楽して大金だけ稼ぎたいトレーナーと魔改造されるブリッジコンプちゃん 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
『……ふむふむ、それでせっかくのバレンタインに日頃の感謝を込めてトレーナーさんに何かしたいけど、さすがに海外遠征先で手作りチョコは色々と問題がありそうだから何をしたら良いかの相談と』
『でもタルマエちゃんはともかくもう1人はあたしで良かったのかい?こういうのはもっと若い感性を持った子の方が良いと思うんだけどねえ』
思えば……という風に振り返った時、そう言えばクリスマスはのんびり過ごしているけれどバレンタインはクラシックはダービー、それ以降はサウジカップ、ホワイトデーはドバイワールドカップの遠征と丸被りしているせいで存在そのものを忘れていた。
年頃の女の子としてこれはあるまじき……と思いつつもウマ娘レースをしている競技者としてはこれくらいで良いのかも知れないとも思う複雑な心境。
それはさておき。
今年はそれはそれとして別。
あのペガサスワールドカップのやり取りが頭から離れず遂にバレンタインが目前まで迫ってきていてしまった。
そうなってしまった以上何かしらしないとどうにも集中が出来そうにない、それこそ競技者としてあるまじき……になってしまいかねない、というかこれで集中力欠けて負けたら死んでも死にきれない。
という訳でトレーナーには内緒でこっそり、ホッコータルマエ先輩とワンダーアキュート先輩にビデオ通話をしている。
二人にした決め手は『どちらも結婚している』事にあった。
「いえいえ!お2人ともラブラブ新婚ホヤホヤなのでそこから得られるヒントがあると思ってお呼びしたんです!……はっ!?い、いえ別にあたしがトレーナーに恋してるから参考にしたいとかそういう事では無くてですね!?お2人なら男性が喜ぶ物事について詳しいかな〜と思いまして!」
『そ、そうかい?あたしで良かったのなら嬉しいけれど』
『よーっし!まっかせて!』
「お、お願いします!」
そうそうあたしがトレーナーに恋してるとかそういう訳じゃない。
あくまでもこれは、既婚者という男の人を熟知している立場の先輩方から聞く男の人の喜ばせ方講座みたいなものなのだから。
日頃の感謝、そう日頃の感謝として何かトレーナーを驚かせて喜ばせられるような事が無いかなーという相談に過ぎない……はず。
『まずはトレーナーさんとブリッジコンプちゃんの仲についてだねぇ。どれだけ踏み込んで良いのかはそこからかねえ』
『私の見る限りだとかなり仲良さそうだけど……実際どう?』
「えーっと……どうなんだろ?他のウマ娘と比べて仲が良いのかどうなのかは他の子を良く知らないので比較は出来ないですが、良い方だと思いますよ?」
実際あれで悪いはずがない。
金儲け第一とか言っときながらノリが良くて一緒にいて楽しいし、育ち盛りのガキンチョだからとか言ってトレーナーの部屋には甘いものや塩分を気軽に取れるお菓子が常備されてるし、トレーニングメニューは的確、更に過保護を地で行く甘々ぶりもある。
あまりにも居心地が良い、お出掛けにも良く着いてきてくれるし一緒にゲームもするし、もう友達というか間違いなく家族だよねこれ。
『ふむふむ、例えばどんなエピソードがあるのかな?』
「良く頭を撫でてくれますし」
『あら〜良いねえ』
「良く一緒に遊びに出掛けますし、トレーニングしない日はゲームも一緒に遊んだりしますね」
『コンプちゃん、時坂さんの事良くお兄ちゃんみたいな人って言ってるけど確かにそんな感じなエピソードだね。楽しそう』
「でもちょっと過保護なんですよね。トレーニングメニューの微調整とかコンディションや食事でパターン変えてくる豊富さは『どんだけ用意してるの?この人良くそんな細かい事しながら日中サボれるなあ』なんて思いますけど」
『それはもうサボりとは言わないんじゃ……?』
『頑張り屋さんなトレーナーさんなんだねぇ』
「いや〜でもSNSもネットも完全管理されてて許可された操作しか出来ないですし、海外遠征中は『どんな危険があるか分かったもんじゃない』って言いながら絶対ホテル同室にしてくるし、出歩く時なんてずっと手を繋いでてくれるから、そこまであたしの事を大事に見ててくれるんだなあって分かって嬉しいけど恥ずかしいと言うか……」
『ちょ、ちょっと待って!?それは過保護通り越してない!?』
『あら〜』
やっぱり過保護エピソードはツッコミ入れられるよなあと思いながら話したら案の定だった。
まあ確かにちょっとやり過ぎなきはするからなあ……嬉しいけど。
『時坂さんコンプちゃんの事好き過ぎない……?ほ、他のエピソードとか……』
「え?あー……そう言えばあたしの顔とか性格はタイプだって言ってましたかね?」
『あたしゃにこにこしちゃうねえ』
『……よ、よし!分かったよ!』
パンッとタルマエ先輩が手を叩く。
今のエピソードを聞いて何か思いついたみたい?
