楽して大金だけ稼ぎたいトレーナーと魔改造されるブリッジコンプちゃん 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
『では改めて、時坂トレーナー。ブリッジコンプ選手のドバイワールドカップ連覇おめでとうございます』
「ありがとうございます。彼女のコンディションは万全だったので心配はしていませんでしたが、サンライズローズやリリカルブロッサムと言った歴代でも屈指の名選手が更に成長して追い掛けてきているのはデータから見ても理解していたのでこうしてちゃんと勝って帰ってきてくれて正直ホッとはしていますよ」
『その両選手に今回も1.5秒以上の着差を付けての勝利。やはり、お2人の絆の強さは深まっていると見てよろしいのでしょうか』
「まあ、そういった感じで見といて貰えれば問題は無いですよ。そしてこれからも、ウチのブリッジコンプこそが世界最強のウマ娘だと証明しますから。しっかりとそのカメラに収めて記事にしてくださいよ」
なんだろう、ウチのトレーナーがあれから表でも過保護だったりウチの子自慢が加速している気がする。
あたしとトレーナーが恋人となってから1ヶ月半、公言して1ヶ月。ドバイワールドカップも何とかかんとか連覇して迎えた記者会見。
聞かれるインタビュー内容もやっぱりというべきか、あたしとトレーナーとの関係性の変化については興味津々っぽいのは、まああんな場で公言したからには当然っちゃ当然だと思うけど。
にしてもそれ幸いと言わんばかりにトレーナーは嬉々として、まるで水を得た魚かアンタはと言いたくなる程に言葉の節々に過保護さや自慢を交ぜてきている。
そんな訳で周りからはバカップルだの、お似合いだの、挙式はいつだのと言われて……特にローズちゃんとリリちゃんとプリンとケーキとスモモから。
まったくまったくもう……それでも嬉しいって思っちゃう辺りあたしってチョロいなあと感じてしまうけど。
『世界最強。それは芝への挑戦においても揺るぎないと』
「当たり前です。俺の調整はいつだって完璧だ、それに彼女のポテンシャルも慎重に見極めての判断なので芝でも頂点を取りに行けると断言します。ただ、まだ日本の高速バ場では中距離以上だとポテンシャルを半分も発揮出来ないと思うので、ムーラン・ド・ロンシャン賞の遠征費用もですがそこも含めて宝塚記念ではなく安田記念を選びましたが」
『なるほど、力強いご意見ありがとうございます。さあそして、芝路線……それもロンシャン芝への挑戦。つまりは日本勢初の凱旋門賞優勝を狙いに行く訳ですが、相手はあの史上初の快挙を成し遂げた《不滅の氷晶》凱旋門賞3連覇ウマ娘のスノーフォール選手です。彼女への印象というものはございますか?』
……とはいえ、凱旋門賞挑戦となるとそんな緩い空気ではいられない。
スノーフォール選手……ダートで世界最強があたしと言われているなら芝で世界最強は間違いなくスノーフォールだろうと言われている、正に別格の選手。
一番彼女に手を伸ばしたのは、去年の凱旋門賞を走った同レース2着、2 1/4バ身差まで迫ったキングヘイローさんだとも言われている。
あのバ身差で一番迫ったと言われるくらいなのだからその実力は圧倒的、それに何年も現役をしているのに全くもって衰えないその実力も畏怖されている。
……トレーナーがどう思ってるのかは、正直気になるところだよね。
「彼女が骨盤骨折し復帰して今年で4年目、そしてその今年がスノーフォールにとってトゥインクルシリーズラストシーズン。その3年と少しで走ったのは18戦。勝率は――10割。18戦18勝。怪我前が14戦5勝。まるで何かが宿ったかのような、そうウチのコンプがダート最強だとするなら彼女は芝において最強の存在でしょう。世界最強のウマ娘が誰かを決めるにおいて彼女に勝つのは必然、これまでで一番の強敵になる事は必至ですが必ず勝ちますよ。
安田記念とムーラン・ド・ロンシャン賞も勿論甘えず勝ち取って、ですが。しかしスノーフォールの引退レースで相見えられるとは、これも何かの運命ですかね……」
『……ありがとうございます。最強への挑戦、大いに期待しています』
ザワッと記者陣がどよめくのと同時に大量のフラッシュが炊かれる。
……あの、今サラッと勝つって断言したよねこの人。
復帰して3年以上無敗で凱旋門賞4連覇を狙う芝史上最強ウマ娘と言われるスノーフォール選手相手に断言されたらあたしの胃痛がマッハなんだけど……うう、でもそれだけ信じてくれてるって事だしなあ。
『そしてブリッジコンプ選手、まずはGI勝利日本史上最多13勝目、おめでとうございます』
「え!?あ、ありがとうございます!」
しまった、ついつい自分に話が回ってくるのを忘れて素っ頓狂な声を上げてしまった……ああ、またネットでおもちゃにされるんだろうなあこれ。
もう2年前なのにいまだにケンタッキーダービーのパドックでカチカチに固まって直立不動してたあたしがGIFという名のおもちゃ化されてるし……いやまあそれだけ愛されてる証拠なんだろうけど。
『しかしここまで13冠と言えど中央重賞は初出走、更に言えばそれが安田記念という芝のレースになります。意気込みはありますか?』
意気込みかあ。
意気込みって程のものはまだ明確には持ててないけど、芝のGIに出たいとはずっと思ってたのは事実だしそれは言いたいよね。
