凍傷気味のみかん箱   作:凍傷(ぜろくろ)

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5の数字を見ると、とりあえず三つ並べたくなる。
コンビニ等の会計の際、合計が555円とかだと何故だかスタンディングヴァ~イとか心の中で言ったり。
大丈夫、寝不足じゃないよ。


片馬鹿 -片田舎の剣聖に転生した馬鹿の話-⑤

 ある日、剣で木を斬った。

 藁束とは違う手応えに、ちょっと心がぶるるいっと震えた。

 で、考える。ガーデナント氏なら木剣でも切れるだろうか……と。

 なのでやってみた……ら、斬れはしなかったけどブチ折ることは出来た。木剣も死んだ。OH……。

 うーん、鍛え方改革というか、もっと出来ることはないだろうか───と悩んでいるところに、例の道場破りが来やがりました。

 いやほんと、自分の力によほどの自信があるのか、こちらを舐め腐ったような攻撃。

 違うでしょ!? もっとこう、ベリル・ガーデナント氏へ斬りかかった時のような勢いをだね! ……あー! 君もしかして! 俺が偽物だからってこの程度で十分だって思ってるんだろう!

 

 おんのれぇえええ! と本気を出させるつもりで、むしろ相手に合わせて打ち合ってたんだけど、一向に本気を見せてくれなかった。

 仕方も無しに大振りの一撃に合わせてカウンターを入れて勝ったけど、なんか……うん、なんかだった。

 こんなんじゃあイメージのあのモンスターさんの方がよっぽど強い。

 ……ああ、うん。鍛錬改革もなにも、あのイメージと戦うだけでも全然いいか。

 でもやっぱりイメージはイメージだ。全然勝てないって印象が根強く心に沁みついてるせいで、やっぱり結局は勝てないまま。  

 目指すガーデナント氏の壁は高いです。

 

 しかし今は頂を目指す同志が居るからね! 頑張れるってもんさ!

 だってアリューシアの成長速度、えげつないんだもの!

 私でしたら一日でガーデナント流をマスターしてみせますってくらい、俺の動きを完璧にトレースして覚えていくんですもの!

 いや、ほんとすごいよ? すっげぇ見てくるの。見まくって見まくって、時折ぽや~……っとしてる時もあるけど、きっとあの時はあれだな、脳内でシミュレーションしてるんだ。自分ならどう動く、とかって。

 勉強熱心だよね。じゃなきゃあんなにトレースできないって。

 

 俺は好きなだけアリューシアには居てもらってもいいんだけど、そしたら騎士団上手く機能しないかもだし、教えることなくなったらちゃんと皆伝を伝えないとだよな。

 学ぶことがないのに居てもらってもしょうがない。

 あ、でもその前に首都のこと下調べしに行くのもいいかもね。

 よっし頑張ろう。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 で、数年後。

 結局、アリューシアが皆伝に到るのに、そう時間は要らなかった。

 いや、飲み込み早いからどうしようもない。ほんと教えることもう無いんだよ。

 

「私はまだ先生の足元にも及びません!」

「いや及ぶ及ばないじゃなくてね!? 教えることがないって意味でね!?」

 

 餞別の剣、受け取ってくれないんですけど! ちょ……受け取って!? ねぇ!

 皆伝なの! みんなつたえた、と書いて皆伝なの! ね!? 剣っ……あのっ! 受け取ってったら! ねぇ!

 

「これ以上ここでなにを学びたいのさ」

「花嫁修ぎょっ───いえあの、木の斬り方とかっ……!」

 

 ん? 今なんて? 花嫁とか言った? いや、話を読め的なことか?

 

「え? 斬ってたじゃない、つい昨日。だからいいかなって」

「見ていたのですか!?」

「や、そりゃ見るよ。真剣な面持ちで剣持って森の方行くんだもの。立派になったなぁって、その場で褒めてあげたかったんだけど、もう褒められて喜ぶような歳でもないのかなぁって」

「~……! ほ、褒めてください」

「え?」

「褒めてくださいっ!」

「…………うん。頑張ったね、アリューシア。門を叩いたあの頃と、見違えたよ」

「───……」

 

 自然とやわらかな笑みが溢れ、気づけば彼女の頭をやさしくやさしく撫でていた。

 アリューシアは一瞬なにをされたのか分からなかったようで、けれど事態を把握しても、軽く俯き、頬を染め、慌てることなくその称賛を受け取った。*1

 

