凍傷気味のみかん箱   作:凍傷(ぜろくろ)

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ホホ、二話目じゃよ


たとえばそんなエネルギーの集まる先2

 で。

 

「っしゃぁああああっ! 俺の勝ちだ出久ぅうっ!」

「っあぁあああああっ! くっそ負けたぁああっ!」

 

 僕らはあの日から、それこそ隣り合って、追って並んで追い越しての関係を築いて───

 

「よぉっし勝ったぁあっ!」

「くっそなンッで間違えやがった俺ぇええっ!!」

 

 体力ではかっちゃんに、勉強では僕。

 互いに勝ち星を手に取って、次こそはと、相手の得意分野で勝ってこそって、それを本当に楽しみながら続けた。

 

「っとぉ、おいおい気ィつけろよ緑谷、どこ見て歩いてんだボ───」

何処に目ェつけて歩っとんのじゃボケカス死ねタコ!! 出久が怪我ァしたらどうすッ気だぁ!? アァアアッ!?」

「ヒィイイイイイッ!?」

「かっちゃん落ち着いて!? かっちゃん!? かっちゃぁああん!?」

 

 楽しむことって、大事なんだと思う。

 ただ必死に努力するよりも、こんなにも心が嬉しくて。

 いつかの日にオールマイトの指導の下でゴミを運んで鍛えた頃とは違う。

 毎日が楽しくて、でも、あんなことがあったからか、なんだかかっちゃんがいやに過保護な気がして。そのくせ競う前はコロスとか言ってくるんだから、そりゃあ周りも勘違いしちゃうって。

 

「出久をどーこーしていいのは、いいか、俺だけだ。気に入らねェ奴ぁ相応の努力してからモノ言えや。テメェらにこいつと同じくらい努力出来るタマがあんならなァ」

「そ、そんな、かっちゃ───」

それから。俺をかっちゃんって呼んでいいのもこいつだけだ。努力もしねぇ、学びもしねぇ、弱ェやつみつくろって見下してるだけのヤツに用はねぇ。悔しかったら泣こうが喚こうが目標見失わずに這い上がってから口開け」

「っ……」

「あ、あの、ツバサくん? 今のは、かっちゃん語で『努力して、学んで、弱い人を見下したりしないで、泣いても叫んでも立ち上がれる自分になれたら、仲良くしよう』って意味で───」

お前はどっちの味方しとんのだ!!

「それかっちゃんが言う!?」

 

 そうして小学校を卒業、中学校を卒業間近って時。

 ストレスもなかったからか、ご近所でもお美しいと評判のお母さんに見送られ、学校で進路調査票を受け取り、その放課後に、僕は───

 

「こっちで遭ったのか、出久」

「うん。あの日、かっちゃんにノート爆破されて、その帰りに……あっ

「………」

「言っちゃっといてアレだけど気にしないでかっちゃん! 僕もうほんと気にしてないからっ! そ、それよりほらっ! このトンネル! ここでねっ、決意を胸にしていたら───」

『Mサイズの……隠れミノ───』

あなたが来たあぁああああっ!?

 

 タイトル:振り向けばそこに。

 そう。この日、本来だったら僕がヘドロヴィランに襲われ、オールマイトに助けられるはずだったその日に。僕はかっちゃんとともに歩き、かつてを振り返っていたら───出ました、ヘドロヴィラン。

 マンホールからズルゥリと出てきたそれは、僕よりも隣のかっちゃんへと目を付けて───

 

「あ、ちょっ、待っ───! 逃げっ───逃げてぇえ!!」

「とーとーお出ましか、会いたかったぜヘドロ野郎……! てめぇにゃいつか仕返ししてぇと思ってたんだ……! 飛んで火に入るなんとやらってなァアアア……ッ!!」

「あぁあああああああっ!!」

 

 この場に警察がいたら、一発でおまわりさん、あの人です、で終わるほどの極悪な笑みを浮かべたかっちゃん。

 流動的な体でかっちゃんを包み込もうとした瞬間、パパッ……と掌から払うように飛ばされた汗がヘドロに付着するや、ゴババババババボォン!! と一粒一粒が激しい爆発を起こした。

 

『!!!!! なっ───』

「体がどんだけ流動的だろうが目と口はそうじゃねぇ。いい具合に泥飛んだじゃねぇか。その剥き出しの目にしっかり刻んどけよボケ、自分が学生に負ける屈辱の瞬間ってのをな」

 

 直後、大きく露出した大きな目玉に、かっちゃん、爆破で加速した拳を叩き込むの巻。

 

アァアアアアアアアアアッ!!

「あァあと。いい歯医者紹介すっから、今ある歯ァ全部諦めとけ。な? な?

