二度目の人生は艦娘でした   作:白黒狼

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 最近、艦載機の開発でレア以上が彩雲しかでてこない。他の艦娘に変えても「失敗」か「彩雲」のどちらかしかでない。どういうことなの……(汗)



コンゴウ、戦う

 電探に反応した島の周りを移動しつつ、島の様子を観察する。

 どうやら以前は小さな火山だったのか凹凸の激しい火山岩などでできた島の中央部は山の様に盛り上がり、地面自体が海から五メートル程の高い位置にある。そのまま長い年月をかけて波が侵食していったのか島の裏側はそり立つような険しい崖が連なる岩場になっており、鍾乳洞のような横穴も多数存在している。恐らく敵はここに身を隠しながら艦載機でこちらの様子を見ていたのだろう。

 既に日は落ち、辺りは真っ暗だ。当然岩陰や鍾乳洞の中の様子など見えはしない。一応、探照灯は艤装の妖精さんが持っているが、今探照灯を灯すなど狙ってくださいと言っているようなものなので使わない。

 警戒しながら最上と扶桑が鍾乳洞の入り口を覗き込む。私は外で電探を起動させながら周囲の警戒を行う。

 

「金剛さん、使われた資材の跡が残ってる。やっぱりここにいたみたいだ」

 

「……どうやら近くにいるのは間違いないみたい」

 

 最上と扶桑が空になった燃料缶を持って中から出てくる。

 電探の反応は間違いなくこの近くから感じるのに姿が見えないとなると……。

 そこまで考えたところで私の足元の海面が急激に盛り上がった。バランスを崩し、倒れそうになる前にその場から離脱する。

 

「やっぱり水中にいた!!」

 

「金剛さん!?」

 

「最上、危ない!!」

 

 私に視線を向けた瞬間、最上の頭上にいつの間に現れたのか敵の艦載機がいくつも襲いかかる。

 それに気付いた扶桑が慌てて対空砲を撃ち、それを撃墜する。しかし、全てを撃ち落とすことはできず、艦爆からの爆撃を受けて最上が吹き飛ばされた。

 

「最上!!」

 

「……グッ、ボクは大丈夫!! まだ小破だから心配しないで、目の前の敵に集中して!!」

 

 どうやら直撃は避けたらしく、すぐに態勢を立て直した最上の叱責を受けて扶桑も私も前方に視線を向ける。

 すると、水中から勢いよく重巡リ級が二体飛び出してきた。その体には赤いオーラが纏わり付いている。

間違いない。エリート級だ。

 

「やっと出てきたわね!!」

 

 扶桑が主砲をリ級に向け、最上と共に水面を滑り出す。

 だが、私はそれに続かず、電探の稼働率を最大に上げる。先程までは何も感じなかったのに今は無数の気配が私達を囲んでいる。

 まだ高いステルス技術と的確な攻撃を行う艦載機を操る存在が現れていない。間違いなく空母なのだから先に倒しておかないと突然頭上から爆撃されかねない。

 無数の反応は間違いなく艦載機だ。常に動き回ってこちらの動きを観察している。油断すれば艦爆や艦攻が容赦なく襲いかかってくるだろう。

 そんな中に一つだけ動かない反応がある。

 

「見つけた!!」

 

 直感でそれが空母だと理解した。

 首の裏を撫でつけるような不快感に加え、首を絞められるような気配を感じる。きっと、これが殺気というものなのだろう。

 緊張で指が震え、鼓動が速くなる。

 

 でも、何でだろう。

 私には不安とか、恐怖なんて感情は全くなくて……。

 どちらかというと……ワクワクする。

 

「……楽しんでるのか、私は?」

 

 疑問を声に出しても返事はない。私しか聞いていないんだから当然だ。

 今から命をかけた戦いをするというのに、私の心は好奇心でいっぱいだった。

 

 今から戦う相手は?

 

 ……深海棲艦だ。

 

 私は何だ?

 

 ……艦娘だ。

 

「そうか、そうだよね。じゃあ……倒さなくちゃね」

 

 艤装の起動率を最大に上げ、水面を滑る様に移動する。

 電探にあった反応へと真っ直ぐに向かう私に無数の艦載機が襲いかかる。艦戦、艦爆、艦攻―――種類を問わず、全ての艦載機が殺到する。

 

「覚悟するんだね。私は……食らいついたらはなさないよ!!」

 

 徐々に気分が高揚してくるのに答えるかの様に対空砲を空に向け、すぐさま砲撃を開始する。体が覚えているのか自然に体を傾け、攻撃を避けながらも足は止めない。

 やがて、艦載機の数が少なくなるとひと塊りになって特攻してくるようになったり、特攻すると見せかけて直前で散開したりと複雑な動きが増えてきた。ならば、それ相応の対応をするだけだ。

 

「妖精さん達、砲弾換装、三式弾!!」

 

 艤装の妖精さんに対空砲の砲弾の変更を告げる。

 ゲームと同じように艦娘には装備できる兵器の数が決められている。決められた数以上の装備は艦娘や妖精さんに大きな負担を与えるからだ。

 だが、ここで一つだけ違うことがある。それは砲弾だ。

 ゲームではダメージを上げる〝三式弾〟や〝九一式徹甲弾〟などの砲弾は一つの装備として装備欄に装備しなくてはいけなかった。しかし、この世界では砲弾は種類を問わず〝弾薬〟として扱われる。つまり、どれだけ沢山の種類の砲弾を積もうとも装備欄を圧迫しないのだ。

 

「三式弾装填完了……撃て!!」

 

 撃ち出された砲弾は艦載機の群れの手前で花火の様に炸裂した。絶妙なタイミングで炸裂した三式弾によって残りの艦載機が纏めて空中で火を噴きながら爆散する。

 それを確認しつつもやはり足は止めない。次の艦載機が来る前に本体を叩く!!