「……褒められたのに、それを撥ね退けては失礼にあたります……よね。でも、納得できかねない思いは本当です。先生、先生は本当にこのまま、ここで……?」

「うーん……逆にアリューシア、俺はどこで輝けると思う?」

「それはっ……! 先生なら、騎士でも冒険者でも、なんでも選べると───」

「うん。俺もね、最初は騎士にも冒険者にも憧れた。剣を持つ人ならきっと誰もが憧れる。でもね、門下生を見る度、成長していくきみたちを見るたびに心が変わっていった。成長が嬉しい。いずれなにかになるであろう弟子たちが、実力を磨いていく姿が眩しいって」

「……先生……」

「俺は、育てるなにかになりたいかなって思ってるんだ。でもたぶん、親父様はこの道場を俺に継がせるつもりはないと思う。もっと出来ることがあるだろ~とか、なんか適当な理由をつけて追い出すと思う」

「───」

 

 あ。追い出す、でちょっと嫌なこと思い出させちゃったかな?

 誤解だって分かってもらえてると思うけど、子供にとっちゃあ当時に追い出されたって感じればそれがすべてだもんなあ。

 

「アリューシア、キミはこれから何にでも成れる。騎士になるでもいい、冒険者になるでもいい。親に言われて門を叩いたキミだけど、これからは自由な選択をしていいんだ」

「自由な……」

「そう。あ、でもほんと教えられることはないよ? なのにここに居たら、無駄にお金払わなきゃいけなくなる。それはアリューシアのお父さんに負担をかけることになるよ」

「う……」

「そうだね、力をつけたんだからお父さんのところに戻るでもいいと思うよ。きっと歓迎してくれる」

「…………いいえ。もう、あそこに戻るつもりはありません」

「え、そうなの?」

「はい。その……騎士を。騎士を目指そうと思います。私の実力でどこまでいけるのかは分かりませんが」

「え? 団長になれるレベルだと思うけど」

「え? いえ、さすがにそれは。先生、その、私を褒めてくれるのは嬉しいのですが、言い過ぎかと」

 

 や、ほんと大丈夫だって。

 漫画のアリューシアさん、入団試験で無双してたし。

 ……あ。俺の力不足の所為で、漫画より弱い可能性だってあるのか?

 とか思いつつ、褒められたのが嬉しいのかテレテレしているアリューシアさん。かわいい。

 あ、でも騎士ってお給金いいんだよね? 指南役で、ガーデナント氏が『貰い過ぎだ』って焦ってたくらいだし。

 なるほど、確かにお金を稼ぐならそっちの方がいいのかも。

 あれ? でもそれって『神速剣の奇跡-剣術道場に託した可愛い娘が何故か騎士団長になっていておかしな量のお金を仕送りしてくる件-』とか番外的な伝説になったりしない? 竜双剣とかのタイトルとは明らかに違って心苦しいんですけど。

 

「でも、アリューシアのお父さんには連絡くらいした方がいいかもしれないね。剣術道場に向わせたのに、いつの間にか騎士なっていた、じゃあ驚くだろうから」

「……先生は私が騎士になることをまるで疑っていないのですね」

「アリューシアだもの。当たり前じゃないか」

「───」

 

 だって団長にまで上り詰める子だもの。もし俺の教えが悪くたって、ガーデナント流を学んだアリューシアが弱いわけがない。

 基礎はみっちり叩き込んだ。親父様も認めてる。じゃあ、もう恐れるものはなにもない。

 唯一そのー……俺の教え方が妙な邪魔にならなければ、イケるんじゃないんでしょうか……?

 だだ大丈夫、そろそろ俺もちょっとは自信が持てるようになってきたところだから。

 と、内心汗を掻きつつ、……ハテ、なんだか乙女な目で俺を見ているアリューシアに、首を傾げて声をかける。

 

「はひゃっ、ひゃいっ! なりましゅ! 先生が信じてくれるなら、騎士団長にだって!」

「? うん。アリューシアなら絶対になれるから」

「はいっ!」

 

 そんなこんなあって、アリューシアも卒業。

 なにやら『考えてみれば騎士団長になれば、様々な権限が……これで先生に……』とかブツブツ言ってたけど、なんだろう。もしかして今から指南役の計画とか立ててたりする?

 そういえば漫画の方でも、餞別の剣を渡した辺りからいろいろ考えてたんだっけ?

