結論から言うと、デヴィット・シールド博士による個性増幅装置の件は、一緒に研究を進めていたサムさんが敵であることは分かっていたのであっさり解決。
デヴィット博士にもオールマイトは全盛期に戻ったって知ってもらえたので、もう憂う必要もないだろう。
のちにメリッサさんが改良を加えることで、個性の増幅ではなく個性使用によるデメリットを軽減する装置として完成。なんでか僕宛てに、サポートアイテムとして送られてきた。何故? メリッサさん? え? もしかして?
続いて那歩島問題。
オール・フォー・ワンのように複数個性を有するナインのことや、他のヴィラン、真幌ちゃんや活真くんのことも話して、ナインのことは殻木球大の連なりから既に捕まっていると判明。僕とかっちゃん、ぽかんとするほかなかった。
あんなに苦労したのに……!
ヒューマライズ関連では、そもそもロディの父親の研究と、そもそものヒューマライズのアジトの場所を教えれば簡単だった。
現地へ向かったヒーローたちが一人の少年に随分助けられたとかで、なんでか僕の名をあげて『よろしく言ってくれ』って言伝を頼んだとか。
ロディ、きみもなの!? 嬉しいけど! すっごい嬉しいけどさぁ!
ダークマイト関連は……あ、うん。なんかそもそもシェルビーノ家は健在だったし、誰とは言わないけど執事さんもお嬢さまも仲は良好。
肝心のダークマイトは……そもそも内部の騒動の中で、とっくの昔に命を落としたとかなんとか……。
たぶん、関係者の中に記憶を持った人が居て、あんなことになるなら、って……行動とったのかなぁ。
こうして、僕が雄英に入る前に大抵の問題は解決してしまっていて。
あとはそれこそオール・フォー・ワンをなんとかするのみ、といった感じに。
こんなことって起こるものなんだなぁ……って、さすがに驚いた。
でも。そのオール・フォー・ワンこそが最大の敵だ。ギガントマキア、という存在にも気を付けないといけない。
死柄木はどういうわけか居ないみたいだけど……それもあんまり考えても纏まらない。
話もそこそこに解散したその日、僕はオールマイトグッズの発売に合わせて、ちょっと遠い場所にまで来ていた。
前の時のこの頃は、わき目も振らずにオールマイトとトレーニングをしていたから、欲しかったグッズは永遠に手に入らなかった。
でも、今は違う! 今回は───買える!!
今から治まらない興奮をそのままに、街を弾むように歩く僕の横を───
「ほぉら、転ちゃん? 置いてっちゃうよ?」
「待ってよおばあちゃんっ」
ひとりの、少年が駆けていった。
「え───」
ふと振り返った先に、大事なものがあった。
笑顔で少し歳のいった女性を追いかける……少し年上くらいの少年。
「転───」
名前が浮かんだ。きっと彼。だけど、呼ぶことはしなかった。
因子が繋がったいつか、彼の願いを聞いたことがある。
ああ、なんだ、つまり───
「……手を取ってくれる誰かが、居たんだ」
歳のいった女性にどこか見覚えがある気がしたけど、その前で幸せそうに笑みを浮かべる黒髪の少年を見て、なにかと重ねて見る必要なんてない、と思えた。
だったら、次は僕らだ。
絶対に、オール・フォー・ワンの好きにはさせない。
必ず辿り着いて、最高のもう一度にしよう。
「(あ、でもまずはオールマイトグッズを……!)」
家族を崩壊で消した罪は消えない。
きっと、ずっと、彼の記憶には残るんだろう。
その最後の姿がどんなものであったかこそが、彼の罪にもきっとなる。
傍に居てくれたけど崩れたモンちゃんって名前だった犬。
怖くて逃げてしまった姉。
それがどういう個性かを知ってもなお、子供に寄り添おうとしてくれた母。
やめろと言ったけれど、明確な殺意とともに消された父。
それらがどんな気持ちを彼にもたらすのかは分からないけれど……いつか。なにかを通じて、スピナーと仲良くなれる未来があればいいなって。
……。
入試当日。
麗日さんを発見して、ゴチーンと固まってしまった僕の頭をはたいて、かっちゃんは先を行く。
慌てて僕も追う。
コケることはしなかったから、麗日さんに助けられることもない。
……麗日さんに、記憶はなかった。
言ってしまえば、説明会場に居た1-Aのみんなにも。
それを寂しいと素直に思ってしまう。
青山くんも居た。っていうことは、オール・フォー・ワンも着実に動いてる。
「んじゃァな、出久。まさかってこたァねぇだろうが、落ちンなよ」
「うん。頑張るよ」
今回は最初から個性を使う。
そういう個性だってみんなに知ってもらった上で、それがワン・フォー・オールっていう繋いできた個性だ、とは言わない。
提出した書類にはオーラ、って感じの個性と書いた。
体に走る光も、黒鞭も、オーラに見えなくもないし。
『はいスタートォ!』
「よしっ!」
出された合図に飛び出した。
さあ、勝ち取るのは完全勝利だ!
