凍傷気味のみかん箱   作:凍傷(ぜろくろ)

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依頼はこなさずツアーに生きる

 スコンッ♪

 

 モンスターハンターは狩りッ!!

 依頼を受けたら狩りに出る!

 武器はしっかり装備して! 卵もちゃっかりいただいて、と思ったらワイバーンに見つかっちゃって超がっかり!

 狩り狩り狩りで狩りばっかり!

 モンスターハンター出来たばっかり!

 

「上手に焼けました~!」

 

 キャプコム。

 

「…………うん」

 

 生肉を焼くんだからと、せっかくなので前世の記憶を引っ張り出して、焼いてみた。

 初代モンハンから何代かは続いたキャラボイスの中でも、俺はあの「ハァッ!」と肉を振り上げる声が好きだった。や、まあ、初代からプレイしている人にしてみりゃ、自分が選んだ声が一番好きなのは当然なんだろうけど。

 おっと、自己紹介が遅れた。すまない。まあ知っていようとなかろうとどーでもいいことだけど、俺の名前はジン=コークゥ。この素晴らしくも残酷な世界で、ハンターを生業にしていた者だ。

 していた、というのも、今では素材屋を営んで、手に入れたお金で食事をしたりするのが楽しみな、女っけのひとつもないしがない黒い人だ。

 キャラメイクでね、黒い人を選んだんだよ。や、真っ黒じゃなくてね? ほどよく「あ、黒人だ」なんて思えるくらいの。で、頭はハゲ。ペイントメイクを引き延ばしたり色を変えたりテカらせたりして、頭の中心に黄金の肉球マークを、その両端に引き延ばしたような黄金の翼のペイント。そして顎には黄金のヒゲ。

 黒人だから、ジン=コークゥ。捻りもない名前? とんでもない、捻ってるじゃないか。捻ってなけりゃあコクジンで終わるだけの話さ。

 さて、今じゃ珍しくもない転生をしたらしい俺の前世……というか意識が移る前の自分を思い出してみても、初代モンハンとGのCM(男性バージョン。これは譲れん)を愛していたくらいしか興味を向ける意味も理由もない俺の死因なんざ、ま~あああどーでもいいと思える俺なのだが。

 今現在はこうして、寒冷群島の絶景スポット(6の左下のウロコモリトカゲくんの上の方のアレね)で生肉を焼いていたところだ。いやぁ、ウミウシボウズに手を振ってから焼くこんがり肉は最高だね。

 

「っかー! 美味いッ! いやぁほんと、全部終わってからの自分で転生してくれてサンクスって感じだよなー!」

 

 少し前までは短期間で、オサイズチからガイアデルムまでを駆けて、傀異討究220lvまでを上り詰めた俺だけどさ。その戦いとかも記憶で覚えてる程度で、俺がやったにはやったんだけど、俺自身じゃないっていうか、プレイしていた頃の俺っていうか。

 前世の俺が活躍した結果は“俺”としてここに居る。ガイアデルムだって倒したし、傀異克服したバルファルクだって討伐した。でも、そんな結果も俺以外の全部が消えて、今はカムラでウツシ教官に鍛えられたハンターが居る、という感じだ。

 ガイアデルムの脅威はまだ来ない。けど、なんでか俺がミノト=サンに話しかけると、傀異クエストを受けられる不思議。まあ、もちろん受けないんだけどさ。

 

「こんな寒い場所でも、焼く時間は同じでこんがり肉は完成する……この世界って不思議だ」

 

 そんなわけで。俺がやらんでもなんとかやってけてるみたいだから、俺、素直に素材屋やることにしたんだ。いっつも思ってたんだよねー、カムラポイントじゃなきゃ交換出来ない素材とかめんどいわーって。だからさ、俺がポイントとか素材集めて、猛き炎に素材を買ってもらおうかと。交易船のポイントアイテムを俺が交換して、猛き炎にはお金で買ってもらうって寸法よ。俺、ポイントがゼニーに化けてウハウハ。特産品を手に入れたり、ウロコモリトカゲさんからはしっかりそこに居る大型モンスターの素材を受け取ったりして、それも売り付けながら、実際には大型モンスターとは戦わないという平和な日々を過ごしてるのよ。

 もちろん出発するのは素材ツアーばっかりだ。特産品の増殖している場所に向かっては、日が暮れるまで素材採集。手に入れたものをBOXに詰め込んで、情報の変化が報告されたら続けて鉱石の採取をしたりだ。

 

「いやこの世界のメシのうめぇことうめぇこと! こんな簡単に作れるこんがり肉がこんなに美味いってウッソだろって感じだよなー! ……携帯食料はマジでマズかったけど」

 

 ちなみに肉食のモンスターの肉は食えたもんじゃない。不味い。ジョジョ五部のミスタの言葉も、今なら素直に頷けるよ。食うならやっぱ草食動物な。……ディアブロスって美味いんだろうか。好物サボテンだし。

 

「んまぁ、貴重素材希少素材の入手の仕方も熟知してりゃあ、戦わずに手に入れられるってもんで。クグツチグモやオニクグツにはいっつもお世話になっとります」

 

 バサルモスを転倒させて背中の発掘とかどれほどしたことか。あ、それはジンオウガもか。あ、ちなみに素材採取とかしている時に大型モンスに見つかった時は、普通に……まあいろいろ利用して逃げたり遊んだりおちょくったり……だな。

