書き始めたら途中までは止まらなくなるってもんで、あっち書いてこっち書いてやってたら、ハーメルンの執筆ページが重くなりまして。
 大体2万越えたあたりで書き辛くなるよね。スペックによるのかもだけど。
 それでも根性で書いてたら2万7千でめっちゃ書き辛くなったのでとりあえず上げます。
 ちなみに書いてた別の作品は片田舎のおっさん、剣聖になる、です。
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