楽して大金だけ稼ぎたいトレーナーと魔改造されるブリッジコンプちゃん 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
寧ろこの史実馬知ってたらビビるよ俺は
ちなみにラスボスの答えは41話に!(つまりそこまでは書き溜めしてある)
年が明け、1月。
しんしんと積もる雪は見る奴が見れば幻想的とか言ったり、元気印がトレードマークのハルウララやツインターボなんかはやれ雪合戦だの雪だるまだのかまくらだのと洒落込むのだろう。
だがこと俺やコンプなんかはトレーニング以外は俺の部屋でダラダラ遊んでる方が合ってる。
コンプは最初こそ真面目を地で行くタイプだったが四六時中俺の感性に付き合っていた影響かすっかりとオンオフの使い分けを楽しんでいる。未だ大金との付き合い方はまだまだ子どもらしいが。
そんな中俺はわざわざ外へと出向いている。
別に気が触れた訳でもたまには遊びたくなったからでもない。
親友である光利がいつもの甘味三姉妹ではないウマ娘と話していたからだった。
いや、別にただ話しているだけなら気にはならなかった。
が……原因は話している相手にあった。
「よっ、光利。何話してんだ?」
「おー敦史。いやなに、俺の担当達もこの子達とは仲良くてな、それ繋がりで世間話をしてたらそこからちょっとこの子達が俺に用があるって切り出してきたんだ」
「わっ、この人良くニュースで見る人だ!」
「ほえ~……本物の時坂トレーナーだ……」
1人は鹿毛の髪にちっこい身体でこちらを見つめるウマ娘、見た感じコンプと同じか少し小さいくらいだろうか。
もう1人は栗毛でキリリとした眉が特徴的なウマ娘。
目を引いたのは前者のウマ娘だった。
「ああ、紹介しといた方が良いかな。とはいえ片方の子は見た事あると思うけど……ウマドルのサムソンビッグちゃん」
「ウマドルしてるよ〜よろしくね〜」
「もう1人がサムソンビッグちゃんの親戚で4月から入学するサムソンゼットちゃん。今日はビッグちゃんがトレセンでライブしてたんだけどそのお手伝いで来てたみたい」
「ど、どもども!ゼットです!」
「ああ、よろしく。しかしサムソンビッグと言えば今や人気ウマドルだろう、まあそうであろうとなかろうとこの寒さで身体を壊すのは宜しくない。どうだ、話なら俺の部屋で……というのは。丁度俺もお前もお互いの担当は遊びに出掛けていて不在だしじっくり話せるだろ」
サムソンビッグ……きさらぎ賞優勝以外に目立った活躍は無いがかつて王道クラシック三冠ウマ娘ナリタブライアンが直々に『私のライバルであり親友である』と断言までした人を惹きつけるものがあるウマ娘。
実際現在ウマドル活動でスマートファルコンと違う層のファンを集め引けを取らない人気を集めているのがその証明といったところか。
「わ〜ありがとう!」
「いやスマンな。ついつい話し込んじまって」
「良いさ、気にするな。俺もちょうど暇してたところだからな」
光利を連れ2人を俺の部屋へと案内する。
その間当時の後輩だっただろうウマ娘や当時からいたと思われる教師、ファンと思わしきウマ娘から積極的に挨拶をされるサムソンビッグを見るとこのウマ娘が現役時代から愛されていたのだろう事も良く分かる。
レースでこそGIII1勝、通算35戦4勝だったがセカンドキャリアに繋がるような成長が出来るのもまた中央トレセンの魅力だろう。
まあ、そもそも重賞を勝てるウマ娘というのも1000人に10人といない確率な訳だが。
「さあ、温かい飲み物を入れよう。レモンティーとミルクティーとホットココアと緑茶、どれにする?」
「あたしミルクティー!」
「私はレモンティーをお願いします」
「んじゃ俺はお茶貰うわ」
「あいよー」
ちなみにこの部屋にはガキンチョの舌を満足させる為に甘味やフルーツ、ジュース類の類いは豊富に取り揃えている。
その分トレーニングに上乗せさせるので何も問題は無い、俺の管理能力は完璧だからな。
「それで、改めてだけど俺に用があるってことでいいんだよね?どうしたんだい?」
「うんうん、えーっとね。実は明路さんにこの子……出来れば、出来ればだよ?ゼットちゃんのトレーナーになってもらいたいなって思ってるんだ。もちろん強制じゃないし入学してから色々と見てもらってから決めてくれたらとは思ってるけど、明路さんに最初にこの子を見てほしいんだよ」
「俺に?またなんで?」
「あたしのトレーナーはあたしの引退と一緒に辞めて今マネージャーだし、他の人は良く分からないけどあなたは甘味三姉妹の子達のウマドル活動で接する事もあって人柄も良く分かってるからね〜。安心して任せられるかな〜……なんて」
