楽して大金だけ稼ぎたいトレーナーと魔改造されるブリッジコンプちゃん 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
『はい、では今日番組にお越しいただいたのは今をときめく『ブリッジコンプ世代』の1人でお馴染みリリカルブロッサムさんです!いやあここ最近は大活躍ですよね!』
『ん、ありがとうございます。GIも取れたから世代の一角』
『ブロッサムさんはジャパンダートクラシックがGI初戴冠との事ですがその後チャンピオンズカップと東京大賞典をなんとどちらも走って2勝!ペガサスワールドカップとサウジカップではどちらもブリッジコンプ選手の2着!いやあ凄まじいですよこれは』
『本当は東京大賞典だけだったけど体調面が問題なさそうだったからトレーナーにお願いしてどっちも出してもらった。本当にダメそうならトレーナー絶対出さないから安心。ぶい。それに遠征ではコンプちゃんと楽しく走れたしじゅんちょー』
「……いやこれわざわざ見るの恥ずかしくない?」
ペガサスワールドカップとサウジカップが終わってドバイワールドカップを控えた3月。
その2戦共に優勝してそれぞれ350万ドルと500万ドルを手にした訳だけどあたしはそのお金で一体何をすれば良いのかと頭を抱える中、その2戦一緒に遠征をしていたリリちゃんが日本のテレビに中継で現地から出演するから良かったら観てなんて言われて。
それで観てるのは良いんだけども……これ、話題が『今話題沸騰中のブリッジコンプ世代』と『ブリッジコンプ』なんだよね……そもそもブリッジコンプ世代って何って話だしあたしの話をあたしが聞くのどういう心境で見れば良いの……
『巷では「リリカルブロッサム選手程、ブリッジコンプ選手の影響を何も受けてない現役ダート選手は珍しいのではないか」とも言われています。その辺どうでしょう』
『んー……良く分からない。コンプちゃんはお友達で、話してて楽しいし一緒にレースに出ると楽しく走れるから好き。それくらいかな』
『あんなに離されるのに、一緒に走っていて心地いいんですか?』
『遠くから見てても分かるくらい、コンプちゃんは走るのが好きなのが伝わるから。ちょっと離れたくらいじゃ分からなくならないし』
『ははぁ~それは凄い!それじゃあ前回レースの解説とか、もし良ければお願いしても良いですか?特等席で走っていたブロッサムさんから見たブリッジコンプ選手の走りを聞きたいので』
『だいじょーぶ、サウジカップのだよね?』
『ええ!映像も用意していますよ!』
『それなら問題無し』
「え、これめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……いやでも他のウマ娘からどう見られてるのかについては気になるところもあるし……」
思えば自分の評価が明確に見えたのはアメリカのそれも世間からの評価とローズちゃんからの評価だけだった気がする。
日本でもメディア人気はかなり高かったと思うけど、一般知名度は良く分からないし……せめて同じ国内、日本のウマ娘からの評価は知っておきたい。
そう思うと割と貴重な機会……?
『《各ウマ娘がゲートに収まりました……スタート!!あーっと7番ウインドマリンと14番カナリアが出遅れた!!》』
『まずここ。最近コンプちゃんのレースだと他のウマ娘の出遅れが多い』
『そういえばそうですよね。TCクラシック辺りから顕著になったイメージがあります』
『うん。一緒に走ってるから原因が分かるんだけど、コンプちゃんはゲートに入った時が1番凄いプレッシャーを出してる』
『へぇ〜そうなんですか?』
「え?そうなの?そんなに圧出てるの?スタートが1番大事って言われてるから絶対に失敗出来ないと思ってやってるところはあるけど……」
確かに最近みんな良く出遅れるなあとは感じていたけどそんなカラクリがあったの!?
思えば一流ウマ娘を見ているとレース途中でとてつもないオーラを出しながら走ってるウマ娘もいると言えばいるけど……自分がそんな存在になってるとか気付ける訳がないって!しかもゲートの中で発動してるって他のウマ娘と比べても意味分からないんですけど!?