『ヒッ……あ、待、』

 

 言葉は最後まで紡がれませんでした。

 爆発が起こって、歯が吹き飛んで、HEEEEEYYYY!! と叫ぶヘドロヴィランがいっそ哀れで、けど。

 

「もう大丈夫だ少年!! 私が来た!!

「ぁあああああああオールマイトォオオオオオッ!!」

 

 そこに、オールマイトが来た。マッスルフォームで。マッスルフォームで!!

 あぁあああ懐かしい!! 叶うならもう一度ナマで見たいと思っていたマッスルフォームオールマイトが! 目の前に!!

 

「じゃなくて! 助けてくださいオールマイト!」

「もちろんさ少年! 今すぐ“敵”(ヴィラン)は───」

「でもなくて! そのヴィランが危ないんです!」

「ああ危ないね! だから下がっていなさい!」

「だからそうじゃなくて! ヴィランが! 危ないんです!! 助けてあげてくださいヴィランを!!」

「HAHAHAHA、危ない目に遭って混乱しちゃったのかな!? 大丈夫! 私が来たからにはぁぁああああ危ないぃいいいっ!!

 

 ……それから、流動的な体は一切無視され、眼球と立派な歯をボッコボコにされて泣き叫んでいるヘドロヴィランを、幼馴染から救うというミッションが開始されたのでした。

 

……。

 

 のちに、ヘドロヴィランはきっちりペットボトルに納められ、いつかのようにギュッとズボンのポケットにしまわれた。

 

「いやあすまないね、敵退治に巻き込んでしまった。いつもはこんなミスしないのだが、オフだったのと慣れない土地でウカれちゃったかな!?」

 

 HAHAHAHAHAと笑うオールマイトとは別に、僕とかっちゃんはといえば、正直感動半分戸惑い半分。

 だって、どう説明したらいいのかわからないんだ。

 あなたのことを知っています~とか、公式サイトに毒々チェーンソーとの戦い付近からオール・フォー・ワンのことを匂わせたり、いろいろやってみてた。

 直接会いに行っても門前払いだった。

 ワン・フォー・オールのことを知っています、なんて言えるわけもない。まず信じてもらえるはずもない。どころか、まずオール・フォー・ワンの組織方面として疑われるだろうし、そうなれば僕って存在に連なる家族に危険が及ぶ。

 だからメールを送り続けたんだけど、冗談として流されてしまったんだろう。

 メール、なんてものもどれだけ安全かなんてわからない。

 メール管理をしている人が、もしスパイかなんかだったら? とか考えたら、あんまり核心をつくようなものも送れなかった。

 

「じゃあ私はこいつを警察に届けるので! 液晶越しにまた会おう!」

「あ、ちょっと待ってくださいオールマイト! 大事なお話が!」

「すまないね! プロは常に敵か時間との戦いさ! 急いでるんだ!」

「待てっての! あんたのこれからに関係してることなんだ! 大声じゃ言えねぇ! 出久が何度メール送っても受け取ってくんなかったんだろ! 聞けや!」

「! ……キミが。だがすまない、今は本当に急いでるんだ! それでは今後とも───応援よろしくねー───!!」

 

 オールマイトが物凄い跳躍力で跳んで行ってしまう。

 と、かっちゃんがすぐに駆け出した。

 

「いくぞ出久!」

「うん!」

 

 相手が飛ぶなら自分たちもだ。

 弱ってるハズなのにもうあんなに遠くまで跳んでしまった脚力に、歴代の中でも規格外すぎるでしょ……と内心驚きながらも……円環推進、浮遊、エアフォースを発動。オールマイトと同じく地面を蹴り弾いて、一気に飛んだ。

 かっちゃん? かっちゃんは───爆破で。速度が異常だ。

 でも花火が弾けるみたいな音がすごいから、騒音被害とかすごいかもしれない。

 

「オールマイト!!」

「えっ? って、コラコラコラー!! なんでついてきて……エッ!? なんでついてこれてるのキミたち!!」

「話があるっつってんだろが止まれやコラァ!!」

「口悪いなキミ! と、ともかく個性の私用は───ゴホッ! んー───……!!(Shit……!)」

「っと、かっちゃん!」

「落とすかよ! っと、しっかりしとけやオールマイト! 落ちるとこだったろが!」

「ややっ!? これはすまないね! 助かったよ少年!」

 

 落ちそうになったヘドロヴィラン入りのペットボトルを、僕とかっちゃんの二人でひとつずつ拾う。

 そして───いつかのあの建物の屋上に着地する。

 

