楽して大金だけ稼ぎたいトレーナーと魔改造されるブリッジコンプちゃん   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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ガキはな、大人が守るもんなんだよ(19歳の発言)


17.アイツは綺麗な世界だけ見てれば良い。それが最も効率的なモチベーションの上げ方だから

「ふむ、やはりアメリカ入りしてから仕上げた方が身体がアメリカに馴染むという俺の予想は間違っていなかったようだな」

 

 夜、コンプが寝静まった後で俺は寝るまでの間で作業をする。

 アメリカ入りしてからのタイムやフォーム、全体的な体調、食事量の確認が主だ。

 コンプが起きてる間は雑談を通してのさり気ないメンタルケアを中心として入念なコンディション管理を徹底している。

 

 明日は四冠目を懸けたトラヴァーズステークス、SNSをやってる都合上あの日俺がけしかけて言わせた爆弾発言によってセクレタリアト氏からDMが届いたが些細な話だろう。

 

「『四冠に届いた日には是非ともワーラウェイ大先生と共に彼女、ブリッジコンプと話がしたい。いや届かずとも話をしたい。私のあのベルモントステークスの記録に届いたというウマ娘のレースを見てから連日連夜現役時代を思い出し興奮して困ってしまうんです』ね。さすが現役時代から大舞台に動じない図太く目立ちたがり屋な性格と言われた彼女だけあり積極的な行動だ」

 

 まあ、コンプ自身がこれを見た時何を思うかは知らないが。

 自分の目から見たセクレタリアト氏の発言は少なくとも気の良いお婆さんくらいにしか思えなかった。

 勿論彼女がかつてアメリカクラシック三冠でオールレコードを叩き出したウマ娘というのは承知の上でのイメージだ、まあそれもこれも彼女が引退後アメリカのバラエティタレントとして数十年活躍していたからなんだろうが。

 

 目立ちたがり屋だからって引退後からずっとバラエティタレントとは、あの人はどうやら人生を端から端まで楽しんでいるらしい。

 

「……まさかワーラウェイ氏からの伝言も来るとは思わなかったが」

 

 あと、追記としてセクレタリアト氏からは

 

『大先生からは「今の若い子でそれだけ私に食って掛かれる度胸があるなんて面白いじゃないの。ここまで無駄に長生きしてきたと思ったけれど、もしかしたら私がここまで生きてきたのは彼女の四冠を見届ける為なのかもしれないわね」と伝えてほしいと伝言を預かってます。さすがに100歳超えて腰も折れずにピンピンしている化け物とはいえ電子機器には弱いみたいなので』

 

 と、ワーラウェイ氏からの伝言ももらったが。

 今コンプに渡したらあまりの出来事に脳みそがショートしてぶっ倒れて本番どころじゃなくなりそうだから終わったら見せてやるとしようか。

 

「と、まあこういう面白いものだけなら俺は大歓迎なんだがな」

 

 しかし世の中こんな面白いものだらけで終わる訳ではない。

 ここまでコンプにはこの世界の煌びやかな面しか見せてこなかった、それは間違いなく意図的なものだ。

 日本では実績に対しては少ないかも知れないがそれでも多くのファンと、全米中に響き渡るブリッジコンプの英雄伝レベルでのヒーローストーリー。

 アメリカでは文句無しの大スターなのは見ての通りだ。

 

 だが、ファンが大勢いるという事はアンチもそれだけ多く抱える可能性を孕んでいるという事でもある。

 

 ……特に、ベルモントステークスは傍から見れば破滅的な走法だったのは火を見るより明らかだったからな。

 

『あの走りはなんだ!ブリッジコンプを壊す気か!?』

『サボり魔が。担当におんぶにだっこで天狗になりやがって』

『お前みたいな奴がトレーナーになれるなら俺でもブリッジコンプに三冠取らせられるわw』

『楽な仕事で良いですねw』

 

「酷すぎる……あまりにもお粗末な脳みそをしてやがる……何を食ったらそんな脳みそになるのか聞いてみたいほどだ……」

 

 まず1つ目

 まあこれに関しては言われても仕方ない事はしていたから何も言えないか。

 正直俺自身でも壊す壊さないに関してはギリギリだった、一歩間違えれば故障していたとも思う、これは俺であったとしてもここまで積み上げてきた信頼関係無くては凌ぎ切れなかっただろうからな。