 

 やがて、真っ暗な海の真ん中に誰かが立っているのを見つけた。

 病的に真っ白な肌、肌と同じく真っ白な髪、黒いマントに黒い杖。瞬き一つしない両目に感情はなく、その瞳は不気味に輝く金色をしている。更に目に入るのはその頭に乗っている巨大な塊だ。触手や砲台が両サイドに付いている姿は軽母ヌ級に酷似している。つまりは完全なヌ級の上位個体であり、その名を―――空母ヲ級という。

 

「フラグシップ級のヲ級か……」

 

 堂々と立つヲ級からは不気味な金色のオーラが溢れ出している。そのヲ級に向かって、私は一切の躊躇なく主砲を発射した。

 しかし、ヲ級は最小限に体を捻っただけで砲弾を回避すると新たに艦載機を飛ばしてくる。だが、それを黙って見ている私ではない。艦載機が攻撃する前に三式弾で全てを撃ち落とす。

 そのまま流れるような動きでヲ級の背後へと回り込もうとしたが、振り向きざまに頭に付いている砲塔から砲弾が発射された。

 

「……チッ」

 

 舌打ちしつつ体を捻って回避しながら距離をとる。

 ヲ級も側に新しい艦載機を待機させつつこちらを警戒している。フラグシップ級ともなれば空母といえど高い機動力を発揮してくるとは思っていた。

 だが、練度が高いうえに高速戦艦である私ならばそれを上回る動きができる……筈だった。

 ただ、頭でわかっていても〝私〟の経験不足が足を引っ張っている。〝彼女〟の体が覚えていても〝私〟がその動きについていけていないのだ。

 

「なら、別の部分で補うだけだ!!」

 

 砲弾をわざと海面に発射して巨大な水飛沫を上げる。

 ヲ級も私の突然の行動に困惑したのだろう、動きが鈍ったヲ級は海水を頭から被り一瞬だけ視界が遮られた。その隙に接近する。

 空母であるヲ級は接近されると艦載機を使えない。何故なら自分を巻き込んでしまう可能性があるからだ。

 

「――――ッ!!」

 

 私の接近に気がついたヲ級が杖を振るが、それより先に両腕を掴み至近距離で睨み合う。

 ヲ級の金色の瞳は硝子の様に透き通っているが、その奥には激しい憎悪が浮かんでいるのがわかる。

 掴まれた腕を振り解こうとする腕に力が入り、頭に乗ったヌ級の両側に付いた砲塔がこちらを向く。このまま至近距離で砲撃するつもりなのだろう。

 

「やらせない!!」

 

 咄嗟にヲ級の足を引っ掛けてバランスを崩して照準をズラす。右手を離すと同時に左手を引っ張りヲ級を自分の方に引き寄せる。そして姿勢を低くして一気に拳を振り上げつつ膝のバネを利用してアッパーを顎に打ち込む。

 おそらく肉弾戦をする艦娘の相手などしたことがなかったのだろう、ヲ級は一切反応できずに拳の直撃を受けた。

 艦娘の力は人間の数倍だ。拳を打ち込まれたヲ級は一瞬だけ驚愕の表情を浮かべるが、直後に大型車に跳ね飛ばされたかの様に空中に吹き飛んだ。

 いくらフラグシップ級の深海棲艦といえど空中に放り出されれば身動きがとれないだろう。重力に引かれて落下を始めるが、それを黙って見ている程私は優しくない。

 艤装の主砲と副砲の全ての砲塔がヲ級へと照準を向ける。腕を振り上げつつ、私は無意識に〝彼女〟の様に叫んでいた。

 

「バァァニングゥゥゥラァァァブ!!」

 

 一斉に発射された砲弾が寸分違わずヲ級へと叩き込まれ、夜空に巨大な爆煙と共に炎の花が咲いた。

 その後も少しだけ警戒していたが反応はない。完全に撃沈できたようだ。緊張が緩み、少しだけ呆然としていたがすぐに我に返って最上と扶桑のところに行こうと振り返る。

 

 しかし、その私の目の前に突然謎の光の塊が現れた。

 

 敵の攻撃かと思わず艤装を構える。しかし、その私の腕は艤装の妖精さんに掴まれて止められた。

 一体何を、と思ったが妖精さん達は嬉しそうに光の周りをくるくると飛び回り始めた。全員が嬉しそうにしているので何か良いものなのだろうか?

 そのうち、妖精さん達は光の塊を大事に抱えると、私の艤装へと戻っていった。一体何なのかを詳しく聞きたいが、今は最上と扶桑の援護に回らなければいけない。

 私は気を引き締めると、二人が戦っている地点へと向かって進み始めるのだった。

 

 


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