 ……やべぇ。

 それってその日までにはベリル・ガーデナント氏の水準にまで到ってないとマズいやつじゃないか!

 こりゃあいよいよもって深く深く成長しなくては……!

 

……。

 

 アリューシアが卒業してから少し経って、アリューシアのお父さんから手紙が届いた。

 鍛えてくれたことへの感謝と、騎士を目指すと言っていたことへの驚きと。

 それでも背を押せた喜びと、その。賊やモンスターに襲われても平気なようにと送り出したのに、なんで騎士目指してるのこの子というちょっとの戸惑いと。

 いやうん、俺も騎士がどうとか言っちゃったからごめんなさいとしか……!

 スレナの時に、懐いてる人に夢を持たれちゃ、期待に応えなきゃいけなくなる~とか反省したつもりだったのに……!

 そのへんのことは、ごめんなさいを添えてオヘンジを出しておいた。

 

 そうしてまた鍛錬を続ける中、フィッセルやクルニ、バルデルらが入門。

 俺は再び基礎から学び直し、学んでいる最中にも発見があり、また道が開けていく。

 開けた道での鍛錬は素晴らしく、へとへとになるまで剣に没頭し、いっそ瀕死になるまで剣にのめり込む。

 昔っからだけど、集中し続けて没頭し続けて、体が限界を迎えたあとに基礎に戻ると、なんでか頭の中で剣の道が一歩開けるのだ。開けるというか拓けるというか。

 だから鍛錬をやめられない。というか、たぶんその先に俺の目指すベリル・ガーデナント氏が居ると思うから、やめる気もないわけで。

 

「これから剣を学んでもらう前に、みんなに言っておきたいことがある。───俺は剣が好きだ」

 

 だから、自分の好きなものを隠すこともしない。

 新しい人が門を叩くたび、自分は剣が好きだと口にして、まったくその通りだと自覚する。

 そうして教え、教えられ、学び、剣を知る。

 他人に教えることで分かることもあり、それを伝えられたらと思うんだけど、どうにもそれを教えるのが苦手だ。

 や、ほら、どう言えば伝わったもんだろうってこと、ない?

 だからこうして実践してみたり、手取り足取りしてみたり。

 

「クルニは……うん、他の子と比べて力が強いみたいだし、もう少し長めで大きな剣を使ってみようか」

「えっ……大きな剣っすか?」

「そう。大人用のがあるからこっちと……それが簡単に振れるようならこっちを試してみよう」

「うわ……長いっすねこれ。でも……そんなに違和感なく持てるっす!」

「よし、じゃあ次はこっち。まだクルニの手の大きさに合わせたわけでもないけど」

「え……先生が作ったっすか!?」

「一応いろいろ、自分に合ったものがあるかもって探してる最中でね」

 

 同じ武器がいついかなる時でも自分の手元にあるとは限らない。

 だから、ってわけでもないんだけど、いつかクルニも来るんだろうな~って考えと、それに合わせたツヴァイヘンダー型木剣とか作れないかな? という考えで、ちょっと御用達の鍛冶屋さんに頼んでおいたのだ。

 

「どう?」

「わ……なんか視界が急に広くなった気分っす!」

「入門してそんなに経ってないのに、それが分かるなら十分だよ。よし、じゃあ軽く振ってみようか」

「はいっす!」

「……先生、私は?」

「フィッセルは万能型だな。たぶんなんでも、やろうと思えば出来る。飲み込みも早いし努力家だ」

 

 言いながら頭を撫でると、むふーんと少し胸を張る。

 フィッセルは褒めると伸びるタイプだ。そういえば巻末おまけ漫画で同僚に『褒めて』とか催促してたっけ。

 でも、万能型だから『これだ』って突出した得意分野がない。今は。

 魔法の才能あるんだよねこの娘。だから教えるなら魔法剣なんだろうけど、俺に魔法の才能なんてないからなぁ。

 なので、今はひたすらに基礎を教える。みっちり、ガーデナント流剣技を教える。今はそれでいい。

 

「先生! 俺は!?」

「いや……バルデルは鍛冶の武者修行のためだろ……。うん、でも剣を知るために剣士を知りたいっていうなら、どこまででも付き合うよ」

 

 小さなクルニとフィッセルとは明らかに違う、デカいおっさん。

 バルデルは鍛冶の武者修行のためにガーデナントの門を叩き、剣士のための剣を知ろうとしている。

 俺にその手伝いが出来るなら、今伝えられるベリル・ガーデナントにて精一杯伝えよう。

 なにせこの人はベリル・ガーデナント氏にゼノ・グレイブルの剣を打ってくれた人。

 そのための足掛かりになれるなんて光栄だ!