「いや~助かったよ。せっかく捕まえた敵を逃がすところだった! だがそれはそれ、これはこれだ! とにかく本当に時間が無いから───」

「活動時間! ……の、ことですよね」

「!? ……い、いや、私は」

「知ってっから隠さんでいいっつの。オール・フォー・ワンのことも、ワン・フォー・オールのことも。あんたがほんとはガリガリで、それがやせ我慢の姿だってことも」

「……………………何故」

 

 シュウ、と煙が出て、トゥルーフォームのオールマイトが現れる。

 見慣れてしまっていた、けど、まだ若く見える姿だ。

 教頭になった頃のシワとかは全然ない。

 今になってこれを見ると思うことがあるけど、もしかしてこれって揺蕩井さん……六代目の力がオールマイトの姿を隠そうと煙を出してた~とか、あるのかな。

 

「聞いてください、オールマイト。僕たちのこれまでと、これから起こるかもしれないことを」

「……ああ、聞こう。ただ事じゃなさそうだしね」

 

 ゴホ、と血を吐きながら、オールマイトは屋上の柵にもたれるようにして座った。

 僕もかっちゃんもその隣に座るようにして、話を始める。

 過去であり、これからの未来でもある、あの時のことを。

 

 

───……。

 

……。

 

 ひとつを語るたびにいくつかの質問をされて、それに応える度、オールマイトは驚いていた。

 それはそうだと思う。僕だって、前の頃のことは、本当に夢みたいな経験だって思うし。

 

「しかし、そうか。キミの代で、ワン・フォー・オールは完遂されたのか」

「どうして僕とかっちゃんがこうして戻ってきてるのかは……正直わかりません。でも、こうしてここに居るのならって。前よりも努力して、前では届かなかった何かを救えるくらい、強くなろうって」

「なるほど、欲張りだなぁ少年!」

「背を押してくれたのはオールマイトですよ。あなたが居たから、腐らないで駆けてこれたんです」

「そう言ってくれるのはありがたい。だが……そうか。オール・フォー・ワンが生きている……うすうすそうではないかとは思っていたが。トドメを刺し切れなかった私の責任だ」

「頭ァ潰して生きてるだなんて誰が思うかよ。アンタはアンタの務めを果たした。邪魔ァしたのは死体いじくったヤツだろ」

「……相澤先生と、プレゼントマイクから、酒の席で話されたことがあります。親友の死体をいじくって、脳無にした医者が居た、と。オール・フォー・ワンもその医者が蘇生させた可能性があります」

「なんだって?」

 

 そう、聞いた話でしかないけれど、得られた話はいくつかある。

 こうして話せる機会がもっと早くに儲けられればよかったのに、それが叶わなかった。

 

「俺もミルコのヤツから聞いた。ダルマみてぇなメガネジジイがけったいな研究所で脳無作ってやがったとかなんとか」

「ダルマみたいなメガネジジイ……あの、かっちゃん? それって白いヒゲの生えた? 頭が禿げてて?」

「? あァ、そう聞いた」

「───」

 

 ───『諦めたほうが良いね』

 

「───僕、その人、知ってるかもしれない。医者で、個性のこと取り扱ってて、児童養護施設とか介護施設を開設して……え? じゃあツバサくんのあの翼の個性……え?」

「出久? どした、知ってるってどーゆー───」

「僕が無個性だって診断された病院! あそこで医者してる人! ほら! ツバサくんの祖父とかいう! ステインと遭遇した保須に現れたヴィランに、ツバサくんと同じ翼を持つ脳無が居たんだ! なんでか僕を真っ先に狙ってきて! ~……かっちゃん……っ……! まさか、これって……」

「……ッソが……!!」

 

 気づけば居なくなっていた、幼い頃から知っている人が居た。

 太っちょで、かっちゃんの後ろに居て、太い体でも翼で浮かせていた、結構強い個性だったと思う。

 気づけば居なくなっていた。転校? 中学が違くて別れた? そんなんじゃない。突然いなくなったんだ。先生も事情を知らないって言ってた。

 かっちゃんなんかは『どーせメシ食い過ぎて腹痛で休んでるんだろ』、なんて言ってた。学校に来なくなって、一週間、二週間、一ヶ月、一年、卒業───やがて話題にも上がらなくなって。

 きっと転校したんだ、夜逃げか? なんていろいろ言われてたけど、先生も知らないなら自分達が知れるわけがない、なんて簡単にあきらめて、以降は知りもしなかった。

 

「……わかった。いや、詳しいことが分かったわけではないが、君達の言う言葉は受け取ろう。私の方でも出来ることをやれるように───」

「でも。オールマイト、サーナイトアイとは今、仲違いしているんでしょう?」

「───! そんなことまで知っているのか。大丈夫、こう見えてもNo.1ヒーローだ。顔が利くのはそこだけじゃあないさ!」

「話します。オールマイトが死ぬかもしれなかった瞬間のことも。おそらく、あそこだろうから。ね、かっちゃん」

「アンタを救けたのは俺だ。いーからまずは話聞けやオールマイト」

「だから口悪いよキミ!」

 