ほほう、一体何を話すかと思えばそういう事か。
ちなみにだが別に入学前の仮内定に関して厳密な協定や規則は無い。
それこそ代々名家に仕えてるトレーナーの一族なんかは厳密に言えばこれと同じではなくとも似たようなものではあるからな。
そうした制限を付けない事で割と自由に勧誘出来ている面はある。
とはいえ、それが行われるのはローズやメジロ、サトノと言った名家や極々僅かな例外のみ。
普段では有り得ない光景ではある。
それぞれの飲み物を渡しながら興味深げに話をそれとなく聞く。
「俺はそんなに手腕のあるトレーナーとは言えない。それでも……サムソンゼット、君が良いと言ってくれるなら一旦仮内定として見ていきたい。そこまで信頼してもらっているなら俺は歓迎したいと思ってる。……まあ、今の担当の反応も見てからにはなるけど、多分大丈夫だと思うし」
「は、はい!私は問題ありません!傍で見てきてとても優しそうで3人の先輩達も和やかな雰囲気で、是非こんなチームに入りたいと思っていました!」
「おいおい良いのか?まだトレーナー業4年目始まったばっかで今でも3人担当抱えてんのに増やして」
本当にコイツはお人好しだと苦笑いしてしまう。
全く、せめて能力を聞いたり見たりしてから決めれば良いものを、いくら好意的に見ている裏表の無い元重賞制覇という実力派ウマ娘からの提案とはいえこうも簡単に受けようとするとは。
昔から俺と同じく楽して金が稼げれば〜なんて言っていたが学生時代から度々全くもって別の道に進んでしまうのはコイツの良いところでもあり悪いところでもある。
「ああ。他の人からならいざ知らず、ビッグちゃんの頼みなら信頼出来る。それにゼットちゃんも明るくて良い子なのは知ってるしな。そういやゼットちゃんの適性ってダートと芝どっち?」
「芝です!」
「おお!そうかそうか〜んじゃ俺と有マ記念目指そうぜ!」
「有マ記念ですか!?はいっ!私も憧れのレースなので目指したいです!」
あと、一度決めると途端にノリが軽くなる。
有マ記念……言わばコイツが目指している一つの終着点がそこなのだがそんな事微塵も感じさせないくらいだ。
サムソンゼットもすっかり乗り気になってやがるし。
……全く、お前のどこが凡才なんだか。
数多くのウマ娘に信頼される、好かれるというのは数多のトレーナーが喉から手が出る程欲しくても手に入らない才能だっての。
「良かった〜これなら一旦安心出来そう〜。わざわざ押しかけたみたいになっちゃってごめんなさい明路さん、それに時坂さんも」
「いやいや!3人にも後輩が出来るなら良い刺激にもなると思うし大歓迎さ!ありがとう!」
「俺も暇だったからな。わざわざ自ら様子を見に行って招いたんだから何も気にする事は無い。それより、飲み物のおかわりは必要か?暇ならだが……もう少しのんびりして行っても俺は一向に構わん、やる事も無いからな」
「あ、それじゃおかわりくーださい!」
「わ、私も!」
しかし何とも光利の周りがまた騒がしくなりそうで面白くなってきたじゃないか。
それに……光利の周りが騒がしくなると言うことは、コンプにもまた友人が1人増える可能性があるという事にも繋がる。
それはそれで大歓迎だからな。
遠目で談笑する3人を尻目にフッと笑みを零した。
-オマケ 甘味三姉妹の反応-
「え!?ケーキちゃんにも後輩が出来るの!やったやった〜!とーっても甘々〜に甘やかそ〜っと!」
「わは〜私に後輩かぁ。楽しみだ〜、先輩ってどんな気分なんだろ〜」
「せ、先輩……き、緊張する……けど、楽しみ!色んなところに遊びに行きたいな」
甘味三姉妹
シレッと地方レースに出ながらウマドル活動中。出走レース的に地方巡業化している
安定して人気があり成功している
サムソンビッグ
実は作者が絶対出したかったウマ娘、なお出し方に関して現役で出すのはどうしても無理だと断念してセカンドキャリア中という形で出ている
サムソンビッグは絶対可愛い(確信)
明路とは甘味三姉妹の地方巡業中に出会ってウマドルの話で意気投合、同業関係者という事もあり良く話す仲になっており相当信頼を置いている
現マネージャーは現役時代からトレーナーと担当として付き合いがある
サムソンゼット
史実では1994年生まれ、2021年まで生きたご長寿牡馬。生涯通算42戦に走って4勝ながら1億円稼いだ
実は重賞には一度も出ていない上に相当古い馬だから1億円稼いだ馬の中ではトップクラスにマイナーなんじゃないかと思ってる
重賞に一度も出てないなら時空やら史実やらの先っぽくらい歪めても問題無いやろの精神で明路のとこに仮内定させた
明路光利
あの日(1話)の映像を掘り出した影響で夢は有マ記念優勝になっている