楽して大金だけ稼ぎたいトレーナーと魔改造されるブリッジコンプちゃん   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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曇り空の後には


51.side『P』2話「本音と決断」

「……今から2人で話がしたい?」

 

「うん、ダメかな〜トレーナー?」

 

「良いぞ、しかしプリンがそんな事言うなんて珍しいじゃないか。いつもはみんなの輪でのんびりまったり楽しんでる姿を見るし」

 

「あはは〜まあね〜。でも今日はちょっと真面目なお話……丁度2人きりだから、ね」

 

「……真面目な話、か」

 

 後には引けない。

 自分が走ってきた年数を考えれば、まだ衰えてないとはいえいつスモモの様に衰えが見えてきてもおかしくない。

 だとするなら、バカだって良い、バカならバカらしくここで不退転の意志を、覚悟を見せるべきだ。

 

「言っても……良いかな」

 

「うん。俺の方は問題無い」

 

 トレーナーの目を見る。

 やっぱりこの人はとても優しい、ある程度分かってそうな少し悲しそうな目付きをしながらもそれを押し隠すようにこちらを見つめている。

 多少言うのが心苦しくはあるけれど、でもわたしの覚悟をトレーナーには最初に伝えておきたい。

 

「…………スモモの引退の話を聞いて、ね。わたしも今年をラストにしようかなって思ったんだよね」

 

「そっか。……まあ、覚悟はしてたけど……こう立て続けにってなると『そっかぁ……』とはなるよな」

 

「ごめんね〜トレーナー。でも……もうわたしにも時間が無いって思って。それで……重賞を勝ちたい……って……ね?」

 

「プリン……」

 

 少しずつ声が震えてしまう。

 ダメだ、ちゃんと伝えないといけないのに何を言いたいのか上手くまとまらなくなってきておかしくなりそうになる。

 それでもここで黙ってるのが一番良くないと必死に言葉を探す。

 

「あ、あはは〜バカだよね〜重賞なんて何回走っても二桁着順で、もう期待してくれてる人なんてトレーナー達だけなのに……勝ちたいなんて……おかしいよね……でも……コンプちゃんや他の同期でGIを走ったり重賞を勝ってるウマ娘を見ると……」

 

 グッと拳を握りしめる。

 結局言葉なんて探しても探しても、こんな不器用でマイナスで下手な言葉選びしか出来ない。

 

 でも、だからこそ。

 

 わたしは本音を叫ぶ。

 

「わたしだって勝ちたいッ……!!GIじゃなくたって良い!!たった一つのGIIIでも良い!!あの子達みたいに……輝きたい……!!」

 

「プリン……」

 

「だから……だからわたしは今年に全てを懸けたい。もう逃げるだけはしたくない。来年があるなんて思いたくない、だから今年いっぱいって決めた。……お願いします、こんなワガママなウマ娘だけど年末までこのワガママに付き合ってください」

 

 頭を下げる。

 トレーナーの目は……見られなかった。

 やっぱり少しだけ、どう思われるかというのが怖くて。

 

「……もちろん、俺はどこまでも君達のトレーナーだ。どこまでも付き合わさせてもらうよ」

 

「あ、ありがとうトレーナー……!」

 

 ホッと胸を撫で下ろす。

 やっぱりトレーナーはどこまでも優しい人だと感じてしまう。

 重賞にまったく通用してないウマ娘の、重賞に勝ちたいという話にも嫌な顔一つせずに快諾してくれるなんて。

 もう重賞には出ずにオープン競走で勝ちを、なんて安定志向のトレーナーだってかなりの数存在する。

 寧ろそっちの方が当たり前の話だ、一つでも多く勝たせてあげたい賞金を持ち帰らせてあげたいと考えるトレーナーなら前者を渋るのは普通の考え方だ、

 

 なのに、こんなにも尊重してくれる。

 

 それがとても嬉しかった。

 

「でも、それならちょっとだけ走るレースを絞ろう。それに勝ちを本気で狙うなら走るのもGIIIに絞る……この前の根岸ステークスを見るにプリンは重賞短距離は短過ぎると感じたから距離もマイル以上にする。それでラインナップを決めたいと思うけど……良いか?チャンスは恐らくそんなには無い、でもその分トレーニング時間は増える」

 

「……本当にありがとう、トレーナー。こんなにもわたしの事を見ていてくれて、考えてくれて」

 

「おいおい、トレーナーなら担当ウマ娘の事を考えるのは当たり前だぞ?俺だって……プリンが、みんなが重賞で勝ってる姿を見たい。でも重賞を勝てるのは1%にも満たないウマ娘だ。現実はそんな簡単なものじゃない。……分かっていても、いや分かっているからこそ、自分の不甲斐なさを何度も何度も恨めしく思った。