 けど、さすがに知らない場所の建物の屋上でする話でもないわけで。

 僕たちは素直に移動して、とりあえず───

 

「ただいま、お母さん」

「あら、おかえり出久。あら、勝己くんも。……そちらの方は?」

「あ、私は───」

「こちら、八木俊典さん。今度雄英で教師をするらしくて、学校案内とかの相談を受けることになって」

「!?」

「そうなの!? すごいのね、雄英って。進路希望ってまだ出してもなかったんじゃないの?」

「!?」

「あーその。中学の方で雄英受ける気があるならって、呼んでくれてたみたいス」

「あ、なるほど。そっか、出久も勝己くんも絶対に雄英だって張り切ってたもんね。あ、じゃあお母さん、これからちょっと出かけるから。お構い出来ずすいません、えぇと八木先生。二人のこと、よろしくお願いします」

「───へ、はっ、はいっ!」

 

 オールマイトがいやに緊張しながら返事をして、お母さんはにっこり笑って出て行った。

 

「アホ。平然と学校案内でっちあげといて進路希望のこととかツッコまれてんなや」

「うう、ごめん……! お母さんに嘘とかはさすがに心苦しくて……!」

「で、オールマイト。アンタはなにボーゼンとしとんのだ」

「ああ、はは……お母さん、七代目に似てますよね。今ポニーテールだから余計に。僕が鍛え始めてから、お母さんもって一緒に始めて、結構体もがっしりしてますし」

 

 お母さん、僕が無個性だって診断されてから、僕に付きっ切りでいてくれた。出久がやるんならって。なんなら、頑張る僕を傍で支えて、絶対にヒーローになるんだって言った僕に、「……ゔん……! 出久は、なれるよ……! 絶対に、ヒーローになれる!」って言ってくれた。最高のお母さんだ。

 前回の僕が間違っていたとは思いたくない。でも……もっと出来ることはあったんだと思う。

 だから、違った未来に行けることに、お母さんが後悔ばかりでストレスを抱いていない今に、感謝している。

 個性はあるよ、と見せることは、きっと出来たんだと思う。でも、しなかった。

 子供の頃に見せたら、きっとまたあの病院に連れていかれただろうから。

 最悪、あの医者に個性を剥ぎ取られていたかもしれない。

 個性をコピーするような医者だ、どうなっていたかなんて分からない。

 当時の僕がそれを知る由はなかったけど、嫌な予感に従った結果だ。たぶん、危機感知が働いたんだと思う。

 

「……そんなに似てんのか」

「うん。びっくりするくらい。僕も精神世界でしか見たことはないけど、すごいよ。双子の姉妹だって言われたら頷いちゃうくらい」

「そか。まァ……あの腐れオール・フォー・ワンの野郎も俺のことクドーだかなんだか言ってたし、似てる奴ァ居るってことなんだろな」

「駆藤……二代目? かっちゃんに? ……似てるかなぁ」

 

 言いつつ靴を脱いで、居間の方へ。

 かつてオールマイトが土下座をしたことを思い出すと、なんだかちょっぴり切ないのと、嬉しいのと。

 

「さて。それじゃあ纏めようか。まず……知っているようだから不要だとは思うが、私は八木俊典。No.1ヒーロー、オールマイトだ」

「僕はデク……あ、これは前のヒーロー名で、本名は緑谷出久です」

「爆豪勝己。ヒーロー名は大・爆・殺・神ダイナマイトだ」

「(長い!)……うん、よろしくね」

 

 にこりと笑って、僕が淹れたお茶をズズーと飲む。

 腸の負担にならないようにと、オールマイトが教えてくれた最適温度で淹れたお茶だ。

 

「驚いた……本当に私の事情を知っているんだね。うん、やさしい温度だし、とても美味しいよ」

「はい。オールマイトの負担になるようなお茶にはしないようにって何度も何度も練習しましたしこういうこともあろうかとポットのお湯も最適温度に設定してブツブツブツブツ」

「落ち着けキメェわ」

「ひどいよかっちゃん!」

「(ごめんええと緑谷少年……正直ちょっと怖い……!)」

 

 ともかく、とオールマイトを対面にソファに座り、話を始めた。

 なんなら今サーナイトアイに取り次いでもらって、電話越しに話を。

 

 




ここおかしいYO! とか思っても気にするな! どうせボツだ!
そんな気持ちで書いてると気が楽です。
とうとうヤツもイカレちまった。
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