「意気込みという程のものはまだ明確には無いですが、あたしは元々芝のレースを目指していたウマ娘です。小さい頃から芝のGIレースに出たいという気持ち、憧れがありました。なのでまずは安田記念に出られる、という事実に感無量の想いがあります」
『やはり自分の原点への憧れは消えなかったと』
「勿論、ダートでここまで勝てた事は自分の実力とはいえ夢のような時間を見させてもらえていると思っているくらいです。今ではダートで走る事が大好きになりました。でも、だからこそ。勝ち続けられたからこそ、もう一度夢を見たくなりました。自分が夢見た原点である芝GIに出たい、勝ちたい。今はこの熱があたしの心の中に灯っています」
『ありがとうございます。我々日本記者団も応援しています。……さて、最後の質問になります。貴方から見てのスノーフォール選手の印象と凱旋門賞への決意をお聞かせ出来ますか?』
遂に来た、この質問。
まだ高等部2年に上がる直前の人間にする質問とは到底思えない重たい質問……だけど、記者団の人達もそれは承知。
それでもあたしの口から聞きたいのは分かっている、なんたって世間から見たら世界最強の芝ウマ娘vs世界最強のダートウマ娘だもんね。
日本での話題もアメリカ程じゃないにせよ安田記念に出る事と凱旋門賞挑戦でものすごい事になってる、なんて聞くし。
……腹は括った。こうなりゃ言うさ言ってやるさ。
「スノーフォール選手。あたしから見てもやっぱり『世界最強の芝ウマ娘』って思います。それにあれだけ強くてバイリンガルで器用なところはあたしが見習わないとなあと思わされるところも多いです。それに温和でとても慕われているところも憧れます」
「……でも、挑戦する以上あたしはそれを超えます。元々、自分自身に自信の持てない性格でした。それを変えてくれたのがトレーナーであり、ダートを共に走ってきたライバル達です。トレーナーが、ライバル達が、あたしを最強のチャンピオンだって言ってくれたから。今は自分の事を『ダートと日本を背負って走るウマ娘』だって自信を持って言えます」
「安田記念も、ムーラン・ド・ロンシャン賞も勝って。凱旋門賞も全力で勝ちます。これ以上無いチャンスを与えてくれた人達の為に、芝のGIを夢見たあたし自身の為に」
ベルモントステークスを思い出す。
あの日の決意が無かったら、あの214mで諦めていたら。きっとあたしはここにいないんだろうなと思う。
でも、諦めなかった。だからあたしは自分への自信を持てたし、今こうして豪語出来た。
待ってろ安田記念、待ってろフランス。
こうなったら全部取ってやるんだからな!
「……へぇ。あの子芝に来るんだ。わたし、一度戦ってみたかったんだよね……りゅーちゃん、あたし宝塚記念取りやめて安田記念出るよ。うん、ちょっとばかし腕試しに行くから。――無敗二冠とどっちが強いんだろうね?」
「ブリッジコンプさん……貴方の挑戦、是非ともお待ちしていますよ。私の現役、そのフィナーレを飾るに相応しいお相手である事を、祈っています」
「え!?コンプちゃんが凱旋門賞に!?バトラー!!バトラーはいますの!?ワタクシ今年は凱旋門賞に出ますわ!!」
-オマケ 安田記念対策-
「という訳で」
「うん」
「安田記念対策に連れてきたオグリキャップと師匠とタイキシャトルだ」
「トキサカ、久しぶりじゃないか。また共に焼肉を食べよう」
「まさかあの電話の後にお前らが爆速で付き合ってるとはな……知ってはいたがいざ見せられると絶句するわ」
「Hey!!myGOD!!お会いしたかったデース!!サインくだサーイ!!」
「面子が豪華すぎて気絶しそうなんだけど……」
《不滅の氷晶》スノーフォール
日本生まれアイルランド育ちであり日本語が堪能なウマ娘、ブリッジコンプに対するラスボスとして立ちはだかる
デビュー年こそ7戦1勝も翌年はGI3連勝、順風満帆…と思われた矢先に骨盤の骨折で選手生命の危機に陥るも1年掛けて完治させ奇跡の大復活、いつしかその姿は『死の淵から蘇った決して消えない氷晶』として《不滅の氷晶》と呼ばれるようになった
ウマ娘として全盛期を迎えた彼女は史上初の凱旋門賞3連覇を達成、引退レースとして凱旋門賞4連覇を懸けロンシャンの地へ立つ
戦績は32戦23勝。怪我復帰後は18戦無敗
元ネタはアイルランド、イングランド、イギリスのオークスレース3レースを制するという離れ業を見せた実馬スノーフォール
この先長文があるので『そういうのは要らねえよ』と感じたらここでバックしてください
まあ、誰も予想は出来なかったんじゃないですかねこの子がラスボスで来るのは
ただ、この物語の副題が『道半ばの夢のその先』だと気付いていた人には納得の出来るラスボスなんじゃないかとも思ってます
1からこの物語を追ってきた方はわかると思いますが、実装されているネームドだけではなく物語には載せずとも様々な子がこの趣旨として『その先』を歩んでる描写もあります
確かに自分は、ネームドと、所謂史実のあるウマ娘とブリッジコンプとの対決をタルマエとの一戦のみと言いました
ですがもう一度のみ解禁します
まどろっこしい事は言いません、見たいから書くそれだけです
以上!終わり!この作品に出てくる全てのウマ娘とキャラと元ネタの競走馬には全力を持ってリスペクトを捧げて書いてるからそこだけは信じてくれよな!
要約:最初から最後までこの作品やりたい放題するぞ!気を付けろ!でもちゃんとそこに愛はあるんやで!