負けないよ、かっちゃん!!
……って、勢いよく飛び出したけど、結局は自分が暴れ回ればポイントが行きわたらないんじゃないか~とか考えた所為で、合格点には達しただろうけど、たぶんかっちゃんが知れば煮え切らない点数だって悪態つくくらいのものだったと思う。
もちろん麗日さんは助けた。建物崩し過ぎるのは危ないからって、0Pヴィランを殴り飛ばしたりはしなかったけど。
前の僕、ほんと考え無しだったなぁ……。
……。
そういうこともあって、無事合格。
普通に登校して、普通に席に座って。
教壇に立つ側だった自分がもう一度席に座るっていう、すごい違和感……なんだけど、見渡す景色がいつかと重なると、なんかもう懐かしさで泣きたくなった。
けれどここで詰まると相澤先生が怖いから、まずは飯田くんにこそっと伝令。
「えっと、僕は緑谷出久っていうんだけど、ちょっといいかな」
「む、これはご丁寧に。俺は飯田天哉。それで、どんな要件だろうか」
「うん。……あそこに先生居るみたいだから、みんなを静かにさせるの、手伝ってもらっていいかな」
「───! なるほど! 既に雄英生としての格は求められているということか……! もちろん協力しよう、緑谷くん!」
静かに話しかけた甲斐もなく、飯田くんは元気に返事をして、みんなに声を掛け始めた。
もちろん僕も挨拶と一緒に声をかけていって、みんなが席について静かになった頃。
相澤先生がごそりと動きだした。
「静かになるのに協力できるってのは実にいい。時間は有限。合理的で結構。……担任の相澤消太だ。よろしくね」
「「「「「(担任!!?)」」」」」
「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」
そして、個性把握テストが始まる。
着替えの間にかっちゃんの傍まで行って、これ、どうするべきかな、と訊いてみた。
「構やしねぇだろ。言う通り、遊び感覚でやられて困るのはこっちも同じだ」
「でも、芦戸さんに軽く注意するくらいは───」
「同じことだろが。気ィ引き締めんなら早ぇえほうがいい」
「……うん」
「それよか、入試ン時みてぇに手ぇ抜くんじゃねぇぞ出久。俺ァ今出せる全力で以って一位狙ってくからよォ……!!」
「競うことになると顔が邪悪になるの、なんとかならない!?」
みんなには悪いけど、除籍処分のことは黙っていくことになった。
かっちゃんの言う通りだとは思うから。
……。
で───
「死ねえ!!!」
球が天高く飛んでった。
前の世界のこの時よりも、どこにどう投げれば遠くまで跳ぶか、を完全に計算できるかっちゃんだからこその器用な角度で。
そして計測値は1000をあっさり超えた。
相澤先生の説明のあとに出てくるワイワイとしたみんなの声に、やっぱり「ああ……」と声を漏らすしかなくて。
で、まあ。やっぱり、除籍処分の話は出てくるわけで。
「行くぞ出久……遅れンなよ」
「うん!」
さあ、やるぞ!
みんなには悪いけど、受難あっての雄英ヒーロー科!
僕らが先に行くことで気を引き締めてくれるなら、僕もちゃんとやらないと……!!
第一種目:50m走
かっちゃんが火花を散らした流星になった。
なんだあれ。ヘドロヴィランの時にオールマイトを追ったのもそうだけど、個性:爆破でどうすればあんなことが?