『ここは、まだ見せた事無い服を着て驚かせちゃおう!コンプちゃんのビジュアルを褒めちぎってるなら絶対喜ぶよ!』
『そうだねえ、それはあたしも賛成かね。何かまだ見せた事の無い服とか、持っとったりするかい?』
服……なるほど、自分で自分の容姿が果たして良いのかどうかについては分からないところはあるとはいえトレーナーに褒められている以上トレーナーの好みではあるんだよねあたしのビジュアル。
だったらそれは効果的になるはず。
問題はそういう服は毎回トレーナーに見せちゃってる事だけど……いや、今回ばかりは1着だけある事を思い出した。
『プリンがはじめてオープン競走で1着取れた記念に専用勝負服、コンプちゃんにもおくるね〜』
そう、この遠征中にプリンがオープン競走で初1着、それも丁度『全員着用専用勝負服』のあるバレンタインステークス。
勝った記念にもう1着貰ったからと言う事であたしにも1着贈ってくれた、可愛い勝負服だからいつか着れたら……なんてデビュー直後に思ってた事もあるけれど逆に着れないレベルになるとは思っていなかった。
それもあってかプリンが贈ってくれたこれはとても嬉しかったし、そういえばまだ着てないんだよね。
これは……これはチャンスなのでは?
「一つ……あります。プリンがこの前オープン初勝利の時に贈ってくれた、バレンタインステークスの専用勝負服です」
『それだぁ!』
『あの服、あたしも好きなんよ〜。きっと気に入ってくれると思うよ〜』
2人にも馴染みのある服、一瞬で理解して満場一致。
バレンタインをイメージした甘い勝負服で男女共に人気が高いし、丁度バレンタインにやるサプライズだし最高のサプライズになるはず。
緊張はするけど、きっと喜んでくれるはず。
「よ、よーし……頑張ります!お2人ともありがとうございました!」
『ううん、私も楽しかったよ〜』
『応援しとるよ!がんばれ〜』
おー!と3人揃って拳を突き上げる。
そう、これはちょっとしたサプライズ。
……この時までは、そんな事も思っていたんだけどなあ。
「さてと……いつ出ようかなあ……」
クローゼットに隠れて早数分。
サプライズと言えばどっかに隠れて急に出てくる、なんて言う古典的なやり方が1番だろうとトレーナーの隙を見て隠れた。
で……タイミングを見てるけど、電話始めちゃったから少し待たないとね。大事な話なら遮りたくないし。
なんて、呑気な事も思ってました。
「恐らく、なんですが。そのせいで自分の担当に俺が恋慕している事を少なからず悟られました」
『はい?』
「それで、人生経験とトレーナー歴の長い師匠であるなら『担当に恋慕がバレた時の対処法』なんかもご存知では無いかと思いましてね」
『待てっ!!待って!!急展開!!いきなり急展開!!俺に恋愛相談は聞いてない!!俺独身なんだけど!?』
はい?という言葉が電話口の相手とハモリ掛けてすんでのところで止まったあたしを褒めたい。
確かにあの時ちょっと過ぎったけど悟ったまでは行ってないよあたし!?トレーナー!?
一気に何も頭に入らなくなってきたんだけど!?
『ちなみにだが、お前の担当がお前に惚れてんのは俺から見ても分かるくらいだったからそこも問題無しだぞ』
「ミッ」
え!?というかあたしってトレーナーに惚れてたの!?しかもそんなに分かりやすかったの!?
待って待ってどうしようこれ!?そう思うと一気に顔が熱くなってきちゃうんだけど……
我慢出来ずに崩れ落ちて音を出して更に断末魔も上げてしまった。
ああ終わりだトレーナーにバレたよこれ。
「悪いニュースはその理由がそこのクローゼットの中に恐らくコンプがいるという事です」
『え』
もう顔見れない……今までの言動全部その補正掛かってトレーナーの事しか考えられなくなる……あたしこんなに単純な女の子じゃなかったはずなのにぃ……
「はい、つまり全て聞かれていましたねこれ」
『おいおいおいおいおいおいおい冗談だろおいぃ!!』
「ハッハッハッ、いやはやどうしましょこれ」
それはあたしのセリフだよトレーナー!!
……本当にどうしよう、これ。
絶対この後気まずいよぉ……
このストーリーに恋愛は要らないという意見も聞くが俺はやるぞォ!!ジョジョーー!!!!(溶けていくお気に入りを見ながら)
ブリッジコンプ
37話の後ローズに相談したところ、流石に遠征先で手作りチョコは色々と難しいんじゃないかと言う結論になって39話に至っている
事故が事故を呼んだね!後はなんとかしろ!(何とかするのは作者である)
次回!
このままだとサウジカップで出遅れフラグ確定のブリッジコンプ
vs
そんな事になったら切腹する時坂
ファイッ!