 オサイズチが狗族特有のあの横タックルを仕掛けて来た時、誘導して崖から突き落とした時はまあ……うん、戦ってないのに討伐完了になって、切ない気持ちになったなぁ……。あんな高いところから落ちても平気なのはハンターくらいだよきっと。オサイズチ=サン、普通に落下の衝撃で全身粉砕骨折で絶命してたし。入手した素材……砕けた天角どころか、砕けた鎌鼬(れんゆう)竜の骨ばっかだったよ。

 落下の間際に鉱石いっぱい積んだポーチを背負わせたのが主な原因だろうけど。うん、すまない。これ、正々堂々なバトル漫画とかじゃなくて、魔物を狩るお話なんだ。過程や方法などどうでもよくて、勝てばよかろうなのだよ。

 

「さーて、里に帰ったらなに団子食うかなぁ。あ、換算術があったら確実にそれで、あとは……あー、ココット村とか行きたいなぁ。自宅のアイルーにBGMを目覚めにしてもらったはいいけど、余計にココットに行きたくて仕方ない。……真マップとして森と丘、出してくれないかなぁ。……あ、や、今の俺にはどうしようもなかった。実装されてももう俺出来ないじゃん」

 

 いつか自力で行くしかないかぁ。あっちのレウスは振り向き方でブレスか突進かが分かるから、やりやすかったなぁ。いやぁ懐かしい。

 

「ところで俺は農場のBGMはココット農場が一番好きなんだが、みんなはどうだ?」

 

 ……返事など聞こえてくるはずもなく。目的も果たしたし、そろそろ帰還するかなぁ。素材を手に入れられるだけ手に入れて、ウロコモリくんを叩いて素材を手に入れて、帰還。大型モンスターとは極力戦わず、戦ったとしても……閃光で怯ませてオニクグツとかで転倒させたり、落とし物をさせたりして素材を入手、とんずらするだけである。

 

……。

 

 カムラに帰還すると、ホバシラさんに挨拶をして自宅へ。

 船着き場横に建てられたさほど大きくもない家が、俺の自宅だ。

 あの、なんか知らんけど供えられている魚……鯛? の奥にね? なんかこう、建てられてるの。俺すっげぇ端っこ里民じゃんと軽く悲しくなったよ。なに俺、嫌われてるの? とか思ったけど、里の人たちはすっごいやさしいしフレンドリィでした。

 特にアイルーと仲が良く、家の縁側から釣り竿垂らして釣った魚とか、よく譲ったりしてる。ツリキさんとかホバシラさんはもうマブだねマブ。アイルーじゃないけど。

  エルガド方面は船乗りが多いから、その分知り合いも多いよ。ロンディーネさんを筆頭に、交易方面の知り合いとの絆も深く───けど、彼ら彼女らに俺が猛き炎をやってた記憶は一切ない。

 その割に、カムラの炎がまだ百竜夜行が~とかいろいろやってる現在も、俺はフツーに拠点移動でエルガド行ったりしてあれこれやってるんだけどね。ルッソさんとビンガルさんと、フツーに里の酒とか珍味とか交換したりして、ワハハと楽しんだりしてるもんさ。ボタンひとつではいエルガド♪ なんてことは出来ないけれど、猛き炎の自宅前に居る黄色いアイルー、船乗りのコロンに話しかければいつでもぴょいとエルガドだ。なんとも不思議。

 

「っし、と。売らないアイテムはBOXに詰め込んで、と……ポイントをアイテムに交換しにいかないとな。……ふんふんふ~ん♪ ラララ~♪ ララララ~♪ エルガドの英雄~♪ 偉大なるハンターよ~♪」

 

 いつかカムラの英雄さんにこれを歌ってやるのが楽しみだ。

 エルガド方面ではタンコとルアンがマブだ。ジレッタの店の手伝いをして、珍しい魚を分けてもらって料理するのも結構楽しい。完成した料理に、船乗り全員で舌鼓を打つんだ。最高の日々だよ。

 今の目標は、フルルと一緒にタルタルを巻き込んで、大型屋台船を作って、各地を旅しながら様々な料理を広めることだ。俺も素材屋なんてものをやってるから、いろんな海のいろんな魚に詳しくなったし、調理方法もなんか素材を見るとパッと浮かんでくるんだよね。

 

「タルタルにはこの計画はまだ内緒だよってフルルに言われてるから、口が滑らないようにしないとな」

 

 この世界は面白い。

 画面を見て動かす側だった俺からしてみれば、全ての人が普通に生きて、いろんな目標目掛けて頑張っている姿はとても眩しいものがある。

 狩り狩り狩りで狩りばっかりだった意識は、すっかり里や人々の方へと向いて、狩りとは別の人々の話はそりゃあもう新鮮ってもんで。

 里なんてただ、クエストを受けるためや錬金を進めるための場所だ~なんて考えていた自分が恥ずかしいったらないよ。

 そんな俺の服装は船乗り然とした重ね着で、採取ツアーに出る時はそれに沿った重ね着で出発する。中身はゴチゴチの素材採取特化装備だけどね。回避距離UPと翔り蟲使いと風纏いは、採取の旅を豊かにしてくれます。

 ちなみにオトモにガルクは居ない。

 俺は根っからのアイルー大好き人間だったから、用途に合わせて連れていくオトモの全てはアイルーであった。その代わり、交易などはガルクに任せてます。はい。

 我らは素材屋集団であるからして、ぶんどりや採取が出来るアイルーの方が重宝するのです。武器? 当然双剣で鬼人ダッシュですよ。

 

 




 もうちょい頑張れる気もするけど更新したのが結構前だったりする。
 ガイアデルム倒したあたり? たぶん原初メルゼナの影すらなかった時に書いたもの。
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