花火が鳴ったと思ったら、もうゴールしてた。
相澤先生ボーゼンとしちゃってるじゃん!
僕? 僕も空飛んで一気にだった。かっちゃんには敗けた。
第二種目:握力
ワン・フォー・オール45%でやばいことになった。
100%引き出したら計測器壊れちゃうでしょこれ……!
とりあえずかっちゃんには勝ったけど、そうこなくっちゃなァアアア……! って顔で睨まれた。だから顔怖いよかっちゃん!
第三種目:立幅跳び
これ、立幅跳びの意味ある!?
円環推進と浮遊とエアフォースでスパーンと飛んで終わった。
かっちゃんだって空飛べるし、計測不能の連続だった。
第四種目:反復横跳び
白熱、という意味ではこれが地味に白熱したかもしれない。
かっちゃん、交互に爆破を使って左右に跳ぶ。
僕、45%で左右に跳びながら、着地の衝撃は円環推進で殺す。
そして反復動作によって発勁を溜めて、より素早く───!
結果? 峰田くんに勝てた。
第五種目:ボール投げ
どんなに努力しても、さすがに麗日さんの∞には勝てませんでした。
ていうかかっちゃんがさっき投げた時より遠くに飛ばしてて、やべぇ……! って思いました。作文。
そんなわけで、持久走も上体起こしも長座体前屈も、やることに差は大してなかった。
結果発表───は、言わずと知れたってやつだけど。
1:爆豪勝己
2:緑谷出久
3:八百万百
4:轟焦凍
5:───……
かっちゃんすごい!
個性爆破だけでどうしてあそこまで応用できるの!?
一応僕にも隠しだねみたいなものはあるけど、ちょっと危険だからこういう場では使えない。
というのも、ワン・フォー・オールで何かを攻撃する際に、円環推進をその部分に発現させておくと、衝撃が自分に戻ってこないのだ。
つまり、50%で殴っても円環が衝撃を吸収、対象へと押し戻してくれるから、殴ったこちらがダメージを受ける、ということがない。
ひゃっ……100%は、どうなるか、わからないケド……!
もちろん、これを応用すれば各種測定を大幅に更新できる。っていうか反復横跳びなんてまさにそれだった。
「───」
「あ」
そして、僕が隠し種を持っているであろうことなんてお見通しっぽいかっちゃんが、『凄い』としか言い表せない形相で僕を睨んできている。
ま、待って待って! 使わなかったんじゃなくて使えなかったんだってば!
そりゃあ4歳から数えて10年以上、前の頃も合わせれば結構長い時間をワン・フォー・オールと過ごしてるけど、歴代の意識が無い分、僕だけで突っ走るとどうなるか分かったもんじゃないんだよ!? お願い分かって!?
この後、例によって除籍処分は嘘だと明かされ、最下位だった峰田くんが「ッぶねー!!」と叫んでいた。
そんなこんなで、結局は今回も入学式やガイダンスとかは無いままに終了。
教室で静かにして、相澤先生の印象がプラスに働いたらもしかしたら……とか、ほんのちょっぴり期待してた。
あ、それと。
今回ではちょっとだけだけど、かなり違ったことが起こったわけで。
本日の下校時刻に、それは起こった。
「緑谷くん」
「え? あ、飯田くん」
「まずは初日、お疲れ様といったところだな。少し話をしたいと思って声をかけさせてもらった」
「うん、ありがとう。飯田くんもお疲れ様」
「ありがとう。しかし相澤先生にはやられたよ。俺は『これが最高峰!』とか思ってしまった! 教師がウソで鼓舞するとは……!」
「……ううん、実はね、飯田くん。去年、除籍された雄英生は、本当に居たんだよ」
「なに!? それは本当か!?」
「うん。今の新二年生が実際にそうで、除籍処分から復帰させてもらうのに相当苦労したらしいよ」
「復帰! そんな制度があったのか……」
「甘えた考えでヒーローを目指す生徒に、一度死んでもらうためなんだって。でも、そのお陰で“なんのためにヒーローになるのか”が分かったって言ってた」
「なるほど……! 確かにいつまでも学生気分、好きに個性が使えると燥ぐお祭り気分では、いざという時に悪や事故に立ち向かえない……!」
言葉のたびに、飯田くんはロボみたいな動きで身振り手振りで表現する。
懐かしいなぁ、この頃はロボっぽさが強かったんだっけ。
ロボじゃないけど。
あ、けどたしかここで、麗日さんが「お~い!」って来たぁ!?