一緒に勝とう、重賞を。たとえ無理だって笑われたって構わない、誰に何を言われたって構わない。担当が目指した夢を手を繋いで共に目指して歩くのがトレーナーだ」

 

 心が熱くなった。

 独り善がりと言われたって何も反論出来なかったワガママを認めてくれるどころか『一緒に目指そう』とまで言ってくれるなんて。

 思わず涙が溢れそうになる。

 

 ……この際だ、この人になら本音だって話してしまっても。

 

「あのね、トレーナー……話しておきたい事がもう一つだけあるの」

 

「なんだって良いさ。俺とお前達は一蓮托生ってやつだ。同じ運命を辿る相棒だろ?だったら寧ろ本音を話してくれるのは嬉しい事だろ?」

 

 深呼吸をして、震える手を握りしめる。

 これは、わたしの醜さ。

 それを誰かに見せるなんて怖い事……お父さんとお母さんにすら出来ない、この人にしか出来ない事だから。

 

「……ありがとう、トレーナー。あのね……わたしはずっと、コンプちゃんに嫉妬していた。一緒に走ってたはずの親友が手に届かないくらいの場所までいっちゃって、キラキラ輝いてて。ずっと昔にもう封印したそれをひた走るコンプちゃんが羨ましくて、恨めしくて、そんな事を思う自分が惨めで、悔しくて。心の中ぐちゃぐちゃになっちゃって……」

 

「なるほど……うん、まあ良いんじゃない?」

 

「……え、あれ、良いの?」

 

 確かに心はすっきりした気はする……けど、あれ?ちょっとトレーナー軽くない?わたしけっこー重い話したと思うんだけど。

 これで良いのかこれで。

 

「良いだろ別に、嫉妬心を持つだけなら。実害は出してないんだしそういうのって上手く飼い慣らせば向上心になるしさ」

 

「トレーナーもそういう体験した事あるの?」

 

「ははは、なーに言ってんだ!俺はな、中学一年の時からずーっと嫉妬しかしてこなかったんだぜ?」

 

「それって……」

 

「敦史の事だよ。俺は自分で言うのもアレだけど俺ってば小さい頃から頭も良くて運動神経も良かったんだよ。でも敦史にだけはなーんにも勝てなくてよ……アイツの事は親友だし憧れだったし、今でもずっとずっと最高の男だって思ってる。

でもそれはそれとしてめっちゃくちゃ悔しいとも思ってるし羨ましくて恨めしいとも思ってる。何もかも完璧に出来てイケメンで金持ちで彼女もいてさ!!完全無敵か!?ちくしょう!!トレーナーとしても前人未到の記録ばっかりでよぉ!!俺が必死にやってやっと追い付いた時には既に向こう側にいやがって!!

トレーナーにだってめちゃくちゃ頑張ってなったのに俺は所詮モブ程度の実力!!俺にもっと実力があればプリンだってスモモだってケーキだって重賞取らせてやれたのにってさ!!」

 

 初めてトレーナーの本音を聞いた。

 優しくて頼りになるけどちょっと卑屈なくらいの人だと思ってたけど、こんなにも激情を隠していたなんて。

 

 ……もしかしたら、わたしとトレーナーは。

 

「似てるのかも、ね」

 

 なんて。

 コンプちゃんと時坂さんみたいに恋愛感情なんて感じじゃないけれど、やっぱり大好きだなあとしみじみしてしまう。

 

「うん?」

 

「ううん、わたしとトレーナーって似てるのかもな〜って」

 

「あ〜それはまあ、確かに?」

 

「うへへ〜。ちょっと嬉しいんだよ〜?おんなじ気持ちを持っててくれてる、理解してくれてるって思うと。……頼りにしてるよ〜トレーナー?」

 

「ああ!絶対取るぞ重賞!!」

 

「おー!」

 

「おー!」

 

 あんなに暗い感情に支配されていたわたしは、もういなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

-オマケ-

 

「ええ!?プリンも今年で引退!?うぅ……だったらケーキちゃんはまだまだ続けるんだからね!2人の分まで力尽きるまで!!ふぁいあああああああああ!!!」

「……ケーキってカレンチャンとは違って割とスイッチ入ると熱血なんだよな。そこもまた可愛いけど」




プリンニシテヤルノ
現在33戦7勝
内OP競走3勝

スモモ
現在28戦3勝

ケーキキャッスル
現在33戦3勝

サムソンゼット
現在9戦2勝

メールドグラース
現在6戦1勝


時坂「全員勝ち上がらせてるのに凡才とはこれ如何に」


えー急なお知らせになりますが53話を最後に一旦更新が途絶えます
帰ってはきますが長くて一週間程お休みです
理由は完全にプライベートな理由ですがブラック企業から逃走を計る為心身共にそれどころでは無くなるからです
53話までいったらほんとに完結まであと少しなんで、ちょっとだけお待ちください

なので取り敢えず一旦
ほな、また…
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