『アレは普通の人が受けたら多分気絶しちゃう。もしかしたらオープン上がったばかりくらいのウマ娘でも倒れる子がいると思う。それくらい凄いからこっちじゃ《THE FIRST EMPEROR》なんて異名が付いたのかも』
『可愛らしい見た目からは想像も付きませんよねぇ』
『それじゃあまた映像流すね』
『《ブリッジコンプ物凄い加速だ!一瞬でいつもの大逃げコース!誰も着いていけない!》』
『《今一瞬数人のウマ娘が前蓋をしに行きかけたんですが全くものともしませんでしたね。彼女はゲート内の集中力とスピードが良く注目されますが私は加速力が1番だと思っています。プリークネスステークスで壁を貼られて以降ハナ取りへの研究とパワー強化を徹底していたのが分かる走りですよ》』
『この解説の人が言ってるけど、コンプちゃんの1番凄いところは加速力。特にプリークネスステークスまでとそれ以降の加速力はたった3週間で伸びたと思えないくらいのものがあるよ。私の弱点は加速力だから良くお勉強してる』
『プリークネスステークスからベルモントステークスって3週間しか時間無いんでしょ?凄いよねえ……ってブロッサムちゃんアレで加速力無い方なの!?素人目には凄いと思うけどなあ』
『ん、まだまだしょーじんが足りない。むきむき』
『いやでもウチのリリーはとっても賢いんですよ。ペース配分からコース取りも一流です!唯一の欠点は加速力の無さというかズブいところと言うか……』
『へぇ〜トレーナーさんべた褒めですね!やっぱり自慢の教え子で?』
『ええ!勿論他の歴代の教え子も可愛いとは思いますが、僕の手腕の無さであまり勝たせてあげられなくて。そんな僕に初めてGIを勝たせてくれたのがこの子ですから。僕の事を良く振り回しますけれど、本当に危ない時はちゃんと止まってくれますし』
『?トレーナーは凄いよ?』
へぇ〜あたしのストロングポイントってスタートの瞬発力より加速力だったんだ、知らなかったなあ。
確かにプリークネスの時の走り方は初見殺しみたいなもので、対策を取られれば攻略されるようなものだったから蓋をされないパワーを身に付けるようにってトレーナーには扱かれたけど……
あとリリーちゃんとトレーナーさんのやり取りが微笑ましい、スタジオの人達も何だか和んでるし。
『いちおー映像最後まで観る?』
『一旦観ておきましょうか』
『ん。ぽち』
『《さあ残り500の標識を通過!逃げ・先行との差は……1.7秒!!》』
『《少し過剰に着いて行き過ぎですかね。彼女のペースに付き合ってしまうと脚が残りませんからね》』
『《そして最終コーナーを回ってブリッジコンプがやはり加速している!!先行していた集団は一気に脱落!!差し集団数人が巻き込まれたが抜け出したのはリリカルブロッサムとロイヤルダーツ!!しかし先頭はブリッジコンプ!!リリカルブロッサムとロイヤルダーツも届かない!!ブリッジコンプだ!!やはりブリッジコンプだ!!黄金の橋はここサウジアラビアにも架けられた!!!これで七冠!!!そして2番手は競り合っていたが僅かにリリカルブロッサム!次いで3番手はロイヤルダーツ!》』
『これね〜ブリッジコンプ選手は勿論なんですがブロッサムちゃんの走りも凄いと思ったんだよねえ。追い比べは勿論ブリッジコンプ選手と9バ身差でしょ?ベルモント以降だと最小じゃない?』
『ん、頑張った。ぶい』
「……黄金の橋とか言われてるけどそろそろ本格的に負けられなくなってきてない?あたし?」
思えばどこのレースでも負けられないのはそれはそうなんだけど……それにしたってアメリカ全土と日本のメディアはあたしを祀り上げ過ぎなんじゃないのかと薄々感じてきている。
……うぅ、負けたらきっと幻滅される。
「……あ?なんだお前もそれ見てたのか」
「と、トレーナー……いやトレーナーも観てたの!?」
「当たり前だろ、担当が祀り上げられてて嬉しくないトレーナーがいるとでも?」
ってトレーナーもこれ観てたの……あと真顔でそんな事言われても……う、嬉しくなんてないんだから……
「り……理解はするけど!いつか負けたらと思うと胃が……」
「???負けさせなければ良いだけなのでは?」
「言いやがった!!簡単に言いやがったこの人!!」
「お前の事は全て知ってるからな。なんならここで俺のメモした身体ステータスを読み上げたって良い」
「やったら殴るからね!?」
トレーナーに限ってセクハラの類は無いだろうけどやっぱりこの人頭おかしいなあと思いながらも、何だか少しだけホッとするのだった。
リリカルブロッサムのマイペース振り
全くもってブリッジコンプの領域展開が効かない貴重なウマ娘の1人
彼女の事は仲良しな友人という認識であるがそれはそれとしてプレッシャーを感知はしているし解説可能な程には冷静に見ている一面もある
但し所謂『ズブい』子で加速力がちょくちょく足りてないのが勝ち切れていなかった要因…ではあるがブリコンのプレッシャーやら固有スキルが効いていなかったのも感覚がズブいお陰だったりする
<プボ…?
《THE FIRST EMPEROR》
自らの獲得した日本史上初の偉業の数々によって日本ダート界レジェンドであるホッコータルマエ、スマートファルコン、コパノリッキーを世界へと羽ばたかせ世界に遅れを取っていた日本のダートに転換期をもたらした
世界に『日本のダートはここから始まるのだ』と確信させる最強にして最高の『始まり』の名を冠する『始皇帝』を意味する異名で呼ばれるようになった
《chain of gold》
ブリッジコンプの固有スキル名。多分表には出てこない
『ゲート内に黄金の鎖が見えた。まるで彼女に縛られているかのように出遅れていた』という観客や関係者の話から
意訳は『黄金の鎖』