「お二人さ~ん! 駅まで? 待ってー!」
「麗日さん!」
「君は∞女子」
「(∞女子! 懐かしい!)」
「麗日お茶子です! えっと、飯田天哉くんに緑谷……出久くんだよね!!」
「エッ……アッ!」
頑張れって感じのデクは!? って思ったけど、そうだった。
かっちゃんがもうデク呼びしてないから、デクって呼び方を麗日さんが知るわけがなかった……!
「あ、いやその」
胸の中で聞こえていた『みんなの声』が遠ざかっていく───!
頑張れって届けてくれたみんなが、音もなく───!
「よ、よろしく麗日さん。あ、えと。それで、なんだけd───」
「やっとちゃんと話せた~! 試験の時は助けてくれてありがとう!」
「あ、ハイ」
「あれは見事だったな。個性把握テストの結果を見れば、あの立ち回りも頷ける」
「あ、ハイ」
流されていく! も、もしかして、もうこの世界ではデクくんとは呼んでもらえないのだろうか……!
彼女が言ってくれたから、蔑称だったはずのそれも好きになれた。
あれも含まれていたから、彼女のことを僕のヒーローだと素直に思えたきっかけなのに。
ハッ! ヒーロー名を決める授業で、またデクって決めれば……? いやいやいやいやヒーロー名にくん付けをしてくれるか!? 飯田くんで例えるなら『インゲニウムくん』って言うようなもんじゃないか! 無理だ!
「………」
そういえば……デート出来る関係になっても、ずっとデクくん呼ばわれだったな、僕。
……あれ? もしかしたら僕、奇跡的に麗日さんと結婚、なんて出来たとしても、ずっとデクくん呼びされてたんじゃ……?
「緑谷出久です!」
「どうした急に!?」
「急にどしたん!?」
「じっ……自分表明を!」
「なるほど! 飯田天哉だ! よろしく!」
「なるほど! 麗日お茶子です! よろしくね!」
「うん! よろしく!」
そうして、三人笑って帰った。
懐かしさも混じる、あの日の下校。
初日の下校を思い出す! 今なら彼女が言っていた事も───
あの日、手を取り背を押してくれた飯田くんの言葉が心に届く。
大丈夫、忘れたりなんかしない。
そうだ、頑張れ、頑張ろう。
呼ばれ方であの日のことが変わるわけじゃない。
心に届く声は、今もまだ温かいままだ。
どうしてもう一度、こうしているのかは分からないまま。
そんな自分のままでも、いつか分かる日が来ても来なくても、悔いのない歩き方をすればいい。
そう。
たとえば───泣いちゃうくらいひどい事件なんてなにもないくらい、思いっきり『学校生活』を満喫できるもう一度、を堪能するくらいの気持ちで。
「(まあ……オールマイトが負傷前に戻ったってだけで、事件なんて大体片付いちゃうんだろうけど……)」
オール・フォー・ワンの動向は分からない。
僕らがこうして干渉した所為で、変わっていく部分もきっとある。
それでも……前よりもっと。今より先へ。更に向こうへの気持ちで、雄英生2年以降に『雄英ってこんなに平和でいいんだっけ?』、なんて言った瀬呂くんと、みんなで爆笑した時の気持ちで。
更に向こうへ。プルスウルトラ!
