楽して大金だけ稼ぎたいトレーナーと魔改造されるブリッジコンプちゃん   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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王者?王者王者?貴方勝ちますよ
感想返信でもチラッと言っていましたが、実は昨日の更新が一番緊張しました。ラスボスをスノーフォールにするという事が受け入れられるか否かを博打だと思っていたからです
なので受け入れてもらえてめちゃくちゃ安心しています


42. 日 本 最 強 決 定 戦

 ――安田記念。

 

 それは世界有数の芝マイルGIレース。

 あたしがかつて憧れた芝GIレースの一つだった。

 

 いつか走りたいと願って。

 でも、デビューすら出来ないと思って封印して。

 気が付けば何故かダートでデビューして、いつの間にかスター街道を駆け上がって、何もかもが充実していた。

 

 その中でもう一度湧き上がった想いを、トレーナーは汲んでくれた。

 

 ああ、もう一度。

 もう一度、あたしはターフに立てる。

 それがとてつもなく嬉しかった。

 終わったはずの夢をまた見れると思えるのが、とてつもなく嬉しかった。

 

 

『今年もやってきましたマイルの頂点を決める為の戦い、東京1600m安田記念。しかし今年はマイルの頂点を決める戦いでは無い。ダートからアメリカ完全統一6冠、世界無敗13冠今やダート世界最強と謳われるあのブリッジコンプが電撃参戦。そして宝塚記念に出走予定だったテイエムクロードが急遽安田記念に方針転換。国内芝最強とダート世界最強がぶつかります。

それは即ち、芝ダート問わず国内最強のウマ娘が今日確実に決定するという事にもなります。果たしてどちらが王冠を手にするのか――間もなくファンファーレです!』

 

 

「しっかし今日は降ってるなあ――雨」

 

「よっすー、ブリコンちゃーん。……会いたかったよ」

 

「あ……テイエムクロードさん」

 

「クロードで良いよ。今日はね、めっちゃ楽しみだったんだ」

 

 パドックで話しかけて来たのは、最大のライバルと言われているテイエムクロードさん。

 皐月賞、日本ダービーまで無敗二冠でマイルチャンピオンシップも獲得して翌年には宝塚記念、そして天皇賞・秋を獲得してマイルCSは負けたけど今年も大阪杯を勝ってここまで芝GI6勝。

 名実共に日本芝レース最強と断言されている。

 

 性格はいつもはギャルみたいな子、らしいけど……今あたしを射抜くその目はそんなギャルみたいな感じじゃなくて、間違いなくギラついたものだった。

 

「あたしも。芝のGIに出るのは小さい頃からの夢だったから」

 

「わたしも楽しみなんだよね。……ここで世界最強の13冠ウマ娘を倒せば、もっともっとわたしは輝ける。それにりゅーちゃんのことも輝かせてあげられる。負けられないんだよね、芝……ひいてはマイル最強としては、ね」

 

「初めての芝GIだけど……あたしだって負ける気は無いよ。腹は括った、安田記念もムーラン・ド・ロンシャン賞も凱旋門賞も、あたしは全てを獲る。ダート最強を背負った身として、どうあっても負けられない」

 

「ああ――楽しみだなあ、ブリコンちゃん。アナタと走るのが。ゾクゾクしちゃう」

 

 そう、あたしも背負ってるものがある。

 ならばここで負ける訳にはいかない。

 

 正直言って、《始皇帝》だなんてとてもじゃないけどあたしの背負える2つ名なんかじゃないって思ってる。

 だってこの2つ名と並び立つのはシンボリルドルフさんとか、シャフリヤール会長とか、オペラオーさんとか、トウカイテイオー先輩とか、その辺だよ?

 そんな凄い人達と同じなんて……とか、思っちゃう事はある。

 

 でも、否定したらダメなんだ。

 この名前は、2つ名はあたしが勝ってきた道標であり、タルマエ先輩やリッキー先輩、ファル子先輩にアキュート先輩達に再び心の炎を宿した事実があって付けられている。

 それを否定するのは、違う。

 否定してしまえば、今まで走ってきたレースを、勝ってきたレースを、そしてあたしを認めてくれたダートで走ってきたライバル達を否定する事になってしまうから。

 

 ライバルは、戦友だ。仲間だ。

 そんな仲間に、チャンピオンだって、最強だって言われてここにいる以上あたしは《始皇帝》として成すべき事を成す。

 

 決して《覇王》《大帝》《帝王》《暴君》《皇帝》そんな2つ名達に、それに並び立てる程の器があたし自身には無かったとしても。

 あたしの走った軌跡だけは、並び立てると信じている。

 

 

『注目の2番人気は6番、テイエムクロード。コンディションは大阪杯時と変わらず絶好調と見て間違いないですね?』

 

『ええ、完成度はこれ以上無いでしょう。闘志に関してもブリッジコンプ選手が来た事によってわざわざローテーションを変更してまで安田記念に来た事を鑑みれば申し分無し、正に国内芝最強ウマ娘として堂々とブリッジコンプ選手と対峙が出来ると思いますよ』

 

 

 先にパドックに入ったクロードさんに続いて、あたしも入る。

 緊張感は不思議と無かった。

 

『さあそしてぶっちぎり1番人気に推されたのは5番やはりブリッジコンプ。ダート全世界13冠、アメリカ完全統一六冠王者が芝に乗り込んできましたよ武田さん!これは夢の対決と言えるんじゃないですか!?』

 

