天才TS美少女はわからされたい!   作:ブナハブ

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プロローグも兼ねたエピローグ

 お嬢様はグレイル様と模擬戦をして以来、少しお変わりになられました。

 変わったと言っても表面上はいつも通りです。何か行動に大きな変化が起きた訳でもありません。

 

 ただ少し……生き生きとしているんです。前まで消極的だった物事にも、今は前向きに取り組んでるように見られます。まあ、積極的に取り組んでいるという訳ではありませんが。

 

 あの時、お嬢様にどんな心境の変化があったのかは分かりません。ですが、お嬢様の意識は確実に良い方向へと進んでいます。

 私はそれが嬉しくて、心境が変化するキッカケとなったであろうグレイル様には感謝の念が絶えません。是非ともお礼を言いたい所ですが、あれ以来グレイル様が屋敷に訪問する事はありませんでした。

 

 そのまま時は流れて、二年。お嬢様が王立学園へと向かう日になりました。

 

「行くわよ、シエラ」

「畏まりました」

 

 学園に通う生徒は側付きの使用人を一人連れて行く事が出来ます。なのでお嬢様の側付きである私も学園へ行く事になりました。

 

「行って来ます。父上、母上」

 

 馬車の扉を潜る前、お嬢様は見送りに来たルドルフ様とレイラ様に別れを告げる。

 

「頑張ってね〜」

「気をつけるんだぞ」

 

 お二方がそれに返すと、後ろで控えていた使用人達が一斉に頭を下げる。

 

「……」

 

 その姿を一瞥すると、お嬢様は馬車の中へと入っていた。

 

 使用人達のお嬢様への態度も、かなり軟化していた。時の流れと共に彼らもお嬢様に慣れ、そしてお嬢様もたびたび彼らと交流を図った事で、こうして使用人達も真っ当にお嬢様を見送れるようになっていた。

 本当に良かったと思う。これでお嬢様が屋敷に帰る時もゆっくり出来るだろう。

 

……結局、私はお嬢様の力になれたのでしょうか? 私が居なくても、お嬢様は自分一人で解決していたのでは?

 

「……シエラ」

 

 馬車に揺られて、俯きながら物思いにふけていると対面に座るお嬢様が話しかけてきた。

 

「なんでしょうか」

 

 お嬢様は窓から見える移り変わる景色を見ながら聞いてくる。

 

「あなたはいつも、私の側に居てくれた。他の使用人のように怖がる事も無く。……どうして?」

 

 いつも通りの無機質な表情、けれど何処か不安が見え隠れしてるように感じた私は、

 

「……私も、最初の頃はお嬢様に対する恐れがありました」

 

 思った事を正直に。

 

「ですが、途中で気付いたのです」

 

 けれど優しく、包み込むように。

 

「お嬢様も人の子。我々がお嬢様の力を恐れていたように、お嬢様も孤独になる事を恐れていたのだと」

 

 お嬢様は聡明な方だ。気丈に振る舞っても内心ではひとりぼっちになるのを恐れていただろう。だからこそ、最初はなるべく力を付けないようにと魔法を学ばなかった。

 

「それに気付いた時、私の中にあったお嬢様への恐れは消え去りました。代わりに、お嬢様を一人にはさせまいと励むようになったのです」

「……そう」

 

 私の話を聞いたお嬢様は顔をこちらに向け、そして薄っすらと笑みを浮かべる。

 

「ありがとう、今後も頼りにしているわ」

 

 それを見た私は、改めて心に誓った。

 

「はい、これからも全身全霊を以ってお嬢様にお仕えします」

 

▼▼▼

 

 グレイル君と出会って二年、とうとう俺は学校へ通う事となる。

 学園行きの馬車に乗ってゆらゆらしている道中、俺はふと気になった事をシエラに聞いてみた。

 

 なぜシエラだけ普通に接してくれていたのか。これを訪ねた直後、もし本当は嫌で嫌で仕方なかったとか言われたらどうしようと考えてしまい、動悸が速くなってしまった。が、結果的には非常に嬉しい答えが返ってきた。これには死に切った表情筋もニッコリ。

 

 いやしかし孤独かぁ、シエラ的には結構深刻そうに見えてたのか。確かに俺も使用人達から嫌われる状況に思う所はあったが……まあ、今では彼らとの関係も良好になってるし、これでシエラの心配も無くなったかな? だとしたら俺も嬉しい。

 

「───お嬢様、そろそろ着きますよ」

 

 そうやって色々と考え事をしていると、どうやら目的地に到着したらしい。

 

「見えてきましたよ、王立学園が」

 

 窓を見ながら言うシエラに倣って俺も窓の外を見る。

 

(おー、デッカいな)

 

 進行方向の向こうには、コの字型の宮殿のような巨大建造物が聳え立っていた。

 

「……あれが王立学園」

 

 王立学園。王国一の教育機関として名高いそこは、王族が通う事でも有名だ。無論、生徒のほとんどが貴族である。

 

「……」

 

 かつての俺なら、目立たずひっそりと学園生活を送ろうとしていただろう。けど今の俺はその正反対を行く。

 目立つ、活躍しまくって注目を浴びる。けどその為に努力はしない。

 

 これは俺の悲願を叶える為に必要な過程だ。アウラ・ロードリッヒを傲慢な天才へと仕立て上げる為のな。そしてもう一つ、俺はこれからの学園生活で自分を偽ろうと思っている。

 わからせ甲斐のある傲慢な天才を演じるのだ。その為に守るべき事が三つある。

 

 一つ、努力はしない。正確には、頑張るべき場面以外では頑張らない、だ。自主練なんかはもってのほか、出来る限り控えるようにしていく。

 

 二つ、傲慢に振る舞う。俺は将来、グレイル君に負けてわからされようとしているのだ。なるべくヘイトを買ってグレイル君にはスカッとして貰いたい。ただし、あからさまに見下したりはしない。何故って俺が嫌だから。

 

 三つ、敗北は許されない。最もこなすのが難しく、けれど演じる上で最も重要な事。誰かに負けでもしたら、俺は伸びた鼻を折らざるを得ない。この伸びに伸びた鼻はグレイル君に折って貰いたいんだ。

 

 以上の三つである。ぶっちゃけ一つ目と三つ目の矛盾が激しすぎるのだが、これらを達成しないと俺の悲願は成し遂げられない。

 

(……やってやるぞ、俺は)

 

 実現するかどうかはグレイル君の努力次第だが、その努力が実るまで俺は絶対的な強者で在り続ける必要がある。俺も頑張らなければいけないんだ。

 

(期待してるからな、グレイル君)

 

 さながらプレイヤーの前に立ちはだかるボスのように、俺は彼が成長して倒しに来るのを待望した。




予想を遥かに超えた伸び具合にビビっています。
期待に応えるため、キリも良いのでここら辺で一旦投稿をストップし、本格的にプロットを練ってから投稿しようと思います。次に投稿されるのがいつになるかは不明です。気長に待って貰えばと。
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