……。
なんて胸に宿る温かさに笑いながら下校したその日の夜。
なんかオールマイトが普通に家に来て、お母さんが悲鳴あげて、誰より先にかっちゃんが素っ飛んできて、なんだなんだと出てくるご近所さんに謝りつつ、とにかくオールマイトをさっさと家にあげて、扉は閉ざされた。
混乱するお母さんを落ち着かせて、とりあえずどうしたのかをオールマイトに訊ねると。
「あの……なんかね? 夢の中にいろんな人が出てきて、別の個性が使えるようになって……」
笑顔を絶やさぬ僕らのスーパーヒーローが、なんでか居間で正座しながら腹痛に苦しむ人みたいなひっどい顔でそう言った。
お母さんがわたわたしながらお茶を用意してくれていたその場で、僕とかっちゃんは顔を見合わせた。その顔が言ってる。「(やべぇ……)」と。僕も素直に思った。
むしろなんで今まで発現しなかったのか。負傷したからか。
「黒鞭も使えて浮遊も出来て、発勁も使えて変速も使えて危機感知も出来てここぞって時に煙幕も……え? 最強じゃないかな……? あの、オールマイト? 歴代はなにか言ってたり……?」
「個性が特異点に達した、と。これ以上は継承しても、継承した相手が負荷に耐えきれず死んでしまう可能性がある、と。だからワン・フォー・オールはキミの代で完遂させるか、無個性の誰かに継承させるしかない、と」
「なるほど……オールマイトの負傷が5年前であったことを考えると、元々特異点目前だったんだと思います。僕が継承して一年と少しで黒鞭が発現したなら、オールマイトが持っている時点でそもそも限界に近かったということでブツブツブツ」
「オイ。説明より考察が先走ってんぞ、出久」
「え、あっ! ごごごめんなさいオールマイト!」
「あ、いや、構わないよ、うん」
オールマイトに宿っているなら、僕よりも先にそれが来ても頷ける。
未熟だった僕よりも、よっぽど早い。やっぱりすごいなぁオールマイトは!
でもあくまで今回での発現だから、もちろん円環推進はないらしい。
……まあ、前の僕みたいじゃなくても浮遊とエアフォースと黒鞭でほぼ対応できるわけだから───空まで飛べるスーパーヒーローの誕生……?
「……言っちゃなんだけどよ。オール・フォー・ワンが憐れに思えてきた」
「うん……僕も」
聞けば、かっちゃんひとりでも十分に対応できたオール・フォー・ワン。
ダメージを与えれば若返る、という相手のデメリットがあってこそとは思うものの、ヴィラン側のボスを単独でそこまで追い詰められることがどれだけすごいか分かってるの?
「そ、それでそのー……緑谷少年? キミが今使ってる個性って、歴代継承者たちの個性なんだよね?」
「え、あ、はい。そうですけど……」
「良かったら使い方とか、教えてもらっていいかな。こればっかりはグラントリノに訊いても分からないだろうから……分からないだろうからッ!!」
「あ、はい……」
重要なところ、そこなんですね……。
だから妙に怯えた感じだったのかぁ……。
「そうだ! オールマイト、個性はまずなにが発現しました? やっぱり黒鞭d───」
「え? いや、お前なら必ず成し遂げられるって、なんかみんな一斉にくれたけど……」
「───」
僕の時は壁にキスするってくらいそっぽ向いたまま無視してたのに!
でもさすがオールマイト! すごいや!
「んじゃ、まずはどーすんだ?」
「えっと。そういえばまだ公園のゴミが片付いてなかったし……」
「え? あの……緑谷少年?」
「個性式『目指せ合格アメリカンドリームプラン』、やってみませんか? あ、もちろんヒーロー活動自体はサーナイトアイとご相談のもと、暇な時間を見繕ってじっくりと腰を据えてお取り頂ければ……!」
「あの……爆豪少年? 緑谷少年、なんでこんなナイトアイと仲いいの……?」
「あんたの未来、とっとと変えちまったからだろ。話しとらんのか、あんたが死ぬ未来なんざとっくの昔に見えとらんそうだぞ」
「視られるほどそこまでじっくり顔合わせした覚えないんだけど!?」
とにかくオールマイトは学ぶ気満々なら、僕が知っていることはそれはもう全部教えるつもりでいかなくちゃだよね。
まずは僕とオールマイトが取れる時間の調整と、サーナイトアイにも活動方面への根回しをお願いして───オールマイトが活動に完全復帰したことで、言っちゃアレだけど暇してるヒーローに頑張ってもらって、個性をものにしてもらってブツブツブツ……!