『いやあこれは意外でしたよね。僕らの中でも理論上芝も走れる子ではないかっていうのはずっと議論していましたがまさか今日それが実証されるとは。日本のウマ娘なのは承知で言いますが、彼女が芝レースに乗り込んでくる、そう聞かされた時僕はペリーの黒船来航が脳裏に浮かびましたよ』

 

『それも仕方ないでしょう、何せ彼女が走った国内レースは全16戦中メイクデビュー、JBCジュニア優駿、それに昨年の帝王賞のみ。中央レースに至ってはメイクデビュー以来という前代未聞振りですから。更に言えば彼女が覚醒したのはアメリカクラシック路線でもあります』

 

『ええ、本当に懐かしい。その彼女が芝でどのようなレースを見せてくれるか、今からドキドキしちゃいますよ』

 

 

 今日のゲートは……5番。

 何の運命か、隣の6番に入るのはクロードさんだ。

 意識しない――なんて出来るはずがない。

 とてつもない威圧感だ、今までローズちゃん達の威圧感を背に受けながら走ってなかったら今頃ノックアウトされていたのは間違いない。

 

 でも大丈夫、今日はそのローズちゃん達と走った経験が味方だからね。

 

 

『全バゲートインが完了しました。日本最強はどちらか――スタート!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 テイエムクロード……それがわたしの名前だった。

 わたしは生まれながらにして恵まれていた、何せ周りの姉妹や親戚はみんな将来中央トレセンに入るのが確約されているようなエリートばかり。

 学ぶ事が多くて飽きるなんて無かった。

 それにみんな人柄も良く、そんなだからわたしも自由奔放に育つ事が出来たし能力を覚醒させる事が出来た。

 

 そんな中入ったチームは、かつてまったく目立つ存在じゃなかった末端の分家だったけれど今や一族最強と言われるまでになったオペラオーさんのチームリゲル。

 そこで更に研鑽を磨いたわたしは三冠こそ逃したけど無敗二冠にGI6勝、後は……そう、安田記念に出てくる『ダート世界最強』を倒せば完全にわたしの時代になる、そう思っていた。

 

「うんうん、今までで一番のコンディション、これで負けるはずが……」

 

 なのに。だと言うのに。

 

「……!?」

 

 これは一体なんなのか、目の前に現れた『それ』に身体が震え出す。

『黄金の鎖』だと脳みそが理解したのはゲートが開いた数秒後だった。

 

 まさか。まさかまさかまさか。

 わたしが怖気たっていうのか。

 だが、これが現実だ。

 

『ほんの僅かに出遅れたという事実』が現実だった。

 

 有り得ない……現実を直視出来ないまま、脳みそがぐちゃぐちゃになりながら走る。

 足が重たい、一体前とはどれだけ離されたのかすら分からない。

 それでも前に微かに見える尾花栗毛のバ体を追い縋る。

 こんなはずじゃなかった、もっとスローペースの展開になるはずだった、最後に脚が使えるはずだった。

 

 全て、全て、全て……壊された。

 

 ……ああ、ああ、そうか。

 

 これが……ダート世界最強と呼ばれるウマ娘なのか。

 

 これは……これは、間違いない。

 

 

『これは間違いない!!これは間違いない!!ブリッジコンプ先頭!!ブリッジコンプ先頭!!テイエムクロード伸びない!!クロードは伸びない!!最強はッ!!ブリッジコンプだああああああああああ!!!なんと芝GIでも圧勝!!!黄金の橋を、ターフに見事に架けました!!これが、これが――』

 

 

 これが、《始皇帝》か。

 

 

『《始皇帝》だ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-オマケ 一方その頃のURA-

 

「いやね、中央で走ってくれとは言いましたよ?」

「はい、まあ言ってましたよね」

「でも芝で走るのは聞いてないじゃないですかぁ!!嬉しいけど!!胃が痛くないのは嬉しいけど!!せめて中央じゃなくて良いから国内でダート走って!!」

 

 

「……仕方ないなあ。年末走ってやるか」




一度やってみたかった『初対戦且つあまり脅威を知らなかった対戦相手視点からの描写』、今回の被害者はテイエムクロードちゃんです(白目)
ムラクモちゃん同様どうやっても弱い訳無いんです本当は…



☆ブリッジコンプ(現役・シニア)
トレーナー:時坂敦史(21)
中央獲得賞金:9310万円
地方獲得賞金:5750万円
海外獲得賞金:3194.5万ドル(49億4085万円)
合計獲得賞金:50億9145万円
主な勝ちレース:TCクラシック(GI) ペガサスWC(GI) サウジカップ(GI) ドバイWC(GI)
受賞歴
×△年度アメリカクラシック三冠最優秀ウマ娘
WBURレーティング1位(×△年度下半期、××年度上半期・下半期)
エクリプス賞年度代表ウマ娘(×△年度、××年度)
エクリプス賞最優秀ダートウマ娘(×△年度、××年度)
エクリプス賞最優秀クラシックウマ娘(×△年度)
中東年度代表ウマ娘(××年度)
URA年度代表ウマ娘(×△年度、××年度)
URA最優秀クラシックウマ娘(×△年度)
URA最優秀ダートウマ娘(×△年度、××年度)

競走成績
次走予定:ムーラン・ド・ロンシャン賞
《通算成績》17戦17勝【17-0-0-0】



時坂敦史
合計賞金ボーナス:7億3115万円

時坂「ま、良バ場でも勝てるとは思ったが雨が降ってくれたお陰で上手い事競り合わせず勝たせる事が出来たな。……え?中央出走が3年ぶり?まあ走るレース無かったしそんなもんでしょ」
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