 

 というわけで今日も今日とて基礎から始めて、それが終われば個人個人の長所を伸ばし、短所を潰すアドバイスをする。

 なにせこの道場の門を叩く人っていろんな才能を持つ人ばかりで、長所と呼べるものが尖った人ばっかりなのだ。

 それが剣だけじゃなく、様々な方向に分かれてるってんだから、教える方も気を使う。

 でも、それを伸ばさない手はないから悩みながらも褒めて伸ばす。

 

 藁を斬る実践も上手く見せることが出来て、漫画通りに出来たー! と安心したり、クルニの両手剣の間合いのアドバイスも苦労しながら教え込んで、フィッセルも……彼女が俺に『実は魔法を使える』とか教えてくれないことにはアドバイスも出来ないし、そのためなんかこう~……もにゃっとする言い回しだけど、フィッセルは基礎が全部出来ているから、あの~……そこに何かが加われば、もっと強いかも~とか……うん、どう伝えたらいいかわからん!

 そんなつたない伝え方でもなにか得られるものはあったようで、こくこくと頷いてくれた。ヨシ!

 だったらあとは、出来ている基礎を昇華させていくだけだ。

 さあ、俺から学べることがあるんなら、どんどんと学んでくれ!

 どんなことが知りたい!? 教えるよ全力で!

 そう! その調子だよ! キミならもっと出来る! もっと成長出来る!

 流石だよ愛弟子! 原作ネームドさんらの未来の役に立てるなら、こんなに嬉しいことはないよ!

 

「……先生、どういう体力してるの……」

「あの無尽蔵の体力、どっから来てるんすかね……」

「体幹も尋常じゃないほどしっかりしてるし、握力も……ほれ、あそこ。庭の隅っこのあのあれ見てみろ」

「? なんかささくれ立ったっていうか……潰れた棒? があるだけっすよ?」

「ありゃ強い握力で握り潰されたもんだ。しかも、相当硬い。ただ握り潰したんじゃなく、圧力の入り方からして、振って潰したもんだ」

「え? ……振って潰れるもんなんすか?」

「普通じゃ無理」

「ああ。長年の素振りで潰れたなら分かるが、まだ新しいんだ。それをあれだ」

「ひええ……やってみろって言われて出来るっすかね……ハッ!? もしかしてそれが卒業試験だ、とか言われないっすよね!?」

「先生はそんな無茶なことは言わない、と思う」

「でも剣のことに関しては真っ直ぐな人っすから、これが出来れば一人前だ~とか言うかもっすよ?」

「だったら期待に応えるまで。先生が出来るっていうなら、出来る」

「……それもそうっすね!」

「…………藁束のこともそうだが。もしあの人が、一流の武器を手にしたら……───」

「木剣で木を斬る人が名剣を手にしたら、……すごくスゴいことが起きる」

「フィッセルの語彙が死んだっす!」

「表現できない。仕方ない」

「確かにな! ははははは!」

 

 ? なにやらネームドの三人がわやわややってた。

 俺が振るって潰しちゃった棒を見て。

 ……やっぱりヘンかなぁ、棒を振るって鍛えるとかヘンかなぁ。

 でもその棒って折れないようにって特注で作ってもらったものだから、振り甲斐があるんだよ? 折れたけど。

 そこらへんはもう、ここらの鍛冶屋や木材屋じゃあ間に合わないってことで、首都の方に行ってみるしかないのかも。

 ちょっと調べたいこともあったし、行ってみるのもいいかもな。よし、次の休みにでも。

 アリューシアのために下調べに行って以来か。

*1
*内心は『褒められた! 褒められた!』でいっぱいである




うーん、モンハンワイルズにウツシ教官が欲しい。
ライズサンブレイクが個人的にモンハンで一番好きなんですよ自分。
ワイルズではまだまだゴグマジオスさんと戦っておりますが。
懐かしいなぁ……コヤツと戦うたびに英会話のジオスを思い出したもんです。
ゴォグゥマァのジオォ~ス♪ 語呂悪いなくそう。
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