「……ねぇ爆豪少年。私、大丈夫? 緑谷少年すっごくぶつぶつ言ってるけど、あれ、大丈夫?」
「アンタに助け求められりゃああいつがああなるって予想つきそうなモンだろが」
「ごめんここまでとは予想できなかった!」
そうして翌日、早朝から個性訓練は始まった。
基本、マッスルフォームではなく、トゥルーフォーム(ガリガリではない)で。
早朝だから人通りも少ないってんで、今はマッスルフォームだけど。
「これはすごいな……よくもまあこれだけゴミが集まったものだ……」
「はい。これを個性で運びます」
「うん。───うん?」
「ヒーローは本来奉仕活動! 派手な活躍じゃなく、地味だろうと積み重ね! ですよね、オールマイト!」
「え、あ、うん。……え、えぇ……? これ全部……? 個性で……?」
「ちなみに前回の場合、僕がオールマイトに言われてこれら全部を運びました。無個性のまま」
「なにやらせてるの私!!」
「仕方ないですよ、僕、器が成ってなかったんです。だから鍛える必要があったんで、大体10ヶ月で片付けました」
「よく頑張ったネ! よく頑張ったね緑谷少年! よーしオジサンも頑張っちゃうぞー!」
「お前、入試前にンなことしてたんか。どーりで日に日にボロボロになってくわけだ」
「必死だったから」
それにゴミなら個性で壊してしまっても問題ない。
懐かしいなぁ、最初は暴走みたいに発動したんだよね、黒鞭。
「ところで緑谷少年」
「はい、なんですかオールマイト!」
「……どうやって出すの?」
「え?」
「は?」
「い、いや、ワン・フォー・オールは分かるんだ。もう何十年もの付き合いだし! でもいきなり『キミが終わらせろ!』とか言って託されても、使い方なんて私知らない……!」
「「………」」
オールマイトスマイルのまま、花も恥じらう乙女みたいな所作でうるっ……と涙をこぼすNo.1ヒーロー。
横に居るかっちゃんの顔がミキミキと苛立ちに塗れていく。
それに待ったをかけて、説明から。
あと、たぶんだけどオールマイトも僕みたいに使い始めの個性を『超必殺技』みたいに思っちゃうかもだから、それも合わせて説明。
いや、うん。七代目の個性ってだけで、絶対に超必殺技的に考えてるからきっと。今だってほら。
「なるほど、こうして…………OH!? 飛んで……飛んでる! おおおぉお師匠! お師匠ぉおおおっ!!」
足元からぶわぁっと風が噴き出し、体を浮かばせるイメージ。
身体が少し宙に浮くと、オールマイトは七代目を思い出したのか、とても感激していた。
「そのままニューハンプシャーや行動の反動、衝撃などで向かいたい方向へ進めるようにしてみてください!」
「なるほどネ! ちなみに緑谷少年はどういった感じで?」
「え? 僕!? 僕はその。エアフォースっていって、サポートアイテムとデコピンの衝撃波と浮遊を合わせて飛ぶ感じです」
「デコピン……よし!」
言うや、オールマイトが両手で指を弾いて、宙を飛んでいった。
その勢いたるや僕の比じゃなく、僕もかっちゃんも「「なんっじゃそりゃぁああっ!?」」って叫ぶくらい驚いた。
だって衝撃波でた! ショックウェーブだよ今の! 音速越えた!? デコピンで!?
やっぱり規格外だあの人! 直後に積まれていた冷蔵庫に顔面から激突してたけど!
「「オールマイトォオオッ!?」」
「OOOOOOOUCH!!」
そしてブシャーと盛大に鼻血を噴き出すNo.1ヒーロー!
前途は多難そうだった。
日常編としてオールマイトを書くと、すまっしゅに引っ張られていく感はどうしても出てくると思うの。
とりあえずここまで。
書けたらまたUpします。
◆備考
どこぞのおばあちゃん【個性:浄化】
対象に怯えたりせず、勇気を以ってやさしく触れれば対象の心の闇を浄化できる。
おばあちゃんライジングにて照元光輝くんの闇を一発で解除していることから勝手に推察。
これにより、五指に包まれれば始まる転弧の崩壊も怒りと憎しみが一瞬にして浄化されたことから、おばあちゃんには通用しなかった。
現在はおばあちゃんの養子として生活しており、志村転弧としての扱いは行方不明なまま。
父を崩壊させたことは後悔していないが、母と姉とモンちゃんのことは今でも夢に見る。
なお、当然のことながら筆者の妄想である。