 俺に言うのであれば甘んじて受け止めようじゃないか。

 

 

 2〜4つ目

 サボり魔は認める、サボりたくてサボってるからな。

 だがおんぶにだっこか……出来るものならしたいんだが確実にやらないとならない仕事や最低限作らないとならないトレーニングメニュー等俺じゃなきゃ慣れてサボり時間作るまでに数年掛かるんじゃないかと思われる仕事はあるんだよなあ。

 三冠云々は知らん、お前らが実際トレーナーとして立つ機会があるならその時競い合えば良いんじゃね?とは思う。

 

「まあこれでもまだまともな方だ。コンプそのもののアンチや変態ともなると頭のイカれた連中しかいねえ。人間の皮を被ったバケモンだろアイツら」

 

 しかし1番の問題はコンプのアンチや馬鹿げた変態共だ。

 そういうのがいるからコンプのウマッターは呟き以外全ての管理を俺がしている、公言もしている。

 後者に関しては口に出すのもおぞましい呟きや返信をしてくるから本当に俺でも目を覆いたくなる。勿論だがそういう連中は全員ブロック対応した後通報して開示させている。

 最近では有名になったお陰か俺が通報するとすぐ対応してくれるから助かっている。

 残った前者はブロックだけで済ませておいてる。

 誹謗中傷したら即開示だがな。

 

「お陰でおいそれとやって来なくはなったか」

 

「んぅ~……トレーナーまだ起きてるの?」

 

「もう少ししたら寝るから心配ご無用。だが気にしてくれた事は好意的に受け止めておくとしよう。ま、俺は『サボり魔』だからな。サボる事に関しちゃ世界一を自負出来る実力者。さ、明日は本番なんだからお前こそちゃんと睡眠取ってコンディション整えとけ」

 

「うん、分かった〜……ふぁ……」

 

 こうしてたまにコンプが起きてくるのもまたご愛嬌。

 本来ならこういった事なんてサボってさっさと寝たいという気持ちはあるが、それで万が一でもコンプの目に汚らしいものが映ったらその元凶を殺しに行きかねない。

 コンディションが落ちる事なんて1ミリ足りとも触れさせやしない、アイツは綺麗な世界だけ見てれば良い。それが最も効率的なモチベーションの上げ方だからな。

 ヒトという生き物はどうしても100や1000の賞賛より1の批判や誹謗中傷の方が目に留まりやすい。

 

「白い服に着いた黒いシミは、たとえほんの点だとしても目立ってしまう。そしてそれを拭こうとすればしただけそれは広がっていく。そんな世界やはり見せられる訳が無いな」

 

 世間からしたら『そういったものへの適応性も上げておくべきでは』『縛り過ぎ』なんて言われそうなものだが。

 未成年女子に見せられないもの送ってくる連中がいるからそういう事出来ないんでしょうに。

 

 ガキはな、大人が守るものなんだよ。

 その大人がいる以上絶対にやるべき事とやりたい事以外はしなくていい、何一つやらなくて良い。レースに集中させる事が出来るなら無菌室になったって構わない。

 常識はその分卒業してから俺が責任を持って教えればそれで解決もするだろうしな。

 

「……っと、終わったか……さーて寝るか。明日はトラヴァーズステークス、せっかく生でスーパーフェクタ誕生を拝めるんだから俺自身の体調も良くしておかなくちゃな」

 

 面倒な事をしたと溜め息を吐きながら伸びをする。

 しかしそのお陰でコンプは最高のコンディションでレースを迎える事が出来る、それはひとえにこの作業の賜物と言っても過言ではないだろう。

 一手間でそれが可能ならやらない選択肢など俺には残っていないのだから。

 

 

 

 

 

「……あ、それはそうとアイドルウマ娘選手権見とくか。今年は狙ったかのようなダートウマ娘選手権だったし」

 

「ふむふむ……やはりウチのコンプがぶっちぎりか。いやしかしこれは……面白いランクインも多い。結果見た時の光利の反応が目に浮かぶな」

 

 それはそれとして多少寝るのが遅れたのは予想外だったが。




Q.このトレーナー実はめちゃくちゃ過保護なのでは?
A.そう思った時点で答えです
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